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たまさん

こんにちは。ごくフツーのおじさんです♪

出没地
趣味
職業 パート社員
性別 男性
将来の夢 たぶんもう遅い。それとも、すでに到達したか?
座右の銘 晴耕雨読

投稿済みの記事一覧

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九才の闇

16/10/03 コメント:0件 たま 閲覧数:535

そのmailが届いたのはわたしの誕生日だった。
『お誕生日おめでとうございます。六十五才のあなたに素敵なプレゼントがあります。今すぐお電話ください。Keiko♪』
悪質な勧誘だと思ったけど、その日は朝から雨が降って退屈していた。
『あなたの記憶のなかにだけタイムスリップすることができます。』
Keiko♪はそういった。
未来にタイムスリップできない理由は記憶がないから・・・

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 松山椋の軌跡 『お母さんを知らないか』

16/07/16 コメント:6件 たま 閲覧数:1159

 序詩 『夢の入り口』

  
 なにもかも捨てなければ眠ることはできなかった。
  
 今日ひろいあつめた荷物をまるで投げ捨てるようにうばわれていつまでもあきらめきれずに夢の入口に立ちつくす日は朝まで眠れない。それはなぜか、老いることを拒もうとする姑息なすがたに似ている。捨てきれないものをひとことでいえば約束という名の荷物だろうか。たとえば、あした死ぬかもしれないと・・・

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おくりねこ

16/04/25 コメント:2件 たま 閲覧数:631

 目覚めはいつも気分が良くて、私が日記を綴るのは朝のことだった。
 日記にはきのうの出来事はもちろんのこと、その日の予定を書き込むこともあったけれど、今朝は一行も書くことができなかった。まるで二日酔いの朝みたいに気分が悪くて、きのうの出来事も、きょうの予定も、なにひとつ思い出せなかったのだ。

 リビングの小さなテーブルを囲んで妻と朝食をとる。
「おっ、もうこんな時間か……・・・

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青い水族館

16/04/06 コメント:5件 たま 閲覧数:626

春休みが終わって明日から新学期がはじまる。
今朝の気温は14℃。黄色い雨が降っている。午後はオレンジ注意報が出ていて憂鬱だったけれど、今日中に東の街に帰らなければいけない。
 ママー、コットンの靴下どこだっけ?
 去年のだったら穴が空いてたから捨てたわよ。
 え、そうなの……。
ベッドの上に旅行鞄をひろげて有りっ丈の夏物を詰め込んだ。夏休みまでは帰れない。学生寮のある・・・

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散文の海へ。2016

16/01/31 コメント:11件 たま 閲覧数:824

 作家開高健がサイゴンの河岸の屋台で、熱いモツ粥をすすっていたのは1964年の雨季のころで、わたしはその翌年の夏、日本に生まれた。

「ぼく、わからないです。こんなくだらない人間の、くだらない感情が、どうして小説だといえるのですか?」
「うん、たしかにくだらないかもしれない。でも、丹青ならとおもってさ」
 それで、わたしは丹青に開高の『夏の闇』をプレゼントしたのだけれど、北・・・

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小夜の石絵

15/12/14 コメント:8件 たま 閲覧数:1304

あなたは小夜の石絵を知っています。
昼も夜もわたしたちが見上げる空に、小夜の石絵を見ることができるからです。

随分遠い昔のこと、小夜は海辺のちいさな町に生まれました。
幼いころお父さんと海に行って魚釣りをしました。小夜は浜辺の小石をたくさん拾って帰ります。小夜は石に絵を描くのです。
大好きな子猫の絵をクレヨンで描くと、石は(ねう、ねう。)と鳴いて小夜に甘えます。

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誰もいない宇宙で

15/11/18 コメント:3件 たま 閲覧数:622

 未来はやって来ない。未来は追いかけてくるものだ。
 宇宙が誕生してまだ10万年も経たないころ、そこは微かな光に満たされ、水素、ヘリウム、リチウムといった質量の軽い元素が漂っているだけの世界だった。私はそんな世界に誕生して(種族V)と呼ばれる星になった。もちろんそんなこと、人類の記憶にはないから、この小説は私の一人称で語ることになる。

「クエーサーですか?」
「ん……ま、・・・

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ぼくのどうぶつえん

15/06/26 コメント:3件 たま 閲覧数:796

 1.オロチ

うどんを一杯。
箸は二本あればいいと言う。
ふたりの子は箸を一本ずつ持った。
狐の権太はうどん屋に化けて、村はずれの二本松の辻に屋台を出していた。

「おい、おい、おまえら。箸ならもう一本やるぞ」
ふたりの子は首をふって「いつもこうしてる」と言った。
見ると器用に食べている。
どんぶり一杯のうどんがあっと言う間になくなって・・・

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午後のイルカたち

15/05/17 コメント:7件 たま 閲覧数:1145

 ねぇ、知ってる? 世界中の海を探しても、年老いたイルカはいないのよ……。

 それはいつだったか、「おれと結婚しないか……」と、洋子にプロポーズしたときの返事だったけれど、「どうして……?」と、聴きかえせなかった私は、たぶん、アドベンチャーワールドの陽気なイルカだったかもしれない。

