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ケイジロウさん

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投稿済みの記事一覧

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暗黙の了解との絶妙な距離について

17/09/18 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:50

 次郎が職場に戻ると、ベテランのお局が仁王立ちで待っていた。
「ちょっと、あなた、遅いわよ」
 次郎は壁にかかった時計を慌てて見た。しかし、まだ12時50分だった。昼休みは13時までだ。
「おわんないわよ。全く、近頃の若いのは」
「スミマセン」
「とにかく、速く速く。すぐにAラインに入ってちょうだい。神田さんがいるから、神田さんと一緒にやってちょうだい」
「あ、・・・

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ゾンビ体操

17/08/21 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:107

「あー、えー、鈴木です。……」
「もっと声大きく!」
 20代の女社員にキーキー叫ばれて、鈴木順平は驚いて目線をあげた。パートのおばさんたちの週刊誌色の目が鈴木に集まっていた。
「鈴木です。本日からお世話になります。よろしくお願いします」
 高校生が作ったロボットでもできそうな拍手が無機質に小さな工場内に響いた。鈴木はマスクの内側でため息をつき、後ろへ下がった。
 あ・・・

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消えないチョークの文字

17/08/14 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:104

 ある日のことだ。教室に入ると黒板がなくなっていた。
 確か昨日まであった。昨日は僕が日直だったのでその記憶は確かだ。
 しかし、昨日僕が消していたチョークの文字は本当に存在していたのだろうか。なぜ自分の記憶に疑いを持ってしまうかというと、教室に入った時、黒板がないこと以外いたっていつも通りだったからだ。貴志はいつも通り難しい顔で難しい話を男子たちとしながら敏子のことをチラチラ見ている・・・

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セメント色の雷鳥

17/08/02 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:109

「あの、来月から育児休暇をいただきたいのですが」
 燕野花子が申し訳なさそうに上司に申し出た。烏野太郎はパソコンの画面向けられていた黒い目を一瞬燕野に向けて光らせたが、すぐにパソコンの画面に戻した。そして、キーボードをたたき始めた。
「困ったな」
 烏野はそう言ったきりしばらくキーボードをたたき続けた。カタカタなるキーボードの音がいつ途切れるのかわからない。燕野は乾いた喉を唾で湿・・・

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旅の写実

17/07/12 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:142

 眠くなったら寝袋にくるまり、腹が減ったらおにぎりをかじって、喉が渇いたら水を飲み、寂しくなったら花を見て、星を見ながら架空の人物との論戦をブツブツと繰り広げる。そして、朝が来たらまた靴ひもを結び、痛い足を引きずるようにして歩き出す。
 そこにたどり着いたところで何もないことなど知っている。
 「彷徨」って単語を用いれば僕の歩くという行為が社会になんとなく受け入れられそうで、なんとなく・・・

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ねこの宿命(2)

17/07/12 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:142

「ニャー?」
「あっ、これか?これは求人広告ってやつだ」
 ブルーの作業着姿のおじさんが発泡酒を開けながら言った。
「発泡酒の値段は上がったけど、時給は上がりません、まいっちゃうよなあ」
 おじさんはグビグビと発泡酒を喉に流し込んだ。僕は求人広告の上に載ったさきイカを一切れかじった。
「気になるか?どれ、一つネコ語に訳してやろう」
 おじさんは僕のお皿からさきイ・・・

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いまここにある贅沢

17/04/09 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:216

 チャチャラリー ティラティラ ティーン
 安っぽいノイズのかかった、人をおちょくっているとしか思えない音楽とともに、僕たちが乗る予定の電車が、8時間遅れでプラットホームに入って来た。構内アナウンスで何か言っているが、外人の僕たちには何を言っているのかわからなかった。しかし、謝罪の言葉が一言も入っていないことは、ノロノロだるそうに走るスカイブルーの電車から読み取れる。
 指定席だという・・・

