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sandieさん

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投稿済みの記事一覧

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しりとり

18/05/07 コメント:0件 sandie 閲覧数:138

 病院から帰る途中、母は幼い僕を連れて映画館に寄った。
 片田舎のさびれた古い小さな映画館。
 窓口の前に立っていた色の白いやせた若い男からチケットを買い母はトイレに入って行った。
 タイツが伝線したからさっき買ったのに履き替えてくる、と言い残して。
 とにかくどこへ行くにも何をするにも長く待たせるのが倣いの母だったので、僕は待つのには慣れていた。
 ポイントは知らな・・・

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残骸(ゴミ)

18/04/20 コメント:0件 sandie 閲覧数:133

正味5分で処理が決まる

面接試験で値踏みされるときは

せめて盗んだ水仙の花束で武装する

自前のみすぼらしいひなぎくなど引っ込めて

決してちらつかせないようにして。



嘲笑めいたほのめかしの口調で

歳の近い養父との関係を尋ねられても

うろたえはしない

恥じたりなんかしないけれ・・・

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立つ鳥跡を濁さず

18/01/09 コメント:1件 sandie 閲覧数:340

 夕方、始発駅で停車中の車内。
 座席はちょうど人で埋まった程度の混み具合だった。

 座れたことに安堵しつつ、中吊り広告など見上げてぼーっとしていると、車両連結部のドアが開いて、一人の小柄な年配の男性(推定65〜75歳)が入って来た。
 ドカジャンというのだろうか。作業服の上から防寒のアウターを着込んでおり、赤らんだ顔、手ぶらのようすでポケットに手を突っ込みふらりふらりと・・・

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Hearts

17/12/21 コメント:0件 sandie 閲覧数:289

 まともじゃなかった、僕は。ずっと部屋にうずくまってた。外の世界は眩しすぎる。僕は出来損ないだから。生まれつき色素が足りないアルビノ。皮膚のメラニンをつくる能力がない僕はてっぺんからつまさきまで本当に白い。
 小学四年生までは通学していた。孤独を習得するためだけに。唯一、赤茶色の目をした僕を、ウサギ君と呼ぶ音楽の若い女の先生が好きだった。あの日の放課後、音楽室でグランドピアノを弾いていた先生・・・

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あとすこしだけ

17/12/20 コメント:0件 sandie 閲覧数:275

部屋のノブが回る。ドアが開く。
シンデレラの魔法はとうに解けてしまった時間。今夜も。
「おかえり」
俺はりんごの皮を剥きながら顔を上げずにつぶやく。
先に寝てろって言ってるだろ、いつも。
そうだね、でも眠れない。
 
一人で寝るのは寂しいと拗ねてみせる時期はとっくの昔に過ぎてる。身にしみてわかってる。
一人寝が苦手だ。眠りは死への入り口って言うだろ?・・・

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桜メール

17/11/16 コメント:0件 sandie 閲覧数:303

 この度は、お父さんがガンで亡くなったとのこと、メールで知り驚きました。
 モルヒネで痛みを抑えているあいだじゅううわ言を繰り返されたのですね。
 終戦直後生まれは決してはやい死でないとはいえ、遠く離れた四国から都心の病院まで駆けつけ、最期を見届けたSさん。
 ご心労のほどお察し申し上げます。

 私は思っていました。毎年届く年賀状に大きくプリントされたほんのり桜色の・・・

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やまとなでしこ

17/10/11 コメント:0件 sandie 閲覧数:312

「佳乃、ちょっと話がある。入るぞ」

「今晩はもうよしていただけない。明日の支度がありますから」

「そんなもの、話を聞きながらでもできるだろう」

「ご冗談でしょ。朝一に英学の小試験を控える身です。もういっぺんらっておきたいの。そうでなくても今日は誰かさんの連れていらしたお客のお相手を強いられて、ずいぶん無為に過ごしてしまったことだし」

