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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

出没地
趣味 読書 書店散策
職業
性別 男性
将来の夢
座右の銘 不言実行

投稿済みの記事一覧

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アリを潰すのは正義?

17/05/22 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:122

 部屋の床を、一匹のアリが這っていた。それを私はしばらく眺めていた。こんなちっぽけな昆虫にも、感情があるものなのだろうか、何を目的として生きているのだろうかなどと考えながら、じぃっと眺めていた。それを目にした母は、血相を変えてアリを踏み潰した。
「なにボーっとしてるんだい!いいかい?家の中でアリを見つけたら、すぐに殺すんだよ?でないといずれ、この家はアリによって滅ぼされてしまうんだからね!わ・・・

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頭がプリンになっちゃったから、病院いってくる

17/05/06 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:227

 ある日の休日の朝。布団で気持ちよく寝ていると、彼女から一本の電話があった。

『わたし、頭がプリンになっちゃったから、びょういん行ってくるね』

「………なんだと?」

 私は耳を疑った。いま、彼女はなんと言った?私の聞き間違いだろうか?頭が…なんだって?頭がプリン?びょういん行く?病院!?

「もしもし?もしもし!?」

 電話は既に・・・

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『たまらん箱』がもたらしたもの

17/04/11 コメント:6件 霜月秋介 閲覧数:395

 高校三年の浦須間太朗は、友人を自室に招き入れて雑談していた。
「お前の部屋、ゲームもなければテレビも無いし、つまらねえな。そろそろ帰るわ」
 そう言い放って帰ろうとする友人に、太朗はとっさに「危ない!」と叫んだ。友人の足元に、カメムシが這っているのに気付いたのだ。太朗の呼びかけにより、なんとか友人はカメムシを踏まずに済んだ。

 その夜。寝ている太朗の枕元に、一匹のカメム・・・

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なんで?

17/04/07 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:429

「ねぇママぁ、なんでこの電車、みんな横並びで座るようになってるの?なんか落ち着かないよ」

「そのほうが、多くのお客さんが乗れるからよ。我慢しなさいね」

「はぁい…」


 夜の電車のロングシートに座る母と子。そのまわりにはいろんな乗客が乗っている。スマートフォンに夢中な女子高生、雑誌に夢中な男子高生、これから夜のデートに向かうOL、イヤホンを聴きながら・・・

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些細な失敗、些細な傷、些細な成長

17/03/25 コメント:5件 霜月秋介 閲覧数:294

 インスタントコーヒーの粉をひとさじ分マグカップに入れ、ポットのお湯を注いだ。注ぎ終わってから、ポットの湯を最後に取り替えたのが五日前だったことを思い出した。捨てるのが勿体無いのでそのコーヒーを飲んでみた。くそ不味かった。

 好きな漫画の続きがはやく読みたくて、毎月購読している月刊ヤングジャボンという漫画雑誌を発売日当日に書店に走って買いに行った。最近は立ち読みできないように、その雑・・・

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見せてくれる女

17/03/08 コメント:8件 霜月秋介 閲覧数:535

 あなたはこんな都市伝説をご存知だろうか?
 午前四時に四丁目を散歩すると、見るからに素っ裸の上にロングコートを羽織っただけの姿をした、若く美しく髪の長い女性に会うという。その女性に「見せて欲しい?」と尋ねられ、それに「うん」と答えると、更にその女性は「じゃあ私が見せたら、あなたのも見せてくれる?」と尋ねてくる。それに「うん」と答えると……。


「助川さんって、優しくてい・・・

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春の訪れ、飛び跳ねるミカン達

17/02/21 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:316

 日曜の朝。部屋の窓を覆うカーテンの隙間から、温かい日差しが差し込んでいる。私は伸びをしながらカーテンを開けた。するとまぶしい光が私を照らした。窓の外には、雲ひとつない青空が広がっていた。地面を覆っていた雪はすっかり解け、庭のあちことにはフキノトウが咲いている。春だ。寒い冬が終わり、暖かい春が今年も訪れたのだ。心が躍る。こんな日に、家に引きこもっているのは勿体無い。
「ミカコ!朝食できてるわ・・・

