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梨子田 歩未さん

ショートショート研究会所属。 【ブログ】http://nashida.hatenablog.com/ 【おしらせ】 2015/7 第5回マイナビeBooks作品コンテスト入賞。「姫とさとうしお」が電子書籍にて発売中。

出没地 町のベンチ 
趣味 小説をかくこと 本をよむこと 踊ること 絵をかくこと
職業
性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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○○日和

17/05/28 コメント:0件 梨子田 歩未 閲覧数:267

 ここのところ仕事が忙しく、休日出勤していた男にとって、久々に自由にできる休日だった。
 男は二度寝から目を覚まし、ベッドの上でしばらくぼんやりしていた。  
 カーテンの隙間から注ぐあたたかな日差しが気持ちいい。伸びをしてベッドから立ち上がると、カーテンを開けた。
 雲一つない真っ青な快晴に目を細める。
 こんな日は散歩日和だと外に出た。
 
 日差しはあるが・・・

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もう少しだけ……

15/09/07 コメント:0件 梨子田 歩未 閲覧数:764

 引っ越しの準備に追われ、気が付いたころには夕暮れの秋風に乗って、祭囃子が聞こえてきた。
 ミオが窓辺に近づくと、姉の奈緒が段ボールにガムテープを貼る手を止め、「お祭りか」と呟いた。奈緒は床に寝っ転がった。ミオもそれにならった。
「引っ越し、どうしてもするの?」
 奈緒は答えない。ミオは自嘲気味に笑った。
「ひとりで住むには、広すぎるよね。って、わたしのせいか。怒ってる?」・・・

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道をあるく

15/08/16 コメント:6件 梨子田 歩未 閲覧数:992

 一年と三カ月勤めた会社を辞めた。周りには、公務員試験を受けるために辞めるのだと誰のためか分からない見栄を張った。
 最初の一カ月はゆっくりした。昼に起き、だらだらとして、夕方にドラマの再放送を見る。そんな生活も最初は新鮮だったが、徐々に退屈になってくるのが不思議だ。
 かと言って、外をぶらぶらすると、昔の同級生の親だとか、近所の人に高確率でばったり会うぐらいの狭い場所に住んでいる。だ・・・

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わたしは罠にかからない

15/08/05 コメント:6件 梨子田 歩未 閲覧数:1837

‐ぽきっ、ぽきっ
 冷凍のインゲンは、少し力を加えただけで気持ちよく折れる。
 朝の弁当作りに冷凍食品は欠かせない。最近では、野菜の冷凍も種類が充実してきて、カボチャ、ブロッコリー、インゲンなどは、お弁当に彩りを添えるのに重宝する。
 お弁当に入れるにはインゲンは少し長いので、解凍前のインゲンを半分に折っていく。
 共働きの我が家では、弁当作りはわたしの役割だ。そういうこと・・・

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雨がやんだら

15/07/27 コメント:4件 梨子田 歩未 閲覧数:1520

 横から叩きつけるような雨に傘は意味をなさない。
 サマーニットが雨粒を吸い込んで、歩みを進めるたびに重みを増していく。風を受けた傘は簡単に裏返った。
 わたしは傘を閉じて、降りしきる雨を直接体に受けた。大粒の雨は地面に落ちて、弾けた。傘を差していた時は、濡れまいと必死で体を縮め、小走りに近かった歩みが今や一歩一歩が地面に吸い込まれる様に遅くなった。
 その理由は、十分すぎるほど・・・

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明日する掃除

15/07/13 コメント:1件 梨子田 歩未 閲覧数:830

「これ、いらないでしょ」
 私は、台所に積み重なったプリンの空カップを手に取った。祖母は顔のしわを増やして、言った。
「ちっこいもん入れられるもんで、便利だよ」
 私の手からカップをさっと取り、シンクの脇に散らばった輪ゴムをその中に入れた。
 その輪ゴムは何に使うのさ、という言葉を私はぐっと飲み込んだ。今日から一緒に暮らす祖母との第一日目に、口論はしたくない。
「学校・・・

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6月28日(日)

