1. トップページ
  2. 宴さんのページ

宴さん

出没地
趣味
職業 会社員
性別 女性
将来の夢 本と演劇に囲まれて生きたい。
座右の銘

投稿済みの記事一覧

3

もうなんか石油王とかと結婚したい

14/08/09 コメント:3件 宴 閲覧数:1305

お昼休みの終わり頃、お弁当を食べて歯を磨いてデスクに戻った頃を見計らって気弱そうな若いのと化粧の濃いおばさんとふたり組でやってくる。
控えめな笑顔で控えめな口調で、強引にパンフレットを渡してくる。
個人年金に加入しませんか。定年の時にはこれだけ増えて戻ってきますよ。定期預金よりこっちのほうが断然お得です。なんと、住民税が年末調整でちょっとだけ返ってくるんです。すごいでしょう。
は・・・

1

たんすの声

14/04/22 コメント:0件 宴 閲覧数:911

 うちには古いたんすがあるの。古くてもすべすべで真っ白い桐のたんすよ。まっすぐに引き出しを引くときゅっと音がして、ふわりと甘く木の香りと防虫剤の香りがする。金属の取っ手は少し黒ずんでいる。
 素早く引き出しを入れるとその上の引き出しが空気に押し出されて少し開くの。職人さんが精巧に作ったからだよ、と祖母が誇らしげに話していたのを覚えている。
たんすは曾祖母が嫁入りに持ってきたもので、戦争・・・

2

翡翠の味

14/01/16 コメント:4件 宴 閲覧数:1067

結局、私はあの人のなんでもなかったのか、とさつきは電車の窓に映る喪服姿の自分を見て思う。どこにでもいる平凡で能力もなければ美しくもない、かろうじて若いだけのなんの取り柄もない女。それでも、あの人はほんの少しでも、そんな自分を愛してくれているのだと信じていた。誰にも言えない関係だったけれど。
 さつき、とベッドの上でだけ私を下の名前で呼ぶ声を覚えている。もう、それだけで十分だったのに。

2

さよならを忘れないで

13/12/19 コメント:2件 宴 閲覧数:1042

 遠くで踏み切りがカンカンカンと鳴っている。
 いつもの場所で、男はギターを弾いている。駅前のロータリー。
 時折男を横目にして通り過ぎる人間がいるが、立ち止まる者はいない。
 彼女は男の隣に寝そべって、独り言のような男の歌声を聴いている。
 抜けるような秋の青空が、男の歌声を吸い込んでいく。
 ふと、音がやんで、ふわりと撫でられた。大きくてあたたかい手。

1

280円のハードボイルド

13/12/19 コメント:1件 宴 閲覧数:920

ビリーが店のドアをあけると、時間が時間だからかカウンターに客は女1人しかいなかった。見覚えのある後ろ姿。おもむろに隣に座って、タバコに火をつけた。
「マスター、いつもの」
音もなく近寄ってきた店員に小さな紙片を渡して、女のほうを向いた。
「久しぶりじゃないか、ジュリア」
「臭いがうつるわ」
嫌そうな顔をした彼女に大仰な仕草で手を振ってみせる。
「電子タバコ(フェ・・・

0

ふたり。

13/12/19 コメント:1件 宴 閲覧数:886

彼女はずっと鼻をかんでばかりいる。鼻の周りが赤くなってひりひりただれてしまっても、そこから血が滲んでも、やめない。彼女の部屋の中は丸まったティッシュで溢れかえっている。ぼくはそのティッシュの海を泳いでまで彼女のもとに行こうとも思えずに、彼女が箱のなかのティッシュがなくなってしまってドアの隙間から物言いたげにぼくのほうを見るときに、隣の部屋から黙って新しい箱を投げ入れるのだ。
鼻をかみ続けると・・・

  1. 1
ログイン