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小石につまずいた女

17/03/26 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:158

 田口修二の吐き出した煙が週刊誌のグラビア写真にぶつかり、角度を変えて天井へ向かっていった。スタンドライトのオレンジ色の明かりが、その煙の行方を照らしている。
 ガラガラガラ
 斎藤亜希が突然職員室に飛び込んできた。新人の英語教師だ。斎藤はデスクにふんぞり返る田口の方を一瞬見たが、すぐに目を伏せ、自分のデスクに速足で向かった。その目は濡れていた。
 田口は煙を深く吸い込み窓の外を・・・

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チェーンの外れた自転車

17/02/26 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:267

 大型客船がゆっくりと、しかし力強く、大きな川を進んでいた。
 僕は自転車を止めてしばらくその船を眺めていた。
 船に乗っている人たちが見えた。なんだか楽しそうである。幸せそうである。しかし、それらの笑顔の中から笑顔を見出すことはできなかった。太陽の光がさんさんと降り注ぐ真っ白なオープンカフェでコーヒーを飲む人たちに、必要に迫られた大衆的な汗臭さは全くと言ってよいほど漂っていなかった。・・・

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AHOT

17/02/12 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:291

 若い男とのすれ違いざま、その華奢な肩が僕にぶつかって来た。僕はふりかえってその男を睨み返した。しかし、もうその男はどこにもいなかった。右から左から後ろから前からひっきりなしに流れ続けるニンゲンにその男はかき消されていた。
 誰か一人くらい知り合いがいてもよさそうだが、次から次へと迫っては離れていくニンゲンの中に僕の知り合いは一人もいなかった。いや、いたとしても、ココでは知り合いではなくなっ・・・

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ゴキブリの見解

17/01/28 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:264

「304号室は、法的に私のものです」303号室が言った。
「304号室は、オラのいとこが昔住んでたから、オラのもんだ」305号室が言った。
「304号室は、アタイが子どもを産んだ部屋だから、アタイのよ」204号室が言った。
「304号室は、オレのもんや。文句あんならかかってこい」404号室が言った。
 303号室は一つため息をつくと、ちゃぶ台の上に一枚の書類を置いた。304・・・

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しゃべる自動販売機

17/01/14 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:287

「スンマセン、オレ、おにぎり作ったことないっす」
 その言葉に、店長の目が丸くなった。近頃の高校生はおにぎりすら作れないのか、店長は高校生バイトを睨みつけた。
「イラッシャイマセ、キツエンセキカキンエンセキ、ドチラニナサイマスカ」
 入口からの自動販売機みたいな声が、厨房にまで響いてきた。ピーピーピー、という音とともに新たな注文が厨房に知らされる。ピンポン、と客が呼んでいる。あの・・・

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ガラガラガラとザクザクザク

16/12/18 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:291

「ああ、そういえば今日クリスマスイブだったっけな」
 山本雪雄の声が、一人きりの小屋の中でむなしくこだました。足の裏と腰に張り付けたホッカイロがようやくあったまってきたからか、それとも先ほど舐めたワォッカが効いてきたのか、体がホカホカしてきて、饒舌になって来た。
 しかし、誰も雪雄に返答する者はいない。そもそも今日がクリスマスイブだということを雪雄は知っていた。だからこそ街を離れ、山の・・・

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キャベツの値段

16/12/05 コメント:1件 ケイジロウ 閲覧数:538

 二人のおばさんがイスに腰を掛け、美術館にそぐわない音量で、今年のキャベツの値段について議論していた。おせんべいとお茶が彼女ら間においてありそうだったが、それらはなかった。僕はそのイスをあきらめて他のイスを探し求めた。
 腕時計を見ると、入場してからまだ30分しかたっていなかったが、僕はすでに重い疲労を感じていた。壁に掛かっている絵をなるべく見ないようにして、先ほどのキャベツの話に意識を集中・・・

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拾われゼリフ

16/11/21 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:275

「こんな店、閉めちまえ!」
と、その客は捨てゼリフを吐いて店を出ていった。プラスチック製のレンゲがゆっくりと床に落ち、安っぽい音が小さな店内に響いた。
 オレは一瞬戸惑ったが、その捨てられたセリフを拾い、思いっきり投げ返してやろうと、調理場からカウンター席に飛び出した。その客は、引き戸をバタンッと開け、店を出ようとするところだった。が、オレはその客の醜い背中をただただ睨みつけることしか・・・

