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murakamiさん

読んでいただきまして、ありがとうございます。

出没地 都内
趣味
職業
性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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太陽の宝

15/11/16 コメント:6件 murakami 閲覧数:609

 一陣の寒風が鉄柵を突き抜け、砂塵を舞い上げた。
 ポケットに手を忍ばせると、ひんやりとした感触が指先に伝わってくる。国家公安委員会で厳格にその重さとサイズが定められている鋼鉄製の弾――。
 階段を駆け下りてくる足音と怒号が背後から一斉に襲い掛かる。若葉組の奴らだ。

「浜のもんは気性が荒いけぇ、気ぃつけぇ」
 祖父の言葉が脳裏に蘇る。
 女を巡る争い、シマの奪・・・

3

ツユクサ

15/11/02 コメント:6件 murakami 閲覧数:750

 病院を出て、腕時計を見ると正午に近かった。いつの間にか雨が降ったらしく、路面が黒く濡れている。秋だというのに気温が朝から高く、上着がいらないほどだったが、どこからか爽やかな風が吹き寄せてきて肌に心地良い。
 私はまだ少し痛む足を引き摺りながら、細い道をバス通りへ向かって歩いて行った。しばらく日常生活に不自由しそうだったが、かといって急いでしなければならないことは何もないので、慌てて帰ること・・・

2

青空は消えず

15/08/24 コメント:4件 murakami 閲覧数:862

「熱っ」
 握っていた半田鏝(ごて)が、左手の薬指を掠めた。水膨れが、また一つできてしまった。これで二つ目だ。
「不器用だな」
 隣で汗だくになった父さんが言う。
「貸してみろ」
 今度は、父さんが鏝を持ち、基盤の銅箔と部品を温め始めた。それから、半田を溶かす。銀色のしずくが吸い込まれるようにぽってりと丸く落ち、二つを固定する。部屋中に金属の焼ける臭いが漂った。

4

最後の台詞

15/08/10 コメント:8件 murakami 閲覧数:1050

 心のどこかに罪悪感があると、人は夢を見るものなのかもしれない。たとえ、自分が忘れていたとしても、本当にあったことというのは、決して消えはしないものだから。

 その日、小学校の時の同級生の葬儀があった。もう二十年以上も会ったことさえなかったが、ずっと地元にいれば顔を出さないわけにもいかない。
 夕暮れ時に終わった告別式の帰り道、真っ白な雪の中に赤い点が見えた。不思議に思い、俺は・・・

6

おだやかな人

14/05/16 コメント:12件 murakami 閲覧数:1347

 土曜の午後1時にその婚活パーティーは始まった。 
 33歳にして、そういうものに参加したのは初めてだった。だから、勝手がわからなかった。
 会場には男女合わせて50人程がいた。最初は女性と男性が1対1でテーブル越しに対面して、2分間の自己紹介。時間がくると、男性がひとつずつ席を移動する。次はフリータイム。そこで私は、大手商社に勤めるという男性と話が盛り上がってしまった。趣味が同じだっ・・・

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プラットホーム

14/04/06 コメント:7件 murakami 閲覧数:1137

 東京から新幹線で2時間。京都で特急列車に乗り換えて、僕は、今、北へと向かっている。車窓に流れる風景は田植えをおえたばかりの水田と、その向こうには海のような琵琶湖が広がっている。向こう岸の山並みは銀の紗幕に覆われたように霞んで見えた。梅雨入りしたばかりの空はどんよりと重い。
 イヤホンから流れてくるメロディーはアイルランドのロックバンドの曲だ。 
 窓ガラスに彼女の笑顔が浮かぶ。

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バースデーケーキ

13/11/16 コメント:9件 murakami 閲覧数:1045

 ベッドに入ってしばらくすると、いつものように階段を上がってくる音がした。
 一段ごとにみしっ、みしっと、踏面が軋む。
 父が亡くなって、四十九日はとうに過ぎていた。この日を過ぎたら納骨しなければいけないということはわかっている。けれど、私は大好きだった父を――、父の遺骨を、まだ手放すことができずにいた。針金を解いて骨壺の中から取り出した骨の欠片を握り締め、父の優しい足音を子守歌がわり・・・

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離婚/結婚。

13/11/07 コメント:8件 murakami 閲覧数:1314

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楠木由紀斗様

 ごめんなさい。
 ほんとうにごめんなさい。
 自分のしてしまったことが、どれだけあなたを傷つけてしまったかと思うと、苦しくて胸が張り裂けそうです。
 高校に入ってあなたと出会い、つきあって十年。やっと結婚することができたときは本当に嬉しかった。その気持ちだけは本当です。・・・

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告白

13/10/11 コメント:22件 murakami 閲覧数:2436

 1976年のことです。私は高校を出て、就職したばかりでした。ある日、同じ職場の3歳年上の男性から結婚前提の交際を申し込まれたのです。まじめで優しそうな方だったので了承しました。交際するうちに彼の誠実さに惹かれ、週末のデートが何よりの楽しみになりました。
 ところが3ヶ月程たったある日、二人でドライブ中に事故にあってしまったのです。助手席に座っていた私は、追突された拍子にダッシュボードに顔面・・・

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初恋

13/10/07 コメント:17件 murakami 閲覧数:2005

 高校受験が終わった。合格した。
 入学祝いに何がほしいか、お母さんに聞かれたから、「パイソン」と答えると、お母さんは頭の中にパイソン柄の財布を思い浮かべたらしい。
「蛇だよ。蛇っていってもこれぐらい」
 僕は両手を広げて、三十センチぐらいの長さにして見せた。
 お母さんは、最初は困っていたけれど、今まで何かをねだったことが一度もなかった僕が何度も頼みこむと「春斗がそんなに・・・

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シンデレラ・サイズ

13/09/24 コメント:9件 murakami 閲覧数:1533

 目が覚めたら、痩せていた。
 横田弥生はしばらくの間、信じられない思いで、自分の体のあちこちを触ってみた。長年消えてくれと願い続けていた山のような贅肉が本当に消えさっていた。
 恐る恐るベッドから抜け出し、立ち上がる。パジャマのズボンと下着がするんと床に落ちた。洗面所に行って、体重計にのってみる。昨日までのちょうど半分の数字だ。鏡に映った顔もほっそりとして別人のようにきれいに見える。・・・

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