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しーたさん

小説を書いています。よろしくお願いします。

出没地
趣味
職業
性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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そして物語は昔話と相成った

17/04/23 コメント:0件 しーた 閲覧数:83

「海の底には竜宮城があるんだぜ」
 おい知ってるか、と前置いて、男がそう話しかけてきた。なんとなく海辺を散歩していたところだったのに、嫌なやつに会ってしまった。
「そこには美味しい食べ物がたらふくあって、綺麗なお姫様がいて、まさに夢の国なんだってよ」
 男は行ったこともないその場所に思いを馳せ、遠い目をしている。この隙に逃げてしまおうかとも思うが、きっとこいつは走るのが速いのだ。・・・

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トロイメ・トレイン

17/03/20 コメント:0件 しーた 閲覧数:125

 彼女は夢を見ている。綺麗で、孤独な夢を。
 真っ暗な、何もない病室。視界の端で、カーテンが静かに揺れている。首を向けると窓が開いている。のっそり起き上がって窓に近づくと、窓の向こうにぼんやりと輝く道が続いている。彼女は一歩、足を踏み出した。
 夜空に向かって道を歩いていく。しばらくして、道は途切れた。眼下には、暗闇の中に広がる見知った街。辺りには輝く星が散りばめられている。吹いた風が・・・

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流れる時間の真ん中で

17/03/18 コメント:2件 しーた 閲覧数:150

 今日、ニ00八年三月九日だけが、××の世界のすべてだった。来年度から通うはずだった高校のことも、体調の優れなかったペットのことも、毎週欠かさず見ていたドラマの内容も、この日を境に、××にとってどうでも良いものと成り果てた。
 太陽がのっそりと顔を出し始めた頃、××はゆっくりと玄関の扉を開けた。舗装されたコンクリートの地面に視線を落としながら、物憂げな表情で待ち合わせの場所へと向かう。

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平和という都合の良い言葉の裏側にあるものは

16/10/16 コメント:2件 しーた 閲覧数:374

ーーもう、戦争は始まってる。
 そのメールの一行目には、そう書かれていた。
ーーついに奴らが攻め込んで来たんだ。地球の場所を特定されたみたいで、円板型の機体を操作して、一直線に地球に向かってきてる。世間に隠し通すのも限界だと思ったので、この手紙を君に送る。
 知らぬ間に汗でじんわりと湿ってきていた手のひらを服で拭きつつ、続きに目をやる。
ーー世間に奴らのことを発表して欲しい・・・

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ゲラ役の男は今日も笑う

16/09/28 コメント:0件 しーた 閲覧数:323

 彼の仕事は笑うことだった。お笑いのラジオで、テレビで、彼は笑った。出演者たちの話がつまらなくても、番組の内容が陳腐でも、それを少しでも面白く見せるために、彼は笑った。人前に姿を出すことも目立つこももなく、常に裏方に徹しながら、必要に応じてゲラゲラと笑った。心の底から楽しそうに、面白そうに、幸せそうに、悩みなんてないかのように、ただただ笑った。
 ある時、付き合っていた婚約者が昏睡状態に陥っ・・・

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エリの回想についての他愛もない考察

16/09/21 コメント:0件 しーた 閲覧数:327

 真っ暗な自室のベッドの上で、エリは静かに意識を取り戻した。実家から持ってきたお気に入りの掛け時計の針の音だけが部屋に響く。目を閉じ、身体をベッドに横たえたまま混濁した頭の中を整理して、
ーーああ、そうか。
 自分は知らぬ間に寝てしまったのだ、という解答にエリが辿り着くまでにそう時間はかからなかった。部屋に帰ってきたところまでは覚えているが、そこから先のことが思い出せない。仕事が忙しく・・・

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それはありふれたラプソディのように

16/08/28 コメント:0件 しーた 閲覧数:378

 耳元で無線機がザザ、と音を立てて、
「作戦は失敗した、A隊離脱せよ。繰り返す。作戦は失敗した、A隊離脱せよ」
 エリはガスマスクの下で一瞬驚いた表情を浮かべた後、人目につかないルートを通って基地に戻る途中のA隊の仲間と合流した。

「特攻役だったD隊が全滅したらしいよ」
 基地に戻ると、B隊のユンがそう教えてくれた。そのために作戦は失敗したのだと。
 それを・・・

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二〇〇二年の夏は、まるで幽霊のように

16/08/02 コメント:0件 しーた 閲覧数:337

 二〇〇二年の夏の、ある日曜日のこと。その日は雲一つない晴れた日で、僕は駅前の広場にいた。何故そこにいたのか、何をしていたのかはあまり覚えていない。友達と待ち合わせをしていたような気もするし、散歩の途中だったような気もする。駅前の様子もぼんやりとしか覚えていないが、人はそれなりにいたと思う。
 そんな日曜日の昼下がり、唐突に僕の視界に、ある一人の女性が飛び込んできた。その女性は真っ白なサマー・・・

