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黒糖ロールさん

よろしくお願いします。 お読みいただいた方にはいつも感謝しております。

出没地
趣味 読書、映画鑑賞、さんぽ。
職業
性別 男性
将来の夢
座右の銘 ケセラセラ。

投稿済みの記事一覧

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パイロットフォルム(王女)

15/01/25 コメント:3件 黒糖ロール 閲覧数:810

 ティーシャは寝台に入り、絵本を眺めていた。窓の外は夜の静けさに満たされ、ランプの光があたたかく手元を照らしている。齢十五を過ぎた今でも、ティーシャは眠る前に絵本を手に取ることがあった。
 絵本は、重厚な装幀がされていた。シンメトリーに配置されたいくつかのシンボルが銀の線で描かれており、線の部分が浅く窪んでいる。表紙に印されたシンボルの一部を指の腹に感じながら、線をたどり全体像をとらえようと・・・

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エッセイする人の隣室をテーマとした呟き R14指定

15/01/11 コメント:9件 黒糖ロール 閲覧数:998

 「エッセイする」という日本語は正しくないのだろう。
 ただ、エッセイストではない私が、エッセイとは決して呼べない、それでいてエッセイを模した文章を書くことは、エッセイを運動ととらえた「エッセイする」という表現がぴたりと合う気もする。したがって、題名とさせていただいた。ご承知の上、読み進めていただきたい。
 読み進めていただけない?
 納得のいかない方は、目を閉じて、「エッセイす・・・

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最後の一人芝居

14/12/27 コメント:9件 黒糖ロール 閲覧数:981

 積もる話をひとしきり終え、訪れた沈黙が心地よくて、ベンチに座ったまま僕は沙織に顔を近づけた。
 唇の柔らかさと味をかすかに感じて、驚いて唇を離した。
 沙織が泣き笑いのような顔をしている。思わず手をのばして、僕は沙織の髪を何度もさすった。
「おかえり」
 目の前で列車が動きはじめた。
 ただいま、優也。周囲の騒音のなか、沙織の声がまっすぐに届く。
 平日の朝、・・・

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ひいらぎさん(はワトソン役)

14/12/14 コメント:6件 黒糖ロール 閲覧数:874

 喫茶店で、僕は野球漫画を熟読していた。そろそろランチに切り替わる頃である。
 店でお昼も済ませてしまうかと思いついたときだった。カウベルが音をたて、勢い良く入り口の扉が開いた。
 ウィーヒック、と口から奇怪な音を発する、スーツ姿の男が立っていた。千鳥足でこちらに近づいてくる。僕の真横で、男はカウンターにつっぷした。
「拳さん、また飲んでるな」
 マスターが水の入ったコップ・・・

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ひいらぎさん(のいないいないばあ)

14/11/29 コメント:5件 黒糖ロール 閲覧数:790

 繁華街の喧騒を窺うようにラブホテルがひしめく界隈を、僕は歩いていた。友達の舞実が隣でマフラーに顔をうずめている。昼間のホテル街は、がらんとしていて、あたり一帯が作りものめいていた。
 面倒だから彼氏はいらないと公言する舞実と僕は、互いにとって都合のいい関係を築いていた。気が向いたら連絡を取り合い、ホテル代の安い時間帯を選び、支払いは割り勘。さっぱりした関係だ。舞実いわく、僕のちゃんとしてな・・・

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アヤカシ随想

14/11/10 コメント:5件 黒糖ロール 閲覧数:1184

 ガラパゴス諸島、独自の生態系を持つ島の集合体。一昔前、旧式携帯端末の俗称の由来になった。他国とは異なり、この国では、やたらに多機能な製品が開発され、市場に出回った。そこに、八百万の神々に象徴されるアニミズムの思想を当てはめることは、いささか強引かもしれない。しかし、現在の我々の状況を鑑みると、あながち外れた話ではないように思える。
 万物に神が宿るように、携帯の中に多様な機能が宿ったように・・・

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ひいらぎさん(の直通電話)

