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笹山ナオさん

twitter→ asterism0_toki ブログ『徒然なるままにインドア暮らし』はこちら→http://mihonono.blog.fc2.com/ 自作小説の話以外にも、ゲームの話や雑記も載せています。 SF(サイエンス・ファンタジー)やSF(すこしふしぎ)なんかを書いています。

出没地 五反田のカフェ
趣味 読書(純文学、ミステリー、SFを主に) 小説を書くこと(言うまでもなく) ゲーム(ペルソナストーカー)
職業
性別
将来の夢 猫になること
座右の銘 日替わり

投稿済みの記事一覧

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畜人談

17/06/29 コメント:1件 笹山ナオ 閲覧数:170

 私は暮らしているところから程近い公園に来ていた。週に一回、その公園の隅に佇む東洋風の質素な四阿の腰掛に座って、色々なことを考えたり、考えなかったりするのが私の習慣だった。私は生まれつき脚が悪かった。四阿のすぐ西側には広い湖があり、東側に据えてある腰掛に座っていると、湖の上から渡ってくる心地よい涼風が秋の匂いを運んでくる。夏の間は、身を焦がす日照りから四阿の陰に逃げ込んで、凪いだ湖面を眺望するのが・・・

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Aヘの想察

17/06/04 コメント:0件 笹山ナオ 閲覧数:197

 日が少し西に傾いたころ、晩夏の高い空は急に陰りはじめた。湿っぽさを急に感じた。
「雨の匂いがする」と妙織が言った。
「降る前に帰ろうか」と聞く私に、彼女は大丈夫だと答えた。私たちは買い物もそこそこに、行きつけの喫茶店に入った。
 間接照明がところどころに置かれ、空調の効いた店内は、客は少なくないが静かだった。小柄な初老のマスターにブレンドを二人分頼むと、私たちは奥の向かい席に座・・・

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ねえ見てる?伝わった?伝わったよね、私の気持ち。あのときは答えてくれなかったけど、今度は答えてくれるよね?じゃないと、私ね、あなたの弟さんをね、生贄にしなきゃいけないの。だからね、答えてくれる?ねえ、

17/05/18 コメント:0件 笹山ナオ 閲覧数:209

 あたしね、好きな人がいるの。ううん、好きだけじゃない、恋してるし、愛してる。
 もし彼のためにあたしが死ななければいけないとしたら、あたしはすぐにでも死んでみせるわ。ううん、それだけじゃない、彼のためになら、彼を殺したっていいの。
 それくらい好きなのよ。


 どこが好きかって聞かれると、あたしは困ってしまうの。だって、答えている間に逃げちゃう人とか、寝ちゃう人と・・・

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その階段を前に私は考えた。『

17/05/14 コメント:3件 笹山ナオ 閲覧数:477

 地下につながる階段は細長いビルの脇にあり、一見すると通り過ぎてしまいそうなほど目立たない看板がその階段口に立てられている。
 階段を降りて行き、突当りの扉を開けると、カランコロンとドアベルの音が静かに響き、空調の効いた店内が私を迎える。夏の眩しい陽光と雑踏の人だかりから逃れた私には、間接照明の穏やかな明かりと物静かな他の客に、無言で迎え入れられたように感じられ、すぐにその店に馴染み深いもの・・・

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黄金虫を探す人(々)

17/05/04 コメント:0件 笹山ナオ 閲覧数:175

『――今朝未明より、インターネットの大手企業のホームページや一般投稿サイト、掲示板などにおいて謎の文書が表示される問題が発生しています。高度なクラッキング技術をもつ者による行為と見られ、現在問題解決のため多くのサイトが閉鎖中になっております。
 また、同時に多くの地域で同じく謎の文書の印刷物が、新聞などに織り込まれる、道にばら撒かれているといった方法で配布されています。現在各自治体により回収・・・

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夕焼けの坂道

17/05/03 コメント:0件 笹山ナオ 閲覧数:246

 私は買い物のためにアパートを出た。
 昼は蒸して暑い日だったが、太陽が住宅街のずっと向こうに落ちはじめ、大きくてどっしりと構えた入道雲がその図体を朱色に染める頃になると、少し冷たい風が籠った熱を追い払い、坂道の多い住宅街は時の避暑地となった。原風景と言うと大げさだが、とにかく郷愁を誘うような、昔懐かしいような、少し青春の香りのする風景だった。
 アパート前は急な坂になっていて、スーパ・・・

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殺された小説事件

17/04/23 コメント:0件 笹山ナオ 閲覧数:207

「犯人は、この中にいます」
 絶海の孤島に佇む大富豪の別荘。その豪奢な屋敷は、今や嵐に捉えられ、誰の出入りも許されなかった。また屋敷内の電話線はことごとく切られ、携帯電話の電波も届かず、昨夜のうちに帰ることのできなかった人々は、物理的にも情報的にも、外部から完全に遮断されてしまっていた。

