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木野太景さん

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投稿済みの記事一覧

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《舟歌》(安楽組曲ニ短調2099年より)

17/05/22 コメント:0件 木野太景 閲覧数:36

何も無い明るい所だった。私と朽ち始めたクラシックギターの他は。膝に乗せて抱いた。目を閉じ私の「内に在る空間」に立った。

  静謐に立つ。

ポロン

指から伝わる振動が回路を反響し、音の粒子が空間に舞った。

  波紋が広がり薄く水が張られる。動くと水紋が形を変える。

ルルル-ルルル-ルルル  

弦を反復して弾く。トレモ・・・

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スイーツを楽しむ腹

17/05/08 コメント:0件 木野太景 閲覧数:97

 午後、彼は散歩から帰ると、妻に分かるよう食卓テーブルの上に袋を置いた。定年退職後、散歩が日課になっている。
「ま、かわいい。三色うさぎ饅頭ですって」
 袋の中身を見た妻は、表情を明るくした。
「着替えてくる」
「でも二パックも」
 妻は、三つ入りのパックを両手に持って少し考えていたが、一パックだけ開けて皿を二つ出した。
 戻ってきた彼は、テーブルの上を見た。<・・・

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浦島太郎の哀しみ

17/04/24 コメント:0件 木野太景 閲覧数:118

 日が昇る頃、浦島太郎はひとり浜に座り、海の波打ち際を見ていた。大きな亀が浜に上がったが、彼が見たのは波だけだった。
 彼には昔、夫婦になろうと誓い合った娘がいた。しかし親たち周囲の者が認めなかった。耐え難い思いが増して溢れると、二人は抱き合う体を紐で結び、一つとなって海に向かった。ともに海に住めると信じたが、彼だけ浜に返された。
 彼は老いることを忘れた。月日が経ち、村に娘を知る者が・・・

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怒った電車

17/04/10 コメント:0件 木野太景 閲覧数:99

 金曜日の夜、停車している終電車に、若い女性がふらりと近寄った。職場の飲み会に最後まで参加したらしく、随分酔っている。
 これから先のことは誰のせいでもない。ただ飲みすぎた酒が、彼女と電車を喧嘩させてしまった結果である。
「お前、何で毎朝、満員電車なんだ!」
 彼女は車体の側面を蹴飛ばした。
「うっ」
 呻く声がした。電車でも横腹を蹴られれば痛い。
「け、蹴ると・・・

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喜び一番

17/03/21 コメント:0件 木野太景 閲覧数:146

 三月の暖かいある日、まだ十代の若い女性が、駅前広場のベンチの前でしゃがんでいた。春の風が吹くと、彼女の長い髪は自由に踊り、髪の結び目に添えられたアネモネの花飾りも一緒に揺れた。彼女は顔にかかる髪を鬱陶しそうに手で払いながら、地面の上の何かを探していた。
 数分前まで、彼女は嬉しかった。大学が休みの間に新しい春服や靴を少し揃えようと街で買い物をしていたら、あと一点しかない素敵なワンピースに出・・・

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隠し箱

17/03/11 コメント:0件 木野太景 閲覧数:140

 会社員のTさんは、都市伝説を演じてしまった。隠したいことがあった。彼は、その理由を列車の切符に例える。
 車掌がコンパートメントの扉を開け、切符を見せるように言う。不審に思われないよう、彼は、すぐにポケットから切符を出して見せる。「あなたは確かに男です」と言って車掌は去り、彼は安堵する。
 彼が望む行き先は、臆病者を拒む。何かに怯える者は、その行き先が書かれた切符を持てない。しかし、・・・

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自転車の共有

17/02/27 コメント:0件 木野太景 閲覧数:173

 南東アフリカの日差しの下、学校帰りの子どもたちが、自転車で赤土の道を並んで走っている。道の両脇に緑色の草と木が広がり、その景色の奥に山々が続く。快晴の空。この鮮やかな色彩の中で、子どもたちの制服の白いシャツが一番生き生きと輝いている。
 十年前、この光景は見られなかった。子どもたちの住む地域から最も近い町の学校までは距離があり、徒歩での通学は困難だった。アフリカの他の地域はいざ知らず、彼女・・・

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新宿の青空

17/02/06 コメント:1件 木野太景 閲覧数:272

 新宿の区立図書館から出てきた男性は、外の眩しさに顔をしかめた。
――冬でも晴れの日が多いな。青空が広がっている。
 上京して最初の冬を迎え、男性は空の色に驚いている。北海道出身の彼にとって、冬の空の色とは灰白色だ。
 男性は、仕事のため地名に関する調べ物をしており、休日の今朝は図書館で資料を集めていた。必要な本を借り終えたので、彼は、西新宿の馴染みの喫茶店へと向かった。晴れた外・・・

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鳥と男

17/01/29 コメント:0件 木野太景 閲覧数:164

 ある緑に囲まれた住宅街に、野鳥と触れ合うことをコンセプトにしたアパートがある。広い敷地内にイチジクの木が植えられ、鳥がその実を食べにやってくる。住人はベランダに餌台を置き、一年中鳥の声が絶えない。
 三階に住んでいた一人暮らしの男も、餌台を作りみかんを置いていた。彼は、餌台にビデオカメラとマイクも取り付けて、いつもやってくる三羽の小鳥たちの「興味深い」鳴き方を観察していた。
 八月。・・・

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17/01/08 コメント:0件 木野太景 閲覧数:239


もし
人間を
描くのに
必要な色を
使うとしたら
優しさの光だけ
反射する心を砕き
粉にして痛みに耐え
愛でのばし時間をかけ
できた絵の具を筆にとり
唇に両手の平に視線の先に
そっとのせるそれを繰り返す

絵の具のチューブが十九世紀
  画家を戸外に連れて
    風を見せた
      が<・・・

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若者の五分間

17/01/01 コメント:0件 木野太景 閲覧数:248

 先週、俺は大学で不思議な体験をした。十八年間の人生経験で、理解できることではなかった。
 月曜日の午後、基礎ゼミナールの個人面談のため、担当教員の研究室へ行った。いちいち癇に障る話し方をする女の教員で嫌だったが、一年次の必修科目なので我慢している。
 その日は、この気に入らない相手に「できない」を言わせてみようとした。子供じみた試みだった。
「先生は、手品で五分間を五日間くらい・・・

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