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文月めぐさん

第144回時空モノガタリ文学賞【事件】にて、入賞をいただきました!拙い文章ではありますがよろしくお願いします。コメントもできるだけ書いていこうと思います。Twitter→@FuDuKi_MeGu

出没地 図書館
趣味 読書、お絵かき、手芸、料理
職業
性別 女性
将来の夢 作家
座右の銘 失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければ、それは成功になる。

投稿済みの記事一覧

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コーヒーフロートの君

18/05/03 コメント:2件 文月めぐ 閲覧数:157

 祐介、と名前を呼ばれてびくっとした。喫茶店でバイトを始めて三か月、知り合いがやって来ることはなかった。だけどこの店は地元では有名だから、誰かに会うことはやはり避けられない。
 声の主の純とは高校が同じだった。大学は東京だったが就職して地元に戻ったのか。
 ぴしりとスーツを着こなし、手には大きな鞄を提げている。俺は注文を取るため彼のもとに向かった。
 「お前ここで働いてんの?」<・・・

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過去の言動はゴミとして捨てることはできないのだ

18/04/14 コメント:3件 文月めぐ 閲覧数:183

 人生の中で後悔していること、誰にでも一つはあるだろう。私も、もちろんある。しかし、一番大きな後悔と言えば、やはり小学一年生のあの出来事だ。
 小学校に入り、すぐに仲良くなった友達の京子ちゃん、真央ちゃん、彩ちゃんとはいつも一緒にいた。
 私たちはおとなしい子どもたちの集団だった。真央ちゃんは絵が得意。彩ちゃんはピアノ、京子ちゃんは読書が好きだった。私は書道を習っていて、自慢できること・・・

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復讐のお味はいかが?

18/03/06 コメント:2件 文月めぐ 閲覧数:350

 からんころんとドアベルが鳴れば、どんな作業をしていても入口に目を向けて笑顔で「いらっしゃいませ」と挨拶する。それは五年前、この「つけ麺藤吉」を開いた時からずっと続けていることだ。そう、たとえ相手がどんなに無礼なお客様であっても。

 「いらっしゃいませ」入口に笑顔を向けても、その男性二人組は僕の言葉など全く聞こえていないかのように、会話を続けている。そんなことは日常茶飯事だ。だけど、・・・

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報酬は春告草

18/02/18 コメント:0件 文月めぐ 閲覧数:333

 二月下旬、まだまだ寒いが、もうこのあたりでは雪は降らないんじゃないか――春への期待が高まるこの時期。俺の心に降り積もっていた雪も、徐々に解けて、陽が差してきた。
 大きな生命保険の契約が決まった。新規のお客様で、ここまで額が大きいと、緊張もするし、変な高揚感がある。震える手でタッチパネルを操作して、契約を進めていくが、汗ばんだ手から何度もタッチペンが落ちそうになった。
 ずっと営業が・・・

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こがねいろ――弁当が示す一筋の光

17/11/21 コメント:2件 文月めぐ 閲覧数:553

 営業先の企業から一歩外に出ると、俺はたまっていた息をはああ、と盛大に吐き出した。アスファルトからの熱気と、蝉の声が身体にまとわりつく。白いカッターシャツに太陽の光が反射して、まぶしい。外の暑さを感じた瞬間、肩に提げた鞄がぐっと重くなった。  片岡、と名乗った、先ほどの青年の顔を思い出す。どことなくぱっとしない、地味な顔つきと、感情表現に乏しい表情。俺の電卓にはじき出された「11000」という数・・・

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桜の木の下で、あなたとデートを

17/10/15 コメント:1件 文月めぐ 閲覧数:562

 よく、ドラマや映画で耳にする「余命」という言葉。その言葉が、俺の目の前に突き出されるなんて、想像もしていなかった。医師が言った「余命一年」はどんな言葉よりも重く、俺と桜子の前に立ちはだかった。

 季節は春。桜子が入院している病室の窓からは、病院の隣にある公園の桜並木がきれいに見えた。俺たちは狭い病室で小さなお花見会を開いた。桜子でも食べられるように、お弁当箱に小さなおにぎりをいくつ・・・

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事件の表裏――それぞれの葛藤

17/09/16 コメント:3件 文月めぐ 閲覧数:778

 「ない」と気づいたのは、職員室に戻ってしばらく経った後だった。隣の席の本郷先生が「七時か」とまだ明るい外を見ながら呟いた時だ。俺も時刻を確認して「ですね」とでも相槌を打とうとした時だ。
 腕時計が、ない。
 あの時、プールサイドに置いたじゃないか、と一瞬で思い出し、俺は慌ててプールめがけて走り出した。「松岡先生、廊下は走っちゃいけないよ」と暢気な本郷先生の声も、今の俺には届かない。<・・・