14/10/25 コメント:8件 黒糖ロール 閲覧数:879

 僕は夕方の散歩を日課にしていた。休学中なので体がなまって仕方がない。
 薄手のパーカー越しに、秋気が伝わってくる。大きめの公園が高台にあり、中継地点になっていた。この辺りからは町を一望できる。
 いつものように入り口にある公園名が彫られた縦長の石を撫でてから、長く緩やかな下り坂をおりはじめた。しばらくすると、坂をあがってくるママチャリが見えた。上下ジャージ姿の男が一心不乱に立ちこぎを・・・

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パイロットフォルム(騎士)

14/10/20 コメント:6件 黒糖ロール 閲覧数:839

 オッドは、晴れた空の下で寝そべっていた。両瞼越しに届く、ぬくもりの色を確かめる。風が心地よい。頬を撫でる草の柔らかな律動に心を添わせていると、想いから生じた波紋も、薄くなり、遠くなり、消えていく。
 頭の芯から、痺れるような眠気が滲んできた。同時に、降り注ぐ陽射しに呼応して、体の奥に押し込められた小さなしこりが震えを帯びはじめる。見ないふりをしていたものたち。意識は逃げ出そうとする。ただた・・・

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ひいらぎさん(とゲームセンター)

14/09/23 コメント:11件 黒糖ロール 閲覧数:835

 古本屋で暇を潰していたところ、柊さんに出くわした。彼の服装はいつもと同じ、白ポロシャツにジーンズだった。
 しばらく雑談した後、つきあってくださいと誘われ、昼飯をごちそうしてくれるのか、と淡い期待を胸についていくと、商店街の寂れたゲームセンターに着いていた。客はほとんどいない。薄暗い店内に、レトロなものから新しいものまで、所狭しと筐体が並んでいる。
 柊さんは先ほどから、熱心に「飲兵・・・

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パイロットフォルム(羊飼いとシープドッグ)

14/09/21 コメント:8件 黒糖ロール 閲覧数:875

 ステンドグラスの中で斜めにうつむく天使を、燭台の光が照り浮かびあがらせている。火の揺らめきで天使の顔が和らいで見えるので、ミアは夜の教会が好きだった。
 ステンドグラスは教えてくれる。外から差し込む昼の日差しを通すとき、また、夜、屋内に耀う火を反射するとき。光、その内にある本質が多彩であること。散らばった本質の欠片を集めて敷き詰めれば、神性が宿り見えること。
 採光用の窓に近づくと、・・・

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ひいらぎさん(の言い分)

14/08/22 コメント:8件 黒糖ロール 閲覧数:1323

 柊さんとは、商店街の一角にある喫茶店で知り合った。日焼けした昭和の漫画が本棚に溢れ、内装はカフェであるのに我が物顔で演歌が流れている、そういう店である。お盆も過ぎ、残暑厳しいなか、夏の間にさんざ降り注いだ陽射しが熟成され、おっとりとした輝きに変わりはじめた朝だった。
 錆びたカウベルが鳴り、白い半袖ポロシャツに傷んだジーンズ姿の柊さんが入ってきた。
「マスター、夏の終わりが来てしまい・・・

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パイロットフォルム(警備員)

14/07/27 コメント:7件 黒糖ロール 閲覧数:917

 町の中央に建つ塔には、夕時から夜にかけて鳥が集まってくる。塔に身を寄せる鳥たちは、優しい光を纏っている。輝く鳥たちが、グラデーションがかった宵闇の空を滑るようにして飛んでくる光景は美しかった。
 同僚たちには鳥たちの姿は全く見えないらしい。幼い頃から、スタヴにしか見えないものがあった。もう、そういったことを気に病むのはやめていた。
 夜のはじまりに溶け出した鐘の音の、薄められた残響が・・・

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水色のピアス

14/06/30 コメント:8件 黒糖ロール 閲覧数:935

 瑠衣にとってのピアスは、やっぱり感情の塊なのだ。無表情な瑠衣の顔を見つめながら、そう感じた。
 左耳に三つ、右耳に五つ、ある。仲良くなってから知った数だ。
 人が親しくなるにつれ、教えあう数字が増えてくる。家族の人数、年齢、経験人数、身長、体重……。まあ、生まれたときからあいてる穴の数は聞かなくてもわかるが、と下品なオチを考えていると、
「今、エロいこと考えてる」
 ぶっ・・・

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パイロットフォルム(手紙屋)

