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yoshikiさん

面白い作品を知り、自分でも書いて見たくなって何年も経ちました。よろしくお願いします。 2010年 小説現代S&Sコーナーに初めて送った作品が掲載されました。作品名『幽霊の見える眼鏡』 とにかく面白いものが書いていけるといいなと思っています。 イラストはエアブラシと面相筆で昔描いたものです。

出没地 横浜桜木町界隈
趣味 音楽鑑賞、クラシックからロックまで音楽を聴かない日は一日とてありません。他、プロレス観戦 ドライブ・イラスト・食べ歩き
職業 会社員
性別 男性
将来の夢 楽隠居
座右の銘 不可思議はつねに美しい、どのような不可思議も美しい、それどころか不可思議のほかに美しいものはない。アンドレブルトン

投稿済みの記事一覧

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職業について

17/08/27 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:118

 人は生まれながらにすべての職業に向いている。
 そして人がどんな職業につくかは偶然によって決定される。

 パンセの中でパスカルはこう語っています。なんだか励まされたような、励まされないような微妙なニュアンスです。人生において職業はとても大事な意味を持ち、人生を左右すると言っていいと思います。

 人は自分の意志によって職業を決定していると思いがちですが実はそうでも・・・

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死について

17/08/12 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:173

 似非小説… あるいは小咄? というものが書けなくなったのでエッセイ…… いやいやそんなかっこいいものじゃないけれど、最近思うこと、昔から思うことを正直に文にしていこうかな… なんて思う次第です。

 私はもう還暦を過ぎました。それなので死について重くならない程度に書いてみたいと思います。

 では死についての名言(セリフ)を三つほど紹介しながら私なりの解釈を書いてみたいと・・・

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二つの悲劇

16/10/01 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:397

★前向きな人


 マイナスの感情は人の心に重大な影響を与える――。
 高名な博士がそう訴えた。ネガティブな情緒はストレスを増幅して心身ともに蝕む。

 つまり人は過去の失敗や、脅迫に近い教訓や、悲痛な体験よって縛られ先に進めない。恐怖が足に絡みついて前に進めない。
 ――負のスパイラル。これでは進歩的ではない。

 ポジティブ思考をする事。そ・・・

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ダンスのような奥義

16/07/27 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:530

 合気道、糖田剛二というのは俺が心の底から崇拝する武術家であり、憧れであり、目標である。彼の数々の武勇伝を述べればその枚挙にいとまがない。全身凶器と呼ばれ、向こうところ敵なしの空手家、厳座流、稲生鉄扇が命を懸けた勝負を挑んだとき、糖田剛二は鉄扇の正拳突きや蹴りのことごとくをかわし、鋼鉄と化した人差し指一本を鉄扇の眉間に放って、意識を喪失させた。が、糖田剛二は相手を少しも恨まず、意識を回復した鉄扇に・・・

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父の弁当

16/07/17 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:439

 父さんが旅行に行こうというから、僕は嬉しくてそれなりに支度をしようとしたのに、何も持たなくていいというから、ちょっと不思議な気分だった。
 そういえば仕事が忙しいらしくて、家に帰るのがいつも遅くて、何日もいなかったりする父さんだったから、僕は寂しかったし、母さんは数年も前に家を出て行ったきり、帰らなかったので、僕はなんども母さんのことを訊いたのだけれども、父さんは何も答えてくれなかった。・・・

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発明狂奏曲

16/06/14 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:718

★自殺薬

 恐ろしい保険金殺人が行われようとしていた。標的は夫。悪人の魂胆は、発明狂の博士が作りあげた自殺薬を使うこと。この薬を服用した者は一週間以内に確実に自殺する。
 しかし夫はグラスのワインの味がおかしいのに気づき、グラスを戸建ての窓から投げ捨てた。そしてそのワインは乾いた地面に吸い込まれた。
 そこまでは良かったが、博士はこうも言った。この薬はすべてのものに効くと・・・

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長蕎麦コンテスト

16/06/12 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:630

 時は元禄元年 将軍が綱吉の時代。蕎麦が大好きな下総の大名が、とんでもない御触れをだした。
 長い蕎麦をつくる事。より長い蕎麦を打った者には褒美を与えるという、風変わりな触れ書きが高札に表示された。
 それを知った下総の庶民が、お上に聞こえないように愚痴をこぼした。
「いや、まいったねえ。いったいお上は何を考えていなさるのか、お犬様の次は長い蕎麦かよ、さっぱりわからねえ」
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蕎麦… かもしれない

16/06/07 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:496

 宇宙人が言った。
「これはいったいなんだ?」

 ここは地球から遠く離れた惑星。
 遠方に変わった形の山々がそびえ立ち、奇妙な建造物が都市を形づくっている。その中央の広場に複数の宇宙人が集まっている。その容姿については詳しく書かない事とする。なぜって読者が気分を害するといけないから。
 ともかく、そこに提出されたものは地球から持ってこられたものだ。彼らの探査船は何回・・・

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心の雨

16/06/04 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:525

 ――心の内側に雨が降っている。窓から見える空はこんなにも晴れているというのに。
 それというのも知ってしまったからだ。私の食事に妻の玲子が毒をもっているという恐ろしい事実を……。
 私と玲子とは歳が二回りも違う。だから玲子が私と添い遂げると言った時に一抹の不安を感じずにはいられなかった。だが私は玲子の美貌に心身とも魅了されてしまった。玲子はあなたの創作の仕事が好きだから、傍にいてあな・・・

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願い

16/06/01 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:614

 曇り空の市民公園をジョギングしていると悲鳴がした。私は聞き耳を立てた。だれかが公園の近くの川で溺れているらしい。
 私はまわりに助けに行けそうな人がいないか冷静に観察したが、これは緊急だと悟り、私が助けに行かなければなるまいと思った。もう四十に手が届く年齢だが水泳には少しばかり自信がある。
 私は軽装だったのでそのまま川に駆けていき、思い切り飛び込んだ。もちろん私は水難事故の場合、飛・・・

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霧雨

16/05/25 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:524

「ねえ君、山で迷ったことないですか?」
 カウンター席で青年が傍にいる女性にそう尋ねた。その青年は室内だというのに帽子を被ったままである。ところは信州、山の麓の小奇麗なカフェ。
 青年とその若い女性とは初対面で青年がグラスを持ったままで、そんな事を出し抜けに訊いたのである。
 女性の方は女友達ちと来ていたから、いくぶん心丈夫で丁寧にその質問に答えることにした。青年が見栄えのよい丹・・・

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雨と王国

16/05/24 コメント:1件 yoshiki 閲覧数:498

 むかし赤道直下に王国があった。その王国をある歳、飢饉が襲った。
 日照りが異常に続き、河が干上がり作物は枯れ果てた。深刻な事態だった。餓死者が出ない前に王は牢獄の犯罪者をすべて処刑した。そしてこう言った。
「誰でもいいから雨を降らせてみろ。そうしたらそのものを士官とした上に、わしの財産の半分をやる」と。
 すると体中入れ墨だらけの呪い師が現れ、その場に座り込み天を仰いで祈祷を始・・・

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へんな掌編三つ

16/05/20 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:564

★橋の上で

 その青年は思いつめた表情をして橋の上に立っていた。峡谷にかかる鉄橋の下は足が竦むほどの眺めである。青年はひどく落ち込んだ様子で橋の欄干に足をかけた。ちょうどそのとき、分別のありそうな老人がそこに通りかかった。まるで水戸黄門のような風貌。
「お若いの、おやめなさい!!」
 老人はそう叫んで青年を呼び止めた。かなり大きな声だったので青年の決心が鈍った。
「・・・

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旅は道連れ、世は不可思議

16/05/18 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:617

 カナコは街角を曲がったとき、なにか人の行列ができているので、この近くに新装の店でもでき、安売りでもしているのかと思い、その行列に並ばないまでも様子を確かめようと思った。
 カナコはもともと好奇心が旺盛なので、その列の先頭を探したが、なかなかたどり着かない。それに雰囲気がへんなのだ。スーツケースを持つ者や、地図を持つ者、リュックや帽子の人が多い。
「これって旅行者っぽくない」
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映画『2001年宇宙の旅』について

16/05/13 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:842

 旅で何か書けないかと思っていたら、記憶が自動的に2001年を思い起こした。大好きな映画だから。知らない方の為に、少しだけ情報提供すると、原作者アーサーCクラークはSF作家で「幼年期の終わり」が代表作。映画版はスタンリー・キューブリックが監督・脚本を担当し、1968年公開された。1968年というと米ソ冷戦真っただ中だし、人類まだ月に行ってないのよ。
 その時に私はまだ中学生だった(歳がばれる・・・

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旅の化け物(昔語り風)

16/05/10 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:742

 これはもうだいぶ昔の話なんだが、ある若者が北の地方を旅しているとな、夕暮れ時に山道に迷ってしもうて、ちょうど村があったので一夜の宿を求めてのう、村に入っていくと、なんだか村の衆が浮かない顔なんだな。なんかこう覇気がなくって、沈んだ顔をしておる。旅の若者は多少の金は持っていたから、宿を頼むとな、飯がないというのじゃ。
 これにはさすがに若者も驚いてのお、ずいぶん意地の悪い村だと思っていたら、・・・

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世界仰天スクープ スペッシャル!

16/05/03 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:507

★人類のルーツ
 人は六万年以上前にアフリカから世界に広がり、様々な国をつくり今では地球の環境を変えてしまうほどの力を持った。だがその道のりは決して平たんなものではなかった。
 というのも我々ホモサピエンスは、ヨーロッパにおけるネアンデルタール人や、西シベリアのデニソワ人それぞれの遺伝子をとりこんだ雑種ということが解かったからだ。
 ではなぜネアンデルタール人やデニソワ人は絶・・・

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甘夏になった月

16/05/02 コメント:1件 yoshiki 閲覧数:569

 世の中には面白い事がいきなり起こることがある。いや、この場合面白いと言ったら不謹慎かもしれないので、飛んでもない事と言い変えておく。
 ――あるとき月が突然、甘夏になってしまった。
 しかし、このことを常識のある大人達、とくに科学者のお歴々は「ありえない」の一点張りで簡単には認めなかった。
 反対に子供たちは、夜空を見上げながら、ああ、月が甘夏になってらあ、こりゃ、食べるしかな・・・

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テセウスの甘夏

16/04/30 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:542

 この記述はあまりに内容が常軌を逸しているので、栽培者であり、当事者である私はこれを公の場に発表するのが躊躇われてならないし、私の精神鑑定書でもつけない限りは到底世間はこのことを受け入れてはくれないと思う。
 しかしながら、私の馬鹿正直な性格は損得顧みずにこのことを告げすにはいられない。だから順を追って、時系列に書いていこうと思う。
 ――私の趣味は家庭菜園だった。親から受け継いだ広く・・・

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なんの為にかくのか?

16/04/26 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:558

 こんな事がありました。子供の頃の話ですが私は絵がとても好きだった。毎日深夜まで絵を描いていて、いつまで起きているんだと、よく父親に叱られたものです。でも絵が好きだった。クラスの生徒も私の絵がうまいと認めてくれていて、誰かが君はほかの科目はだめだけど、絵だけはうまいねと皮肉めいたことを言われた事を憶えています。
 中学になって私は一時登校拒否をしている時期がありました。そのときも家でひたすら・・・

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七色の着物を着た女

16/04/24 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:506

 長いなだらかな坂道があってその先に鉄の橋があります。かなり高い橋です。昔からその橋は別名自殺橋と言われています。下に川があるのではなく下は線路です。
 で、その橋を渡ったところに、なんとも派手な衣装を着た女の人が時々立っているのです。だからわたしはそこを通りたくないのですが、その橋を渡らないと家に帰れないのです。
 それにしても時々出会うその女の人の風体が尋常ではないのです。奇抜の上・・・

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色彩回帰

16/04/19 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:523

「色についてなんですけど……」
 たどたどしい口調で紺野君が質問した時、私はちょっと驚いた。と言うのも紺野君は極端に無口な少年でそれまで私は紺野君の声をほとんど聞いたことがないくらいだった。逆に私が紺野君に話しかけても煮え切らない返事しか返ってこない事が多かったから、少しばかり嬉しくなった。
「色についてって、どんな事?」
 私はなんでも聞いてという表情で紺野君に聞き直したと思う・・・

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福猫

16/04/09 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:494

 コウジの家は貧乏だった。父親はリストラに遭い現在失業中だし、母は急な病で働けず、兄弟は多いときている。 コウジは食べ盛りの中学三年生。下に四人。上に二人の七人兄弟である。とにかくコウジは貧乏から逃れたいと思った。
 ――このままじゃ進学もできないじゃないか。なんとか裕福になる方法はないものか。コウジは日夜それを考え続けていた。
 ある日コウジは夢を見た。そして夢の中で神様に会った。そ・・・

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宇宙珍事件スペシャル (コメディ)

16/04/05 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:540


 長い航海の果て、宇宙船がその星についたとき、期待した宇宙人に会えなかった。だから大方の関係者や科学者はがっかりした。
 というのはその星はこれまで様々な観測がなされ、生命の存在は確定的だった。原始的なアメーバ等の生育は確認できているし、昆虫に似た生物も多種多様に進化している。
 となれば知的な生命がいるに違いないと、科学メンバーや研究者が予想していた。しかし、乗組員を迎えた・・・

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天国の白い猫と黒い猫

16/04/05 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:588

 ――長い階段だった。段の幅が広くきれいに整えられた階段だった。
 目を開けると男はそこにいた。男は死んだのだ。長年刑務所に入っていてやっと刑期を終えたのだが、風邪をこじらせ、それだけのことで肺炎になって逝ってしまった。
 若いころの男は相当の悪人で闇取引から人殺しまで犯してきたが、中年から晩年にかけては好きな女性が出来たのをきっかけに、その罪を反省し、罪の償いに半生をささげてきた。<・・・

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銀河の果て

16/03/30 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:583

  ――ガナクル銀河の果てを彷徨っていた。
 母船から離れてどのくらい経ったのだろう……。 既に計器類はただの金属の集合体と化し、生命維持装置で辛うじて命を保っている。その時にはもう私は生きていたいという本能のほかに、死にたいという気持ちを密かに携えていた。
 どう考えたってもう戻れないのだ。物理的に。
 だから私が何をしたって、何を発見したって無意味なのだ。たとえ別宇宙を・・・

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ゴロー消失?

