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野々小花さん

野々小花(ののしょうか)です。文化教室に通って、書く勉強をしています。

出没地
趣味
職業
性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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酢豚弁当の端にある

17/12/11 コメント:0件 野々小花 閲覧数:66

 大学を卒業して就職したが長くは続かなかった。半年で会社を辞めたあと、暎一はしばらくの間、自宅に引きこもった。深夜の弁当工場でアルバイトを始めたのは一年ほど前だ。鶏肉のミンチと細かく刻まれたキャベツとニラと長ネギを撹拌する機械の前で、暎一はただ立ってそれを見ている。
 機械に異常がないかとか、均等に混ざっているかとか、確認をするのが仕事なのだが、この一年の間に問題が起こったことはただの一度も・・・

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蔵の中

17/11/27 コメント:0件 野々小花 閲覧数:266

 物心ついた頃から、美織は母と二人で暮らしていた。
 その母が交通事故で亡くなったのは美織が小学校四年生のときだ。
 母方の祖父母の元へ引き取られることになり、母の故郷である朽川村に初めて足を踏み入れた。
 山陰地方にある周囲をぐるりと山で囲まれたその村は、まるで外の世界から切り離されたようだった。
 外灯ひとつなく、夜になれば村は漆黒の闇に包まれる。美織の知っている明るい・・・

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情熱と光のなかにいた

17/11/20 コメント:0件 野々小花 閲覧数:144

 子供の頃から、ドラマや映画を見るのが好きだった。テレビやスクリーンに映っている俳優と呼ばれるひと達に憧れた。自分ならもっと上手く演じることができる。もっと違った役への解釈やアプローチができる。そんな風に、生意気なことを思ってもいた。
 東京にある小さな劇団に入ったのは十九歳のとき。初めて舞台に立ったのはそれからしばらく経ってからだ。白粉や口紅ではなく、泥だらけのメイクを施した。自由を守るた・・・

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ルージュ

17/10/30 コメント:0件 野々小花 閲覧数:169

 雪乃が待ち合わせ場所に着いたのは午後一時だった。約束の時間まで、あと一時間は余裕がある。昨夜、場所と時間を指定するメッセージが莉子から届いた。昨日は学校で一度も会えなかった。クラスが離れているから仕方がない。
 メッセージの語尾にはハートマークが並んでいて、それを見た瞬間、雪乃は思わずスマートフォンをベッドの上へと投げ捨てていた。ひどく顔が熱い。叫びたくなるくらいに恥ずかしい。しばらくする・・・

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【エッセイ】Wの財布

17/10/23 コメント:4件 野々小花 閲覧数:313

 がま口の財布を手にしたのは二十三歳の頃だった。その少し前に、私は結婚して家計を預かる立場になっていた。生活費と自分の小遣いとをひとつの財布に入れて管理するのは、案外難しいことに気づいた。
 たとえば小遣いから千円を出して五百円のお釣りを貰ったとする。しばらくして財布を開けたとき、その五百円が小遣いとして使えるお金だったか生活費として使うぶんだったかが分からなくなっているのだ。レシートを全て・・・

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噤みの群れ

17/09/28 コメント:4件 野々小花 閲覧数:380

 あの事件が起ったのは、実咲が小学一年生の頃だった。近所の公園で、バラバラになった女性の遺体が見つかった。二週間後に廃材置き場で、その翌週にはスーパーの駐車場で、同じくバラバラになった遺体が発見された。逮捕されたのは、宇野清和という若い男だった。
 宇野は取り調べで罪を自供した。すでに、裁判で死刑が確定している。あの男が生きてこの町に戻ってくることはないとわかっている。それでもまだ、この町の・・・

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夜明けの約束

17/09/21 コメント:2件 野々小花 閲覧数:259

 自分の父親のことを、侑史は知らない。誰が父親なのか、母自身、わかっていなかったのかもしれない。母はそういうひとだった。小さな町の、駅前にある時代遅れのスナックで働いていた。客の男と関係ができると、侑史と暮らすアパートには、滅多に帰って来なくなった。
 男に夢中になると、子供の存在など忘れてしまうのだろう。度々、電気やガスや水道が止まった。滞納を知らせる通知書を握りしめて途方に暮れる。仕方な・・・