14/06/22 コメント:6件 黒糖ロール 閲覧数:1075

 右手で操縦桿を握り、左手をスロットルレバーに添える。コックピットの小刻みな振動が心地よく全身に伝わってくる。
 リュードの心の表面を、淡く明滅する幸福感が滑り昇ってくる。ジンジャエールの泡のように爽やかで、儚い。
 白い砂漠の中央に、この飛行場は位置している。滑走路が一本だけあり、その側に格納庫、少し離れて司令塔が建っている。司令塔の一階を、なぜかカフェが陣取っている。飛行場の中は、・・・

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西遊記的小話(菩薩の涙、大岩に落ちる)

14/06/01 コメント:2件 黒糖ロール 閲覧数:860

 菩薩様は白く輝く雲の隙間から、下界を見下ろしていらっしゃいました。
 地には、抜きんでて高い山がありました。その頂上でふんぞり返るように、大きな岩が鎮座しております。菩薩様はその大岩のほうに顔をお向けになると、優雅に体を伸ばされて、見事なあくびを一つされました。自然とまなじりから、涙が一粒こぼれました。菩薩様といえば、耳垢のひとかけら、脇毛の先に至るまで、それはもう慈悲そのもので出来上がっ・・・

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湖畔の笛

14/05/21 コメント:7件 黒糖ロール 閲覧数:909

 笛を吹きながら、ずいぶん歩いてきた。森の樹木の影が濃さを増し、立ち昇ってきた霧状の闇が視界を覆いはじめている。
 幼い従者たちは無言のまま、私の後をついてくる。背後から聞こえるたくさんの足音は、私の裏側を蠢く憎悪が軋み合う音のようだ。
 ハーメルンの町から遠く離れた湖まで、あと少しで辿り着く。子どもたちは笛の音に導かれ、湖に体を沈めることになる。湖面の下、死で濁った瞳で漆黒の底を見つ・・・

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お狐うどん

14/05/03 コメント:6件 黒糖ロール 閲覧数:828

 近くの稲荷神社に毎朝詣でるのが春日井夫婦の日課である。錆ついた鈴を見上げ、鈴緒を振るのは夫の吉男で、彼の背後、一つ下の石段に立ち、妻の慶子は、鈴の鈍い響きを聞く。その後、二人はジャージ姿で横並びになり、賽銭を入れ、二礼二拍手一礼をする。神前に感謝を捧げ、うどん屋が繁盛しますようにと願う。
 信心深き老夫婦が不思議な双子に出会ったのは、春うららかな日の、昼時の客もすっかりひき、さて一服するか・・・

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カフェテリアブルース

14/04/26 コメント:2件 黒糖ロール 閲覧数:756

 都市の夜は、擦り切れた雑巾のような気持ちで対峙するには、あまりに輝き、煌めいている。どうしても酔いたくなったら、格安のスマートフォンを右手に、発泡酒の缶を左手に持ち、歩きながら飲む。アルコールに弱いので、すぐ体が熱くなり、ゆらゆらとした気持ちになる。「人生の低空飛行」と心のなかでリピートしながら、斜め四十五度の角度に両腕を伸ばし、このまま冗談のように生きていけると言い聞かせつつ、かすかにおどけて・・・

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流星の弦と星の器

14/04/01 コメント:9件 黒糖ロール 閲覧数:900

 白壁の建物が立ち並ぶティウェンの町の丘に、夜の闇が静かにうちよせる晩のことです。
 坂の途中にある家のわきで、少年が地べたにひざを抱えて座っていました。細くとがった月の光が、やさしく少年と石畳の坂道を照らしています。
 町の灯りは消えて、眠りにおちた家々がひしめきあい、まるで巨人がのぼりおりする階段のようです。
 少年は夜空をながめるのが好きでした。どうしようもなくむなしくなる・・・

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凹凸太陽

14/03/21 コメント:4件 黒糖ロール 閲覧数:906

 空が白みはじめる頃、私は香織とつながっていた。
 ピストン運動をするたび、脳の奥まで強烈な快感が襲ってくる。甘く爛れた感覚に、背が自然に仰け反る。
 呟くように呻き、私は果てた。
 コンドーム型の着衣端末を外し、ティッシュで包む。脳内チップと性器の摩擦が連動して、何倍もの快楽を与えてくれる優れものだ。
 隣に目をやると、香織が悩ましい表情を浮かべていた。
「腋の下に・・・

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大和撫子を取り戻せ!