16/03/28 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:539

「みんなに集まってもらったのも、私は大変なものを発明したかもしれないからです」
 博士はそう言い、テーブルの周りに集まっている研究所の連中を一瞥した。研究生の皆もいったい何を博士が発明したのか、興味深そうに様子を見守っている。博士はやがて白衣の内ポケットから半透明の消しゴムらしきもの取り出して皆に見せた。
「この消しゴムはなんでも消せる。今までの物理の法則を崩壊させるものです」
・・・

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 続・天国か、地獄か  他二編

16/03/26 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:512

●続・天国か、地獄か

 九十九人の人を殺した殺人犯が死刑になり、エンマの元にやってきた。男は自分のしでかした悪行の反省をするどころかふてぶてしい態度でエンマに対峙した。
「やい、エンマさっさと俺を地獄に落としやがれってんだ!」
 エンマはじろりと男を睨んでから、こう言った。
「いや。惜しいね。ほんとに惜しい」
「な、なにがだ?」
「いやね、わた・・・

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三行の真実

16/03/21 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:494


 ――北の独裁者があるとき、失敗をした部下に腹を立てて怒鳴った。
「ああ、バカもの! どうして私の部下たちはバカばかりなのだ!! もっと優秀な奴はおらんのか!!」
 するとその様子を見た、独裁者の妻の一人が困り顔で言った。
「しかるに優秀な部下は皆、あなた様が嫉妬したあげく、反乱分子だと言って処刑されたじゃありませんか!」




 ある・・・

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すばらしい水族館

16/03/20 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:646

 そこはすばらしい水族館だった。
 オサムはデートコースにここを選んで正解だったなと、ほっと胸を撫で下ろす。お決まりといえばお決まりなのだが、ともかくミユキは喜んでいるようだった。付き合い始めて半年にもなるのに、ミユキは手も握らせてくれない。
 オサムはミユキが好きでたまらないのに、いまいちミユキのこころが掴めない。今宵こそはとオサムの心は高鳴るばかりなのだった。
 それにしても・・・

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天国か、地獄か?

16/03/15 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:530

 男は死んだらしい。交通事故だ。自転車に乗って交差点に差し掛かった時、思い切り乗用車にぶつかって体が宙に舞った。
 が、そこからの記憶がさだかではない。病院にいたような気もする。ところが男の前に立っているのは高級スーツ姿の紳士だった。
 しばらく男はその紳士を不思議そうな表情で観察していた。そして質問しようとしたが口をきいたのは紳士が先だった。
「君は善人でも悪人でもないな、中・・・

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インセンティブ・ムービー

16/03/14 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:541

 最近めっきり、面白いテレビが減りました。ドラマもマンネリだし、バラエティも阿保らしいし、テレビを録画までして観ようとする番組がないのです。昔はテレビが見たくて早く会社から帰ったこともあったくらいなのに、今は何を見てもつまらない。そんな風にミキヤは思っています。
 ミキヤにとってテレビはニュースを知る為だけの道具と化しました。映画も同じです。最近のミキヤほとんど映画館に行かなくなったし、とき・・・

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感傷的宇宙航海日誌 U

16/03/11 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:485

  20XX年 08.30 T.P記述

 我々は宇宙を自由自在に航行するテクノロジーを得てから宇宙には限りなく生命が存在し、輝いているのを知った。今まで他の知的生命体に出会わなかったのが嘘のように思える。
 宇宙の暗黒時代は過去のものになったのだ。そして我々は銀河のかなたに究極の星を発見した。
 その星の存在は宇宙の風に乗って知らされたとでも述べておこう。
 その星・・・

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 感傷的宇宙航海日誌

16/03/06 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:576

 人類文明の飛躍的躍進。宇宙空間を自由航行するテクノロジーを得て、宇宙世紀の幕開けは思いのほか速くやって来た。そしてこの記録は優秀なクルーによって正確に、あるいは支障のないようにしたためられた。その驚愕の内容をここに明かそうと思う。

 20XX年 03.23 T.P記述

 地球から13億光年はなれた天体で我々は初めて知性のある生命体を発見した。
 だが知性が・・・

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質問する女

15/11/08 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:787

 小雨に煙る宵である。勤め帰りの私は折り畳みの傘をカバンから出そうか出すまいかと思案しながら小走りに家路に急いでいた。
 夕暮れ時の都会のネオンが、街灯に反射して路面にきらきら映っている。やがて路地に入り閑散とした寂しい路にでる。もうしばらくで我が家だ。
「ねえ、もしもし」
 その声は不意に私の後ろの方からした。若い女の声音である。最初私は聞こえているのに振り返らなかった。・・・

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世界

15/08/31 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:697


 ――すべてが終わろうとしていた。

 世界が消滅しようとしていた。
 人間と言う人間が正体不明な疫病にかかり、死に絶えて行き、人類の輝かしい歴史に終止符が打たれようとしていた。

 人類最後の男がいた。しかし彼の目は霞み思考さえが曖昧となっていた。

 思い出されるのは懐かしい家族の姿と、故郷の豊かな山野とその大気、そして川のせせらぎ。<・・・

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宇宙のボールペン

15/07/08 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:749

 フェルミのパラドックスと言うのは、なぜ未だに地球以外の知的生物と接触できないのかという、疑問から誕生したらしいが、あるとき、チリのアタカマ砂漠にある電波望遠鏡群が宇宙から来た謎の電波をキャッチした。

 謎というのはこの電波が自然電波でなく、人工電波だという意味だ。この電波を解析するために、膨大な計算が必要となったが、それはスーパーコンピュータによって・・・

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報復

15/06/16 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:773

 その衝撃と言うのはこれを伝えるものの心を切り刻み、完膚なきまでに叩きのめすに違いなかったと思う。口に出すのも恐ろしいし、絶望的で救いもなかったろう。
 20××年、地球は空から降ってきたものによって滅亡しようとしていた。それも他のものの意志で。他のものとは地球以外のものと言う意味だろうし、未知のものとも言えるだろう。

 それは隕石でもなく、彗星でもなく、まして偶然の産物でもな・・・

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ある別れ

14/11/03 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:834

 信野早紀はちょっと変わった女だった。歳はまだ十九だが美人でも不美人でもなく、ちょっと猫背で団子鼻だったが、それなりに化粧をうまくすれば可愛い娘だった。
 
 
 

 それにしても早紀は付き合い出してから五か月も経つのに、恋人としての一線を越えようとしない圭介に業を煮やし、積極的に彼の心中を推し量ろうとした。まあ、ここまではいいがその手段が変わっていた。
 手・・・

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宇宙人にされた男5(最終回)

14/11/02 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:784

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 その一瞬に悲劇は起こった。エルザークは光線銃を広瀬曹長の背中めがけて放ったのだ。バシッ!!と凄まじい音がして曹長が前方に吹き飛んだ。一瞬で曹長の背中が焼けただれて、焦げたような異臭が鼻をついた。
「曹長!」
 俺はありったけの声で叫んでいた。俺は死に物狂いでエルザークの光線銃に噛り付いていた。そして火事場の馬鹿力みたいな力で光線銃をふんだくって、その銃床の部・・・

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宇宙人にされた男4

14/10/25 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:738

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 俺たちは探査艇で荒れ果てた東京を飛び回った。殆どの人間が無残に焼かれ死に絶えていた。川には黒こげの死体が累々として浮かび、道端には墨のように干乾びた屍が散乱していた。まさに地獄のような惨状であった。しかし真実を確かめるには生きた人間に接触して、その人間の口からこの地球について聞き出すのが手っ取り早いと俺は思った。
「都会に人間は残っていなくても地方には人間がまだ生存・・・

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宇宙人にされた男 3

14/10/21 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:776

「何をしているんだ!?」
 その時不意に俺の頭の中で不気味な声がした。振り向くと二メーター近い宇宙人がひとり、手に光線銃のような武器をもって立っていた。そいつは随分と不機嫌そうな顔をしていた……。その宇宙人は広瀬曹長をじろじろと見ながら言った。
「こいつは何者だ。たしか地球人じゃないのか…… あーっ?」
「そうです。良くご存知で。俺はアプラック。こいつは捕虜だ」
 ・・・

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宇宙人にされた男 2

14/10/14 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:803

「心配しなさんな。任務が済んだら君を元の人間に戻すわ。君の身体の情報は全てコンピュータにバックアップしてあるのよ」
「任務ってなんでしたっけ?」
 俺はとぼけた顔をしたかったが、宇宙人にとぼけた顔はなかった。
「おやおや。しっかりしてくださいな。飯塚君さあ」
 前田博士が困った顔をした。俺はなんとなくボケをかました。たぶん悔しくて怖くてボケてみたかったんだと思う。テレパ・・・

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宇宙人にされた男 1

14/10/12 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:811

 プロローグ

 変身! 俺の大好きな言葉だ。普段はか弱い男がこの言葉を唱えると超人に変身する。パワーと気力に溢れ、敢然と悪に挑戦しそれを倒す。寛大で慈悲に溢れ、周りからも慕われる絶大な人気者だ。○○ライダーとか、○○○○マンとかそういう変身ものが俺は子供の時から大好きだった。変身すればまったく別の自分に瞬時に変われる。それはまた肉体だけの変化を言うのではなく、心もまた変身するのだ。心・・・

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黒い計略

14/09/29 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:734

 それを初めて見たとき中西雅司の身体は小刻みに震えだしていた。深呼吸をしようが声を出そうがその慄(ふるえ)は容易に治まりそうになかった。見た相手が悪魔である。黒いマントを羽織り、長身で銀色のステッキをついていた。三日月をはめ込んだような眼球をしている。まるで猫の目だ。口もとには人を蔑むような笑いが貼り付いていた。鷲っ鼻で全体に西洋人を思わせる風貌――。
 悪魔は恐怖のにおいを撒き散らせ、憮然・・・

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仕組まれた未来

14/08/10 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:814

 シグマ博士は長年の研究の末、ついにタイムマシンを完成させた。というより、正確に言えば時空連鎖帯の発見こそが重大で、そのループする管丈の時間軸を素粒子と化して自由に移動できる乗り物は意外に簡単に出来上がった。
 この偉大なる発明が後世にどれほどの影響を与えるか計り知れない。いや、もうこの時点で運命の変更も可能なのだろう。少なくとも博士はこう考えていた。シグマ博士はマシンの研究で世間に知られて・・・

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大きな望遠鏡

14/07/27 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:715

「だから、何が見えたというのですか?」
 その質問に博士は黙して答えなかった。
「どうしても世間に成果を発表出来ないとおっしゃるのですか?」
 研究開発局の局長は真剣な顔をして博士に質問した。もう陽が沈み星々が点々と輝きだした頃だ。巨大望遠鏡の設置された研究所は小高い山の頂上付近にあった。空に近く大気の澄んだ場所だ。
「――まあ、そのう、うーん」
 老年の博士がゆっく・・・