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はるかなる高みへ

17/02/09 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:387

 私には、住む家が無い。いや違う。家ならある。新宿中央公園敷地内に、私が自ら建てた立派な家がある。スーパーから貰ってきたダンボールと、ゴミ箱から漁った割り箸をガムテープを使って組み立てて作った家。今住んでる家はまだ、建ててから二日も経っていない新居だ。以前住んでいた家は二日前の雨風によって、あっけなく全壊してしまった。ちなみに今住んでいるのは十二軒目の新居だ。家を建てるのには、そりゃもう苦労したよ・・・

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ハブラシくださぁい

17/01/21 コメント:9件 霜月秋介 閲覧数:780

 あるはずの無いものと、起こるはずのない出来事。
 あの夜、僕が体験したのは、まさにそれだった。



「おい星野!みろよ、このネクタイピン。昨日俺の彼女がプレゼントしてくれたんだぜ」
 そういって松尾さんは、僕にネクタイピンを見せびらかしてきた。
「そうなんですか、似合ってますよ」
 僕はありきたりな感想を述べた。既に深夜〇時をまわり、睡魔が襲って・・・

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殺すか否か

17/01/06 コメント:8件 霜月秋介 閲覧数:721

 ネズミが掛かっていた。
 元旦の朝、伸びをしながら台所の前を通ったら、毎晩台所を荒らしまわっていたと思われる子ネズミが、粘着タイプのネズミ捕りに張り付いていた。両手両足の自由を奪われ、もがいている。
「やったわ!これで台所を荒らされずに済むわ!毎晩毎晩、物音で眠れなかったのよね。新年初日からついてるわ!」
 後ろから、嬉しそうに妻が話しかけてきた。
「ああ、そうだな…」<・・・

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無駄なあがき

16/12/20 コメント:6件 霜月秋介 閲覧数:401

 まあ、そう騒ぎ立てるなよ。まだ時間に余裕はある。えいくそ、もう五分遅くセットしておくべきだった。わがスマートフォンの騒がしいアラームよ、もう少し、私をこの温かい空間に留まらせてくれ。
 布団から顔を出すと、ひやりとした空気が顔の皮膚に襲い掛かる。私は再び布団に潜り込んだ。暗闇ではあるが、とても温かい空間。そこから抜け出す準備が、今の私にはまだ出来ていない。この温かい空間で、もう一眠りしたい・・・

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祝う気ゼロ

16/12/11 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:551

 雪は降り積もり、道路を白く覆う。冬は、いろんなものが覆われる時期だ。
 今日は十二月二十四日。世間の認識ではクリスマスイブ。しかしそれだけではない。今日は俺の、十四歳の誕生日だ。
 今夜は家族全員、家でパーティーをする予定だ。買い出しにいった母が、家に帰ってきた。買い物ついでに、近所のケーキ屋に予約していたケーキを取りにいってきたのだろう。俺の誕生日ケーキが入っているらしい、正方形の・・・

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描こう!人生美術館

16/12/05 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:545

 俺は今、自分が何を描きたいのか、それがわからない。
 二十歳で漫画家デビューし、今年で三年目。いままで二作、雑誌で連載をしたが、いずれも十週で打ち切りになった。人気が出なかったのは勿論のこと、自分でも描いてる途中で、創作意欲が無くなってしまった。自分がいままで描いてきた漫画を読み返してみると、たしかにつまらない。絵も話も平凡だ。これでよく、連載までこぎつけたものだと自分でも不思議に思う。行・・・

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私、心配しないので

16/11/18 コメント:10件 霜月秋介 閲覧数:765

「なんか違うんだよなぁ、うん。なにかが違う」
 先生の仕事場を訪ねると、暗い部屋の中で、先生は机に向かって、頭を掻きむしりながら何かを考えている。
「何をそんなに悩んでおられるのですか?」
 私が尋ねると、先生は振り向いて笑顔を見せた。
「やあ志村くん。相変わらず美しいな。いやなに、次の連載会議に出す予定のさ、新作漫画の主人公の決め台詞を考えていたんだよ。しかしいいのが思い・・・

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路上ミュージシャンは今日も叫ぶ

16/11/17 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:571

 ロックとは、捨て台詞のようなものだ。相手の返答を求めず、ただひたすら自分の思いを音にのせて吐き捨てる。
 そして俺は、毎日路上で言葉を吐き捨てる。黒い革ジャンを身に纏い、ギター片手に、世の中に向かって叫びたいことを自分勝手に叫ぶ。
 親には頼らない。俺は有名なミュージシャンになる。俺の歌で、俺自身の力で生きていく。そう捨て台詞を吐いて、田舎から上京してきた。なにも成し得ずに帰るわけに・・・

