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犬飼根古太さん

よろしくお願いします。

出没地 図書館と古本屋、そしてラーメン屋
趣味 読むこと、書くこと。その他いろいろ
職業 元ですが、ウェブライターをしていました。今は縫製業です。
性別 男性
将来の夢 どれだけ掛かっても作家になることです。
座右の銘 井の中の蛙 大海を知らず されど、空の深さを知る

投稿済みの記事一覧

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まちがいというあまい理想のなかに、いきている

17/06/18 コメント:0件 犬飼根古太 閲覧数:179

 声をかけようとして、名前を思い出せずとまどって、逆に声をかけられて親し気にされてもやっぱり思い出せず、笑ってごまかして、そっとため息をつく。
 同窓会の会場についてから僕はそれを繰り返していた。何度目かのため息をつき、ちょっと余裕が出てきて辺りを見回してみると、そこかしこに今の自分みたいな対応をしている人がちらほら。
(しゃーないよな……久しぶりだし……)
 どこか懐かしい顔立・・・

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音楽は騒音だと思う。まず何から語ればいいか分からないがとりあえず語ろう。

17/06/10 コメント:1件 犬飼根古太 閲覧数:249

「音楽というものが嫌いだ! あれは僕にとっては騒音以外のなにものでもない。声も楽器の演奏も機械的な音でも何でもだ! そもそも君は知ってるのか? 音楽というのはもともとエセ宗教や軍隊などで大きく用いられることで発展したということを! 音というのは防げない。案外やっかいなものなのだ。考えてみてくれ。汚い物からは目を背けらる。だが音から〈耳を背けられる〉か? 目は閉じることができる。だが〈耳を閉じる〉こ・・・

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田園

17/06/04 コメント:0件 犬飼根古太 閲覧数:163

 オーストリアの首都ウィーンから遠く離れたアルンベルク村は、楽聖ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが「通った」村として有名だ――と村民達は思っている。ベートーヴェンがウィーンにあるアン・デア・ウィーン劇場での演奏会に行く際、普段通っている街道ががけ崩れで封鎖され、その馬車がこの村を通過したらしい。
 無論通過しただけで滞在したわけではない。
 けれどそんなことは、村民達には関係ない。・・・

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たとえば、そんな休日

17/05/27 コメント:0件 犬飼根古太 閲覧数:171

「はー。憂鬱だぁー……」
「なんだよ、休日の朝っぱらから……」

 目の前にいる長い付き合いになる腐れ縁の友達の顔を見つめる。
 一緒にコタツに入り、顔を突き合わせていると、こっちまで憂鬱になりそうな表情を浮かべていやがる。

「私さー、休日が年に何回あるか数えたのよ……」
「それで?」
「そんでもって後何年働くのかも数えたの」
「ええっと……・・・

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夢に描いた休日

17/05/27 コメント:0件 犬飼根古太 閲覧数:166

 子供の頃。たった一つ夢を見た。
 明晰夢というものの経験のない私が見た唯一の夢だ。
 今思い返してみると、それは夜に眠ってみた夢なのか……それとも昼間に思い描いた「夢」なのか、正直今の私には自信がない。
 ただ一つはっきりとわかること、それは――とても穏やかで、満ち足りて、幸福で――

 ――ああぁ……これぞ人生なのだな……。

 そう心から、魂から納得・・・

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Gの一族

17/05/20 コメント:0件 犬飼根古太 閲覧数:194

 「屋根裏」村の長老達は深刻な顔で集まり、相談していた。
「……やはり、食料調達班は無事には戻って来んかったか……」
「村の壮健な若者達を行かせたというのに……」
「残りはまだ子供と言ってもいいくらいだが……彼らに任せるしか」
「わしら年寄りでは遠出には耐えられん。例え耐えられたとしても――」

 『悪魔』どもの魔手を逃れることはできんだろう。

 ・・・

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「せいぎ」ってなんですか?

17/05/20 コメント:0件 犬飼根古太 閲覧数:202

「『せいぎってなんですか?』ってなんなんだよ、まったく!」
 連日に続く会議会議で、子供向けヒーロー番組の制作陣は頭を抱えていた。
「ヤナさん、あんま怒鳴んないで下さいよ!」
 悲鳴のような声を上げて、額に当てた冷えピタを押さえているのは脚本家だ。
「だいたいニイザキ、お前がしっかりとした脚本を書かないから――」
「そりゃ無茶ってもんですよ!」
 冷えピタを取っ・・・

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青い休日

17/05/13 コメント:2件 犬飼根古太 閲覧数:287

 明日は祝日。平日という荒波だらけの大海原に、ぷかりと浮かんで見える緑の小島。そこにはありとあらゆる果実や豊富な魚介類などがたくさん手に入る夢のような島。
 寝て食べるもよし。ほんとに寝てしまうもよし。寝るの自由、座るの自由、歩くのだって走るのだって、なんだったら跳びはねるのだって自由だ。これこそ休日。まさに祝日。神に祝福されし日とでも呼びたくなる素晴らしき日。
 よし! ここは自堕落・・・

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となりの正義

17/05/13 コメント:0件 犬飼根古太 閲覧数:224

 僕にとって正義とはケンちゃんのことだ。
 ケンカが強くて、駆けっこが早くて、勉強だってできる。
 隣の家に生まれて、幼馴染みで、ちょっと乱暴で、僕をパシリに使ったりするけど、とても満足している。
 小学校中学年の今でも、ケンちゃんの子分という立場でいるから、僕はいじめられないし、意地悪もされない。
 そんな自分のポジション――ケンちゃんの隣というのは、僕にとって安心できる・・・