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獣の刻印 最終回

14/07/07 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:681

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 ――月には魔性が潜んでいる。その優美な流面型の裏側に、人の目をくらませ惑わしてしまう妖美を月光は宿している。決して照りつけぬ冴え冴えとした光。その光を映す水面はゆらゆらと怪しいさざなみを湛え、黒々とした池は浮世の喧騒をその裡に飲み込んで眠るようにそこに横たわっていた。
 


 池岸に二つの人影があった。二人の身のこなしは忍者さながらであり、闇に紛・・・

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獣の刻印 8

14/07/07 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:669

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 古めかしい二階屋の鮎子の家は妙に懐かしかった。鮎子は二階の自分の部屋に嬉しそうに東少年を迎え入れた。ソファに二人で腰を下ろす。鮎子が心配そうな顔をして東少年を覗き込んだ。
「でもさっき怖かったわ……。でも嬉しいよ。みっちが生きていて」
 はにかむようで、しかも優しい鮎子の言葉だった。まるで可愛いペットでも見るように生き生きとした瞳が少年を見つめていた。

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獣の刻印 7

14/06/29 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:620

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 東少年の全神経はたちまち究極まで研ぎ澄まされていた。望月は東少年の変異に敏感に反応した。望月の獣性が少年が並みの人間ではないと感じ取った瞬間、その姿がその場から掻き消えた。東少年は全く油断をしていなかった。獣の殺気はそこに歴然として臭っていた。錐の先ででも揉まれるようなぎりぎりと迫る殺気だ。
 望月は黒豹に変貌していた。黒い獰猛な獣がいきなり東少年の目の前に現れたの・・・

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氷の妖精

14/06/28 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:715

 冷たくそそり立つ氷壁にトムと言う青年の姿がありました。ある時、山を愛するトムは足を滑らせ、クレバスに転落してしまいました。しかも直後に雪崩が起こってパーティの誰もトムを助ける事が出来ませんでした。薄れゆく意識の中でトムはもう終わりだと思いました。
 けれども、トムが気付くと目の前に美しい少女がいました。一瞬トムは自分はもう死んで天国にいるのかと思いました。でも少女がトムを見つめています。少・・・

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獣の刻印 6

14/06/16 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:680

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 夜空に暗く重い雲が掛かっていた。星一つ見えない。湿った生暖かい風が吹きすさんでいる。時々その分厚い雲の合間から黄色い閃光が閃いた。見かたによっては青や赤、他の色々な色が混ざり合っているようにも見える。彼方にどすんという轟音がした。腹に響く音だ。今にも槍のような雨の束が落ちてきそうな天候だった。
 病院の壁面に雷光がひらめく度に黒い丈高いシルエットが投影された。そのシ・・・

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途上

14/06/03 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:730

 道の前方にあなたを何かが待ち受けています。はるか前方に何かがいてあなたを見つめています。決して好意的な視線ではありません。よく見るとそれは鬼のような恐ろしい顔をしています。目つきが鋭く、大きな口もとに牙がのぞいています。全身が青緑の毒々しい色彩で、爬虫類を思わせます。それはモンスターです。体長二メーターは優に超えます。あなたとそのモンスターは一対一で対峙して、まんじりともしません。あたりは熱風の・・・

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転がる生き物の話

14/05/26 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:964

 ある惑星に生命がいました。とても地球からは離れた星なので人間はその存在さえ知りません。ただその生き物はとても不可思議な生態を持っていました。なんと説明しましょうか、地球の生物に似た者を探すのなら、それはマグロにちょっと似たところがあります。
 姿かたちは似ても似つかないのですが、マグロは回遊魚で、寝る時でさえ泳いでいますが(泳ぎを止めたら窒息する)その惑星の生物は、常に転がっていないと死ん・・・

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獣の刻印

14/05/26 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:838

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 ――黒川精神療養院地下室、陰気な雰囲気の場所で尋常でない会話が続いていた。
「この少年の筋肉の質量は常人の数倍もあるんじゃ。もし暴れたら手がつけられん、だから拘束してある」
「暴れるなんて。東君はそんな少年じゃありませんわ」
「だといいがねえ。彼は昔の彼じゃない」
「わたし、一度帰ります。ここには林崎先生と出直してきます。医者もつれて参りますわ・・・

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恋人はスパイ

14/05/17 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:831

 ――優奈(ゆな)が好きになった、付き合い始めて四か月になる祐二は、自分はスパイだと言う。もちろん彼女がそんな冗談みたいな話を本気で信じてしまったわけではないが、祐二は本気な顔をしてそのことを誰にも知られないように、夜更けの公園でこっそりと優奈にカミングアウトした。祐二は、人影がないのを何度も確認した末、ぼそりと優奈に向かってこう言った。
「俺は諜報員なんだ。秘密工作員さ。俗ないい方をすれば・・・

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獣の刻印 4

14/05/12 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:816

「やめろ、何をする、この化け物!放せ」
 林崎がもがいたがその太い腕は微動だにしなかった。羽交い絞めである。
「黒川先生! 気でも違ったのですか、放してください!」
 苦しそうな林崎の叫び声にも黒川は平然としていた。林崎が興奮して真っ赤な顔になった。
「林崎君。どうやらわしらは意見が衝突して噛み合わないらしい」
「放せ! 黒川先生。速く僕を放すんだ」
 怪物の涎・・・

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獣の刻印 3

14/04/29 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:769

 11

 ――雲低く垂れ込めた夕暮れ時だった。
 一台のセダンが、うねった急カーブにタイヤを軋ませながら走っていた。グレーのボンネットが鈍い光沢を放っている。ハンドルを握る林崎真司の額に小さな汗の粒が幾つも光っていた。林崎は今年で三十二歳になる高倫学園の理科の教師だ。物理が得意な教師の割には体格がいい。探究心のある一途な性格の彼は碧川貴子と仲も良かった。もっとも兄弟のような間柄・・・

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ああ、結婚

14/04/29 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:709

 わたしは結婚がしたい。親もわたしの結婚をせいているようだし、うるさいけど、もうわたしも三十を少し過ぎたから仕方がない事かも。相手はなにも王子様じゃなくていい。ちょっとだけイケメンで、年収はたかだか一千万あればいいし、身長だって180センチあればいい。これはわたしの身長が170センチだから仕方のない事だ。そんな折にネットサーフィンをしていたら、偶然あるサイトを見つけた。そのサイトは真っ黒な画面に、・・・

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獣の刻印 2

14/04/14 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:870



 けだるい夏も終わりの午後であった。このところ東京は曇りの日ばかりが続いていた。
 ―女子校生連続殺人事件捜査本部― 仰々しくこう書かれた縦長の板看板を横目で眺めて碧川貴子がこの殺風景な部屋に入室して数分と経っていない。成城警察署の一室である。あまり上等とは言えない机を挟んで、碧川と肥満気味の中年の刑事が椅子に座っていた。
 その後方にまだ三十代前後の若い痩身の刑事・・・

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恐ろしい予感

14/04/10 コメント:11件 yoshiki 閲覧数:891

 ミツオという少年は預言者でも、超能力者でもないけれど、時々不思議な予感が胸をよぎることがあった。ふと友人や恋人の事を考えていたら、電話があったとか、家に来たとかそう言う事がないだろうか。胸騒ぎというものを誰もが経験したことがあると思うが、ミツオの予感もそれに近いもので、ただもう少し具体的だった。
 もちろん予感にも良いものと悪いものとがある。例えば年の違う兄が中古車を磨き上げている時にミツ・・・

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迫りくるもの

14/04/07 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:891

 ガツンという鈍い衝撃を身体全体に感じたとき、はっきりと女の眼を見てしまった。その女は苦痛に顔を歪め、恨めしそうな瞳で俺を見つめたまま宙に舞った。
 赤いポルシェのエンジンが、獣のように猛り狂っている。たった今、俺は不覚にも人を撥ねてしまった。思わず急ブレーキを踏むと車体が軋み、タイヤが異様な咆哮を放ってようやく回転を止めた時には目前に悲劇の惨状が展開していた。
 銀色のシャーシが大き・・・

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獣の刻印 1

14/04/06 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:734

※連載をアップしてみました。変身ものです。注 残酷描写を含みますので興味のない方はスルーしてください。

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 碧川貴子(みどりかわたかこ)は夜の静寂(しじま)に浮かぶ汽船の灯りをぼんやりと心の奥の鏡に映していた。その淡い灯は霧の中に浮かんでは消え、心の中にあえて刻まれるでもなく幻のようだった。
 彼女がいるのは湾岸沿いに建てられた洒落たラウンジバーで、ラウンジの・・・

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はぐれ者達のエレジー(コメディ)

14/04/02 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:905

その一

 着物の女が橋を渡り柳の下を通りかかると、生暖かい風が襟元に吹き付けた。
 なんだか湿った、重苦しい空気を感じる。彼女がいくぶん早足になり、柳の下を一気に通り抜けようとした瞬間、それはそこに忽然と現れた。
 髪を振り乱し、青白い陰気な顔に白装束という出で立ちだ。
「恨めしや〜〜、おお恨めしい!」
 驚いた女は
「あーれーっ!」
・・・

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鏡の眼

14/04/01 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:820

「実は……」
 そう言いかけてその男は口ごもった。やつれた顔の蒼い唇をした男である。どういうわけかその男は左目を押さえながら入ってきた。
 ごくありふれた眼科の診察室である。水色のブラインドを光が通過して部屋の壁は薄いブルーに染まっていた。
「どうなさいました?」
 医師が促すと男はどぎまぎしながらこう言った。
「先生には信じられないとは思いますが、私の左目と右目と見・・・

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廃墟にて

14/03/26 コメント:8件 yoshiki 閲覧数:956

 県道から脇道に入ると、殺伐とした林道が続いていた。某テレビ局の取材班はその先の今はもう廃墟と化した国立病院に向かって進んでいた。機材を抱えたまま車が入れない道を歩くのは骨が折れる。取材班の表情がいつになく厳しい。
 足元に得体の知れない冷気が絡みつく。そして押し潰されそうな重い気圧。何かが、正体不明の何者かが夜な夜なこの辺りを徘徊するという噂だ……。
 そのなにかをテレビカメラにとら・・・

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塀の向こう

14/03/04 コメント:8件 yoshiki 閲覧数:1119

 黄金町というのは中三の女子、ミナミの生まれ育った町なのだが、彼女は生まれてからこの町を一歩も出たことがない。なぜなら町の周囲を丈高い城壁の様な塀がぐるりと取り囲んでいて、出たくても出られないのだ。
 むろん誰だって、なんで町の周りに壁があって外に出られないのか疑問に思わないわけがないのだが、それを誰もが口に出さない。それは一種のタブーみたいにされてきた。町の人達は昔からそのことを口に出して・・・

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情念

14/02/20 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:912

 フランソワの笑い顔といったら輝くようで暖かくて、それでいて秘密めいたところがあって、もう中年をとうに過ぎて壮年に差し掛かったロベールにとって、フランソワは魅力的を超えて魅了的だった。 いい歳をしてロベールはフランソワを見るたびに青臭い少年の頃のように胸がキュンと痛み、嬉しいような悲しいような切なさを、胸の裡に感じてしまうのだった。
 赤い屋根のフランソワのカフェは長い石畳の坂道の中腹にあり・・・

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Magic

14/02/15 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:822

 ある時アマゾンの秘境で、未知の部族の少年が原住民の黒人に捕らえられた。長身の少年はネアンデルタール人の子孫ではないかと言う妙な噂が立ち、忽ちそれはスクープになり、世界中の人々の注目するところとなった。
 早速、世界の主要国から自然人類学者等が率いる調査団チームが結成され、現地に派遣された。
 日本からも調査チームが現地に赴き、調査を始める事となった。やがて捉えられた少年を救うためか、・・・

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これでもわたしが好きですか?