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投げ捨てたボール

16/11/13 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:611

 僕の家の近くに、川原がある。その川原には、テントを張って暮らしているおじちゃんがいる。
 僕はいつも夕暮れ時、部活が終わって学校から帰ると、そのおじちゃんとキャッチボールをしている。
「たくや、明日野球の試合なんだろう?どこ守るんだ?」
 おじちゃんがボールを投げ、僕はそれを左手のグローブでキャッチした。そして、おじちゃんにまた投げ返した。
「補欠だよ。試合に出してもらえ・・・

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前向きパピプペポ

16/08/14 コメント:1件 霜月秋介 閲覧数:950

 仕事帰り。日が沈みかけている。まるで私の心とシンクロしているようだ。なかなか思い通りに動いてくれない、重い足をゆっくりと動かし、家へと歩く。
 今日、仕事で失敗をし、「お前は何年この仕事をやっているんだ!この出来底無いが」と上司に言われた。その言葉が頭の中で何度も再生される。もうすぐ還暦を迎えるというのに、私はいったい何をやっているのだろう。
 足がどんどん重くなっていく。あたりがだ・・・

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タンス!タンス!!ダンス!!!

16/08/01 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:1139

 ステップを踏み続ける。私はただひたすら、何の感情も持たずにステップを踏み続ける。しかしいくらステップを踏んでも、前には進めなかった。前に進もうとする意思など、今の私には無いからだ。
 事務的に、もとい感情の無いロボットのように踊る私を見るに見かねたのか、ダンススクールの先生は溜息まじりに言った。
「駄目だね。全然駄目だ。今の君には踊りたいという意思が欠けているようだ。これならまだ、一・・・

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妻の弁当は屋上で

16/07/11 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:1473

 場所はとても重要だ。誰の目も気にすることなく昼間、弁当箱のふたを開けられる安全な場所。人目を避けるなら御手洗いが無難なのだろうが、さすがにそんなところで弁当を食べる気にはならない。
 私は毎日、会社の屋上でひとり、弁当を食べている。理由は些細なことだ。妻が毎日つくってくれるデコ弁を、会社の同僚に見られたくないからだ。ただそれだけの理由だ。
 ごはんの上に鮭フレークをハート型に盛り付け・・・

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悲劇の色彩

16/05/09 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:1357

 アヤコは迷っている。明日のデートに来ていく服をどうするか今、物凄く迷っている。
 もうすぐ時計は深夜零時をまわる。明日のデートに備えて睡眠をとらなければならない。そんなことはわかっている。しかし、着ていく服が決まらないうちは眠れない。
 それもそのはず。明日は憧れの坂本先輩との初デートだ。明日アヤコが着ていく服で、今後の運命が左右される。重要なのは第一印象。着ていく服で、彼氏からみた・・・

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ストレス戦隊ストレンジャー

16/04/16 コメント:6件 霜月秋介 閲覧数:988

 町では近頃、犯罪が増加している。町を歩く人々は殆どが怪訝な表情をしている。みな、なにかしらのストレスを抱えているのだ。ストレスが人を犯罪行為へと導いたのだ。
 こうもストレスを抱える人間が増えた人間は、最近町に現れたあの五人組の仕業だろう。『ストレス戦隊ストレンジャー』と呼ばれる謎の集団である。

 まず一人目のストレスブルー。彼は青いスーツに身を包み、「重たい本より電子書籍」・・・

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猫、春を駆ける

16/04/01 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:612

 私は冬が嫌いだ。冬の厳しい寒さは我々の生命を脅かす。冬は我々の行動が制限される。冬ほど退屈な季節は無いだろう。だから待つしかないのだ。コタツと呼ばれる文明の利器で暖を取りながら、ミカンという名の果実を頬張り、毛玉をころころと転がしながら、春が来るのをただひたすら。
「ちょっとヒロシ!いつまでコタツに入っているのよ!外に出てお父さんのタイヤ交換手伝ってきなさい」
 一瞬私が怒られたのか・・・

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味のパイオニアと水族館

16/03/14 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:1010

 昨夜未明、近所の水族館で放火事件があった。犯人は逮捕された。犯人はグルメを自称しており、水族館の中で泳ぐ魚達を焼いて食べようとしたらしい。犯人の名は酒名萌留さかなもえるといい、まだ女子高校生である。水で火がすぐ消えることは考えなかったのだろうか。愚かである。
 しかし私は、その酒名萌留に興味をもち、彼女について少し調べることにした。雑誌記者の血が騒いでいるのだろう。彼女について、面白い記事・・・