「今回の殺人事件は、私がこれまで関わったどの事件よりも難解で、複雑でした。その解決には私の・・・

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人生攻略本

17/04/16 コメント:1件 笹山ナオ 閲覧数:283

 男は本屋さんに来ていました。
 男の唯一の趣味は読書でした。日々の仕事で疲れた男を癒してくれるものは、現実を忘れ、たくさんの本に秘められた、たくさんの世界に浸ることでした。
 だからその日も男は、新しい世界を探して本屋さんに来ていました。
 天井まで届くほど高い本棚を眺めているうち、ある一冊の本の背表紙が、男の目に留まりました。
「『人生攻略本』」
 男は声に出して・・・

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宇宙服

17/03/23 コメント:0件 笹山ナオ 閲覧数:251

 都会の街に、ある老人がおりました。その老人はいつも、傍目からは奇妙な色のスーツを着ていることで、街の人々には有名でした。
 奇妙な色とは、形容しがたい色でした。黒に白、赤、青、黄、茶、それからアイリス、メドゥーズ、アランブラ、モーブ、ヘイズ、それからそれから海松茶、錆鉄御納戸、黒紅、象牙、蘇芳…とにかくありとあらゆる色んな色が点々と、星のように散りばめられたスーツを老人は着て、街の歩行者天・・・

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17/03/20 コメント:0件 笹山ナオ 閲覧数:260

 長かった夏が、ようやく終わりを迎えた頃。昼夜の気温差が開きはじめ、高くなっていく空の下、蝉のがなりたてる声は減っていき、桜の葉が色づき始めた頃。
 私は暮らしているところから程近い公園に来ていた。週に一回、その公園の隅に佇む東洋風の質素な四阿あずまやの腰掛に座って、色々なことを考えたり、考えなかったりするのが私の習慣だった。私は生まれつき脚が悪かった。四阿のすぐ西側には広い湖があり、東側に・・・

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望んだ失敗

17/03/16 コメント:2件 笹山ナオ 閲覧数:380

 まずはネットで情報を探る。薬か、縄か、転落か、はたまた集団か。どれをとってもリスクは避けられないし、必ず誰かに迷惑をかける。それでも、もう私には選択肢がなかった。
 最初に目をつけたのは薬だった。うまくいけば気づかぬうちに終わるらしい。だが思ったよりも量がいる。薬局では一度に多くを買うことができないし、出費もかさむ。できるだけ手元に金は残してやりたい。
 次に気になったのは転落。準備・・・

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真夏の電車の夢

17/03/16 コメント:0件 笹山ナオ 閲覧数:262

 将来の夢は――――だ。
 学校の宿題は「将来の夢」と言う題材で作文を書けというもので、僕は眼を輝かせながら何枚もの原稿用紙に夢を書き連ねた。将来の自分を想像しては顔をほころばせて、無邪気にクスクス笑った。そろそろあいつらが来る頃だろう。僕は鉛筆を学習机の上に放って、家を飛び出した。
 舗装もされていない、砂利道だらけの夏の坂道を自転車で下る。汗で貼りつくシャツの感触を拭うように、快い・・・

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海が見える人へ

17/02/19 コメント:0件 笹山ナオ 閲覧数:258

 僕の町は、海になろうとしていた。
 と、もし僕がビル街のど真ん中で叫びでもすると、それを聞いた人は「ああ、こいつの町は海に沈むのだろう」と思うかもしれない。事実最近の環境問題の一つとして海面の上昇はいつも挙げられるものだし、その影響で今にも地表が海に覆われつつある島もある。
 だが、僕の言う「僕の町は、海になろうとしていた」とは、勿論そういう事ではなく、言ってしまえば、今僕がオンボロ・・・

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遠い日に焼けた手紙

17/02/17 コメント:1件 笹山ナオ 閲覧数:292

 その頃は、携帯電話はおろか固定電話すら普及していない時代で、私と彼は手紙でやり取りするしかなかった。

 初めて彼と会ったのは、私が異国のあの町に越した時で、彼はお隣の家の奔放で、しかし紳士的な子だった。肌が白く、金髪の私の容貌に、彼ははじめ驚いていた。私は嫌われるだろうかと思ったが、彼はすぐに笑顔を作って、こんにちはと言った。

 その町で最初に遊んだのも彼だった。朝か・・・

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再生

17/02/10 コメント:0件 笹山ナオ 閲覧数:246

 気道が圧迫されても必死に呼吸しようとする喘ぎの苦しさは、思い出しただけでも息が詰まるように感じる。体重がかかった喉頭にはネクタイの索条痕が残っているし、うなじのあたりは寝違えたような痛みが続いている。意識では抑えきれずに脚は暴れ、その時に打った内出血の跡がまだ右足首に残っている。
 三度の試みに体重を支え切れずついに壊れたハンガーラックを傍目に、僕はただ頭を抱えることしかできなかった。何を・・・

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読むな。

17/02/04 コメント:2件 笹山ナオ 閲覧数:300

 なあお前、今僕を読んでるだろ?
 悪いことは言わない、今すぐ読むのをやめるんだ。今すぐだ。
 これ以上僕を読まないでくれ。いいか、絶対だ。

 ……。
 まだ読んでるのか?
 え? 『お前』って誰のことかって?
 『お前』ってそりゃあ、ちょうど今、パソコンなりスマホなり、あるいはタブレットなりで僕を読んでる、画面の前のお前のことさ。

 え?・・・

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