14/02/04 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:952

 ――わたしはあなたが狂おしいほどに欲しいのです。その肌に身を摺り寄せ、愛撫し、骨の折れるほどに抱きしめていたいのです。 ええ、そうですとも。 たとえ我が身を、餓鬼道に貶められたとしても後悔しない。あの愉悦と官能の息吹を、めくるめく高鳴る情念の血潮を、身の裡にひしひしと感じていたいのです。
 その肌を舐めまわし、内臓まで味わい、骨を噛み、醜悪な食人鬼と化したとして構うものですか。愛しいあなた・・・

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鬼畜

14/02/02 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:944

 貞治さんは私の大切な友人だったはずなのに、結果に於いて貞治さんが死んでしまって、あの独特の照れたような笑いが、二度とみられなくなったのは紛れもない事実だ。
 元々貞治さんは心臓が悪くて、時々発作みたいのを起こして胸ポケットからニトログリセリンの錠剤をだして服用していたのを私は知っていた。

 私が貞治さんと初めて会ったのは囲碁クラブだった。それまでまったく囲碁を知らなかった・・・

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葛藤

14/01/28 コメント:14件 yoshiki 閲覧数:1288

 もし月が生きものでいて、それも飛び切り人間的な情動を持っているとしたら、きっと地球に惚れるのじゃないだろうか? だって地球は美しいし、まだ若いし、大きいもの。
 それに引き替え月はあばた面だし、そりゃ地球から見た満月は美しいけれど、傍に寄ったら顔色も悪いから幻滅かも知れないし、たぶん月は女に決まってるから、もじもじして地球が好きなくせに、好きだなんて到底言えないだろうな。
 そんなこ・・・

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謎の育毛剤

14/01/25 コメント:13件 yoshiki 閲覧数:1070

 ――俺は悩んでいた。そして絶望していた。というのも最近めっきり髪の毛が薄くなったからだ。
 歳からしても俺はまだ三十代だというのに四十過ぎに見られる。まあ、つるっ禿げの祖父の古い写真を見るたびに悪い予感は以前からしていたのだが。
 女房などはあまり気にしなくていいと言うがそうはいかない。養毛、育毛剤の類はほとんど試してみたが、高価な割には効き目の薄いものばかりで、もう鬘か植毛しか手が・・・

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ブラボー人造人間

14/01/24 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:806

心って何ですか? 
感情が心なのですか?  

心って何処にあるのですか?
心臓ですか、脳ですか?

意識が心なのですか? じゃあ意識ってなんですか?
脳内の微弱な電流のネットワークが意識を形成しているのですか?
そうならなぜ人工的に意識を製作できないのですか?

意志ってあるのですか? 本当に物事を意志で決めているのですか?
それ・・・

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合言葉は「○○○○」

14/01/17 コメント:8件 yoshiki 閲覧数:1002

 この話を私は人前では決してしない。だからこの奇妙な話は私の家族だけが知っている。けれど今では身長で私を追い越した息子でさえ、もうそれに触れようとはしなくなった。
 あれはたしか、関東に乾燥した北西風を持ち込んだ冬将軍が去って、やっと春の気配が大地に漂い始めた頃の事だ。私が縁側でリンゴを噛っていると、変なものが不意に視界に入ってきた。家の生垣をひょいと飛び越えて変な奴が、いきなり庭に入ってき・・・

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青い馬

14/01/14 コメント:11件 yoshiki 閲覧数:1034

 僕がその馬を見つけたのは駅の近くだった。深夜に近い頃、終電に揺られて、会社の新年会の帰りに若い仲間と三次会まで盛り上がって、駅からふらふら歩いて帰る途中だった。むろん酒が残っているから馬を見ても驚きもしないで素通りするところだった。そして僕の視覚が小さい馬の存在を疑って、再度振り返ってそれを見た時に初めて驚嘆した。
 それは確かに馬だった。子犬ほどに小さく全身がぼーっとして、水銀灯の様な光・・・

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絵女房

14/01/02 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:928

 巨勢 金岡(こせ の かなおか)は平安時代前期の宮廷画家で、何でも話によると屏風に目玉のない虎を描いたそうだ。目のないのを不服に思った他の画家が目を入れると、たちどころに屏風から躍り出た虎に食い殺されたと言う。

  *  *

 江戸時代。あるところに絵の名人がいた。かの巨勢 金岡を髣髴とさせる絵師である。しかし、優れた画家であってもいたって庶民的で気さくな人であった。・・・

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奇想

13/12/24 コメント:8件 yoshiki 閲覧数:1188

 1 
 ――物憂い秋のある日の事であった。

 広い路に銀杏並木がどこまでも続いて、風が吹くとまるで赤や黄色の折り紙が万華鏡の中で煌くようであった。その路をダウンコートを羽織った男が歩いている。頬に艶があり、彼が青年である事がわかった。低い煉瓦塀が路沿いに長く続いてその塀が切れたところに大きな西洋風な建物の門があった。
 そこで青年は足を止めた。そこに老人が屈み込んでい・・・

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十年目の再会

13/12/23 コメント:10件 yoshiki 閲覧数:1133

 ――久司が結衣と再会を誓ったのは、ちょうど今から十年前の互いに十五の春。
 結衣は一流商社に勤める父の転勤で東京を離れることになった。転勤先は福岡。結衣は同級生の久司が好きだった。もちろん久司だって……。だけれど結衣の高校はもうあっちの学校で仕方がなくて。
 別れが迫っていた。福岡行きの列車が出る前の晩に、ふたりは近くのファミレスで落ち合った。そこで久司は携帯ゲームを急にやめて、真剣・・・

2

夢の導線

13/12/19 コメント:11件 yoshiki 閲覧数:962

『夢売ります』と言うのは、なにも安っぽくコマーシャルナイズされたキャッチコピーばかりを言うのではない。それが現実となった世界では、夢の売り買いが、きな臭い危険な気配を発散する。
 重く空気の淀んだ昼なお暗い倉庫街の狭間に、俺は蒼白い顔色のまま懐に銃を忍ばせ、赤いタクシーから降りたった。ここはキールシティ第三区。21世紀から置き去りになった街。
 俺はこのスラムの一郭にご法度の夢の売人が・・・

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ミケランジェロの空

13/12/16 コメント:12件 yoshiki 閲覧数:1342

 ミケランジェロというのは猫の名である。中二の祐二が単に毛が三毛だったので、思いつきでつけた呼びづらい名前だ。だから、祐二はミケランジェロなんて猫を呼んだためしがなく、大抵はミケと呼んでいる。なのでこの芸術的な名前もほとんど意味をなさない。このお話はこのミケランジェロと言う猫が主役である。ミケランジェロはとても大きい雌猫で普段はおっとりしていて大変賢い猫なのだが、その賢さと言うのが半端ではない。な・・・

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アイスウーマンの腕時計

13/12/04 コメント:8件 yoshiki 閲覧数:1152

 アイスマン(Iceman)は、1991年にイタリア・オーストリア国境のエッツ渓谷の氷河で発見された約5300年前の男性のミイラの名であるが、南チロル考古学研究所で仕事をしていた研究者である私は、あるきっかけでアイスマンではなく、アイスウーマンなるものをアイスマン発見場所から。西北に約二百キロの地点で発見した。
 これもまた氷河に埋もれていたのだが、これは大発見であり、まだ三十そこそこの若・・・

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来たるべき世界

13/12/03 コメント:7件 yoshiki 閲覧数:998

「みなさん、地球と称する銀河系の外れの星ご存知です?」
 人間によく似たひょろりと背の高い宇宙人がそう言った。褐色の天体に巨大なドーム状の建造物があり、複数の宇宙人が大きな円卓を囲んでいる。今ここに宇宙評議会が召集されたのだ。大きいのやら小さいのやら、青いのやら赤いのやら、カラフルで個性豊かな宇宙人たちが真剣な面持ちで集まっている。
「地球? ですか、宇宙環境大臣…… ああ、あの随分と・・・

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悪夢

13/12/02 コメント:8件 yoshiki 閲覧数:1194

 その青年は悩みでも抱えたような、憂鬱な顔をして精神科を訪れた。もう何日も寝ていないような疲れきった顔をしている。看護師が青年の名を呼び、医師がその様子を見て心配そうに青年に話しかけた。
「さあ、おかけになって。だいぶお疲れのご様子ですが、きょうはどうなさいました?」
 青年はだるそうに椅子に座り、少しだけ沈黙してからいきなりこう言った。
「先生、実は最近悪夢に悩まされているので・・・

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雪の日の記憶

13/11/30 コメント:8件 yoshiki 閲覧数:1121

 ――雪が降っていた。
 辺り一面の白銀世界が眩しいほど輝いて見える。私は雪の深さに足を取られながらぎこちなく、時々倒れそうになりながらも懸命に歩いていた。頭の中に霧がかかっていて意識がはっきりしない。記憶は何かの断片みたいに曖昧なままだ。それにもまして妙な事に、私は雪の冷たさを感じない。身体は麻痺したように感覚がない。
 私はいったいどこに向かって歩いているのだろう? 目的も意志も漠・・・

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その男

13/11/20 コメント:7件 yoshiki 閲覧数:1067

 保安官はその酔っ払いを留置所から引っ張り出すと、ヤカンにコーヒー粉をそのまま入れて沸かした、世辞にも美味いとは言えないコーヒーをテーブルに置いた。苦み走っていて西部の荒くれ者を相手にしてきた男の扱いは、決して丁重とは言えなかった。
「おい、もう酔いは覚めたかな」
 太い声で保安官がそう言うと男がかすれた声で答えた。
「ええ、もうとっくに覚めてますぜ。マスター(旦那)」
「・・・

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聖夜の出来事

13/11/18 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:1034

 一人の少女が雪の降り積もった路を歩いていた。辺りには物音さえなく、小さな長靴が雪を踏む音だけが微かに軋んで聞こえていた。少女はしっとりとした栗毛に利発そうで大きな瞳、襟元には赤いマフラーを巻いていた。息は白い靄になって冷たい大気に漂う。
 少女が足早に街角に差し掛かると、路肩に得体のしれない塊があるのに気づいた。それがもそもそと動いたとき、少女は不安そうに立ち止まった。そして眼を凝らして見・・・

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売られていた地球(コメディ)

13/11/12 コメント:9件 yoshiki 閲覧数:1204

  ――この話は、まったくもっておかしな話なのだが、法的にみて問題がないようでもあり、いや、やはり心情的には、到底納得など出来そうもないのだが、大宇宙基本法が存在していたという、驚くに足る厳粛な事実を、我々は重く受け取らざるを得ないのだろうか。
 

 地球の買主?

 北風の吹く、一向に景気も良くならない、暮れも押し詰まった夕暮れ時。彼らは何のためらいもなく正々堂々・・・

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忌まわしき復讐

13/11/08 コメント:8件 yoshiki 閲覧数:1242

 街灯に霧のかかる湿った夕べの事であった。私は懐かしい女優、鮫島美佐江の写真展にいたのである。というのも私は若い頃、鮫島美佐江に惹かれて彼女の主演映画を何本も見ていた。それが回顧展をやっていると知人に教えられ、この会場に足を運んだ理由だった。彼女、鮫島美佐江は当時もう三十近くになり、益々円熟味を増そうという矢先、忽然とその姿を大衆の前から消した。その失踪の不思議もあって私はその神秘的な彼女のシネマ・・・

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天才少年オサム

13/10/29 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:1199

 オサムは天才少年だと言われた。物心の付くころに家にいた飼い犬ゴンの絵を描いたが、これが実に写実的で周りの人達の度肝を抜き、近所でも評判になった。
 小学生に進学したころには、学校の担任の先生の絵を描いたのだが、これまた写真のように正確で細密で独創性も備えていた。もちろん学校では金賞を貰い、県内の最優秀作品に選ばれ、小学生芸術家の誕生と言われた。

 オサムは一度行った場所を二度・・・

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スイーツルーレット

13/10/24 コメント:13件 yoshiki 閲覧数:1593

 永田稔は黙って目を閉じ、チョコレートパフェを口元にもっていき、生クリームの部分を舐めようとしたが、計り知れぬ戦慄が重く圧し掛かって舌先が硬直した。とうに唇は渇き、顔面蒼白で目さえ虚ろだ。なぜに、この一流パティシエがつくったチョコレートパフェがそんなに恐ろしいのか?
 中に青酸カリウムが混入されているからだ。この毒物を経口摂取すればおよそ十五分以内に中毒死する。
 暗い部屋の中、小さな・・・

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鼠の国

13/10/22 コメント:5件 yoshiki 閲覧数:1316

 あるところに鼠の国があった。いつ、どの時代にそんなものがあったのか詳しく話はできないが、この世界とは次元が違う世界だとひとまず考えてほしい。そこは人間には想像もつかない世界でその国の鼠は濃いグレーの毛を持つ鼠と、白い毛の鼠とに別れ、双方とも決して仲良くせず、いつも戦っていた。戦うといっても人間界のように近代兵器を使用するわけではなく、刀や槍が彼らの最大の武器であった。
 なぜ彼らが戦うのか・・・

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幽霊写真

13/10/21 コメント:9件 yoshiki 閲覧数:1197

 夜である。高田馬場にある居酒屋に大学生が五人いる。その中でシズエと言う女子は、体質からか心霊的でかなり怖い体験を色々経験してきたらしい。だから飲み会ではいつも彼女の不思議な体験談で盛り上がる。
「この前、って言っても、もう何年も前だけどさあ」
 話し出したシズエの声はいくぶんハスキーだ。
「うん。そんなに前に何があったの?」
 シズエの怖い話を待っていたように、光冶、ミサ・・・