「しばらく逢えないの……」
 灯りの落ちた洋子の部屋で唇をあわせたままの会話がつづ・・・

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あしたのりんご

15/04/19 コメント:15件 たま 閲覧数:2092

テーブルの上に、あした買ってきたりんごを置いてあると言う。
もちろん、そんなもの私には見えない。母だけが見ることのできるりんごだった。

今朝も雨が降っていた。桜の季節はいつも雨に邪魔される。と言っても、花見は好きじゃなかった。久しぶりの休日だし、すべては雨のせいにして春眠を味わう。たまには御褒美がほしい発育不良の大人だったから。
九時すぎに目覚めた。
「かあさん、お・・・

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パイプライン

15/03/30 コメント:7件 たま 閲覧数:1037

―1952年/春/穏やかな午後の日差しを浴びて、ケイジロウは神戸元町のゆるい坂道を歩いていた。戦後の混乱が一息ついた昭和27年、神戸の街は活気に満ちていた。右手に大きなボストンバックを提げて、坂道を登りつめると「水木荘」という木造二階建てのアパートがあった。

「ミズキ先生、お約束のお金です」
水木荘の一階にある管理人室の居間で、ケイジロウは隻腕の青年と向かい合っていた。
・・・

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エリーゼのために。

15/01/29 コメント:6件 たま 閲覧数:990

 その頃も、夜の街を群れて泳ぐ小魚たちがいた。

 午後5時すぎ、地下鉄の階段を駆け上って今池の大きな交差点に立つ。八月の名古屋はとても暑くて声もでない。交差点を渉っていつもの喫茶店に入ると、開店前のキャバレーのホステスたちが同伴の客をつれて席を埋めていた。
「ユウスケ、こっち」サダオさんがわたしを呼ぶ。
「ねぇ、今日はどうしてこんなに多いの?」
「本日オープンだよ。・・・

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成和堂主人

14/12/24 コメント:7件 たま 閲覧数:1038

 朝から雪が降った。
 夕刻になっても雪は降りやまず、駅前のいつものバス停に長い行列ができた。バスはやって来ない。それでわたしは歩くことにしたのだ。今日はいつもの革靴ではなく、ブーツを履いていたし、小一時間も歩けば、我が家にたどり着けるはずだった。
 駅前にはアーケードのある商店街があった。雪道を避けてその一角を抜ける。何年ぶりだろうか。ここに来るのは。まだ、五時過ぎだというのに商店街・・・

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隣国の記憶

14/12/14 コメント:5件 たま 閲覧数:898

 隣国に渉る記憶の海は、深く、蒼く澄みきった、トランペットの音色に近い。

「沖縄の終戦記念日はさ、六月二十三日なんだよ。それでさ、沖縄はさ、廃藩置県がまだ終わっていないとこなんだよね。」

 ラッパ吹きの知念さんと、名古屋の街で出会ったのは一九七二年の夏のこと。戦後、米国の統治下にあった沖縄が日本に返還された年だったから、わたしは二十歳になったばかりだった。

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ダイヤル式

14/11/30 コメント:7件 たま 閲覧数:972

 目の前の人は黄金のマスクをかぶっているのだろか、目も鼻も確かめられないほどに眩しく輝いていた。
 私は真っ裸で竹を編んだような固いベッドに横たわっている。何故、裸なのか、私にはわからないけれど、天井も壁も粗末な生ぬるいその部屋には、病院の手術室にあるロボットのような器具が並んでいた。黄金のマスクの人は医師かもしれない。そう、思った。

 私の左手は細くて長いコードを握りしめてい・・・

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夢を釣る

14/11/02 コメント:7件 たま 閲覧数:907

かくかもしれない……。

それはわかっていたことだ。底の浅い港には瓦礫があるだろう。でも、覚えたばかりのジグサビキとやらを試してみたかった。

シーバス用のロッドに30グラムのジグをつけて、それだけではふだんとかわらない。かわったのはジグをウェイトにしてサビキをつけたことだった。それでブン投げる。ただ、それだけのことだった。
ジグが海の底に届くとリールを数回巻く。巻い・・・

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散文の海へ。

14/09/06 コメント:8件 たま 閲覧数:1131

 雨は詩歌。
 雨はメタファー。
 雨はわたし。

――今日もどこか遠くで雨が降っているだろうか。

空はいつも西高東低なのでわたしの朝は遅い。
北窓のあるキッチンの食卓に腰掛けると、乾ききった朝食の一切れの西瓜は「もう、夏は終わったよ。」 と、わたしに話しかけてくる。
「ああ、そうなんだ。もう、終わったんだね……。」 ほんの少し、ため息を交えて、程・・・

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ガリレオの望遠鏡を持つ女

14/08/01 コメント:4件 たま 閲覧数:905

 青い瞳の女だった。

 土の壁を刳り貫いた窓には、暗緑色のペンキを塗りたくった鎧戸があって、部屋のなかは薄暗いままだった。
 暑くないか? と男が言うと、女は小さな扇風機を回した。
 ごめんね、明るいのは嫌なの。

 窓辺のベッドの上で男と女は汗にまみれて埋め合わせをする。鎧戸から漏れたわずかな白熱の光が女の顔に当るたび、右眼だけが宝石のように青く灯るのを男は・・・

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不在の証明

14/07/26 コメント:5件 たま 閲覧数:1264

 隣人は今日も不在だった。

 不在の証明を持たない隣人がアパートから消えたのは七月のこと。不在の証明というのは、あなたがこの世に存在しないことを証明しなさい……というもので、役所が定めた名称は「不在に不在の証明」というものだったが、一般には略して、不在の証明と呼ばれていた。
 毎年七月になるとこの証明を持たない住人は街を出てゆくことになるが、不在の証明といってもややこしい話しで・・・

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