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完璧な上司

17/09/02 コメント:2件 野々小花 閲覧数:295

 高野課長はいつもヒールの高い靴を履いている。歩いても嫌な音がしないのはどうしてだろう。ゆっくりと歩くからかもしれない。私は履いたことがないからわからないけれど、上等な靴というのは、そういうものなのかもしれない。品の良いスーツが似合っている。毎日ヘアメイクもしっかりとしている。
 私とは、何もかもが違う。入社してから二年、ずっと無難な服を着まわしている。髪はひとつにまとめただけ。メイクはいつ・・・

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朱夏の償い

17/08/27 コメント:4件 野々小花 閲覧数:273

 第三次世界大戦が始まったのは、あの昭和の戦争が終ってから、ちょうど九十年目のことだった。
 当時、僕は大学生になったばかりで、将来は教職に就きたいと考えていた。自分が得た知識を伝えたい。子供たちに学ぶことの素晴らしさを知ってもらいたい。そういう、夢を持っていた。

 三年が経っても、戦争は終結する気配を見せなかった。男たちが兵隊として次々と駆り出されていく。僕は最高学府にいたお・・・

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上手にその手を離せるように

17/08/13 コメント:2件 野々小花 閲覧数:408

 暖かい手に繋がれていた記憶がある。まだ小学校に上がる前。養護施設「くすのき園」の園長先生が、化粧っ気のない顔で微笑んでいる。
 周りの皆には、時々、お父さんやお母さんが会いに来てくれる。私には誰も来ないけれど、園長先生がいるから平気。手を、しっかりと繋いでいてくれる。それだけで、私は安心できた。

 カーテンの開く気配で目が覚めた。三歳になる娘の陽菜が、おぼつかない手つきでカー・・・

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檻の家

17/08/08 コメント:2件 野々小花 閲覧数:264

 朝の五時に、私の一日は始まる。早起きは子供の頃からの習慣だ。二十九歳になった今でも、それは変わらない。夫を起こさないように静かにベッドが降から降りた。隣のベビーベッドでは、もうすぐ二歳になる息子の翔汰が気持ち良さそうに寝息を立てている。
 寝室を出て、洗濯機のスイッチを入れた。洗濯が終わるまでに、洗面台を磨き、風呂掃除をする。玄関、台所、リビングも、順番に掃除していく。家中の床に掃除機をか・・・

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river

17/07/27 コメント:4件 野々小花 閲覧数:373

 中学三年の夏休み、僕は誰とも遊ぶ気分になれなかった。黙々と机に向かい、宿題を片付けていく。最後に、作文だけが残った。テーマは「旅」だ。クラスの皆は、家族旅行の話でも書くのだろう。そこには、楽しい思い出が綴られているはずだ。でも、僕にはそんな作文は書けない。
 夏休みに入ってすぐ、僕の名前は変わった。両親の離婚に伴い、母親の旧姓を名乗ることになった。十三年間「杉原秀一」だった僕は、一週間前か・・・

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顔のない隣人

17/01/31 コメント:0件 野々小花 閲覧数:392

 午前0時になると、隣人はベランダで煙草を吸う。壁の薄いマンション。窓を開けてベランダに出たな、と気配でわかる。私も追いかけるようにしてベランダへ出る。安物のサンダルを履き、脇に置かれたほうきを手に取る。
 カチッとライターの音がして、すぐに煙のにおいが夜の風に混ざって流れてきた。冬のつめたい空気と一緒に、肺の中に入ってくる。むせそうになるのをこらえ、私は乱暴な手つきで掃除を始める。ザッザッ・・・

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【エッセイ】 つめたい背中

17/01/16 コメント:3件 野々小花 閲覧数:339

 年の瀬になると、決まってある光景を思い出す。
 私は小学校の低学年だった。冬休み、近くに住む祖父母の家に泊まりに来ていた。離れで暮らす、二つ年下の従妹と遊ぶためだ。
 古い大きな家には、畳の部屋がいくつもあった。中庭や、白い壁の蔵や、昔は馬がいたという小屋もあった。子どもにとっては、良い遊び場である。中庭にある黒板に絵を描いたり、蔵の中をのぞいたりして、その日も夜遅くまで、私は従妹と・・・