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微睡みの中で踊る少年は、今日もまた彼女を思い出す

16/07/25 コメント:0件 しーた 閲覧数:391

 異様な熱気に包まれた校庭を見下ろして、悠太は一人屋上に佇んでいた。フェンスの向こうに広がる校庭では、マイムマイムが踊られている。キャンプファイアーを囲んで多くの学生たちが盛り上がっており、文化祭最後の日の夜、熱気は最高潮に達していた。
「美優、そこにいるんでしょ?」
 悠太がおどけて呟くと、
『バレてたか』
 美優の声が心に響いた。
 悪戯が見つかった時、彼女はいつ・・・

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恋の魔法はパピプペポ

16/07/19 コメント:0件 しーた 閲覧数:365


 仕事から帰ってきた優子は、部屋でぼんやりテレビを眺めながらビールを傾ける。テレビの中では、自分より少し年下の男女の恋愛に焦点を当てたドラマが流れていた。
 恋愛。
 その単語に、懐かしい響きを感じた。
 ふと昔の記憶が蘇ってきて、思い出の中に溶け込むように、優子は静かに目を閉じた。



 それは、中学生の頃の記憶。
 胸のサイズが周りよ・・・

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バースデイ・ソバ・サプライズ

16/06/14 コメント:0件 しーた 閲覧数:492

 誕生日、なんでもいいからサプライズして欲しいっ!
 幼馴染の男子と並んで夕暮れの土手を歩きながら、私はそう切り出した。
 今日学校で友達が、誕生日に彼氏にサプライズしてもらったと嬉しそうに惚気ていた。
 だから、自分もされてみたいと思った。
 しかし自分には彼氏なんていなくて、さて誰に頼もうかと頭を捻って、そもそもこんなことを頼める男友達なんて隣を歩くこいつくらいしかいな・・・

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雨粒カフカ

16/06/10 コメント:0件 しーた 閲覧数:409

 目が覚めると、僕は雲の中にいた。かつては地上から見上げていた、どこまでも青い空に浮かぶ雲の中に。
 これは夢だろうか。
 確認してみよう。
 そう思って頬をつねろうとして、手を動かせないことに気が付いた。
 違う。
 僕は確かに雲の中にいるのだけれど、
 僕も、雲の一部になっていたのだった。

 文字通り風に流されるままに空を漂いながら、色々なこ・・・

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雨粒カフカ

16/06/10 コメント:0件 しーた 閲覧数:464

 目が覚めると、僕は雲の中にいた。かつては地上から見上げていた、どこまでも青い空に浮かぶ雲の中に。
 これは夢だろうか。
 確認してみよう。
 そう思って頬をつねろうとして、手を動かせないことに気が付いた。
 違う。
 僕は確かに雲の中にいるのだけれど、
 僕も、雲の一部になっていたのだった。

 文字通り風に流されるままに空を漂いながら、色々なこ・・・

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小説家症候群

16/06/03 コメント:0件 しーた 閲覧数:508


〜それはきっと、物語を紡ぐ中で誰もが罹る幸せな病〜

 小説を書こう。
 とある休日の明け方、普段より早く目を覚ました彼は、ふとそう思った。
 話の構成をしっかり作り込んだりしているわけではなかったけれど、書きたいシーンが頭に浮かんだのだ。
 元々文章を書くのは好きな方だし、まあなんとかなるだろう。
 そんな考えを抱きつつ、ノートパソコンの電源ボタンを入・・・

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カラスの夏、みかんの香り

16/05/14 コメント:0件 しーた 閲覧数:519

 梅雨の長引く年だった。
 世間の溜息が溶けていそうな雨粒を頭上の傘に感じつつ、高校を目指して足を動かす。そんな彼女の視界の端に、一羽のカラスがうつった。カラスはぐったりとした様子で道端の草むらに横たわっていて、その身を雨に濡らしている。
 彼女が恐る恐る近づいてみても、カラスは小さく身体をよじるだけで逃げることはしなかった。
 彼の翼に怪我があることは、獣医でもなんでもない彼女・・・

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彼の色に染まる世界

16/04/20 コメント:0件 しーた 閲覧数:525

 その夜は、不思議と寝付けない夜だった。老人は寝静まった村の人々に気を遣うようにひっそりと布団から起き上がると、微かに月明かりの差し込む窓から夜空を見上げた。吸い込まれそうな満月に目を奪われ、そのまま静かに時が過ぎる。
 どのくらい経ったのだろう。静寂は、扉をノックする音に遮られた。
 こんな時間に誰だろうか。
 扉を開けると、そこには見慣れない着物に身を包む一人の少女が立ってい・・・

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