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プーアル茶を飲みながら考えたこと

16/11/07 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:310

 小さな川を見下ろす冷たいベンチに腰を下ろした僕は、ネクタイをゆるめ、煙草に火をつけた。冷たい灰色の川を5匹のカモがのんびりと泳いでいた。いや、「のんびりと」というのは僕が勝手に思っていることかもしれない。水面下で何が起こっているかここからでは確認できない。ただ、彼らが通った水面に、穏やかな線がのんびりと揺れているのは確かだった。
 僕は足元に転がっていた小石を拾い上げると、先頭のカモをめが・・・

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カトリセンコウ

16/10/10 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:362

 秘書の駿介が、加奈子のために昼食のかき揚げ丼を運んで来た。トレーの上にはかき揚げ丼の他に、足りていない栄養を補うためのサプリメントが数種類載っていた。
「ありがとう」
加奈子の勤める某旅行会社の社員食堂には、その時、5,6人が、無菌の白い壁に向かってそれぞれ腰を下ろしていた。それぞれ何かを口に入れながら、それぞれの秘書と何か話をしていた。秘書と言っても人間ではない。ロボットである。そ・・・

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絵本20冊分の打算

16/09/26 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:416

 昨日製本されたばかりの絵本が20冊入ったリュックサックを背負い、本田代美子は<○×書店>から出てきた。まだ日の入りまで時間があるはずなのだが、外は薄暗かった。秋の風が夏服の代美子には冷たく感じられた。
 <○×書店>は、代美子が今日訪れた10店目の本屋だった。朝、家を出るときの、「20冊で足りるかしら」という代美子の予想は大きく外れ、まだ一冊も店頭に置かせてもらえていない。
 できる・・・

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ロールケーキに群がるシラサギ

16/09/12 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:484

 台風の合い間に、あわただしく稲を刈るでっかい機械を、野山彗太は病室の窓から眺めていた。田植えの時期からこの病室に住んでいる彗太にとって、稲が生長するその期間は長くも感じられたが、短くも感じられた。
 先ほど、癌だということを、彗太は母の汐織から聞かされた。ロールケーキを切りながら、小さな声で告げた汐織の言葉に、彗太はなんの驚きもなかった。ここに来てから彗太の体重は30キロ近く減った。食欲も・・・

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幽霊の笑顔

16/08/29 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:475

 そろそろ洗わなくちゃな、と考えながら水色の作業着に着替えていると、先輩の坂本さんがいつものタイミングでロッカールームに入って来た。下を向いていた。右斜め下、左斜め下を交互に見ている。コンタクトレンズでも探しているかのように。ゆっくりと、幽霊みたいにこちらに向かってきた。坂本さんのロッカーは、僕の横なのである。頼りない左肩にかけられたショルダーバッグが、膝のあたりでブラブラと揺れていた。
「・・・

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煙の音

16/08/14 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:419

「まず結論を先に述べなくてはなりませんね。
 えーと。あっ、その前にですね、先日新幹線を待つ間に、喫煙所に行ったんですね。中ではみんな一生懸命、煙を吸ったり吐いたりしていたわけなんですが、そこで、ある法則を私は見つけ出したんです。あまり本論と関係ないようにも思われますが、実は絡み合っている部分もあり、本質的には同じことなので、結論を述べる前に少し脱線させていただきます。
 私が注目した・・・

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踊らされた男

16/07/31 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:445

「音楽が全く聴こえない人にとって、その音楽で踊っている人はキチガイである。」

 私はその男を見て、昔の偉い人が言ったそんな言葉を思い出した。
 正午を少し過ぎたガラガラの電車に私は揺られている。クーラーが少し効きすぎているような気もするが、背広の私には丁度よい。私の横に置いてある薄っぺらいショルダーバッグには、履歴書と文庫本が一冊だけが入っている。今日行く会社もたぶんダメだろう・・・

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シャケおじさんの役割

16/07/17 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:444

 僕はそのおじさんのことをシャケおじさんと呼ぶことにした。
 僕が働いている弁当屋で毎日シャケ弁を買って帰るからだ。正確には、シャケ弁大盛り一つとシャケおにぎり一つ。シャケばかり食べているから熊みたいなおじさんを想像する人もいるかもしれないが、実際はタヌキみたいなおじさんである。
 ある夜、シャケおじさんがいつも通りやってきた。黒の帽子を被っている。下っ端の僕はレジに向かった。パートの・・・