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クサイモノに銃声

16/03/07 コメント:5件 霜月秋介 閲覧数:1073

状況は今、極めて深刻である。私は窮地に陥っている。あたりは静まり返っている。今、私に救いの手を差し伸べてくれる者は誰一人としていない。私は最早、立ち上がることも出来ない。立ち上がった瞬間、すべては終わる。私が今まで築き上げてきた清純なイメージが一気に、ジェンガのように崩壊するだろう。それだけは避けたい。なんとかこの状況を打破する策を練らなくてはならない。
 私は神を憎む。今日は大切な日な・・・

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森林同棲。

16/03/06 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:634

 セイは、自分に自信が無かった。意気地が無かった。だから人に好かれているという実感が持てなかった。
 つきあっている彼女の前ではいつも、必死に強い自分を演じていたが、いつかその化けの皮が剥がれ、ありのままの自分をさらけ出すのが、嫌われるのが恐かった。彼女の方から告白されたので、とりあえず承諾して付き合ってはいるものの、その次のステップに進むのを躊躇している。自分は彼女を大切に思っているのか、・・・

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OPEN!THE DOOR

16/02/22 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:1031

 会社帰り。僕は今、街中をひとり歩いている。今歩いているこの通りにはラーメン屋がありピザ屋もありパン屋もある。牛丼屋もあるし焼き鳥の屋台あれば、更にはカラオケボックスやゲームセンター、バッティングセンターもあればパチンコ屋もある。まさに誘惑のストリートと言っても過言ではない。一人暮らしなので家に帰っても一人だし、遅く帰っても困る人間はいない。財布の中の所持金の許す限り、遊び放題である。
 財・・・

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緑茶依存の夫

16/02/05 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:888

「先生、どうなんですか?私の夫は…」
 私が恐る恐る尋ねると、先生は静かに口を開いた。
「伊藤さん、あなたのご主人はカフェイン依存症ですね。おそらく毎日大量に飲んだ緑茶が原因でしょう。これからは当分カフェインを控えてください」
 病院の診察室。夫は私の隣で呆然としていた。今の先生の一言に対して動揺しているのかしていないのか、何の反応もせず只黙って、口を少し開いたまま、瞬きだけを繰・・・

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我輩の愚痴である。名前は未だ無い。

16/02/01 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:704

 読者に媚びず、芸術性を重視したものを純文学と呼ぶらしいが、私には大衆文学とそれの境界線が見えない。わからない。
 そもそも私は文学については疎い方である。私は小説をあまり読まずに育った。というより小説に興味を抱けなかった。それが災いしてなのか、文章力も読解力も人に比べてさほど無い。それが最近になって興味を持ち始めている。
 明治の文豪、夏目漱石の本を何冊か読んでみた。そこで私は、いく・・・

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ついてる彼女

16/01/15 コメント:6件 霜月秋介 閲覧数:1268

 彼女と付き合って一年が過ぎた。彼女の名前は美咲。亜麻色の長い髪に、透き通るような声。俺を見つめる潤んだ瞳。すらりとしたモデル体型。ここで断っておくが、俺は彼女を外見のみで選んだわけじゃない。大事なのは見た目よりも心。見た目がいくら綺麗だろうが心が醜ければ付き合いきれない。そう。俺は彼女の内面に惚れたのだ。彼女のおっとりとした優しいところに惚れたのだ。そもそも彼女とはネットを介して知り合ったのだ。・・・

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全部ぶち壊せ!

16/01/04 コメント:9件 霜月秋介 閲覧数:1818

 消費している。僕はただ、毎日を消費して生きている。特別欲しいものは何も無い。知りたいこともない。そんなもの、あってもネットで検索すればすぐわかる。
 ぬるま湯に延々とつかっているような毎日だった。体温が、お湯の温度と共に熱を加えられることも無く段々と下がってゆく。そんな日々を、これから何十日も何十年も過ごしていかねばならない。そう思って窓の外の景色を覗いていると、突然、その男は現れた。

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気づかぬ幸福

15/12/15 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:1046

 もうすぐ今年が終わる。今年の流行語大賞が決まり、紅白の司会も出場歌手も決まった。テレビのニュースキャスターが「今年も残すところあと○○日です」とあせらせてくる。時の流れは無情である。
 こんな筈では無かった。今年は去年よりももっと、充実した日々を送る筈だったのに、いったい僕は今年、何をしていたのだろう。家と職場の行き来が常。休日は昼まで寝て、午後を呆けて過ごしているうちに夜になり、休日が終・・・

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自分の舌で確かめろ!

