1. トップページ
  2. 依織さんのページ

依織さん

文字に恋する20代

出没地 長野県茅野市近辺
趣味 手芸と創作、あと考えごと。
職業 介護士
性別 女性
将来の夢 小説家になること
座右の銘

投稿済みの記事一覧

0

あいつが使えるただ一つの魔法

16/08/14 コメント:0件 依織 閲覧数:468

「また喧嘩だ」

 笑いを含んだ声でそう言って、実際半笑いの表情を浮かべて、あいつは俺の目の前に座った。教室の片隅。頬に貼った絆創膏に指先を突きつけて、相変わらずつまんなそうだねえ、なんて感想を述べて、またけらけらと笑う。その姿はどうにも楽しそうで、妙に腹が立った。

「うるさい」

 誰もいない窓際に目を逸らす自分が妙に安っぽく、小さく思えた。不機嫌な表情に呆・・・

7

群青

16/05/01 コメント:2件 依織 閲覧数:730

 目が覚めたときには僕の世界は、ひどく冷たく歪んでいたんだ。

 何度だって響いていた君を呼ぶ声が消えた頃には、一人取り残されてた。

 窓の外には群青の空。夜が明けるまで、ずっとそばにいた。

 サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ…って何度も叫んだ。お別れの言葉を。
 答える声はもう、ない。

 もう会えないね。
 そんな言葉がいつまでだって・・・

2

おさかな一匹

16/04/14 コメント:0件 依織 閲覧数:633

 おさかな一匹から始まった恋でした。

 あの時の私は本当に腹ぺこで、遠い空に吸い込まれてしまいそうで。ふっと空気に混じったいい匂いに誘われて、気がついた時にはあの窓辺にいたのです。

 私に気付いて、君は笑って。差し出されたのはおさかな一匹。慌てて食べる私を見ては、君は笑っていましたね。

 たくさん話を聞きました。

 行きたい場所や、見たいもの・・・

0

おかえり、クロや。

16/04/11 コメント:0件 依織 閲覧数:664

 ライラックの茂みを風が抜けていく。薄紅色の花が揺れ、微かに甘い香りが広がる。

 足音と、自分を迎え入れる懐かしい声が耳に届く。

 夜色の毛並みが不吉だと、石を投げられたのはもうずいぶんと昔のこと。真っ黒い柵を乗り越えて、逃げ込んだ先が彼女の庭だった。

 魔女と呼ばれた彼女の元で、古参の使い魔である烏と暮らした。

 反抗心で逃げ出して、人に追・・・

1

クジラ

16/04/09 コメント:0件 依織 閲覧数:734

 高さ8メートル。幅は、20メートルを超えているだろう。その巨大な水槽の真ん前にへばりついて、彼女はずいぶん長いこと動かなかった。どうやら連れはないようで、時折後ろの客にぶつかられてよろめきながらも、一向にその場を動かない。その姿がとても可愛らしく思えた。

 ベビーブルーのスカートと白いブラウス。長い髪を緩く纏めて。20代のはじめだろう。大きな目が、遠い遠い水面を一心に見ていた。

2

思い出アクアリウム

16/04/08 コメント:0件 依織 閲覧数:577

 ありったけの勇気をかき集めて、狭っ苦しい教室を飛び出した。クラスメイトのざわめきも、先生の怒号も無視して。
 規則正しく揺れる電車の中で思い出したのは、怒りとか悲しみとかが複雑に混ざった母さんの顔と言葉。あんたももう高校生なんだから、あたしがいなくたって大丈夫よね。背中を向けたままの父さんが、何を考えているのかはわからなかった。出て行くの、なんて呟いた声は奇妙に宙に浮いて、誰の返事もないま・・・

  1. 1
ログイン