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名無さん

名無 ななと申します。よろしくお願いします。 スマホからの投稿なので、読みにくかったら申し訳ないです。

出没地 お茶と羊羮のあるところ。
趣味
職業
性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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雪鬼

13/11/26 コメント:5件 名無 閲覧数:1165

〜新米保護観察官、新堂真希の記録〜

雪鬼に掴まったのだ、とその少年は言った。

 小さくノックの音が響いて、無機質な白いドアが開いた。現れたのは同僚の篠島で、手には厚いファイルの束を抱えている。
「何か進展はあったか?」
 聞かれて私は首を横に振った。目の前の資料は先程から何も頭に入ってこない。凝り固まった肩を回して、背凭れを軋ませた。
「何でかなぁ…」・・・

2

帽子のないクマ

13/09/14 コメント:6件 名無 閲覧数:1304

 私はこんなところで一体何をしているのだろう。隣のシャワールームから響く水音が、私の気持ちを何処までも引っ張って、深い深い谷底に引き摺り込もうとしているように思えた。
 何ヵ月も家に帰らずふらふらと彷徨って、行きずりの男と関係を持って。頭の片隅で鳴り響く警鐘は、この薄暗いホテルの一室にも響くのでは無いか思うほどだ。
 鍵につけている小さな帽子を撫でる。昔母が作ってくれた、縫いぐるみ用の・・・

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偶然トリッパー

13/08/24 コメント:3件 名無 閲覧数:1283

ジワジワジワジワ
 焼け付きそうな日差しと、アスファルトから立ち上る陽炎に朦朧としながら、自販機の前に立った。
ジワジワジワジワ
 あとこれから得意先を二件回らなくてはならない。襟元を弛めると、ネクタイまで汗でじっとりしていてうんざりする。つくづく、営業なんて職に就くものではない。
ジワジワジワジワ
 まったく蝉の声が煩いな。体に染み込んでくるような気がする。代わりに・・・

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呆気なく

13/07/13 コメント:5件 名無 閲覧数:1515

ねえ、先生。
いつものように、そう話し始める彼女の声が、いまだ耳から離れずにいる。

彼女の声はいつも穏やかだった。にこにこと微笑みさえしていた。
ーーそうやって、本当の想いを隠すのが上手な子なのだと、分かっていたはずだったのに。



「ねえ、先生。私ね、鳥になりたいんだ。」
抜けるように青い空を、小さく切り取る窓。抗うように精一杯に開いて。・・・

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三叉路の真ん中で

13/06/08 コメント:17件 名無 閲覧数:1792

 燦々と降り注ぐ日の光を、茂る木の葉が透かして苔に模様を描く。 少し乾いた苔の上を、一匹のアリがうろうろと彷徨っていた。
 じっとアリを見つめていると、どうやら餌を探している訳でもなく、おろおろとしているように見えた。
「もしかして、迷子か?」
 指で突っついてみると、逃げるように動きながらも、その場を離れる様子はない。辺りを見回してみたが、巣らしきものは見当たらなかった。

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冷たさの埋め合わせ

13/05/23 コメント:10件 名無 閲覧数:1613

 一人でラーメン屋に入れるようになったのは、いつからだろう。
 夜中のラーメン屋は、自分と同じような一人客が疎らに出入りするだけの、物悲しい空間だ。控えめにつけられたテレビが、時折わざとらしい笑い声を流していた。
 注文して、二人がけのテーブルからぼんやりと通りを眺める。わりと華やかな通りだ。平日の夜中でも案外人がいる。だが、この小さなラーメン屋を目にとめる人はいない。まるで切り離され・・・

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食べず嫌い

13/05/18 コメント:4件 名無 閲覧数:1394

 名古屋城大天守の上で、二体の金の鯱が話をしている。

「ねぇ、最近カラスから聞いたんだけど、名古屋ってグルメの街で有名なんだって」

「え、そうなの?どんなものがあるんだい?」

「なんでも、小倉トーストとか、ういろうとか、味噌カツなんてのもあるんだって!」

「へぇー!それは是非食べてみたいね」

「でしょう?それでカラスに、お願いだ・・・

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叶わぬ願い

13/04/27 コメント:9件 名無 閲覧数:1677

 とある電気屋二階のケータイコーナー。ここでは日々熾烈な生き残り競争が行われている。
 この業界は入れ替わりが激しい。日々新しい機能を堂々と掲げる新人がやってきては、旧型は壁際へと追い込まれ、廃棄物扱いとなる。まだ入ったばかりの新顔は、どんどん売り上げを伸ばしていく。しかし、俺は生産され始めて半年の落ち目であり、いつまた新しい技術を持った新人が出てくるかとヒヤヒヤする毎日を送っている。置き場・・・