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選ぶことについて

16/07/05 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:547

「コーヒーと紅茶、どちらになさいますか?」
と、食後に聞かれるわけなのだが、「コーヒー。ホットで」と即答できる。ざまぁみろである。
「ライスとパン、どちらになさいますか?」
と、ハンバーグなんか頼むと聞かれる。これに対しても「ライスで。割りばしも付けてね」と即答できる。
 しかし、この程度の決断が即できたからと言って自慢されても困る。しかも、厳密にはこれらは「即決」ではなく・・・

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ねこの宿命

16/04/25 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:451

 夕方5時45分、ブルーの作業着姿のおじさんがレジ袋を片手にいつも通りやってきた。この近くの工場で働いているのだろうか、いつも同じ時間に同じ格好で登場する。おじさんはベンチの右端に座り、真ん中にレジ袋を置いた。おじさんは夕日に背中を向け、キラキラと輝く川の流れを見つめている。川辺にはアオサギが一匹ぼけーっと突っ立っているが、おじさんはそれに興味を示すこともなく、タバコに火をつけた。
 僕は「・・・

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飼育員のおねぇさん

16/04/11 コメント:1件 ケイジロウ 閲覧数:449

 ここは天国に違いない。
 なんか水が穏やかだ。そして、きれいだ。
 餌が簡単に手に入る。昨日山田君に教わったんだけど、あの餌は飼育員と呼ばれる人間が、決まった時間に決まった量の餌を僕たちに届けてくれているらしい。お腹がすいたと思ったら、上からヒラヒラと餌が降ってくるので、おかしいなと思っていたんだけど、そういうことらしい。だから狩りの心配も空腹に苦しむ必要もなくなったんだ。
 ・・・

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臭豆腐と香港映画

16/03/28 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:387

 蒸し暑いホコリまみれの工場での長い一日をいつも通り終え、オレは帰路についた。上海の方で賃金が上がり始めている、と今日湖南人が騒いでいた。ここ蘇州の賃金はまだしばらく上がらないだろう。周りのみんなは上海での転職を考え始めているようだが、オレはここを離れられない。この辺でオヤジが電気屋を営んでいて、オレがたまに手伝わなくてはならないからだ。
「・・・。」
「おう、おかえり。あのな、ちょっ・・・

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カエルが降ってきそうな夜

16/03/14 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:515

 ある冬、変な男とシェアハウスで同棲することになった。
 そのシェアハウスは古いプレハブの一軒家で、リビング(物置きになっているが)、キッチン(これも物置き)、トイレと風呂(過去5年以上掃除されていないことは僕が保証する)、そして寝室が三部屋ある。各寝室には2、3人がシェアしていた。その西側の一室に僕はその変な男と同棲することになったのだ。
 彼は僕と同い年の29歳。外見は日本人と変わ・・・

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文字通りギャンブル

16/02/29 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:453

 僕がパチンコで生計を立てていることがわかると、「じゃぁ、今からカジノ行こうよ。」と彼が提案してきた。
 ホステルのドミトリーで1時間前に会ったばかりの青年である。ここは海外だというのに、日本語で「日本人ですか?」といきなり聞いてきた。日本人に会えて僕も正直嬉しかったが、一応ポーカーフェースで気取っておいた。僕はこの宿に前日着いた。だから僕は彼の先輩である。だから僕は彼より偉いのである。

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チャイ屋さん

16/02/15 コメント:1件 ケイジロウ 閲覧数:560

 こうなるのであれば、さっきの売店でコーラをたらふく飲んでおくべきだった。
 ジリジリと肌を焦がしてくる灼熱の太陽、車が通るたび舞う砂埃、黒い排気ガス、牛・山羊・象・人間の糞、そしてカレーの匂いがごちゃ混ぜとなり、僕の頭をポワァーとさせる。僕はインドの農村地帯を自転車で走っている。国道をのんびりと横断する象、あまり尊敬されているようには見えない聖なる牛、へんてこりんな音楽を鳴らしながら走るオ・・・