15/12/12 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:646

 味覚は人それぞれである。それ故に、友人に「あの店のラーメン美味しかったよ」と言われても、あまり参考にはならない。現に過去に友人に勧められて行った店の何軒かは、自分の舌に合わなかった。旨いか不味いかを判断できるのは実際、自分の舌なのだ。

 しかし逆に「あの店は不味いよ。行くんじゃなかったよ」という友人の意見は信用する。成功談よりも失敗談。友人が自分の財布の中身と、一日に二度とないかけ・・・

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カメムシの味に引き出された感情

15/11/01 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:598

「あなたって、はっきりしない男よね」
 味噌汁をすする私に、妻は溜息をしながらそう言った。味噌汁の味噌加減はどうかとか、漬物の塩加減はどうかとか、食事のたびに私に聞いてくる妻に、私はいつも「ああ、問題ない。ちょうどいい」と答えてきた。その回答が妻にとっては曖昧で、不愉快らしかった。私はそこそこ食えれば多少味がしょっぱろうが薄かろうが構わないのだ。細かいことは気にしない性質なのだ。

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ダンボールに隠されたアイデンティティ?

15/10/18 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:628

 部屋のあちこちに山積みになっているダンボール達。それは日に日に増えていった。そのダンボールを増やし続ける僕の心の片隅には、「このままではいけない」という思いが、きっと少なからずあったのだろう。

 僕は、なにかと物を溜め込んでしまう人間である。いや、物を捨てられない人間だと言い換えるべきだろう。持ち物に対するこだわりが強く、捨てることは、自分を捨てることと同じことだと考えている。

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至福のひととき

15/09/20 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:912

 その人は、アニメが好きな人でした。

 その人は私の会社の同僚で、私の右隣のデスクに座って仕事をしていました。

「あ、今日はトラエモンの日じゃないか」

 彼は、自分のデスクの上のカレンダーを見ながら、時々そのようなことを口にしていました。彼のデスクの上のカレンダーには、その日にテレビで放送されているアニメがメモ書きされていたのです。それほどアニメが好きでし・・・

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兄め!

15/09/12 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:1116

 私の兄は高校三年生だ。私の兄の部屋はとても混雑している。天井までの高さがある本棚をぎっしりと埋める漫画本に、床にはアニメのDVDやアニメのヒロインのフィギュアが、足の踏み場を見つけるのが困難なほどに散乱している。そして部屋のBGMは、テレビから流れてくるアニメヒロインの萌えるような声だ。そう、兄は世間でいうところの、アニメオタクである。兄め!
 もともと兄は、好きなことに集中すると周りが見・・・

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向けられた銃口

15/09/03 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:1068

 私の尻は今、とても危険な状態にある。そう。私の尻は、背後から狙われているのだ。

 私は私の愛する小学三年生の娘・マナミと妻を連れて、夏祭りに来ている。わたあめやババヘラアイス、金魚すくい、射的など、いろんな店が並んでいた。最初は三人で行動していたのだが、人ごみにまぎれてしまい、私ひとり、妻子とはぐれてしまった。しばらくしてから、ようやく私は妻子と合流できたのだが、そのときマナミはあ・・・

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きっかけから生まれしもの

15/08/21 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:1017

 私がこの『時空モノガタリ』に出会ったきっかけは、一年ほど前に長編小説を書こうと意気込んで見事に挫折した時だ。掌編を募集しているサイトがないかとネット検索してみたところ、このサイトを見つけたのだ。二千文字以内。これなら自分にも出来るかもしれない。そう思った。掌編を書いて、その掌編を誰かに評価してもらえる。はじめてコメントを貰ったときの感動は今でも忘れない。私が掌編を書く楽しみを知ったのはこの『時空・・・

