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PineLeaf723さん

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投稿済みの記事一覧

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幻の野菜

17/03/13 コメント:0件 PineLeaf723 閲覧数:340

「こちらが本日のメインディッシュになります」
 オーナーが自ら皿をサーブしてくれた。私と父の前へ、丁寧に一皿づつ。
 どんな凝った料理が出てくるかと思いきや、櫛形にカットされた見慣れぬ果実が載るのみだ。
 車椅子から身を乗り出さんばかりにして、父が目を見開いている。政府の要職を歴任し、世界中の美食を味わい尽くしたはずの父がだ。
「君、これは『トマト』ではないかね」
 ・・・

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新宿駅で待ち合わせ

17/02/10 コメント:2件 PineLeaf723 閲覧数:564

 降車場は巨大な建物の中だった。
 長野発の高速バス。終点は新宿駅のはず。閑散としたフロアに取り残され、やっと私は思い至った。ここ、去年に鳴物入りで完成したターミナルビルだ。
 外へ出ようと階段を下りたが、降りすぎて地下に潜ってしまったらしい。完全に迷い、待ち合わせしている親友に助けを求めた。
『うそ、もう着いたの。何番?』
 見たこともない場所だとLINEに返すと、

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管理人の業務とは

17/01/26 コメント:0件 PineLeaf723 閲覧数:369

 そのアパートは二階建てだった。しかも横方向には窓が三つ。つまり三部屋のみ。どう考えても、目指す304号室は存在しない。
「おかしいな」夕暮れに白い息を吐きつつ、俺は看板を二度見する。
 卒業以来、十数年ぶりに中学時代の同級生から年賀状が届いた。『遊びに来ませんか。相談があります』だそうだ。差出人がこいつでなければ、連絡など取らなかったろう。
 手土産のワイン瓶を握り直し、ひとま・・・

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翼をください

17/01/13 コメント:0件 PineLeaf723 閲覧数:387

 まだ生まれたてだった僕らに、彼女は母親としての霊感で、それぞれの特質にぴったりの名前をつけた。
 僕は『健』と書いてケン、双子の弟は『優』でユウ。
 健康も優しさも人には必須の資質らしいが、彼女が欲したのは優しさだけだ。

「ユウは優しい子ね」
 夜の仕事から帰宅すると、薬で眠るユウを朝まで見守るのが彼女の日課だ。数年前に離婚してからは特に、ユウを愛でる以外、食事の・・・

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目覚めよ、と彼女はペンチを捧げ

16/12/26 コメント:0件 PineLeaf723 閲覧数:397

 美女と意気投合し、二人で合コンを抜けだした。肩に手を回した瞬間、ベル音に叩き起こされる。
「ぐ。いいところで……」
 あと五分、と手探りで目覚まし時計を止めた瞬間、ガチャリと不穏な音がした。
「おはようごさいます、先輩」
 愛想と抑揚のない、喋る自動販売機みたいな声音。布団をのけると、顔をのぞき込んでいる白衣の女と目が合った。
「うわ、びっくりした」跳ね起きた。大学・・・

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聖夜の100ストーリーズ

16/12/11 コメント:0件 PineLeaf723 閲覧数:354

 息するように嘘をつく。それが私の生業だ。
 八歳の息子が『サンタはママなら、プレゼントいらない』と拙い嘘をつくので、プロの嘘を披露した。
「本物のサンタにお願いしたいのか。なら相応の手順を踏まないと」
「ママ、知ってるの?」
 コタツで背を丸める息子のユウが、すがるように見上げてきた。

 必要なのは百本の蝋燭。ちょうど毎年のケーキのおまけが大量に余っている。・・・

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猫のいる風景展

16/12/05 コメント:0件 PineLeaf723 閲覧数:329

「売れる企画を出せ。チケットが売れ、図録が売れ、グッズが売れる企画を出せ」
 脱赤字の会議で館長がキレた。
「客の興味を惹き、クチコミを拡散させる企画を出せ。死に物狂いで。さもなくば倒産だ」

 倒産は困る。小さな美術館だが、この不景気に学芸員の勤め先は貴重だ。
「でも、企画といっても予算もないし……」
 ぼやきつつ私は外に出た。経費節約のため、落ち葉掃除だって・・・

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逃走列車

16/11/16 コメント:2件 PineLeaf723 閲覧数:389

 その長い列車は僕を迎えにくる。
 いつだって、どんな場所にだって。

 登校途中の混雑したバス停で、男が女に絡んでいた。
 僕は呼吸ができなくなった。無性に腹が立っていた。朝から泥酔する男にも、見て見ぬふりをする大人たちにも、それから……。
 低い遠雷のように、列車の近づく音が響き始める。僕はバス待ちの列を離れ、男に蹴りを入れた。ふいを突かれて転んだ酔っ払いに、もう・・・

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平和は白い湯気の中

16/10/28 コメント:0件 PineLeaf723 閲覧数:309

 腹を割って話すなら、一緒にメシを食うに限る。
 あちこちから香ばしい匂いの漂ってくる昼時、俺とNは大学を抜けだし繁華街を歩いていた。
 顔を合わせてから、まだ互いに一言も喋っていない。ケンカの原因は瑣末な出来事で、要はどちらが先に謝るか。だが話は瑣末であっても、そう簡単に頭など下げられるものではない。男のメンツの問題なのだ。
 大盛りで有名な焼肉店を嗅覚にとらえ、二人して吸い寄・・・

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ずんだ餅のゆくえ

16/10/10 コメント:0件 PineLeaf723 閲覧数:387

 枝豆農家の人々が見守る中、マスク姿の青年二人が、ずんだ餅の詰まった段ボール箱を軽トラックに積み終えた。
 村長が声をかけた。
「高く買ってもらえて感謝しとるよ。師匠さんも弟子くんも、元気でな」
「これ、車の中で仲良く食べてちょうだい」
 村長夫人が青年たちにパック容器を手渡した。箱詰めで余った、ずんだ餅だ。
「短い間でしたが、お世話になりました」
「おばちゃん・・・

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