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進化したそれ

13/10/16 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:1228

 動物の進化を加速度的に早める装置を発明した博士がいた。名を張間と言って天才であったが少し変わり者であった。その装置の仕組みや博士の人間像については、話が退屈になるので省略させていただく。ともかく、その装置は大きな箱型をしていて、最新鋭のス−パーコンピュータから突き出たチューブがパイプ状に繋がっている、複雑奇妙な代物であった。正面にはドアがあり、中の様子は透明な覗き窓から見られる仕掛けになっていた・・・

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三つの可笑しな都市伝説 (コメディ)

13/10/11 コメント:10件 yoshiki 閲覧数:1320

 ●空飛ぶ入れ歯

 大通りを入れ歯が飛んで行った。総入れ歯が空中浮遊していたのだ。

 人々が仰天して大騒ぎになった。後を追う者や、腰を抜かす者が出て、しまいには警察まで出てきた。

 そしたら入れ歯がしゃべった。

「いやあ、驚かせて、すまん、すまん。実はわしは透明人間なのじゃが、透明薬を飲む際に入れ歯を外すのを忘れておったんじゃ。すまんのう。最・・・

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不可思議な恋

13/10/08 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:996

 ――夜道であった。場所は外堀通り、赤坂見附から四谷方面に上る紀伊国坂である。この辺は日中けっこう人通りがあるが、夜ともなると人けがほとんどなくなり、行き交うのは車ばかりである。
 秋も深まるある日の事、私は書きかけた掌編の筆が進まず、夜更けにぶらりと散歩に出て、いつの間にか、かなり遠くまで歩いてしまった。このあたりは小泉八雲のムジナの出た場所である。そんな事をふと思いつつ、夜風がかなり冷た・・・

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恐ろしいDVD

13/10/07 コメント:12件 yoshiki 閲覧数:1269

 怖いDVDがあるという。なんでも噂だと、凄く怖い映画でショック死する者が続出しているらしい。恐ろしい残虐映像でも映っているのだろうか。それは並みのホラーなどではなく恐怖の範疇を超越していて見たものは食事も喉を通らず、泣きながら餓死していくと言うのだ。呪いのビデオならぬ呪いのDVDなのだろうか?
 よくきけばその映画を上映禁止にしようとした映倫の審議官が、それを見て死んでしまったと言うから半・・・

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13/10/02 コメント:3件 yoshiki 閲覧数:1153

 水面に三日月が揺らいでいた。私は舟に乗ってとても緩やかな流れの河に身を任せていた。心地よい風が頬を撫でる。なんという落ち着いた心持ちであったろうか、岸辺に薄紫の勿忘草が咲いていた。その可憐さに心を打たれ、つい手を伸ばしたがそれは遠すぎて触れることが出来なかった。
 そこで初めてここがどこかと言う疑問が心に湧き上がった。憶えていないのだ。なにもかもだ。それなのに私の心はまったく焦りや、恐怖を・・・

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舞踊

13/10/01 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1007

 猫が踊っていた。三毛猫は二本脚で立ちあがり、前脚の肉球を空に向けまるでそれは阿波踊りのような格好で一心不乱に踊っていた。なにせ猫の事だから、嬉しいのやら、悲しいのやらその表情から読み取ることが難しかった。
 同じようにして犬が踊っていた。それは中型犬ポリッシュ・ローランド・シープドッグで、後ろ脚二本で懸命に体を支え、傍から見たら苦しそうでもあったが(後ろ脚が微かに痙攣していたから)それは・・・

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アイドルの秘密

13/09/27 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1023

 乱歩の作品に屋根裏の散歩者という話があるが、少しばかりそれに似た状況に俺は置かれた。どういう事かというと隣の部屋に飛び切り可愛い女子がいて、俺はその女子の部屋を覗くことが出来る。こう書き進めていくと俺が変態じゃないかと邪推されそうだが、俺はストーカーでも覗きが趣味な訳でもない。
 そもそも俺がこのアパートに引っ越してきて備えつけのクローゼットを開けたら、そこに小さな絵がかけてあり、不審に思・・・

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運命の使者

13/09/25 コメント:5件 yoshiki 閲覧数:1229

 美沙はソファに座って煙草をふかしていたが、ロビーに男の姿が見えるとすぐにもみ消して灰皿の中に押し込み、素知らぬ顔を決め込んだ。シティホテルのラウンジである。大きな窓に陽光を受けてラウンジが輝いている。男はスーツ姿で最初は様々な人がいるので中々美沙に気づかなかったが、ふと美沙の前に立ち止って彼女に視線を落とした。でも美沙の方は表情も変えず、外の街路樹を眺めているばかりなので、なんとなく躊躇したよう・・・

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人面くらげ

13/09/19 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1092

 ――実に不思議な光景であった。一匹のくらげが見上げる空を飛んでいたのである。そう、あの海中に漂うくらげが茜色の空を浮遊していたのだ。
 それは白くて長い触手を空中に棚引かせていた。最初は小さな点でしかなかった白い塊(かたまり)が次第に大きくなりくらげになったのだ。昨日飲んだ安酒のせいかとも思ったがそれにしては映像がリアルすぎる。
 俺は狐につままれたような心持ちになった。だが見る見る・・・

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アイドルを募集した話

13/09/19 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1771

 昔々、中世の王制時代にある王国があって、その国には険しい岩山がそびえていました。
 そしてなんという恐ろしい事でしょうか、そこにはドラゴンが遥か昔から住み着いているのでした。そうです、あの口から炎を吐く、恐竜でさえ真っ青になるドラゴンが。そして尚驚くのはそのドラゴンが人間の言葉がわかる賢いドラゴンだったという事です。
 王はドラゴンを恐れはしていましたが、ドラゴンは無茶苦茶な悪さをす・・・

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小さな神秘の物語

13/09/17 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1175

 ●独楽(コマ)

 道で赤いチャイナ服を着た女の子に会った。
 赤い線の入った木で出来た独楽を回して遊んでいる。
 面白そうなので暫らく眺めていたが独楽は止まらない。
「すごい独楽だね」
 私が話しかけると女の子が微笑んだ。
「この独楽はずっと止まらないの」
 女の子が言った。
「うそっ、いつかは止まるでしょ」
 私が・・・

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宇宙のアイドル、遠方より来たる!?(コメディ)

13/09/12 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1158

 何千光年だか何億光年だか正確にはわからない。とにかくとんでもない遠方からその宇宙船はやって来た。地球の知識人の大半は地球外の生命の存在を信じていたが、存在を確認するには、文明の誕生と繁栄、滅亡の時期が始まりであれ、終わりであれ、同時期に重ならなければならない為、極めて0に近いとされていたのでそれは驚愕に値した。
 彼らがどこの銀河のどこの星から来て、目的がなにか、もっともらしく語る学者や宗・・・

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転寝(うたたね)

13/09/07 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1035

 ――まったくばかげた事というのは何の前触れもなく、突然襲い来るのが世の常というものなのだろうか。 まあ今回の場合はさして大きな事件にはならかったものの、いや、本当は極めて重大で驚くべきニュースだったにも関わらず、一般の眼には殆ど触れずにそのまま風化するという経過を辿ってしまった。地方誌の三面記事など知らない人の方が多いのだから……。
 

 高野玲子は何処にでもいる平凡な主婦で・・・

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待つ女

13/09/05 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1256

 夜がよほど更けたころ、女は満月を背負うようにして静かに待っていた。その横顔はまるで日本人形の様な上品さで、神秘ともいえる柔和な、それでいてどこかに哀愁のある佇まいである。
 風が吹いていた。その風が女の紺の留袖の裾を時々翻した。女の目は何処までも続く丈高い塀を見上げ、月光がなよなよとした身体の輪郭を怪しく照らし出していた。後ろには果てしない一筋の道が霞んでいる。その道を女はとぼとぼと歩いて・・・

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少年よ

13/09/02 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1152

 天を仰いだ少年の虹彩が何億もの光を映している
 宇宙はまるで光と影の織りなす夢幻のステージだ
 老博士は弛まぬ宇宙の神秘を語り、少年は注意深くそれに聴き入る

 世界の果てまで旅をした語り部は海底王国の秘密を囁き
 パラレルワールドの住人は過去の中の未来で踊っている

 想像せよ 少年よ
 妖精の住む深き、青い森を
 天使の舞う遥かな天上の世・・・

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Password

13/08/29 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1252

 カレンの衣服は屈強な女兵士によって見事に剥ぎ取られていった。カレンを蹂躙しているのは、戦闘服に身を包んだ頑健な女兵士ふたりだ。鍛え上げられ、引き締まったカレンの身体が見る間に露呈されていく。たとえプロレスラーだってカレンをこんなにも簡単に裸に剥くことなんか出来ないはずだ。カレンは組織の人間だし、あらゆる格闘技の達人であり、いくつもの修羅場を潜ってきた美しくかつ精悍な女諜報員なのだ。
 カレ・・・

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霊能者ミサ

13/08/28 コメント:3件 yoshiki 閲覧数:1349

 ――いつものようにあたしはビルの乱立する繁華街の、その地下の店で待っている。ネオンの看板にはこうある『霊能者ミサの館』暗いトーンの神秘的なペルシャ絨毯の敷かれた室内。そして魔女のように妖艶に着飾ったあたし。そう、あたしの職業は霊能者。予言者と言ってもいいかもしれない。あたしには霊力があるのよ。今まであたしは、その能力を使って客の運命を予測したり、様々な人たちに助言をしてきた。
 ところで誰・・・

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不思議な鍵

13/08/26 コメント:9件 yoshiki 閲覧数:1581

 ある日、私は部屋の片隅で鍵を見つけた。まだ小学生の時だ。とても小さな、とても精巧な花の模様のある美しい鍵であった。

 いったい何の鍵だろうか? 両親に訊いても、祖父に訊いても知らないと言うし、心当たりも無論なかった。家中を探しても、学校を探してもその鍵はどこにも合わなかった。
 仕方がないのでキイホルダーにつけて遊んだりしていたが、ある時きれいだから欲しいと言うクラスの女の子・・・

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決して読んではいけない物語

13/08/21 コメント:7件 yoshiki 閲覧数:1432

  Danger  危険 読むのは危険 警告いたします!!


 ――昨日から降り続いた雪は医療センターの中庭を埋め尽くして、陽光にひどく眩しく輝いていた。青年の横顔はとても悲しそうで見るに忍びないものがあった。
 里奈が白血病で医師から死の宣告を受けたとき和也は泣き崩れた。目の前の美しい寝顔にはもはや生気は感じられず、瑞々しかった肌は紫色に変色していた。やりきれない思い。・・・

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裸婦像

13/08/19 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:2772

 ――やわらかな木漏れ日がそのアトリエに差し込んでいた。
 画家のアトリエは洋館の二階にあり、壁には蔦が絡まっていた。
 窓際には大きなカンパスがイーゼルに乗って置かれてあり、カンパスには見目麗しい裸婦像が油絵の具で見事に描かれていた。絵はほとんど完成していて最後の仕上げに入るところであった。
 画家は豊かな顎鬚をたくわえた、まるでダビンチを連想させるような風貌をしていた。・・・

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恐ろしき手記

13/08/13 コメント:9件 yoshiki 閲覧数:1450

 この手紙を見て君がどういう顔をするのか僕にはおよそ想像がつく。たぶん君の顔にはもう血の気もなく、意識も霞んでいるかもしれない。実をいうと君は僕に確実に殺されるのだよ。君が目を覚ました時にはもう遅いのだ。すべてが手遅れなのだよ。君は喉に刺さった鋭いナイフを見たら気違いみたいに泣き叫ぶかな。それとも声も出せずに、のたれ死ぬのかな。想像するだけでぞくぞくするよ。まあ見ものだ。
 だが本来が情け深・・・

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化け比べ

13/08/12 コメント:1件 yoshiki 閲覧数:1524

 バサッと音がして深い森から原っぱに狐が躍り出た。狐の独り言にしてはかなり大きな声が響いた。
「この森広しといえども、本当に化ける事が出来るのはこの俺だけだろうな。猫や蛇なんかも化けるらしいがとても俺の比じゃない!」
 明らかな挑発だった。その声を遠くで狸は聞いたが、最初ぼんやりとしていた。しかし事の意味がはっきりと判るとただならぬ顔になった。著しくプライドが傷ついたのだ。
 狸・・・

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一寸の狂怖笑(コメディ)