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ひっかかった大物

15/08/10 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:904

 毎晩真夜中になると、台所の方から物音が聞こえる。シンクの三角コーナーにある残飯をあさる音。ネズミだ。私の家は、毎晩ネズミの被害に遭っていた。
 朝起きてみると所々にネズミの糞。台所がネズミの小便くさい。ネズミの汚物の後始末ばかりのこんな毎日に、早くおさらばしたい。
 今までネズミ捕りを台所のところどころに仕掛けたが、小さい羽虫ばかりがくっついていくばかりで本命のネズミがひっかからない・・・

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私は美しい、私は美しい、私は…

15/07/26 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:1016

「私は美しい、私は美しい、私は美しい…」
 毎朝、私は鏡の前でこう呟くの。仕事に行くのが億劫な朝にこれをやれば、自分に自信が持てて、やる気が沸いてくるってこないだ朝の報道バラエティでやってたわ。でも生憎今日は風邪気味だから、マスクをして仕事に行くわ。これじゃあせっかくの美女が台無しね。
「レイコ!帰りにホームセンターに寄って、手狩り鎌を買ってきておくれ」
 もう。うちのママったら・・・

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赤いマフラーの女

15/03/01 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:1009

 その女性と出会ったのは三ヶ月前。暇つぶしにSNSのチャットで見知らぬ彼女と話しているうちに仲良くなった。実際に会ってみると外見も私好みの女性。名前をレナといい、黒の長髪にクリーム色のオーバーコート。赤いマフラーで口元を隠し、とてもおしとやかな性格であった。何度かデートを繰り返した後、付き合い始めた。
 私は恋愛に関しては経験がまるでない。なので、幼なじみの晴菜に女心やデートの時の心得など、・・・

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カメムシ大流行

15/03/01 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:1040

 僕の田舎は青森の山奥にあり、春と秋は、部屋に侵入してくるカメムシとの格闘で忙しい。布のガムテープやらティッシュやら、カメムシの姿をみると即座に駆除した。
部屋でコーヒーを飲んでいた時のことだ。飲み終えるとカップの中に黒い物体が残っていて、よく見るとカメムシの死骸だった。僕の気付かぬうちにコーヒーカップの中で溺れたのだろう。そうとも知らずにカメムシ入りのコーヒーを全部飲み干してしまった。苦い・・・

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温かい日差しの下で

15/02/11 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:782

 冷たい…。頬に雨粒が触れるのを感じる。
 絶えず小刻みに耳を震えさせる、馬の駆ける音。それに混じり、火縄銃が放つ重い音、飛び交う矢の風切り音に、刃と刃が反発し合う音。それらの耳障りな音は、私の耳を容赦なく攻撃する。
 馬の上にあった私の体は、背後から襲った鋭い痛みの末落馬し、いつのまにか地面に仰向けになっていた。
 ひんやりとした地面に背中を当てて私は、ただ空を見ていた。

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ひきこまれるクラシック

15/02/04 コメント:7件 霜月秋介 閲覧数:1038

 受験勉強の際、机の上に漫画本を置いておくのは危険な行為です。理由は言うまでもないですね。家の大掃除の際に昔のアルバムを見つけてしまった時と同じような結果が訪れてしまいます。スマホもそうですね。集中力の大敵になるでしょう。
 漫画本とスマホさえ封じてしまえば、勉強に集中できるのか?
 それは間違いです。最大の敵は、睡魔という名の大敵。方程式をひとつ解くたびに、重力を逆らい続けてきたまぶ・・・

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奏でられたパンツァデュオ

15/02/01 コメント:1件 霜月秋介 閲覧数:773

 澄みきった湖。周りは木々に囲まれ、風でざわつき落ちた木の葉が水面に波紋を広げる。やがて雨粒がこぼれ、湖と雨と風の三重奏。そこに雷鳴が加わり四重奏。人為的ではなく、すべては自然の力が作り出す情景。それが、私がクラシックを聴いているときに目を瞑って作り出す、頭の中の幻想の世界。その中に身を投じることで、日常を一時的だが忘れることができる。その世界には、わたし以外の人間が入ることは許さない。
<・・・

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帰る場所

15/01/22 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:965

 帰るべき場所が在るというのが、どれ程幸福なことであるか、あの頃はまだ知らなかった。失ってみて初めて、身に染みてわかるんだ。在って当たり前だったことが、かけがえのない大切なものだったことを。

 私の両親は、私が幼い頃に事故で他界した。天涯孤独となった私は施設に入り、施設で知り合った女性と結婚し、子供もできた。しかし一週間前、家の火事で逃げ遅れ、私ひとりだけが助かった。