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黒板日記

17/08/05 コメント:3件 文月めぐ 閲覧数:604

 煉瓦造りが特徴のその古めかしい喫茶店は、僕が約十年前から行きつけにしている喫茶店だ。仕事でストレスがたまっていた当時、コーヒーの香りに誘われるようにふらりと立ち寄ってみたのだが、そのコーヒーがなんとも優しい味だった。それ以来、そこのコーヒーが病みつきになってしまったのだ。
 店名はひらがなで「おたべ」と書く。その名前はマスターの田部正樹さんの名前からとっている。
 僕が「おたべ」に通・・・

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冬空の旅人

17/07/08 コメント:1件 文月めぐ 閲覧数:535

 寒い寒い冬の空。星々は分厚い雲に覆われて、その光は地上へは届かない。夜になると北風が一層冷たく吹き、四人の旅人たちはコートの襟を掻き合わせ、少しでも風をよけようとした。
 先頭を歩く長男の淳一郎は、みんなの風よけになっているといいな、と思っていたが、身長が低いせいで、実際あまり役に立っていなかった。
 次男の康二郎は、後ろの二人がついてきているか、振り返りつつ歩いている。
 三・・・

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海からの奇跡

17/06/05 コメント:1件 文月めぐ 閲覧数:598

 私の一日は、窓を開けて、さわやかな海の香りを体一杯に満たすことから始まる。
 社会人一年目にして鬱病になってしまった私の日課だ。こうして波の音を聞きながら、一日の英気を養う。そして朝食をとると、海へ出ていく。
 会社が海のある四国の町で良かった。生まれも育ちも長野である私は、海に対するなじみはない。だけど、病気になってから気づいたんだ。海の香りや波の音はとても心地よい。
 そん・・・

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ある日の正義

17/04/24 コメント:2件 文月めぐ 閲覧数:489

 「正義感のある行動を心掛けましょう」とふいに聞こえた。今日の占いをアナウンサーが読んでいる。すでに見慣れた朝の光景である。俺はこれから朝ご飯を食べ、着替えて、自転車で高校へ向かう。
 今日は今学期最初の美術の授業があるから、絵の具セットを持って行かないといけないし、学校に着いたら、まず数学の松井先生のところへ行って、昨日の宿題を提出しなければならない。そんなことを一瞬のうちに考えていたら、・・・

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SWEET SMILE

17/04/15 コメント:4件 文月めぐ 閲覧数:730

 教室に入ってきた咲は、全身びしょ濡れだった。またトイレで水をかけられたのか、とうんざりした。上級生の棟にあるトイレを使えと言ったはずなのに。
 「濡れ狐」と誰かがぼそりと言うのが聞こえた。クスクスという笑い声も。「茶色い狐は山に帰れ」とはやし立てる声もある。咲の長い茶髪は、それだけで、いじめの対象になるには十分だった。小学生の時は仲良くしていたのに、中学校に入ったとたん、掌を裏返すかのよう・・・

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陸のいるか

17/02/01 コメント:4件 文月めぐ 閲覧数:519

 五月になって昼間は暑く感じられるようになってきたけど、夜になると闇が昼間の熱気を取り込んでしまったみたいで、少し肌寒い。だけど、一台の自転車に二人でまたがって、海斗くんの背中に寄りかかっていると、じわじわと体温が伝わってくるから、一人で自転車に乗っているよりあたたかい。
 周りに人影はなく、私たちの自転車のタイヤがコンクリートとこすれてしゃりしゃりと回転する音しか聞こえない。
 部活・・・

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五分の退屈と焦燥

16/12/07 コメント:2件 文月めぐ 閲覧数:638

 後ろの席で小川がふーっと大きく息を吐いた。開始したとたん聞こえ始めたシャーペンと紙のこすれる音はもうしない。みんな暇を持て余し、早く早くと時が過ぎるのを待っている。
 秒針が一秒一秒を刻む。
 テスト終了まで、まだ五分もある。
 長い、退屈。
 高校一年の二学期期末テスト二日目。教科は世界史。俺の得意科目だ。暖房が効きすぎている教室の中はむっとしていて、俺の頬にも熱がたま・・・

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クリスマスの海

16/11/21 コメント:0件 文月めぐ 閲覧数:565

 真冬なのにしっとりと汗を吸い込んだ胴着は、ずっしりと重い。世間はクリスマス一色というのに武道場は練習を終えた剣道部部員の疲れた表情で埋め尽くされている。しかし女子更衣室に一歩踏み込めば話は別。女子部員たちの会話には「クリスマス」があちこちにあふれている。
「クリスマスなのに午前は部活だし、午後はバイトでつぶれる」
「ケーキ屋さんでバイトなら稼ぎ時だもんね。しゃあないじゃん」
・・・

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平和の香り

16/10/15 コメント:2件 文月めぐ 閲覧数:630

 夕食時の帰宅はとても面白い。扉の向こうに漂う夕食のにおいは外まで漏れ出てきていて、あ、揚げ物のにおいがするな、と思ったら、こちらではマーボー豆腐か何か、中華の香りがするな、などとあれこれ推測できるから。で、肝心のうちの夕食は。
「サバの味噌煮、か」
 マンションのドアを開けた瞬間、見なくてもにおいでわかった。少し冷えてしまった身体を優しく包んでくれる、なんとも平和なその香り。料理が好・・・

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