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蕎麦湯の時間

16/06/08 コメント:9件 犬飼根古太 閲覧数:697

 墓参りの帰りに、亡くなった祖父にたまに連れて来てもらっていた蕎麦屋に彼女と寄った。
 平日のお昼過ぎの店内に人気は少なく、僕と彼女が美味しい蕎麦を堪能し終えた頃には客は二人だけになっていた。この店は昼の営業を終えると夕方まで閉める。店の奥にいた店主が表の営業中の札を引っ込めるのを目の端で捉えながらお茶を啜っていると、ふいに彼女が呟いた。
「なんか意外……」
 薬指に婚約指輪を嵌・・・

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すべて雨のせい

16/05/23 コメント:0件 犬飼根古太 閲覧数:582

 部活後の柔軟体操をしていると、ぽつりと、伸ばしている脹ら脛に水滴が当たった。
 隣で前屈していたシュンも似たような感触を覚えたらしく、重そうな空を見上げた。
 そばにある走り高跳び用マットを打つ雨音が聞こえて、グラウンドの土が暗い色に変色していく。
「降ってきたな」
「だな」
 シュンの独り言のような声に、僕はシュンを見ず短く返す。
 会話が途切れて雨音だけが・・・

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石の旅

16/05/15 コメント:2件 犬飼根古太 閲覧数:806

 旅をしたことがない。
 自我に目覚めてからずっと、ただの一度もだ。
 おそらくこれからも出来ないのではないだろうか。なぜなら私は、石だからだ。
 流れの速い渓流に、旅人たちに主に利用される橋が架かっている。それを見下ろす崖上に私はずっといる。
 ずっと、という漠然とした感覚でしか石であるため分からない。長い間、目的地に急ぐ旅人や風景を楽しんでのんびり歩く旅行者など、いろい・・・

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甘夏の掌

16/04/29 コメント:2件 犬飼根古太 閲覧数:557

 ごろり、と、物音がした。
 甘夏がフローリングを転がっている。農家である妻の実家から送られてきたものだ。
 数年前までは、俺は甘夏を好きでも嫌いでもなかった。せいぜい皮が剥きづらいな、などという不平を口にするくらいだった。
 だが、さすがにこうも毎年毎年となると鬱憤も溜まる。
「なぁ、お義父さんやお義母さんに言っておいてくれないか? もう甘夏はいらない、って。それか、もう・・・

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兄のインコと私のネコ

16/04/25 コメント:2件 犬飼根古太 閲覧数:491

 隣の市で起きた痛ましい殺人事件を知り、思い出したことがある。
 五年前の当時、私は小学校六年生、そして兄は大学受験を控えた高校三年生だった。
 およそテストの点数以外には興味を示さなくなっていた兄がある日、ペットを欲しいと両親に頼んだ。
 勉強に根を詰めすぎているのではないかと兄の様子を心配していた両親は、すぐにこの提案に賛成した。
 週末にはペットショップで購入されたイ・・・

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ワシはネットアイドルである

16/04/21 コメント:5件 犬飼根古太 閲覧数:687

 『吾輩は猫である』で一世を風靡した猫界のオピニオンリーダーがいらっしゃったが、ワシはもうそれは古いと思う。何も内容についてどうこういうのではない。媒体が問題なのだ。
 猫界でも若猫の活字離れは深刻で、かつては胡座をかく一家の大黒柱の膝の上で、それとなく新聞を一緒に読んでいたものだが、最近の猫はもっぱらテレビにばかり感心を示している。
 まぁ、気持ちはわかる。テレビ、面白いもんな。かく・・・

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太陽の色は? 海の色は?

16/04/15 コメント:10件 犬飼根古太 閲覧数:1149

 太陽は赤。
 海は青。
 浜は黄。
 ――幼稚園児の息子が「おっきな花丸をもらった!」と喜びながら見せてくれた画用紙に描かれていたのはそんな絵だった。
 十二色のクレヨンで幼稚園児の息子が、写実的な絵が描けるなどとは思っていない。
 妻からはよく親馬鹿だのとからかわれるが、その程度の常識は弁えている。
 それでも――
(仮にも、画家の息子としてこの色彩感・・・

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猫の小旅行

16/04/12 コメント:2件 犬飼根古太 閲覧数:566

 この猫の後をついて行こうかしら。
 早乙女里美がそんな突拍子もない子供っぽい考えに取り憑かれたのには理由がある。全部で三つ。
 一つ目は、気持ちのいい晴天だったこと。空の隅々まで蒼い輝きが満ちている。
 二つ目は、正月久しぶりに実家に帰ったものの、どうにも居心地が悪かったためだ。
 そして三つ目の理由。
 これが一番大事なことなのだが、その猫は昔飼っていた黒猫にソッ・・・

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僕らの水族館の壁が流された日のこと

16/04/11 コメント:7件 犬飼根古太 閲覧数:897

「俺らで秘密基地、作らへん?」
「秘密基地? でも二人しかいないよ?」
「いいやん。別に。……俺らを除け者にした奴らが羨ましがるぐらいごっつい秘密基地作ったろうぜ」
 父の転勤の都合で、愛知県名古屋市のベッドタウンに当たる海辺の片田舎に引っ越してきた小学五年生の僕は、同級生のタッちゃんと遊びの相談をする。
 タッちゃんは、いつもホッペを赤くして青洟を垂らし、靴底に泥をべった・・・

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