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奈尚さん

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将来の夢
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投稿済みの記事一覧

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エンは異なもの

17/07/03 コメント:0件 奈尚 閲覧数:314

「ねえ、手伝ってくれない」
 夏の陽射しがまぶしい無人駅で、麦わら帽子の女性にそう声をかけられた。足元には大きな荷物。見かけない顔だ。
「いいですよ」
 ちょうど予定もなく、暇していたところだった。退屈しのぎに綺麗なお姉さんと散歩。悪くない。二つ返事で引き受けた。

「引っ越してきたんですか」
 ずっしりと重い旅行鞄を背負う。
「ええ。昔、ここに住んでいた・・・

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リ・ボーン

17/06/17 コメント:0件 奈尚 閲覧数:317

 ごぼごぼと耳の横であぶくがはじけた。
 頭のてっぺんからつま先まで、一つの大きな液体に包まれる。
 涙よりも、血よりも濃い生命の水。思わず大きく口を開け、身体の隅々までその液体で満たしてしまいたくなる。
 太陽と海底。納戸色の美しいグラデーション。陽の破片が海面に満ち、水中を優しく照らしている。
 その中にゆらりと広がる白いワンピース。長い亜麻色の毛髪が、白い布の上でまる・・・

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334なんて言わないで

17/01/23 コメント:3件 奈尚 閲覧数:499

 大学を出て、東京の会社に就職した。
 地元を出るのは初めてだった。右も左も分からない駅で、見た事もない人混みにもまれ。やっとの思いで、借りる予定の格安マンションにたどり着いた頃には、ゼェゼェと肩で息をしていた。
「……304号室」
 管理室で受け取った鍵と、目の前の部屋番号とを見比べる。確かにここだ。値段相応の古ぼけた扉。駅で経験した殺人的な混雑が脳裏に浮かんだ。本当に、ここで・・・

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消失のサンタ

16/12/19 コメント:5件 奈尚 閲覧数:900

 昨夜見た夢の話だ。羽の生えた少女が現れて、まっすぐ私を指さし言った。
 あなた、サンタクロースにおなりなさい、と。

「そういえば今日はクリスマスイブだっけ」
 顔を洗いながら、鏡越しにカレンダーを確認する。社会人となり一人暮らしを始めてからというもの、すっかり行事というものに注意を払わなくなってしまっていた。
(なんであんな夢を見たんだろう。サンタなんて柄でもない・・・

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あばよは二度は言わせない

16/11/21 コメント:1件 奈尚 閲覧数:382

「いよいよ貴様も年貢の納め時だな! 怪盗コウモリ」
 豪奢な屋敷のパーティルーム。その床がぱっくりと割れて、きらびやかな部屋の様子にそぐわない落とし穴を形成している。無様にも穴に落ちた怪盗を前に、刑事は高らかに笑った。
「神出鬼没、狙った獲物は逃がさないとうたわれたお前も、このカラクリ屋敷からは抜け出せなかったとみえる」
「フッ、せいぜい今のうちに喜んでおきたまえ」
 嘲笑・・・

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さよならぼくのクマ

16/11/07 コメント:0件 奈尚 閲覧数:399

 澄んだ空気に星がきらめく、ある晴れた夜。一人の男が鼻歌を歌いながら帰宅した。
「お帰りなさい。ごきげんね」
 出迎えた妻が苦笑するくらい、男ははしゃいでいた。
「一つ、大きな契約を取りつけたんだ。上司も俺を褒めちぎってくれてさ。――和哉はどうした。もう寝たのか?」
 四歳になる息子の名前を呼ぶ。いつもならすぐ足にまとわりついてくるのに、今日は姿を見せようとしない。
・・・

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ドーナツを覗いたら何が見える

16/10/20 コメント:7件 奈尚 閲覧数:1050

「なあツナ。ドーナツって穴を残したまま食えるかな」
「はあ? なんだよ、急に」
 ぽかんとする俺をよそに、ウドはまじめな顔でドーナツをほおばった。
「問答だよ。なぞなぞ。穴って事は、そこには何もないんだろう? ないものは食えるはずがない。なのにドーナツがなくなると、その穴までなくなっちまう。穴を残して、ドーナツだけ食う方法はあるだろうか」
「馬鹿か。そんな事できるわけねえだ・・・

