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水鴨 莢さん

短い話を書くのが好きです。 何か創作上のアドバイス等ありましたら、よろしくお願いいたします。

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投稿済みの記事一覧

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小さな海の怪物たち

15/05/12 コメント:2件 水鴨 莢 閲覧数:907

 ろくに働かず遊んでばかりのイヴァンなる若者がいた。
 ある日ついに家をおいだされ、あてもなく歩いていたが、やがて道もとぎれて海につく。
「どんづまりだ……。しかしこれは、一つチャンスなのかもしれないぞ」
 と彼はここで一番古株の漁師の名をきき、その家を訪ねた。独り暮らしときいていたが、戸口に立つと、
「あらお客さんね」とちょうど若い娘が出てきたので驚く。
 去りゆく・・・

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霧の中の船

15/04/20 コメント:2件 水鴨 莢 閲覧数:861

 霧の中で目を覚ましたドルガンは、蒼く霞む先に確かな獲物の影を捉えた。
 頭をふり、足下に転がる空の酒盃をフラフラと蹴りながら、操舵手へ檄をとばす。赤ら顔にズングリとした体型で、短い腕をふり回し怒鳴りちらす様はどこか滑稽でもあったが、彼を指していう”海の赤牛”の異名を聞いて震えあがらぬ者はこの海域にいなかった。
 船首で偏光レンズを覗くジャックの声があがる。霧のむこうに鮮明になりつつあ・・・

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かわいいルビアとおそろしい鬼

15/04/19 コメント:2件 水鴨 莢 閲覧数:832

 昔、暑い国での話。
 キンマの林のなかで、黒い腕が羊の頭をつかみ、それを黄色く鋭い歯がかじっていた。
 と、夕暮れの木々の向こうに紅い色が通る。しわくちゃの顔についた血をぬぐい鼻をむけると、大好物のブタのにおいがした。
「これはだいぶ活きのいいヤツだぞ」
 年老いたラクササ(鬼)は金色の眼を太陽のごとくギラギラさせ、羊の死骸をほうり林道へひとっ跳びした。
「あら! ・・・

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羽ばたく獅子の食卓

15/04/07 コメント:6件 水鴨 莢 閲覧数:1026

 三日後には最高の料理を用意せねばならず、領主は頭をなやませていた。
 貧しい村であり、急いでもジャガイモ料理やそば粉のクレープ、やせ兎のあぶり肉が精々なのだ。
 王は大変な食通ときいている。以前同じ状況になったある村はひと月前に報せをうけ、そのさいは町からの買い入れも十分になされ、ふるまった料理に満足した王からは多くの褒美をうけとったという。
 不作続きで冬ごえもきびしい今、領・・・

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バラバラのおよめさん

15/04/03 コメント:6件 水鴨 莢 閲覧数:1005

 トマという若者には近ごろどうしても知りたいことがあった。
 そのことを考えてウンウンうなりながら歩いていると、青い頭巾をかぶったおばあさんに呼びとめられた。
「これお若いの、なにをそんなにお悩みだね?」
「なにをっておよめさんのことに決まっているじゃないですか。どんな人がぼくのおよめさんになるのか、それを考えると畑仕事だって手につかない有様です」
「なにそんなことかね。あ・・・

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レコルターと人食い屋敷

15/04/02 コメント:2件 水鴨 莢 閲覧数:1000

 不思議なレコルターのことはすでに知っている人もいるかもしれない。
 レコルターすなわち”刈る人”という呼び名の通り、彼は常に大きな鎌を腰へさげ、黒鵞鳥の羽毛つき皮袋をせおっている。本当の名前は不明だ。
 彼についての伝説や昔話は幾つかあるが、これはそのなかでも最後にあたるであろう話。

 その村を彼が訪れたときはまず警戒があった。つば広帽を深々とし、詰襟で鼻下を隠し、鋭い・・・

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いなくなったカエル

15/03/28 コメント:6件 水鴨 莢 閲覧数:1027

 川向こうの村に学校ができたと知り、農夫が息子を通わせようと思いたった。
 なんせ末っ子のイヴァンときたら他の兄弟とちがってできが悪く、せっかくあたえられた畑で作物をつくっても、ろくに面倒をみないから虫やカラスに食われ放題。粉ひきをまかせても、水車の手入れをしないため臼の回転が悪く、仕事がおそいときてる。
 しかし当のイヴァンは「これはそういうものなのだ」と深く考えずさぼっては寝てばか・・・

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剣鬼去る

15/03/09 コメント:4件 水鴨 莢 閲覧数:1285

 佐賀の草摩流道場で、かつて二人の門人による果し合いがあった。
 一人の窪井新左衛門は、師範草摩左近の遠縁にあたる、長身で鼻筋の通った美丈夫。
 もう一人の笹倉久蔵は、師事歴は新左衛門よりながく、浅黒く険のある顔の偉丈夫。
 若き両雄、元は高く実力伯仲していたが、その頃には新左衛門の成長が著しく、差が開くにつれ久蔵の焦燥は激しくなっていた。
「立ち合え、真剣ならば決して負け・・・

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嫉妬姫、あるいは雪ふる前の物語

15/03/01 コメント:6件 水鴨 莢 閲覧数:1086

 寒く山にかこまれた小さな国にカタリナという姫がいた。
 近ごろ姫はゆううつな眼で城から外を見おろしている。
 その先には庭で談笑する父王とそして半年前にこの城にきた王妃の姿。
「あなたカタリナが……」
「おお姫もこちらへおりてきなさい」
 だが姫はプイとひきこんでしまうのだ。
 実の母は姫が五歳のとき病で亡くなっている。王は悲しんで十年ものあいだ独り身でいたが・・・

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救済の女神

15/02/27 コメント:7件 水鴨 莢 閲覧数:988

 みんなは香野のことを誤解している。
 だから今回の大珍事とされていることも、ぼくにはさほどおどろくにはあたらないのだ。
 たとえば春の聖歌コンクールでぼくらのクラスは中等部門で二位の成績をおさめた。
 そのときのムードは「あーあ」と「まあがんばったよ」で大体半々だったけど、香野だけがちがっていた。
 彼は教室へもどるなり机に顔をふせた。そして小さく鼻をすする音がもれると、・・・

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黄泉を呼ぶ (再送)

15/02/25 コメント:4件 水鴨 莢 閲覧数:928

『渋谷の海』については当時赤新聞の記事等で眼にした人もいるだろう。
 忘れもしない昭和十年四月五日――その日は渋谷区連続失踪事件の取材に一日を費やしていた。
 だが夕刻に社へ戻るや「電報があった。すぐ戸倉探偵事務所へいってくれ」とデスクからのお達し。
 ウンザリしつつも徒歩二十分ばかしの古書店二階の事務所へ。しかし、
「先生はやはり渋谷へいって待っていると……あ、それと堂島・・・

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ヒーロー・オブ・ザ・ストリート

15/02/19 コメント:2件 水鴨 莢 閲覧数:847

 若造が――。
 傷だらけの姿を見おろしていると、
「へっ、忠告しにきたリクさんに刃向いやがって。流れもんがよォ」
 仲間が追撃をかけようとした。が、「まて」と制し、
「タイマンでオレとここまでやるとは、見所あるな」
 渋々とさがる仲間たちの下で、カイという若者は荒い息のままオレを見あげ、憎たらしい笑みをうかべた。

 生きるためのスベってのは場所によって・・・

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