15/06/28 コメント:5件 梨子田 歩未 閲覧数:844

 日曜日の昼下がり、動物園は家族連れでにぎわいを見せている。
 動物の檻の前に、張り付く子どもたちを大人たちが微笑ましく見守っていた。それをさらに遠巻きに圭人は見ていた。
 木陰にあるベンチに座った圭人は、膝にスケッチブックを乗せ、鉛筆を走らせた。
 動物は檻の中に閉じ込められているから、スケッチするにはちょうどいい。周りの雑踏やおしゃべりも、スケッチに真剣になれば、心地よいBG・・・

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ゆうれい

15/06/13 コメント:8件 梨子田 歩未 閲覧数:1793

 うだるような暑さの中、与吉は天井を見ながら寝転がっていた。与吉は絵師とは名乗っていたが、待っているだけでは絵師の仕事が来るはずもなく、その日暮らしをしていた。
 顔がなまじいいものだから、本人もそれを承知で、うまいことを言って女から銭を巻き上げていた。女を長屋に連れ込んで、色白で色っぽい女を描いてやれば、落ちない女はいなかった。
 だが、すぐにぼろが出て女たちは金を返せというのだが、・・・

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ん、からはじまる

15/05/23 コメント:0件 梨子田 歩未 閲覧数:885


 日曜日、特に予定もなく、果歩はソファに寝転がり、文庫本を読み、泉は床に座り、ソファにもたれかかっていた。



 何の前触れもなく、泉が言った。

「ごりら」

「ラッパ」

 果歩は、文庫本を読みながら、答えた。

 二人は大学生時代からの友人で、社会人になってから、ルームシェアを始めた。
 泉とルームシ・・・

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賞味期限切れの恋

15/05/19 コメント:2件 梨子田 歩未 閲覧数:932

 
 ケンカはいつだって他愛無いことから始まる。
 
 日曜日の朝、久しぶりの何の予定もない休日に透は、ソファで寛いでいた。遅れて起きてきた有里沙が冷蔵庫を覗き、「ちょっと」と非難めいた声を上げた。
 有里沙は片手に大きいヨーグルトのカップを持ち、透の前に仁王立ちになった。
 有里沙は怒っている時ほど、声に抑揚がなくなり、冷たくなる。まだ、表情に怒りが出ている時は、怒・・・

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航海の城

15/05/18 コメント:0件 梨子田 歩未 閲覧数:901

 家から歩いてすぐが海だから、海が小学生だったぼくらの遊び場だった。

 ぼくは、海に入ったり、走り回るより、ただじっとして砂のお城を作ることに夢中になった。
 砂のお城を作るのには、技術がいる。海岸の砂は、さらさらとしていて、形を作ろうとしても、すぐに滑り落ちる。
 まず、砂浜を掘り、穴を作る。その中に、海水を入れ、ちょうど良い硬さの砂をブレンドする。
 ただ混ぜれ・・・

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人生の待ち時間

15/05/14 コメント:0件 梨子田 歩未 閲覧数:976

 人は、人生の三分の一を眠って過ごすという。それを知った近藤は、起きている時に無駄な時間を過ごしたくはないという思いに駆られた。
 近藤は『待ち時間』を最も無駄な時間だと考えた。

 遊園地や食べ物屋の大行列を見ると、近藤は吐き気がした。だが、まだこれはいい。行列が嫌ならば、並ばなければいい。
 だが、どうしても並ばなければならないときもある。
 
 例えば、・・・

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サンダルの行方

15/05/13 コメント:4件 梨子田 歩未 閲覧数:1195

 夜明け前の海辺には、だれもいない。
 ただ波が寄せては返す音と、朱里が足を進めるたびにきしむ砂の音がするだけだ。
 会社をずる休みするなんて、初めてだと朱里は小さく笑った。

−連休明けの今日、私みたいに休む人はいるのかな。

 朱里はこの砂浜をいつまでも歩いて行けそうだ、と思った。
 この砂浜にも、始まりと終わりがあるだろうが、それが見えない場所を歩い・・・

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