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秋澤さん

初めまして、秋澤です 主に小説家になろうで活動するしがない物書き 短くてテーマ設定のある話を書きたかったので、参入

出没地 山中、寺社仏閣
趣味
職業 学生
性別 女性
将来の夢
座右の銘 偽善も善のうち

投稿済みの記事一覧

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失敗したなぁ

17/03/18 コメント:0件 秋澤 閲覧数:129

喉がカラカラに渇いていた。まだ夏など遠い春だというのに。空に輝くのは焦がすような日ではなく淡やかな月だというのに。
煌々と輝く月が眩しい。白い光を、彼女の白い首が反射していた。失敗した。こんなはずではなかったとわかっているのに、思わず肌の上の花弁に見とれる。ハッとして彼女を抱きかかえる。未だ身体は暖かい。けれどその身体は軟体動物のように、あるいは精巧な人形のように力なく弛緩していた。あたりを・・・

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物々交換

17/01/07 コメント:0件 秋澤 閲覧数:229

誰が言ったか覚えていない。けれどまん丸のオレンジを見ると思い出す言葉がある。
「レモンには火薬が詰まっている。オレンジには優しさが詰まっている。」
どういう意味だったのか、10年以上経った今もその真意を掴めないでいた。レモンに火薬が詰まっている、というのはおそらく梶井基次郎の「檸檬」からの引用だろう。だがしかし、対を成すように上げられたオレンジ。なぜオレンジには優しさが詰まってい・・・

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裏切りと知ってくれ。

16/09/11 コメント:0件 秋澤 閲覧数:411

これは、純然たる裏切りだ。ボロボロと涙を流しながら縋り付く妻を見た。いつから泣いているのかわからない。それでも、いつも年相応に整えられた化粧が涙で剥がれ落ち、赤らんだ顔のままひたすらに泣く彼女からして、それは決して短い時間ではないことはわかる。
泣くくらいなら、いっそすべて終わらせてしまえばいいのに。私は終わらせてほしいと願っているのに、妻は縋り付いて泣くばかり。見切りを付けてしまえば、・・・

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絶望の金曜日に

16/08/28 コメント:0件 秋澤 閲覧数:414

仄暗い階段を上っていく。誰にも姿を見られたくなくて息をひそめた。4階のさらに上、色褪せたカラーコーンを避けて、埃臭く短い階段を数段あがる。鍵を差し込み冷たいノブに手を掛ければあっさりと開く。だだっ広い、薄汚い屋上。赤い夕陽がコンクリートを這う。赤色を遮るのは給水塔と私だけ。
「今日もいるんだね。」
「絶望の金曜日だもの。」
「うん、一週間の中で一番希望のあるふりをした絶望の曜日。・・・

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急性ぱぴぷぺぽ症候群

16/08/04 コメント:0件 秋澤 閲覧数:838

「なあ、どこか痛い所とかはないか?」
「プピィ、」

しょんぼりした表情で俯く彼女は力なく返事をした。痛みはないらしい。だが意思の疎通がはかれない。彼女を不安にさせないよう、僕は出かけたため息をそっと飲み込んだ。

「ぽぺんぺ……、」
「……ごめん、紙とペン持ってくるから筆談にしようか。」

徐に立ち上がり適当な用紙とペンを棚から探してい・・・

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火の粉となった君のために

16/07/21 コメント:0件 秋澤 閲覧数:387

あの日の悲しみを、僕は一度だって忘れたことはない。

「いってらっしゃい。」
「行ってきます。」

君は笑って手を振った。僕も、笑って手を振ったはずだった。
泣いちゃダメだ。困らせてはダメだ。涙もろい僕を、彼女は僕の長所だと言った。優しい人だと。心の豊かな人だと。それでも、今泣けばきっと彼女は困ってしまう。もしかしたら煩わしいと思ってしまうかもしれな・・・

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あの人の作るお弁当

16/07/13 コメント:1件 秋澤 閲覧数:387

あの人は甲斐甲斐しい。血の繋がりも何もない男と僕は住んでいる。
家を出ようとすると、後ろからドタバタと足音がした。
「なおくん!遅くなってごめんね!はい、お弁当。」
「……どうも。」
渡された弁当をほとんど空の鞄に入れ、会釈だけして玄関から出る。これから出社するらしく、グレーのスーツ。それに似合わないオレンジのエプロンをつけていた。
はじめさん。それが僕が一緒に住んで・・・

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異界より来せり蕎麦

16/06/20 コメント:0件 秋澤 閲覧数:427

私は麺が好きだ。パスタもラーメンもうどんも好きだ。だがその中でも群を抜いてそばが好きだ。愛していると言っても過言ではない。鼻に抜ける香ばしい匂い、ちょうどいい太さ、つるつるとした喉ごし。どれをとっても最高と言わざるを得ない。そばにもいろいろと食べ方があるが、その中でも私の一押しはざるそばだ。薬味は葱、海苔、生姜、、少しの山葵、これだけでいい。

駅前大通りから一本入った通り、そこに小さ・・・

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青い世界は、今日も美しい

16/05/27 コメント:0件 秋澤 閲覧数:463

ザアザアと雨が降る。雨粒が、木の葉を叩き、屋根を叩き、水面を叩く。
降り注ぐ雨、その雨音はどこか僕を安心させる。まるで僕の全部を包まれているようだった。重たげ空は、雨を降らせて身を軽くする。雨音はいらないものすべて流し去ってくれる。必要のない音を、滞る心のよどみも、冷たく静かすぎる夜も。
ザアザアと雨が降る。その音に抱かれながら、緩やかな睡魔に誘われていった。

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迂遠に手を伸ばしあいたくて

16/05/21 コメント:0件 秋澤 閲覧数:443

納豆を一粒箸でつまむと、離れることは耐えがたいというように糸を引く。ケーキをナイフで切れば、無念であることを示すようにその刃にクリームやスポンジをつける。つるりとしたとした紙を引き裂くと、別れを惜しむように繊維が手を伸ばしあう。あのさらりとした水でさえ、遮られると涙を流すようにぽたりぽたりと雫を落とす。
この世にあるものは、別れを突き付けられたとき多少なりとも感慨を抱き、惜しむように手を伸ば・・・

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意地っ張りな君のための旅

16/05/19 コメント:0件 秋澤 閲覧数:549

「私のために今すぐ死ね。」

「初めてのおねだりがそれって、ハードル高いなあ。」

何の脈絡もなく唐突に「私のために死ねるか。」と愛しの彼女様に問われ、「君が危険に晒されるなら、喜んで。」と返したら、これである。
見る限り、彼女は今命の危機にさらされているようには感じられない。どちらかと言えば彼女に銃を突きつけられているおれの方が危機的状況にある。女社長、部下・・・

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『花嫁の喜び』

16/05/10 コメント:0件 秋澤 閲覧数:526

ぐつぐつと煮立つ鍋。立ち上る湯気と共に甘い匂いが鼻に抜ける。ジワリと汗の滲む台所に立ちながら、無心で木べらを動かす。鍋の中で砂糖と混ざり合う甘夏はトロトロとその実を崩していた。

昨日田舎に住む母から大量の甘夏が届いた。段ボールいっぱいの甘夏に私は辟易とした。嫌いなわけではないが、好きでもない。小さなころから家の庭でできた甘夏を食べさせられてきた。みかんよりもすっぱくて、レモンよりも甘・・・

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