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コタツの中で考えたこと

16/02/01 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:541

 気が付いたらあたりは真っ暗で、パソコンの画面が僕の部屋で唯一の光源となっていた。
 どれくらい僕はパソコンに向かっていたのだろうか。寒い。コタツに下半身は入っているがコタツの電源は入っていなかった。コンセントすら入っていない。コンセントを入れるには一度コタツをでなくてはならず、それも面倒臭いのであきらめた。疲れているかもしれない。目を3秒ほど閉じると、一瞬平衡感覚がなくなった。やっぱり疲れ・・・

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手紙

16/01/18 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:542

 一方的に別れを告げられたその短い手紙を読み終えた時、とても辛いと感じた。
 この感想には自分自身も驚いた。今まで何人かの女性と付き合ったことはあったし、それぞれの「終わり」を経験してきた。しかも、だいたい振られている。しかし、「辛い」というよりホッとするのが常であった。今までの付き合いと今回の付き合いとでは何かが違うのだろうか。
 とりあえず、靴を脱ごう。考えるのはそれからだ。僕は靴・・・

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落ち葉

16/01/04 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:523

 緑色の葉っぱは、赤や黄色を経て茶色くなり、そしてヒラヒラと地に落ちていく。その落ちた葉っぱはいつの間にか路の上から消え去っていく。どこへ行くのだろうか。僕は公園のベンチに腰を下ろし、缶コーヒーを啜りながらそんなことを考えている。僕が茶色と騒いでいた葉っぱは、実は緑色だったのかもしれない。いや、たとえ本当に茶色だったとしても、緑色とみんなが信じていたのであればそれでよかったのではないだろうか。僕は・・・

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他山のチーフ帽

15/12/14 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:582

 人のことを馬鹿というのはあまり好きな方ではない。ただ、あの人は馬鹿である。
 
 柿の木も渋柿だけを残して裸になってしまった時分、私は惣菜を作る工場で働き始めたの。
 あれはここで働き始めて2日目だったかしら。人参を乱切りしてくれとあの人に言われたので、切っていると、あの人はため息をついた。舌打ちも聞こえたような気がした。どうやら、大きすぎたようだ。あの人が違う人経由で私に伝え・・・

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キムチ味のエリンギ

15/11/30 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:508

 どうやら僕は奇人らしい。
 毎日大学から戻ったら、まずスポーツドリンクを200cc飲む。いつも2リットルのボトルを買うので、10日間で一本のペースである。9日間ではない。11日間でもない。10日目に195ccしか残っていないということもない。僕にとっては普通なのであるが、どうやら一般的には普通ではないらしい。
 毎朝7時起床。腕立て3回、腹筋3回やったあと、牛乳を150cc飲む。この・・・

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星と金とウィスキー

15/11/16 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:487

 ゴールド探しで一番大切なものは何か?、ゴールド探し歴40年の老人が「ペイシェント(忍耐)だ」と答えたのを思い出した。その時、よく意味を理解していなかったと今になって思う。ゴールド探しにおける失敗の意味、いや人生における失敗の意味もよくわかっていなかったとつくづく思う。
 今、西オーストラリアの砂漠に僕はいる。360度地平線。人工物と言えば高度1万mをたまに通り過ぎる飛行機くらいか。それがた・・・

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三角形の中の沖縄

15/10/05 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:620

 昨年の秋まで、僕には3年ほどの付き合いになる彼女がいた。その子は、「沖縄のタイ式マッサージスクールに行くことにしたの」と僕から離れた。たまに電話やメールで連絡を取り合うものの、それぞれ仲間に囲まれた生活をしているせいか、「支えあう」といった感情は全くもってなかった。お互いに相手を必要としていなかったことは明らかであった。
 そういう状況の中、僕は決断した。僕は彼女に手紙を出した。「別れよう・・・