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五分間の継承

17/01/02 コメント:0件 野々小花 閲覧数:432

 冬の都大路に、全国高等学校駅伝競走大会のスタートを告げる号砲が響いた。
 一斉に、各都道府県の一区の選手たちが飛び出して行くのを、アンカーである津田将人は、最後の中継地点のモニター越しに確認した。
 一年生でありながら、最終区を任された。異を唱える者はいなかった。それだけの実力が将人にはあった。幼い頃から、常に同世代の先頭を走ってきた。他人の走りに興味はない。目に留まるようなランナー・・・

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【エッセイ】 残る日々

16/12/19 コメント:0件 野々小花 閲覧数:506

 元夫の父親が経営する店を、結婚しているあいだ、私も手伝っていた。日本に出稼ぎに来ているブラジル人向けの店である。食料品が主で、店の大きさはコンビニと同じくらい。レジはひとつだった。
 当時、私は彼らの言葉がまったくわからなかった。それなのに、無謀にもそのたったひとつのレジを担当していたのである。バーコードを通せば値段は表示されるから、私はとにかくニコニコしてその金額を指さしていた。
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【エッセイ】 ふたりのクリスマス

16/12/17 コメント:6件 野々小花 閲覧数:420

 幼稚園に通っていたころ、近所に神戸から引っ越してきた家族があった。両親と姉、兄、妹の三人きょうだいであった。末の女の子は私と同い年で、幼稚園も私と同じ所に通うのだという。
「家が近いんだし、お話してみたら」
 母にそう言われて、翌日、私は幼稚園で女の子に声をかけた。
「家、近いんだけど」
 口下手で、私はそれ以上なにも言えなかった。けれど、不安だったのだろう。私が発した愛・・・

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画家と踊り子

16/12/01 コメント:2件 野々小花 閲覧数:431

 町の中心に大きな美術館ができた。レンガ造りの真新しいその美術館には、世界各国の著名な画家たちの絵が飾られている。
 町のはずれに住む画家のドラントは、その絵の数々を一度も見ていない。今日食べるパンにも困る生活なのだ。入館料を払う余裕はない。
 代わりに、美術館の絵を描いている。噴水がある広場のベンチに腰掛け、そこから見える美術館の、外壁のレンガに這う蔦の葉を一枚ずつ丁寧にスケッチして・・・

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悔いる言葉

16/11/21 コメント:2件 野々小花 閲覧数:383

 着古した部屋着のまま、和樹は一人暮らしをしているアパートの部屋を出た。
 人目を避けるように、うつむき加減でコンビニへ向かう。他人の視線が気にりはじめたのは、仕事を辞めてからだ。
 大学卒業後、そこそこの企業に就職できた。配属された部署は忙しく、無理をしている自分に気づかなかった。
 ある日突然、ぷつりと糸は切れた。限界を超えてしまったのだ。
 無職になった自分は、周囲か・・・

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マッチョ・ビーンの綻び緩び

16/10/19 コメント:4件 野々小花 閲覧数:706

 仕事から帰宅すると、響子はすぐにテレビのスイッチを入れた。
 毎週見ているお笑い番組「今と昔をエヘヘと笑う」が、ちょうど始まる時間なのだ。
 オープニングから、番組は賑やかに進んでいく。
 カラフルなセットを背景に、ボケて、ツッコんで、笑いが起こる。演者は楽しそうだ。観覧席の笑い声も聞こえてくる。
 だけど、響子は笑わない。笑うために見ていないし、そもそも、お笑いのことは・・・

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【エッセイ】 帰る場所

16/10/17 コメント:6件 野々小花 閲覧数:867

 結婚してすぐ、新築のマンションを購入した。常駐の管理人が共用部分の掃除や中庭の草木の手入れをしてくれるおかげで、エントランスはいつもぴかぴかだった。
 ゴミはもちろん、落ち葉や、枯れた草花を目にすることもなく、生活の匂いを感じないマンションであった。
 気づくと、散歩が日課になっていた。知らない町を歩くのが楽しかったのだ。駅へ行く近道を見つけたときは嬉しかったし、昔ながらの商店街や古・・・

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