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月村千秋さん

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投稿済みの記事一覧

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シュガー&パラダイス

17/05/01 コメント:0件 月村千秋 閲覧数:208

 なんなのこの深緑の液体は、そう思ってる私の顔をちらりと見て取ったディレクターは懇切丁寧に教えてくれた。これが昆布茶って代物で七日間飲み続けると、偉大な食物添加物でイエスかノーしか判別しなくなった鈍った舌を、ちょっとは味の分かるナイスな相棒にしてくれるってことを。
「目を閉じて飲めば味なんてしないから」
 ディレクターはそう言ったけど、実際私は目を閉じて飲み込んだけど、喉の奥にはねっと・・・

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ファミリーサイズ

16/03/27 コメント:0件 月村千秋 閲覧数:447

「大学生の特権は平日の昼間から映画を見れることだよ」
 冴島龍さえじまりゅうという俳優のインタビュー記事に僕は感銘を受けた。大学の講義が急遽休講になって、どうしようか迷っていたときのことだ。
 やりたいことには貪欲な僕はさっそく最寄りの映画館へと直行した。閑散としたロビーは薄暗く感じた。冴島はこうも言っていた。
「ただ映画を見るだけじゃつまらない。ポップコーンを山盛り買って、指先・・・

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歌うギターと踊る靴下

16/03/11 コメント:4件 月村千秋 閲覧数:539

 やかんでお湯を沸かすのは彼曰く不経済らしい。ガスよりも電気のほうがお得だから、瞬間湯沸かし機を使ったほうがいいと説得されたけれど、火の入ってないお湯は味気ないように感じてしまう。それに最近気づいたことは、私はこの沸騰するのを待つ時間が意外に好きということ。
 耳をすませると水の蒸発する音が聞こえる。水がふっと力を抜いて小さく息をするように、自分の中の余計なものを外に出しているような気がした・・・

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あたたかいやけど

16/02/10 コメント:4件 月村千秋 閲覧数:559

「あっちっちっち」
 お父さんはいつも熱いお茶でやけどする。それも私の入れたお茶のときだけ。不格好な黄土色の湯飲みを慌ててテーブルに置く。大げさにむせて咳をするお父さんは正直うるさい。めがねをかけてゴマみたいな髪の毛の太った人。お父さんのことを悪く言うのはほめられたことじゃないって分かっていても、つい口に出てしまう。
「バカじゃん」
 私は目玉焼きをぐちゅぐちゅとかき混ぜた。中央・・・

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読みたい人

16/01/29 コメント:0件 月村千秋 閲覧数:576

 中学二年の冬、ストーブに近い窓際の席で僕は小説を読んでいた。クラスメイトの男子は年中無休でサッカーをしている。わざわざ手袋してまでサッカーしなくても、と僕は思うのだけど、彼らにとって昼休みに身体を動かさないのは罪悪らしい。
「なに読んでんの? そんなことしてないで遊ぼうぜ」
 無邪気に肩を叩いてくる男子がいた。
 はじめの質問は必要なのかな、と首を傾げていると、男子の一人が僕の・・・

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音が形になる世界

15/12/24 コメント:0件 月村千秋 閲覧数:543

トントントントン、カタカタカタカタ。
公園のベンチで音のない世界に僕は微睡む。色合いと文字の象徴ばかりが空に浮かび、抽象と具体がぐねぐねとその境界を争っていた。電車がすぐそばを通りすぎていく。ゴゴゴゴゴゴという鉄の塊を落としながら。

耳のそぎ落とされたつるんとした人間たちがひらひらと意味をまき散らす。オレンジと黄緑のうさぎがぴょんぴょん跳ねているのを眺めて、恋人の部屋に忘れ物が・・・

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