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線を引くオバサン

15/09/21 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:626

 それにしても同僚の藤森さんが歌ってる曲ひどいわねぇ。早く終わんないかな。まずこの画面に出てるカップルが問題なのよ。さっきも君たち出ていなかったっけ?この曲は誰の曲で、詩が今後どういう展開になっていくのか知らないけど、絶対にこの二人別れるわ。だってさっきも別れてたもん。で、男は雨の中走り出すんでしょ。あぁつまんない。
 私がアニメオタクだということを最初に断らなくてはならないわね。アニメがあ・・・

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火星人と生徒会長

15/09/07 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:604

「佐々木君、何番?」
「えっ?」
 びっくりした。とてもとてもびっくりした。僕はその時西暦5078年の宇宙にいたのだが、大気圏だとか着陸だとか難しい手続きを経ることなく、一気に地球に戻ってきた。僕が座っていた中庭の一角に戻ってきた。そして、よくわからないヒップホップミュージックが強烈な勢いで僕の耳に入り込んできた。
 優勝争いに毎年入る実力を持つ女性が、毎年最下位争いをしている僕・・・

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三本の煙草

15/08/24 コメント:1件 ケイジロウ 閲覧数:653

 「お前の背中はまるででたらめやぞ」
 まいったな。いやぁまいったな。そもそもなんであんなことを言われなくてはならないんだ。しかも見ず知らずのおじいさんに。
 嵐電の踏切がポワァンポワァンポワァンと間抜けな音を出している。空っぽの電車が僕の横をだるそうに通り過ぎていった。昨日の雨で桜がだいぶ散ったことに、電車からの風圧で舞い上がった花びらを見て気付いたが、なんの感情もわいてこない。だか・・・

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致死

15/08/10 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:698

 「おっ、、、とぉ」
 と人々は言う。停止中のエスカレーターを上ろうと二段目に足を下した時に。「今日のプレゼン噛みまくったなぁ」と階段の最上段に達していることに気付かず、なおも上り続けてしまった時に。「おっ」で驚き、句点の間で色々可能性を模索し、「とぉ」で結論に達するといったところか。すなわち、なかなか結論を出せずにいると句点がどんどん増えていく。そして、出された結論によって「とぉ」のトーン・・・

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小さな会議室

15/07/27 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:663

 その子が来た日も私は全身汗だくになりながら、旅館の前の雪をかいていた。
 「こんにちは。あの、今日からアルバイトでお世話になる者なのですが・・・」
 いつもなら、「あぁそぉコンチハよろしくね。」と素っ気なく新人の対応をする。舐められてはだめだと虚勢を張る。2週間以内で去る者が多いので、素直に歓迎できないといったところに本心があるのかもしれない。心のカーテンをこちらがバッと開け放っても・・・

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蝸牛

15/07/13 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:684

 ある特定の人に感動してもらおうといった目的をもち、その人の喜んだ顔を思い浮かべながらする掃除は、やっている最中もやった後もさわやかな気分になるものである。現場は汚れているほど良い。自然と鼻歌も流れでる。庭のアジサイにしがみついているカタツムリに微笑みかけたりもする。憎たらしい上司のことも、「まぁ、アイツにも一理あるのかな」なんて調子になる。
 これが掃除のあるべき姿や存在意義だとすると、そ・・・

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雄ライオンの考察

15/06/29 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:753

 本当のこと言うと別に欲しかったわけではなかったんだ。
 そりゃ、欲しかったよ。けど、なんて言えばいいのかな、それに対する情熱を僕以上に持っている人が仮に周りにいるのであれば、僕はそれを「どうぞどうぞ」と譲る、その程度で欲しかったんだ。
 
最後の一つのから揚げ。
 
 僕の向かいにはその時年上の女性が座ってたんだ。その女性はスラっとしてるんだけどまぁよく食べる。僕が・・・

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新宿バッハ(2)

15/06/22 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:667

「ブラボーブラボー、ハッハッハッ。まだ腕は衰えていないようだな」
パチパチと手を叩きながら男が新宿駅地下駐車場の柱の陰からゆっくり姿をあらわした。
暗くて男の顔がはっきり見えたわけではないが、ケイジロウはその男の声を聞き、久しく耳にしていないにも関わらずその声の所有者が誰のものかすぐに分かった。
「馬場さん?やっぱり“新宿バッハ”は馬場さんのことだったんっすね?あのゴリラにオレを・・・

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