14/03/15 コメント:7件 黒糖ロール 閲覧数:927

 中間試験が近づく中、嫌がる伶を無理やり引き連れ、亮太はショッピングモールにやってきた。サッカーシューズが欲しくなったのだ。部活が小休止となり、そういうときに限って、物欲が湧いてくる。とはいえ、実際に買うわけではなく、新商品を見て心を慰めるためである。
 平日のショッピングモールは人の流れがスムーズで、のんびりとした雰囲気が漂っている。
 エスカレータに乗り、前に女子高生が乗っているの・・・

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春の儀

14/02/26 コメント:8件 黒糖ロール 閲覧数:1198

 ――今年も、おさな子がぐずついている。
 噂が天と地のあわいを吹く風に流され、春待つ樹木や草花の精たちをざわめかせる。ざわめきは地を縫い伝って、午睡する彼の耳に届けられた。
 暦の上では春間近。生類たちの呼気も吸気もわずかに勢いづく季節である。
「御子のお泣きになる姿が目に浮かぶのう」
 彼は笑みを湛えて立った。屋敷には清々しい空気が満ちている。
 周りをたなびく瑞・・・

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とある片野莉乃の話

14/02/11 コメント:8件 黒糖ロール 閲覧数:1173

 片野莉乃は瞼を開いた。朦朧とした意識のなかで、思考の糸口をたぐりよせる。
 今の状況が、まるでわからなかった。ただ、わかっていることもあった。それは片野莉乃という名であり、同時に、この名がほんとうの名ではないということだ。
 莉乃は床に寝そべったまま、首だけを動かしてあたりを見回した。六畳程度の広さの部屋だった。天井も、壁も、床も、白く均一に塗られている。扉はなく、窓一つ見当たらない・・・

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線香花火

14/01/31 コメント:7件 黒糖ロール 閲覧数:1272

 真奈美の真上に夜空が広がっている。透明色にわずかだけ曇りをつけたガラスを通して見たような空だ。都市郊外の夜は弱々しい。まばらな電気の明かりと夜の闇が混ざっていて、物足りない。田園がまだ多く残る故郷では、星はもっとくっきり光っていて、背後の闇は深くて強い。ただ寒さについてはあまり変わりがないらしく、ベランダに立っていると靴下の薄い布地から冷たさが這い伝わってくる。寝間着の上に羽織ったコートの襟をか・・・

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メリーゴーランド

14/01/30 コメント:7件 黒糖ロール 閲覧数:1016

 あてもなく車を走らせているうちに夕暮れを迎え、気がつけば遊園地に着いていた。車を降り、ワインレッドに薄墨を溶かしたような色の空をミチルとともに、呆けたように見つめた。
 遊び疲れ、帰宅する人々を駐車場で見送った。楽しかったね、また来ようね、といった会話が、ざわざわと空耳の蝶になって、まわりを飛び回っている。
 駐車場を取り囲む外灯たちがいっせいに点灯した頃になって、ミチルが口を開いた・・・

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死神の憂鬱

14/01/19 コメント:12件 黒糖ロール 閲覧数:1604

 ヘッドフォンを耳に押しつけ、大音量でロックを聴いていると、心が落ち着く。今もベッドにもぐりこみ、激しい音の波に自分を埋没させている。今頃、両親と妹は、テレビを見ながら夕食をとっているのだろう。
 プレイヤーの音量を上げた。ヴォーカルの絶叫が、階下の家族団欒の想像を少しは壊してくれる。
「あんた生きてる意味ないよね」
 友人の言葉がフラッシュバックする。「冗談きついなあ」と返しな・・・

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銭湯の見守り人

14/01/10 コメント:3件 黒糖ロール 閲覧数:1092

 綺麗な菩薩様だなあ。会うたびに太一は感心してしまう。
 頬は健やかな膨らみを帯びている。頭を包むきらびやかな装飾品と、簡素なデザインの衣が対照的だ。特徴的なのは、半眼になった両目である。菩薩にしてはたいそう鋭く尖っていて、少々強面なのだ。
 ――そもそも、ヤクザの背中に描かれている時点で十分凄みがあるよな。
 太一は心のなかでつぶやいた。
 菩薩様を背負う初老の男性と、太・・・

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