・・・

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聖なる領域へ

15/01/17 コメント:6件 霜月秋介 閲覧数:1166

  私は、妻のアヤカと娘のマナミの三人で家族旅行の為、空港に来ている。
『ブー!コノヒト、ナニカ隠シテル!』

  私が金属探知機をくぐると、ブザーが喋りだした。

「あ!パパだけ、ひっかかったねー!」

「すみませんお客様、身に付けている金属類、外していただけますか?」

  警備員・・・

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白色アイデンティティー

15/01/10 コメント:7件 霜月秋介 閲覧数:1107

「あなたの好きな色は何色ですか?」

 バイト帰りに道を歩いていると、見知らぬ女性に声をかけられた。いきなりの質問に、私は狼狽えて返答できずにいた。私をじぃっと見つめる彼女の瞳は引き込まれそうになるくらい、美しく輝いている。まるで私の心の中を見透かされているかのようだった。
 彼女は私の返答を待たず、クスクス笑いながら去っていった。

 好きな色?私は何色が好きなのか・・・

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静かな寝室

15/01/04 コメント:7件 霜月秋介 閲覧数:1011

  私は、ママについていくか、パパについていくか迷っていた。

  両親の間にすれ違いが生じていることは、薄々気づいていた。

  私の部屋の隣には、両親の寝室がある。前までは夜になると、両親の話し声が隣から聞こえてきてて、うるさくて眠れなかった。でも最近は、ドアやカーテンを開け閉めする音だけが虚しく響くだけ。

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ホワイトアウト

14/12/29 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:809

  視界は白く覆われた。白い世界に一人だけ取り残された気分だ。左右に激しく動くワイパーは、今の私の心境をそのまま表しているようだ。 

私は今、どこを走っているのだろう?何を目指して車を走らせているのか、わからなくなった。
後ろの車が私を急かしているようだ。しかしいくら急かされようと、急ぐも何も私は目標を失った。白く恐ろしい魔物に消されてしま・・・

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散りゆくチリコ

14/12/22 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:1032

  一枚、三枚、六枚…。一番上から順番に、私達は抜かれていく。上にいた私の仲間達が次々と、人間の手によって失われてゆく。いとも容易く…。

  箱の一番上へと辿り着いてしまった者は、人間が引っ張り易いように、箱から半分身体をさらけ出し、静かにその時を待つ。

  その心境は、ベンチで自分の打席を待つバッター?いや、・・・

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叩かれたい欲求と快感

14/12/14 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:1196

  私は今、叩かれている。黒縁眼鏡の若くて美しいお姉さんに、とても真剣な表情で、激しく叩かれている。しかも毎日だ。

  叩かれている時はどんな感じなのかとよく聞かれる。それを聞いてどうするのかと言いたい処だが、叩かれてる時の感情を言葉で表現するならまあ、『快感』だ。

  誰だ?今、私のことを変態だと言った奴は!・・・

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温もりの鎖に繋がれて

14/12/11 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:1293

  本当ならすぐにでも、ここから脱け出すべきなのだろう。しかしそれはできない。何故なら私は今、体の自由を奪われている。目には見えない、厄介な鎖に…!

  無情にも時間は過ぎ去り、タイムリミットは迫ってきている。早くこの場から脱け出さないと、私は絶望的状況に追い込まれるだろう。

  昨夜、私が仕事から帰ってきた時・・・

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去り行くサルと捨てられた柿

14/12/08 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:1015

  ふと道を歩いていると、民家の庭の柿の木に、子猿が何匹も登っているのが目についた。実った柿を美味しそうに頬張っていた。

  普段は滅多に観ることがない珍しい光景。私は慌ててポケットからスマートフォンを取りだし、内蔵カメラを起動させた。

  しかしシャッターボタンを押す前に、猿達は私の気配を察知したのか、のしの・・・

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青い光のストライキ

14/12/03 コメント:2件 霜月秋介 閲覧数:1009

 どこかの街の片隅で、男と女の争う声。女は殺意のこもったナイフを、男の胸に突き刺した。
「あんたが全部悪いのよぉ!あんたが…あんたがぁ!」
 女はそう泣き叫んだ。警察に両腕の自由を奪われながらも、物言わぬ男の遺体に向かって必死に叫び続けた。
 男と女はネットで知り合った仲だったが、男にはネットで知り合った女が大勢いて、そのことが女に殺意を抱かせた。<・・・

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