13/08/07 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1230

 ●第一話「偽りの星」

  ――宇宙時代の話である。人類は縦横無尽に宇宙を飛び回っていた。
 あるとき見知らぬ惑星から救助信号が送られてきた。
 どう分析して聞いても、か弱い女の声で「たすけてーっ!!」と聞こえるのだ。
 慈悲深い人間の事であるから、その信号をキャッチすると、早速、助けに行こうということになった。
 かなり遠い星であったがやっとその星を・・・

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降霊術

13/08/05 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1582

 夢

 ――なぜか晃は車に乗っていた。それは深夜のハイウェイを高速で疾走する白いスポーツカーだ。晃が助手席で見も知らない男が運転をしている。
 その男の運転が晃には乱暴で怖くて仕方がない。車を止めさせて運転を変わろうとするのだが、男はお構いなしで鼻歌さえ歌っている。メーターを見ると時速二百キロを振り切ろうとしていた。晃は恐怖に顔を引きつらせていた。
 晃は矢も盾もた・・・

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幸子の結末

13/08/02 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1165

 その橋は深い峡谷に掛かったつり橋だった。大きな橋ではなかったが切り立った崖と崖とを繋ぐように架けられていた。
 冷気を含んだ風が谷底から吹き上げている。女はその橋の上にいて、思いつめたような眼差しで谷底を見つめていた。女は何度も深呼吸をして赤いパンプスを脱いでその場に揃えた。
 美人特有の線の細い何か儚げな影が女に纏わり付いていた。娘ではなかったが年増というには若すぎた。
・・・

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神を呼び出した男

13/08/01 コメント:5件 yoshiki 閲覧数:1356

 そこに現れた人物は卑弥呼の時代にでも流行していたような、白装束を身に纏ってはいたが、頭は禿げていた。白い無精ひげを伸ばし、目はとろんとして眠そうであった。が、山田博士はその人物をとても愛おしそうに、或いは敬虔に仰ぎ見て、その前に跪いた。
「神様、ようこそ御出で下さいました」
 熟年の山田博士は目を輝かせ、そう言う。博士は長年の研究の末、ついに神と呼べるものをこの世に復活せしめた。常に・・・

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ありがとう神様(コメディ)

13/07/30 コメント:5件 yoshiki 閲覧数:1315

 あるとき何の前触れもなく、北海道ほどもある巨大隕石が地球に降ってきた。アブラハムの宗教におけるハルマゲドンであろうか。やはり最終戦争と意味の予言が的中したのか人類は絶滅した。残念な事だが自然の驚異の前に人類はあまりにも非力であった。黒雲が延々を大気に棚引き、有毒ガスが見る間に地表を覆ってしまうと、陽光は遮断され極寒地獄が続き、人類だけでなく、ほとんどの生命は死に絶えてしまった。
 その劣悪・・・

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幸福

13/07/29 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1277

 ――至極普通の中年男だった。

 特に裕福でも貧乏でもなかったが、男は人生に何か物足りなさを抱えていた。

 個人の幸福の追求の為に俺の人生はあるんじゃなかったっけ? 
 ある時彼は取り止めもなくそう思った。今の俺ときたら会社の為、家族の為に一生懸命好きでもない仕事をし、超混みの電車に毎日揺られ、職場では上司からいつも小言を言われ、遅くまで残業をし、しかも残業手当な・・・

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スナイパー

13/07/25 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1235

 高層ビルの屋上からターゲットに照準を合わせた俺は、何のためらいも感じないまま銃の引き金を引こうとしていた。暗殺者は常に冷徹で無慈悲でなければならない。己の私情など微塵たりとも交えてはならないし、自分自身が鋼鉄の精密機器にならなければならないのだ。
 俺の頬にひんやりとした狙撃銃の感触が心地よい。銃は最新鋭、高精度オートマチック。この銃は火器の芸術品ともいえるだろう。スコープを覗き込む俺の眼・・・

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恋心(コメディ)

13/07/22 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:1251

 ●恋心

 若いユウイチがためらいがちに言った。
「カナエ。最近、僕を避けてないか?」
「……そんな」
「だって、なかなか会ってもくれないじゃないか」
 短大生のカナエが俯いて言った。
「だって最近、ユウイチが変わったから……。 以前のユウイチのほうがわたしは好き」
「前の僕は無口でろくにしゃべらなかったし、暗かったのに?」
「でもわたし、そ・・・

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幻想エトランゼ

13/07/18 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1104

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 唐突に質問するようだが、あなたは電車が走っているのを見てどう思うだろう? それは別段なんでもない事で町に住む人であったらごく普通に見かける風景であるはずだ。
 が、しかし、しかしである。その電車がえらく小さくて、ミニチュアよりまだ小さくて走る場所が女房の顔の上で、それも顔面に敷きつめられた極めて精緻な線路上を、鼻の穴から出てきて耳の穴の中に消えていったとしたらあなたはど・・・

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夢の人

13/07/16 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1321

 そこは広く眺めの良い丘の上の公園であった。公園の中央には天馬の噴水があった。しっとりとした緑の芝生が敷き詰められ、その噴水を中心に路が四方に広がっていた。その路の両端には洒落たベンチが設置してあった。カップルの為に作られたような公園であった。天馬は白い石像で顔は天を仰いでいた。その天馬は口から水を噴いている美しい造形であった。
 菜緒は何度この公園の夢を見たかわからない。数え切れない程同じ・・・

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帰宅者

13/07/15 コメント:13件 yoshiki 閲覧数:1641

 ――脳が茹で上がるような異様に暑い夏の日だった。
 水曜が休みの俺は多少涼しくなった夕方から買い物に出かけて、雑誌と米を買って家に戻ってきた。そのまま座らずに米を砥ぎ炊飯器のスイッチを入れる。そのときなぜか妙な心持になった。部屋の光、光線の加減と言うか明るさがいつもと微妙に違うのだ。女房に奴、照明でも変えたのかと思ったがよくわからない。取りあえず気にせず時計を見るとそろそろ女房の帰る時間だ・・・

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世界びっくり疑?・事録スペシャル(コメディ)

13/07/10 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1150

 ――あまり信頼できそうもないスポークスマンの伝えるところによる



 ●時効の壁

 政府による法改正の発表
 ――このたび新体制のリーダーであるA総理は、政界に三本の矢を勢いよく飛ばしたのも束の間、それとはまた別の改革に乗り出した。その内容とは我が国に於いて死刑を除く凶悪犯罪に、時効制度が依然として存在することを愁いて時効の完全廃止を強く要請された。・・・

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宇宙人とピカソ・他一編 (コメディ)

13/07/09 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1188

 ●宇宙人とピカソ

 ある時、宇宙人が突然わたしのもとにやってきた。まったく予期しない出来事だったので、わたしは途方にくれてしまった。なんで宇宙人が個人的に、よりによってわたしのアパートに来たの? 疑問はつきない。
 役所にでも行って相談しようかと思ったけど宇宙人が秘密にしてくれと言うのでお人好しのわたしは困った。そしてとりあえず秘密にすることにした。
 宇宙人は大きな黒・・・

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カビ……のようなもの 

13/07/08 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1163

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 コタロウは添田浩次が心臓発作で突然倒れてしまった時には、最初、事の次第がよくわからず、ただ鼻をクンクンさせて周りをぐるぐる回っているばかりで、添田が仰向けに倒れたままピクリとも動かないので途方に暮れてしまった。そして添田の体温がとても低いのを感じてじっとその場を動かなかった。
 悪い予感のようなものが体中をはしって、何度かオーン、オーンと悲しげに鳴いてみたがいっこうに・・・

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不運(無慈悲な運命)

13/07/04 コメント:8件 yoshiki 閲覧数:1308

 ロバートは間近に気配を感じて微かに目を開けた。すると冷たい銃口が彼の鼻先に突き付けられた。
「騒ぐなよ。この辺りは隣の家までかなりの距離があるから、銃を使ったとしても誰も気づかねえ」
 やっと寝付いたばかりのロバートは身が縮み上がって言葉さえ出なかった。
「だが俺はただの泥棒でお前を殺しに来たわけじゃねえから、そう怖がるな」
 男は黒い革のジャケットを着ていて苦味ばしった・・・

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パラドックス(無慈悲な父)

13/07/01 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1325

 ――私は父を恨んでいた、なので殺すことにした。
 まるで殺人予告でもするようだが、それは現時点での話ではない。私の生まれる以前の過去に立ち戻って父を殺すのだ。なぜそんなことをするのか? それには強い動機が二つある。一つは母を邪険にして虐待し、ついには病死に至らしめた人間味の欠片もない父への復讐であり、もう一つは私という天才が発明したタイムマシンを使って、自分の親を殺したら自分はどうなるのか・・・

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もう一つの世界

13/06/25 コメント:10件 yoshiki 閲覧数:1468

僕は鏡の中にもう一つの             のつ一うもに中の鏡は僕
世界があると信じていた             たいてじ信とるあが界世
鏡がただのガラスと銀の板だ         だ板の銀とスラガのだたが鏡
なんてとても信じられなかった       たっかなれらじ信もてとてんな
僕はまた偏屈で医者から             らか者医で屈偏たまは僕
パラノ・・・

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脅迫電話 (コメディ)

13/06/19 コメント:9件 yoshiki 閲覧数:1496

 中田という中年の男の家の電話が鳴った。都会の真っ昼間である。
「もしもし、中田さん?」
「はい」
「お宅の可愛い息子さんは預かりましたよ」
「……」
 革張りのソファ、そして高級な調度品、テーブルの上には電話。
「もしもし」
「……」
「中田さんでしょ。聞いているんですか?」
「で?」
「でって、だからお宅の可愛い息子さんは預かったと言・・・

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呆れるべき真相 (コメディ)

13/06/18 コメント:13件 yoshiki 閲覧数:1588

 ●第一の事件

「ワーッ!! ヤダーッ!!」
 という叫びがドラキュラの屋敷からきょうもこだました。場所はトランシルヴァニア。
 このところドラキュラ伯爵の屋敷で夜毎に絹を裂くような女の悲鳴がする。
 事件か。早速、時代錯誤のホームズみたいなH探偵が真相の究明に乗り出したが、探偵はその真相をあまり大きな声で語らなかった。
 
 声の主はドラキュラの奥方で・・・

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奇妙な密室殺人

13/06/17 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1423

 明智小次郎は権田の死体をじっと眺めながら、深いため息をついてちらりと壁を見やった。そして何回か頷き今まで険しかった表情をいくぶん柔和なものにした。読者は明智小次郎の名をきいてすぐにあの探偵小説の先駆者、江戸川乱歩氏の生んだ世紀の名探偵を連想されることだろう。
 しかしこのお話に登場する明智小次郎と言うのは本名ではなく、かの素人探偵、明智小五郎にあこがれて自分でつけた偽名である。しかし彼もま・・・

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monster

13/06/13 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1277

 ――怪しいというか、おかしいというか、何か変なのだ。近頃の妻の様子が。
 元々、妻はおっとりしている方なのだが眼つきが最近きつくなった。なにか訳もなくイラついているし、言葉使いまで荒っぽくなった。語調に棘があるのだ。
 歩き方もなんだか速くなったし、それに伴って頭の回転まで速くなったような気がする。単なる思い過しなのだろうか?
 そして男勝りの決断力。まあ、人間は変わるも・・・

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幽体離脱

13/06/10 コメント:3件 yoshiki 閲覧数:1697

 ある時、多野啓二がうす眼を開けると薄暗い自分の部屋に寝ていた。眼の前にぼんやりと天井が見える。かなり熟睡していたようだ。還暦をとっくに過ぎている啓二は近頃もの忘れがひどく、歳のせいか疲れも取れにくいし、けだるい疲労感が全身に残っていた。
 啓二は起きようと思ってふと異変に気付いた。いつもと天上の高さが違うのだ……。
 正確にいうと天上と啓二の身体との距離が異常に狭いのだ。そんなはずが・・・

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迷人(めいじん)

13/06/07 コメント:11件 yoshiki 閲覧数:2210

 俺はその日いつものようにパソコンに向かっていた。ウェブの小説サイトに短編を掲載するのが俺の楽しみだった。しかしそう簡単に作品は出来ず、悩んだり、苦しんだりするのはいつもの事だった。やっと書けそうになって、画面に向かいキーボードに指を乗せると、いきなり肩をこずかれて俺は不愉快そうに振り返った。瞬間、俺は天井を突き抜けるくらいに驚いた。いや、本当に驚きすぎて心臓が口から飛び出てしまいそうだった。俺は・・・

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ギャグパラダイスU ギャグ10連発)