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手紙のバトン

13/04/18 コメント:4件 名無 閲覧数:1469

 キコキコと自転車を漕ぐたびに音がする。そろそろ油を差さなければならないな、と思いながら、角を左に曲がった。この街は坂が多い。道も細く入りくんでいる為、 こうして郵便配達員は車やバイクではなく自転車を使っている。街一番の急坂を息を切らして登りきると、遠く波止場が眼前一面に広がった。
 この景色を見るために、この仕事をしているのだと感じる。春の海は穏やかに煌めいている。「ひねもす、のたりのたり・・・

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父への手紙

13/04/09 コメント:4件 名無 閲覧数:1469

 病室に、白々とした春の陽が射し込んでいる。桜は満開を少しすぎ、若葉が出番を今か今かと待ち構えている。芽吹きの季節とあちこちで浮かれる声が聞かれるが、この部屋は、季節などどこ吹く風と停滞している。せめて空気だけは循環させようと彩花は窓を開けた。
 この大部屋を使っているのは、今は一人だけだ。彩花の父、康之。父の為に、彩花はこの病院に通ってきている。
 窓から入る風を、しばらく頬にうけて・・・

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黒珠

13/04/06 コメント:3件 名無 閲覧数:1395

黒い珠の話を聞いてください。
 その夜、私は自宅の書斎で、ランプの灯りを頼りに本を読んでおりました。すると不意に、何かの気配を感じたのです。背後を振り返ると、そこに黒い闇が現れました。それは人の形をしていました。いえ、ただの影ではありません。深淵を覗き込むような、深い深い闇でした。
 驚いてあげた声もその闇に吸い込まれ、戦きながらもただ見つめるしか出来ませんでした。すると闇は、姿に似合・・・

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乾く

13/03/31 コメント:2件 名無 閲覧数:1391

ここに一本の椎茸がある。
 
 それをあらゆる角度から眺めてみる。傘は肉厚で、軸は太い。ひだは整っていて石突きは硬く、造形美すら感じさせる。窓越しの日に翳してみれば、艶々と光を弾いた。
 この椎茸は一体何故ここにあるのだろう。テレビを見ていて、ふとテーブルのコップに手を伸ばしたら、そこに椎茸があったのだ。コップはさっきから何度も取って置いてを繰り返しているのに、今の今までその存在・・・

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足元の狐

13/03/26 コメント:11件 名無 閲覧数:1869

 浅草雷門前で、平蔵は往来の人々を眺めている。
 カランコロンと下駄をならして歩く人々は気忙しい。年の瀬が近いのだ。乾いた冷たい風が強く吹き付けて、平蔵は着物の襟元を掻き合わせた 。
 足早に行き交う人々から少し離れて、平蔵は地べたに腰を下ろす。切れそうな下駄の鼻緒がないかを探しているのだ。平蔵は怒り肩の目立つ小男で、目は落ち窪み口元は歪んでいる。幼い頃に親から受けた暴力が原因で、左の・・・

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レジ店員の独白

13/03/16 コメント:4件 名無 閲覧数:1473

かさっ、ぴっ、かさ。
かさっ、ぴっ、かさ。
リズム良く品物を機械に読み込んでいく。私はこのスーパーのレジ店員。ここでパートを始めてから、三年が経とうとしている。 単調なこの仕事を楽しむコツ、それはリズムに上手く乗ることだ。
かさっ、ぴっ、かさ。
かさっ、ぴっ、かさ。
ふむ、 この栄養ドリンクとお弁当をご購入の、ちょっとお疲れ気味サラリー マンは茶色。使い古されて・・・

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背を押すもの

13/03/06 コメント:0件 名無 閲覧数:1477

握り締めた手の中の指輪が微かな音をたてた。
美保の目の前には簡素な台にのせられた遺体。恋人の俊哉の遺体だ。狭い霊安室で、白く薄い布団の上から覆い被さるようにして、美保は咽び泣いている。何度も俊哉の名を呼ぶ。何度も撫で付ける顔は包帯で厳重に覆われていて、見ることが出来ない。遺体の損傷が激しいのだ。彼は美保の目の前で、ビルの屋上から落ちて死んだ。
今日は美保の誕生日だった。日付が変・・・

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受け継がれるもの

13/03/02 コメント:0件 名無 閲覧数:1311

丁度あとひと月で、桃の節句である。

もうとっくに成人している私。未婚ながら、雛人形を飾るということはここ十年ほどすっかり絶えてしまった。小さな子供の為の行事という思いがあるせいか、はたまた人形を出す手間を惜しむようになったためか。高校卒業と同時に一人暮らしを始めた時、邪魔になるからといって断ったのに無理やり持たされた雛人形だが、結局押し入れにしまいこんでそのままだった。近頃は、幼・・・

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ピエロ

13/03/01 コメント:4件 名無 閲覧数:2397

なんて綺麗なピエロだろう。
降りかかるように落ちるナイフを事も無げに
ジャグリングする。足の下には大きな玉。そ
れが危うげもなく規則的に揺れている。まる
でスポットライトのように太陽の光がピエロ
だけを包んで、落ちた影さえ洗練された動き
を真似ているようにみえた。喧騒に包まれた
サーカス場で、掻き消されもせず聴こえてく
る笛の音は一体どこから流れて・・・

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