「へらず・・・

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モグラと少年

17/10/11 コメント:0件 sandie 閲覧数:319




土の中からヒョッコリ

顔をのぞかせたモグラ

日光浴してみようかなんて

柄にもなく

そう 柄にもなく




はじめて浴びた8月の陽射しは

容赦なく烈しくて

目がつぶれたモグラ

のたうちまわる

ひとたまりもなく

そう ひと・・・

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髪結い

17/09/23 コメント:0件 sandie 閲覧数:325

「お寒うございます。今朝もこちらへうかがう道すがら、橋の真ん中で雀が凍え死んでおりましたよ」

「おう、毎日足労であるな。おれも冬は大の苦手ゆえ、朝、床を出るのさえつらい。こうして日髪日剃ひがみひぞり)をきめ込まぬうちには、どうも身体がしゃんとせぬ」

「足労などとおっしゃっては。それが廻り髪結いの生業でございますゆえ――では失礼をいたしまして」

「しかし、ぬ・・・

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しろくんとオレンジちゃん

17/09/11 コメント:0件 sandie 閲覧数:312


――ああ、もうからだじゅうあっちこっち爛れて痛痒くてしかたねえな。尾びれも背びれもボロボロ、じっとしてることしかできないくらい熱もって疼きまくりだし。おまえもつらそうだな、オレンジ。ほかの奴らもみんないなくなっちまって…そろそろ俺たちの番かなあ。

――ん……。

――なあ、覚えてるはじめてここへ来た時のこと? 2年前、俺たちまだ赤ん坊だった。狭くて窮屈なビニール袋・・・

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バナナミルク

17/08/10 コメント:0件 sandie 閲覧数:320

 たとえばあの時。

 まともじゃなかった僕は。
 来る日も来る日も閉塞した自室にこもり、締め切った遮光性のカーテンから一すじの光が差し込むこともない澱んだ暗がりの中、誰とも目を合わさず口もきかず心を許さず。ネットの箱の中でのみ通用する言語すら疎ましく、白々とした死体画像を延々と映し出すスクリーンの下でまばたきすることすら億劫だった。

 のびた髪も伸びた爪もひきちぎ・・・

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trip

17/07/20 コメント:0件 sandie 閲覧数:365

 あとは406号室か、智は踊り場から向かい合わせに建つ四号棟を見た。
 薄汚れた年代物の社宅である。当世風の瀟洒なマンションなどが周囲に立ち並ぶ中、くすんだ外壁の社宅はいかにも前世紀の遺物めいている。
 だが、部屋の窓には灯りがともり夕食時の和やかな活気があたりの空気にも満ちていた。食器のガチャガチャとぶつかり合う音、香ばしい焼き魚の匂い、テレビをみている子どもの笑い声。そんなものが漂・・・

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白昼夢

17/07/12 コメント:0件 sandie 閲覧数:336

あたたかな春の午後。
新居はぬくぬく日当たりが良く、リビングの床に寝そべる満ち足りた飼い猫一匹。
突然の訪問者にとび起きる。
電話工事?
ああそうでした、お願いします。

人懐こそうな笑顔を中に通す。
玄関ドアを即ロックした僕に、「カギは開けたままで。道具を取りに出たり入ったりしますので」。
すみません、目を伏せ思わず口ごもる僕。
「癖なんです・・・

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MY LOVE LIFE

17/06/21 コメント:3件 sandie 閲覧数:682

『今日は遅くなります。夕飯は冷蔵庫の中。お父さんもどうせまた遅いでしょうから、先にレンジで温めて食べること。薬も飲み忘れないようにね。戸締りをして、夜更かししないで寝なさい。』

 正午すぎに起き出し、テーブルの上のメモに目を走らせたあと、誰もいないキッチンで僕は新聞をみていた。いつもと同じように。
 テレビ番組の欄からめくっていって何面目かで目が留まる。下半分のカラー写真。

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R

17/06/12 コメント:1件 sandie 閲覧数:454

初夏の陽射しがギラギラと眩しかった。潮のにおいとうねる波のざわめき。灼けた熱い砂の上にしゃがみこんだ息子のRは目の前いっぱいに広がる海を睨んでいる。生まれて初めて目にした海は三才のRにとってあまりにも大きすぎたのだろう。はかり知れない強い磁力のような波が迫ってくる畏れにひたすら圧倒されている。同時にうずうずと呼び覚まされる衝動が沸き上がっているはず。この「おおきさ」を自分のものにしたい――私だって・・・

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