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杉の木は見ていた

16/10/07 コメント:0件 奈尚 閲覧数:562

「神社の大杉、今月一杯で伐採されるらしいよ」
 幼なじみの七瀬がそう呟いた時には、一瞬、何のことを言っているのかわからなかった。
「根本に大きなうろのある、杉の木。小さい時、近くでよく遊んだでしょう」
 ああ、そういえば、あった。天まで突きそうな、神様のような大杉が。
 なんでも、あの杉は御神木として長く愛されてきたが、最近、根本や幹がもろくなってきてしまった。事故が起こら・・・

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本日は踊りたい気分

16/10/02 コメント:4件 奈尚 閲覧数:619

 六か月前に八十七歳の誕生日を迎えた。こんな高齢になる日が来るなんて、冗談みたいに思っていた矢先だった。
 五週間前に階段ですべって、右足首の骨を折った。思ったより骨がもろくなっていたらしい。
 四日前に医師の再診を受けた。元通りにくっつけるのは、やはり難しいそうだ。筋肉まで衰えないよう、欠かさずリハビリをしなさいと言われたが、正直あまり気が進まない。
 三時間前に、遠くに住む妹・・・

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山姥の食卓

16/09/11 コメント:3件 奈尚 閲覧数:1187

「期待を見事に裏切られたねえ、これは」
 よく研いだ包丁を片手に、山姥は大きなため息をついた。
 人けのない山奥。山姥はここで、道に迷った人間を襲い、喰らっていた。動物も喰うが、人間が一番旨く、腹持ちがする。なかなか手に入らない分、人間はご馳走なのだ。
 久しぶりに一組の家族が山に入ったのを見つけ、喜び勇んで追ってきたのだが。
「まさかこんな幼子一人置いて、両親だけさっさと・・・

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ヘルメスの嘲笑

16/09/09 コメント:5件 奈尚 閲覧数:1628

 深夜。舗装もされていない山道を、一台の車が猛スピードで走っていた。
 山登りに適しているとはとても言い難い、ありふれたごく普通の乗用車だ。デコボコの道に何度もタイヤを取られ、あっちに跳ね、こっちに滑りを繰り返しながら、それでも決してスピードをゆるめようとはしない。
 やがて、木陰に隠れるようにして建っていた小さな祠にぶち当たり、朽ちかけていたその屋根を吹っ飛ばしてやっと止まった。

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もし幽霊を作れたなら

16/08/21 コメント:6件 奈尚 閲覧数:1606

 やれやれ、またか。
 隣の実験室から盛大な爆発音が聞こえてきて、思索の時を邪魔された研究員のイースは深いため息をついた。
 毎日毎日、よくもまあ飽きないものだ。
 椅子に掛けてあった防塵・耐熱機能付きの白衣を身にまとい、部屋をのぞき込む。中では、体中すすだらけになったガトーが照れくさそうに頭をかいていた。
「ガトー。君は、僕の研究室を吹っ飛ばすつもりかい」
 呆れ声・・・

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明日になれば君と

16/08/20 コメント:0件 奈尚 閲覧数:584

「いやあ、ひどい揺れだったねえ」
「全くだ。魂消たよ」
 近所の住民達が、疲れた表情をしてぞろぞろと広場に集まってきた。皆着の身着のまま、枕やら本やらを抱きしめている。
 俺も、よれよれのパジャマ姿で所在なくそこに立っていた。腕にはいつの間に抱き上げたのか、飼い犬がすっぽり収まって不安そうにしている。
「ここは、もともと火山島だからな。地震が起きやすいんだ」
「電気の・・・

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願掛け蕎麦

16/07/03 コメント:2件 奈尚 閲覧数:597

 日が傾き始めた。
 一日の終わりを示す夕焼けが、仕事始めの合図になる者もいる。蕎麦打ちの平蔵も、その一人だ。いつも通り屋台に『夜鷹蕎麦』の暖簾をかけると、平蔵は『二八』と書かれた提灯に火を入れた。小さいながらも、店を始めて早三十余年。今では、彼の作る蕎麦の味を慕って遠方から来てくれる客も少なくない。
 どっぷりと暮れて川の対岸も見えなくなる頃。まばらにあった客足がついと途切れ一息つい・・・

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狐と嫁入り

16/06/19 コメント:0件 奈尚 閲覧数:966

 幼なじみのササメは、ひどい雨女だ。
「やっぱり、雨になっちゃったね」
 激しく窓を叩く雨を眺めながら、私は笑った。隣でササメはひどく申し訳なさそうにしている。
「私を呼ばない方がよかったんじゃない。せっかくの結婚式なのに」
 そう、結婚式。主役の私は白無垢に身を包み、式の開始を今か今かと待っている。けれど今、私が気にかけているのは、式とは全く別のことだった。
「馬鹿・・・

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