13/06/06 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1279

 ●ああ、透明

 ――ついに博士は透明薬を発明した。

 この薬には人類(特に男性)の並ならぬ思い入れが詰まっている。

 博士は声も高らかに助手に言う。

「さあ、君。わしはこの薬を呑んで透明人間になってみるから、薬を取ってくれんか」

「博士、恐縮ですが薬自体が透明で、しかも容器さえ透明でどこにあるのかもわかりません!」

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ラーメン奇談

13/05/31 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1391

 大池正也は場末の屋台でラーメンを食べようと割り箸を割った。
 ここは東京池袋、言わずと知れたラーメンの激戦区。うまいラーメン屋がしのぎを削る地域だ。うまいラーメンを並んで食べるのにはきょうの大池正也は疲れ果てていた。日夜残業続き(遊びも含めて)で、可愛い女の子と屋台のラーメンをすするのも悪くないと思い、ここのラーメンは隠れたる極旨ラーメンだと、うまく女の子を信用させ、この屋台にやってきたの・・・

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竜宮名古屋城

13/05/09 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:2316

 名古屋、名古屋と考えながらベッドに入るとその晩、すごい夢を見た。なぜ名古屋を考えたのかと言えば、今回のテーマは【名古屋】だからに他ならない。
 ――見た夢とはこうだ。
 まず私は日本晴れのいい天気の下、天守閣にいる。城はむろん名古屋城だ。そして眼下には、なんと素晴らしい眺望であろう。土手に桜が咲き乱れ、お堀に花びらを散らせている。水面は空の青をより鮮明に映している。
 そして…・・・

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ギャグパラダイス (コメディ10連発)

13/04/30 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1445

 ●みくじ

 正月の神社の境内は賑わっていた。
 初参りに八っつぁん。熊さん。与太郎がおみくじを引いた。
「あれっ、凶だよ。やだねえ」
 と八っつぁん。
「あ、俺も凶だよ」
 熊さんも凶だ。
「僕は吉を引くよ」
 そう言った与太郎までもが凶だ。
 八っつぁんが巫女姿のバイトに文句をつける。
「おい、おい、ここのみ・・・

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タイムマシンクイズ

13/04/27 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:1526

 小説みたいなクイズ? クイズみたいな小説?

 パラドックス……。 ありえない世界をみんなで考えよう(^。^)!

 パラドックス paradox という言葉は多義であるが、正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から、受け入れがたい結論が得られる事を指す。


 ● 設問1
 
 

 まず、タイムマシンが実在したとします。

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珍説 蜘蛛の糸

13/04/25 コメント:9件 yoshiki 閲覧数:1797

 これはまだお釈迦様が天上界に赴任されたばかりの、新人であられた頃の物語です。
 あるとき、お釈迦様は平和すぎる極楽が無性に退屈で、大きな蓮池の周りをぶらぶらと歩いておられました。そして極楽界の景色をだいぶ長い間眺めておいででしたが、それにも飽きてしまわれました。そのうちに、ふと蓮池の隙間から下界をご覧になりますと、浅黒い顔のカンダタという悪人が地獄で苦しんでいるではありませんか。
 ・・・

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超能力者珍伝説

13/04/23 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1344

 ――これからお届けする三つの物語は、特殊能力を手にした者達の脅威に満ちた、あまりにも風変わりで奇想天外な顛末である。

 ●不死身

 長年の日常生活のほとんどの楽しみを犠牲にして、博士は不死身の薬をつくりあげた。この薬の効能が人類に計り知れない恩恵をもたらすのは間違いのないところであろう。
 早速博士は実験を始めた。まずは手始めに腹にナイフを突き刺してみた。さすが・・・

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驚きのお話

13/04/18 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:1412

 ――君たちが太陽系の人生について知っておかなければならないことはある。わたしは昔からそれを知っていた。しかしそれはひどく不快な話なのでこれまでわたしはそれを出来るだけ考えないでやってきた。
                  

                      タイタンの妖女より

  ――信頼できるスポークスマンの伝えるところによる

・・・

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人生の台本

13/04/17 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1276

 高野雄太は久しぶりに自分の部屋の掃除をしていた。掃除機をかけガラス窓を拭く。一通り掃除が済むと、今度は押し入れの整理に取り掛かった。押し入れの中にはめちゃくちゃに物が放り込んである。それを引っ張り出しながらせっせと物を整理していると、中から古びた本が出てきた。妙な事にそれがまったく見覚えがない本であった。まさか、以前の住人が忘れていったものだろうか?
 その本は辞書のように厚く重く、こげ茶・・・

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宇宙三大おとぎ話 

13/04/11 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1370

 ――これから紹介する三つの物語の中には、かなり残酷な話も含まれるが、その残酷さは決して峻烈なものではない。それどころかともすると、不謹慎にほくそ笑んでしまう事さえ充分に考えられる。驚くのは宇宙人が実在したということ。そして人間はあまりにも彼らに慣れていなかった。その顛末をここに語ることにしましょう。


 ●救助
 
 ある時、思いも及ばない事が起こった。遥かな宇宙・・・

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ある研究者の手記

13/04/08 コメント:8件 yoshiki 閲覧数:1585

 聡史、高校生のおまえにこの手紙を残す。誰にも知られぬように、そっとおまえのノートに忍ばせておくから、いつかはおまえも気づくだろう。おまえがこの手紙を読むときには父はこの世にはいない。許してほしい聡史、そしてどうかこの父を恨まないでおくれ。
 実は父さんは幼い頃から透明人間になりたかった。こう書くとまったく気違い沙汰だね。でも父さんは知っての通り、ついに透明人間になった。
 驚かないで・・・

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幻想奇譚

13/04/05 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1283

  我は嘗て一の夢を見ぬ
  さはれそは全く夢にもあらざりき
  赫燿たる太陽消え果てゝ、幾多の星辰は
  無涯の空間の中を淋しく彷徨ひ
  光なく、道なく而しての氷如き地球は
  朦朧と月なき空に漂ひぬ

           バイロン詩集  暗黒より抜粋

 前章

 私の身の上に起こった恐ろしく幻惑的な体験について記そうと思う・・・

1

手紙

13/04/01 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1360

 ――近藤勇也から仙堂真奈華へ

 親愛なる、いや心より愛する真奈華。突然君のもとからいなくなってしまい、とても済まないと思う。もしかしたら君は一人暮らしの僕の麻布の陰気くさいアパートに何度も足を運んだのではないかな……。君のもとから煙のように姿を消すなんて、僕にしたら甚だ不本意な事だ。しかしこれには深い事情がある。君を心から愛するゆえの事なのだ。正直言えば今すぐにでも戻ってこの両腕・・・

2

プレゼント(その後の王子)

13/03/31 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1361

 幸福な王子は天国にいました。その昔、貧しく可愛そうな人達に自分の持てる物の全てを与え、自己犠牲の美学を身を持って神に示した……。 そう、あの伝説の王子です。
 ツバメと王子は長い間天国の楽園で満ち足りた日々を送っていましたが、あるクリスマスも近い晩に王子はその慈悲深い心でこう考えたのです。
 ――すべての満たされない者にプレゼントを贈りたい。そして平穏な心と感謝の気持ちとを持ってクリ・・・

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浅草の夢

13/03/28 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:2587

 浅草ときくと自分はどうしても江戸川乱歩を連想してしまう。乱歩という人は浅草と言う街を本当に愛していたらしい。浅草ゆえの東京住まいと随筆に書いていたと聞く。
 自分が初めて乱歩の小説を読んだのは十年ぐらい前の事で、『青銅の魔人』というのを読んで、全然面白いと感じなかった。それというのもこれは少年探偵団の出てくる比較的後期の作品で子供向けの要素が多かったからだろう。それから無知な自分は当分乱歩・・・

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サーカス

13/03/19 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1456

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 高史と言う男はかなりの悪人であったが、なぜ彼がナイフ投げの標的となって生命の危険に晒されたのか、その事について述べていこうと思う。
 大杉高史は歳の頃なら三十過ぎで、新しい街に流れて来た時には大抵の者が彼の本性を見抜けなかった。見た目が明るくひょうきんで良くしゃべるし、気の利いた事もできる。顔立ちだって決して悪くはなかったから彼の評判はむしろ良いほうだったろう。だが高史・・・

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夢魔の作家

13/03/18 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1406

 仮面の作家

 その作家のペンネームは仮面の魔人と言って誰も作家の素顔を見たものはなかった。彼の手がける分野はおよそ広範囲で純文学から、推理小説・伝奇・ホラー・ミステリー・サスペンス・SF・エッセー、果ては童話にまで至った。特に傑出していた分野は推理サスペンスやホラー、歴史ミステリー等であり、年齢も経歴も不詳で数々の文芸新人賞を掻っ攫い、いきなり文壇に躍り出てベストセラー作家の仲間入・・・

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大作家への道程

13/03/14 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1382

 ――大都会東京の片隅に鹿沼真司と言う名の作家志望の青年がいた。
 
 彼は作家になる事を夢見る真面目で熱心で、その上凄く堅実な青年であった。彼が文学に目覚めたのは中学の頃で内外の探偵小説が真司の最初の興味の対象であり、最も面白いと思った読み物の一つだった。
 しかし完璧主義である彼はそれらを夢中で読んだが、なぜか書く事をしなかった。まだ自分は本格物を書く力量がないという思いが真・・・

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不思議なサーカスの晩

13/03/13 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1698

 妙にうら寂しい黄昏であった。私はぶらりと気の向くまま散歩に出て風があんまり気持ちいいから、なぜか普段こない遊園地に足を踏み入れてしまった。
 するとどうだろう。遊園地が跡形もなく消え失せ、そこにサーカスの丸い水色の縦縞のある大きなテントが、いつの間にか建っていたのである。私は目を見張った。狐にでもつままれた気分だ。入口らしいところまで行くとまったく客なんていない、シーンとまるでお化け屋敷の・・・

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減らない財布

13/03/12 コメント:3件 yoshiki 閲覧数:1781

 物理が専門の志具摩博士は意気揚々とした表情で助手にこう言った。
「ついにできたよ。これで私たちは大金持ちだ」
 長い事、博士の助手をしてきた助手の飯島は、これまでにいろいろな珍発明を博士がして、そのことごとくが実用的でなく、あまり現実の世の中に役立つものではないと知っていたので、微妙に笑顔を浮かべてはいたがそれが心からのものか、単なる愛想笑いなのかよく解らなかった。
「いや失礼・・・

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一陣の風

13/03/06 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1412

 ばかげた事と言うのは、何の前触れもなくやってきてしばしば人を驚かす。これも世の常なのであろうか。つまり科学万能の世の中に認知不可能なるものが依然と存在し、我々を時にからかい、脅かすのだ。

  * *

 ――新條隼人は最近、急に早口になったねと人から言われたとき、なんだか不思議な気分がした。自分ではまったくそうは思っていなかったからだ。ただ少しばかり思い当たる節もあった・・・

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奇妙な雛祭り

13/03/05 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1555

 ――三月のちょうどそれは雛祭りの日の出来事であった。
 あまり見栄えの良くない初老の男が、大通りの角の派出所になにかから逃れるようにして迷い込んできた。顔は神経質に痩せていて血の気がない。もっとよく観察すれば、男は息を切らし、表情は熱病にでも侵されたように虚ろで、その瞳はまるで魔物でもみたように怯えている。
「大変だ! お巡りさん。私はえらいものを見ちまった!!」
 男はかすれ・・・

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 仮面

13/03/04 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1325

 ――すべてが偽りであったという結末の夢をみた。
 会社も、家族も、公園も、街も、この大都会東京自体が実はすべて偽りの記憶であったという実にばかげた夢をみた。 俺が本当は俺そっくりのロボットで実験室で他人の記憶を脳に埋め込まれていたという、なんとも悲しく痛ましい夢を見た。
 俺は極めて現実的に生きてきたつもりだ。 なのになぜこんな馬鹿げた夢を見るのだろう? 夢なんて所詮そんなものだろう・・・

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おかしな電話

13/02/28 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1499

 ――その男は死ぬつもりだった。人生に絶望したのだ。
 男は吹きすさぶ強風の中をその岸壁に向かって歩いていた。真一文字に結ばれた口、頬は青白く、髪はぼさぼさであった。そして男は大きくため息をついて履物を脱いだ。
 そのとき不意に電話のベルが鳴った。携帯ではない。 
 男がベルの方向に視線を向けると岩陰に電話が一台置いてあった。
 ――命の電話であろうか? 通常こうい・・・

