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雨宮可縫花さん

雨宮可縫花(あまみやかぬか)です。エッセイ教室に通っています。向田邦子を読む日々です。

出没地
趣味
職業
性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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卵焼き戦争

16/07/18 コメント:1件 雨宮可縫花 閲覧数:524

 朝、健人が制服に着替えてキッチンを覗くと、母が弁当におかずを詰めていた。菜箸で卵焼きをひとつ摘まんで、健人に差し出してくる。
「今日の、どう?」
 弁当には、いつも卵焼きが入っている。いりこでとった出汁が自慢らしい。
「うん。今日もおいしいよ」
 健人がそう言っても、母はイマイチ納得できない様子だった。
「いつもより、出汁が薄いんじゃないかと思って」
 注意深・・・

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いつか見知らぬ日記帳

16/07/13 コメント:4件 雨宮可縫花 閲覧数:639

 美枝子の一日は、朝ベランダに出て、外の風景を眺めることから始まる。
 黄色い帽子に、紺色のリュック。若い母親に手を引かれ、子供たちが保育園へ登園していく。赤と黒と、他にもいろんな色のランドセルが駆けていった。
 駅へ向かうサラリーマン。ゴミ出しをする主婦。美枝子が住むマンションの駐車場から、何台かの車が大通りへと出ていった。
 八時半になると、その大通りから「毎日宅配!お弁当サ・・・

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やさしいお粥

16/07/07 コメント:0件 雨宮可縫花 閲覧数:677

 仕事を終え駅の改札を出たのは、夜の七時だった。栞はスーパーに寄り、半額シールが貼られた弁当をカゴに入れた。
 時間が経った弁当のおかずは、いつも冷たく干からびている。油がまわってベタベタする。ご飯は水っぽくなり、ふやけている。
 食べることができたら、何でもいいと思っている。だから、毎日安くなった弁当を買う。
 寂れた商店街を抜けると、築四十年の木造二階建てのアパートが見えてく・・・

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知らない女

16/06/28 コメント:0件 雨宮可縫花 閲覧数:600

 杉浦が週刊誌の記者になって十年になる。ここ最近は特に忙しかったが、その仕事にもやっと区切りがついた。
 夜中の十二時過ぎ、二週間ぶりに自宅に帰ると、玄関の明かりは消えていた。妻の奈津美はもう寝ているのだろう。ほとんど一人暮らしのような生活をさせてしまっているが、それでも文句ひとつ言わない。
 シャワーを浴びて戻ると、暗かったはずのリビングに明かりがついていた。何やら、出汁の良い香りが・・・

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雨の名前

16/06/17 コメント:1件 雨宮可縫花 閲覧数:706

「何んていうんだっけ」 
 背広についた雨滴をはらいながら、上司の斎藤が言った。
「なにがです?」
 私は顔や髪をハンカチでぬぐいながら問い返した。
 ふたりで外回をしていた。予定が無事に終わり駅に向かっている途中で、とつぜん雨に降られた。曇ってきたなと思ったら、すぐに湿った匂いがして、どしゃ降りになった。
 あわてて、近くの商店の軒下に逃げ込んだのだった。 
・・・

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駅の雨傘

16/06/05 コメント:2件 雨宮可縫花 閲覧数:902

「実樹ちゃん、傘を持っていってね」
 朝食を食べていた実樹に、洗い物をしていた母が明るい声で言う。
 流しの片付けが終わると、母は洗濯物を干しに二階のべランダへ向かった。それから新聞を取りに外へ出て行く。
「午後から雨みたい。傘、忘れちゃダメよ」
 戻ってくると、天気予報の欄を見ながら実樹に念を押した。
 玄関で見送るときも、母はあれこれと実樹の心配をする。
「・・・

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給水塔の丘

16/05/23 コメント:4件 雨宮可縫花 閲覧数:1058

 中学一年の夏休み、総太はひとりで旅に出た。
 といっても自転車で日帰りできる距離だから、そう遠くへ行くことはできない。目的地は決めずに家を出た。特に行きたい場所はなかった。ただ、思うままに走ってみたかったのだ。
 中学生活に馴染めないうちに一学期が終わってしまった。小学生の頃にはなかった科目、学校生活を送る上で必要なルール。皆はもうすっかり慣れているように見える。自分だけが馴染めてい・・・

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酸っぱい甘夏

16/05/18 コメント:0件 雨宮可縫花 閲覧数:803

 濃厚な果物の香りに気がついて、文乃は足を止めた。
 安さが売りのスーパーには似つかわしくない、贈答用の立派なリンゴやぶどうが置かれていた。高級なものは香りから違うらしい。無性に果物が食べたくなった。
 伸ばした手を、文乃は慌てて引っ込めた。こんなに値段の高いものは絶対に駄目だ。
「リンゴが食べたい」
 夫である啓介の声を思い出し、文乃は果物売り場で一番安いリンゴを手に取っ・・・

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