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悪魔就職する

13/02/27 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1371

 ――その悪魔は自分の奇抜な発想に多少酔っている節があった。そう、彼こそは醜怪な怖い顔に密かな笑みを隠したあの魔族の代表である。
 昨今の地獄では悪魔の仕事がめっきりと減った。最近の人間たちは自己中が多く、地獄に落ちてきて悪魔となる者の数が増え、その結果、魂を集めると言う仕事が過当競争になってしまったのだ。魂集めの市場は確かに拡大しているのだが、個々の仕事は逆に減っているという始末だ。

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催眠術の輪

13/02/21 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1686

「ああ、だから、だから確かに僕が彼女を殺したのかも知れません。でも……」
「でも、どうした?」
 安っぽいテーブルの上の灰皿で、タバコをもみ消しながらニヒルに園田刑事がそう訊いた。薄暗い陰気な取調べ室である。そう訊かれた田中は狼狽えるようにして、記憶をたどりながらこう答えた。
「じ、実は僕は催眠術にかけられていたのです。でなかったら人殺しなんてできません。僕はとても気の小さい男な・・・

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小次郎の失敗

13/02/20 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1546

 時は江戸時代。太平の世も終盤に差し掛かった頃、相模の国に宮本小次郎という、どこかで聞いたことがあるような無いような名の悪者がいた。
 小次郎は盗人、追剥の類(たぐい)で行商人やら、町人やらから金品を奪い取っていた。
 しかし彼の顔を誰一人として見たものはなかった。なぜなら小次郎は先祖から伝授された透明になれる妙薬を密かに隠し持っているのだった。元々小次郎の家系は幕府につかえる忍者であ・・・

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醜い顔

13/02/19 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1702

  プロローグ


 ――心が表情に表れることは良くあります。鏡のようなものですから。
 可愛い子供を見れば誰だって微笑みたくなりますし、会いたくない人に会えば嫌な顔になったりします。喜怒哀楽は容易に人の表情に現れ、例えば役者は大げさに演技し、誇張して人の心情を観客に伝えようとします。
 その反対にポーカーフェイスというのがあります。無表情をあえてつくり、相手に自分の・・・

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13/02/18 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1432

 男が眼を開けるとそこは深海のように暗い世界だった。しかも墓地のような静寂が支配していて、生ぬるい風が何処からともなく吹いていた。
 それにも増して最悪な事に男は記憶というものを失くしていた。状況を把握しかねるもどかしさが男の全身に圧し掛かっていた。再び目を閉じてみると、自分が意識だけになったような気がして不安にかられる。自分の顔さえ記憶にないのだ。

「助けてくれーーーーーーー・・・

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龍の惑星

13/02/18 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1521

 ――見渡す限りの広大な砂漠である。この上なく雄大で美しい地平線と淡い緑の大空。ケンジはその砂漠の中をただ歩いていた。心地の良い風が頬をかすめてそよいでいる。いったいいつからここにいるのだろうとケンジは思う。
 ざっと概算しても十年は過ぎたろう。十年……。この人っ子一人いないこの未知の惑星に十年。それを想うと気が遠くなるようだし、よく生きていられたものだとケンジは思った。心身ともに鍛えられて・・・

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超能力

13/02/12 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1406

 亜希子が俺の目をじっと見つめて言った。
「あたし……  隠していてごめんなさい」
 亜希子の奴、いきなり告るのかと思って俺の心臓がドキンとした。なぜって俺は女にもてる性質(たち)だから。
 季節は秋。枯葉の落ちる公園のベンチに俺たちは二人では座っていた。
「……あたしねえ、実は超能力があるの」
 亜希子はちょっと風変わりな子だけど、やっぱり変わっている。ま・・・

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神は死んだ

13/02/11 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1891

 ――これは遠い昔、まだ神というものが本当にいた頃の物語である。

 遥か南方に素晴らしい文明を誇った国があった。気候は一年中温暖で土地は肥え、その上、国王(神官)は善良で優れた統治者であったから、国の中に争い事も無く、人々は毎日仕事に精を出し、国は益々繁栄を遂げるかのように輝いていた。
 しかし、ただ一つだけ困った事があった。それはこの国を造った神が現実に御座した事だ。ギリシャ・・・

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シマウマとライオン

13/02/08 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:2074

 ――あるところに動物の国があった。雄大な自然がどこまでも広がり、緑豊かなその大地は誰にも荒らされる事などない美しい世界だ。我々から見たら異次元の世界だと考えてほしい。 そこに住む彼らは確かに動物であったが、人間のように考えることが出来たのだ。
 その世界のサバンナにとても足の速いシマウマがいて、そのシマウマは子供のころから走るのでは、誰にも負けたことがなかった。彼は先天的に足が速いだけでな・・・

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魔人と瓶

13/02/05 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:1774

 はるか昔、灼熱の国に魔人と言うものがいました。彼は緑の肌をし、筋肉隆々たる体躯を誇っていました。強大な魔力を持ち、誰はばかることなく自分の思うままに生きていたのです。人間などは敵ではなく、人間界をいつも荒らしまわり財宝を強奪し、美女を攫い、人間のつくる最高のご馳走をいつも食べていました。
 命知らずの勇者が何人も彼に挑みましたが、ことごとくが彼に殺されてしまいました。
 人々はなす術・・・

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ある日のバレンタイン

13/02/05 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1537

 あの日わたしは、灰色の空をただぼんやりと眺めていた。場所は遊園地のベンチで、心に冷たい風が吹いていた。それというのもその時のわたしはえらく沈みこんでいた。三年つきあった彼にどういう訳か別れ話を切り出され、泣きたい気持ちを抑え、バレンタインの手作りチョコレートも渡せぬまま、彼といたレストランからふらりと飛び出してしまった。そして近くの遊園地をさまよった末、疲れてベンチに座ったのです。
 なぜ・・・

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究極の宇宙テスト

13/02/04 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:1829

 ある晴れた日の午後だった。なんの前触れもなく、宇宙から大きな声がこだましてきた。それは万人に聞こえるような張りのある声で、心の底まで響くような声音だった。
 声は様々な国の人々にそれぞれの母国語となってダイレクトに伝わったのだ。
「地球人の諸君、我々は宇宙生命体である。諸君のいうところの宇宙人と解釈してもらって一向に構わない。君たちは長い年月をかけてある程度の進化をとげてきた。そして・・・

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悲劇のバレンタインデー

13/01/22 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:1954

 ――外は淡い水色の雪景色だった。地上の濁った大気が天界で清められ、雪となって地面に降り注いでいた。
 刑務所の屋根が薄っすらと白んでいる。丈高い塀には有刺鉄線が張り巡らされていた。
 刑の執行日であった。牧師が独房に入り囚人は最後のひとときを迎えようとしている。
「思い残す事はありませんか」
 初老の牧師が落ち着いた口調で囚人に語りかけた。囚人はただぼんやりと壁を見つめて・・・

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決断

13/01/10 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1725

 ――あるとき銀河遥かな遠い宇宙で、ある恒星の周りを回る惑星の軌道が外れた。まったく宇宙の摂理にも叛くような出来事が突然に起こったのだ。
 どうやら恒星の大爆発が原因だったらしいが、経過についての回りくどい説明は省略してともかく話を先に進めよう。その星は実に地球によく似ていて、偶然にも人間に似た高等生物が住んでいた。なんの因果かその星は永い間宇宙をさ迷うはめになり、不定期になった昼と夜とを何・・・

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人魚発見

13/01/09 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1477

 ――俺は海賊だ。ゴールド・サタンっていう凄い海賊船の船長なんだ。
 名は青ひげ。れっきとしたイギリス人だぞ。名は黒ひげでも赤ひげでもないから間違えるなよ! 俺様は七つの海を荒らしまわったツワモノだよ! とっても強いし、逞しいんだぞ。
 今じゃこのカリブ海では知らない者はいねえし、皆に恐れられてんだ。
 だがよお、今回はさすがの俺様もちょっと困った。
 ある時俺はカリブ海の・・・

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ああ、神様

13/01/09 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1423

 年が明けてから間もない頃、近所の古寺の前でコウジは財布を拾った。警察にでも届けようかと何気に中を覗くと、一円すら入っていない空の財布である。面倒臭いから草むらにでも捨ててしまおうと思った時、どこからともなく変な声がした。
「おい、コウジ財布を捨ててはいかん」
 コウジはびっくりしてあたりを注意深く見まわした。が、誰もいない。いったいどこから声なのであろうか。首をかしげて考え込む。と、・・・

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長電話

12/12/19 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1511

 もしもし……。うん。それで……。えっ!うっそーっ。――やだーっ」
 ――その少女はマイルームのソファの上で携帯電話をしていた。
 クリッとした好奇心旺盛そうな眼の女の子だ。
 彼女は横になったまま何度もあいづちを打って笑顔になったり、時折悲しそうな顔になったり、ちょっとふくれっ面になったりしている。
 女友達との会話が楽しくてたまらないのだ。またまた彼女が大声で笑い出した・・・

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魔術

12/12/18 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1767

 この試験に合格しないと父がどんな顔をするか平野秀雄には予想がついていた。しかし今となるとろくに勉強もしないで遊んでばかりいた自分が恨めしかった。父は優秀な教授で常にその眼は神経質な輝きを持って秀雄を睨んでいたし、代々傑出した人間ばかりを排出してきた家系は、陳腐で平凡な人間を蔑んでさえいたのだ。
 とにかくそんな訳でこの受験に失敗したらどうなるのか、痛いほど秀雄にはわかっていた。しかし答案用・・・

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一番怖い話

12/12/16 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1721

 都会の片隅にある喫茶店に幾つも影法師が集まっている。黒いビロードのような夜空に満月がくっきりと冴えていた。彼らは怪奇愛好クラブのメンバー達である。奇怪なものに興味を持ち、或いは奇談を好み、人知れず不思議な世界を愛する者達。それが彼ら怪奇愛好クラブの連中である。メンバーは様々な情報を持ち寄り奇怪な体験談を各々が話す。今夜は今年最後の彼らの集いでもあった。今夜は特別にこの中で一番怖い話をした者に商品・・・

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願いを紡ぐ (The Wishgiver)

12/12/06 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:1888

 ここに人の願望を叶えるものがいました。名をウィッシュ・ギヴァーといいます。彼は妖精と魔族の混血で鱗のあるちょっと不気味な姿をしていました。ちょうどそれは…… そう、あのグレムリンを想像していただければそう遠くないと思います。
 彼の仕事は人の願い事を一つだけ叶えることで、もうかれこれ三千年以上もこの業務に従事していました。悪魔や魔人も人の願いを叶えたりするのですが、それは彼から見たらほんの・・・

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角(つの)

12/11/29 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1825

 
 ――正月のそれも元旦に、高校生の香織の頭に角が生えた。
 それはまるで突然な出来事だった。きのう寝る前に額の両側にかすかに痛みを覚えたのだが、まさか頭に小さな角が生えるなんて誰に想像出来ただろう。それは思春期の少女にはあまりにも惨い出来事だった。香織は色白の可愛い女の子だった。長い睫毛をした瞳の大きな女の子だ。男子に人気があり、性格もはきはきとして明るかった。
 夢ならいい・・・

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ある実験

12/11/28 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1546

 灰色の冬空に雪がちらついていた。正月の神社の境内に小学生の兄弟がいる。
 兄が真二で弟が浩二だ。赤いほっぺたをした浩二が元気いっぱいな声で言った。
「にいちゃん。オレ父ちゃんにお守りもらったんだ。いいでしょ!」
 真二が興味本位の顔をして答えた。
「お守りかよ、へえ、そりゃよかったな。で、どんなお守りなの?」
「うん。父ちゃんが教えてくれたんだけどこのお守りはねえ、・・・

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三兄弟の願い

12/11/27 コメント:2件 yoshiki 閲覧数:1881

 ――これは随分と昔の話です。
 はるか南方に古代ペルシャ帝国みたいな国がありまして、そこに三兄弟が住んでおりました。別に特別な兄弟ではなくごく普通の兄弟です。
 兄弟はあまり裕福ではなく、どちらかというと貧乏のほうでした。
 三人ともまだ若くお金がないのでまだ妻も娶れませんでした。この時代の適齢期は現代よりかなり早かったのにです。
 長男は背が高くおおらかで実に前・・・

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サンタ苦労ース物語

12/11/26 コメント:0件 yoshiki 閲覧数:1790

 彼は憂いを含んだ眼差しで街並みを眺めていた。彼の顔には深い何本もの皺があり白くて長い髭をたくわえていた。ちょっと奇抜な赤い帽子と赤い服という格好で黒いベルトに長いブーツを履いていた。
 誰が見ても彼がサンタクロースだとわかったと思う。
 しかし彼に気付く者は殆どいなかった。なぜなら彼は八頭のトナカイの引く橇そりを自在に操り、雲の中を泳ぐように飛んでいたからだ。
 サンタには自分・・・

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