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サトースズキさん

出没地
趣味 読書、映画です
職業
性別 男性
将来の夢 社会復帰
座右の銘 ニートは毎日が休日? ちがうね。毎日が夏休み最終日なんだ。 もちろん、やるべきことは何ひとつ終わってない

投稿済みの記事一覧

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ドライブイン

14/06/21 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:706

 彼女はあたりを見まわす。斜め向かいの席にいた若いカップルだった
「キスしてよ」声が耳に入った
「もう出ようぜ」若い男は言った
「キス、してよ」女は自分の手をそっと男に重ねた
それから男はキスをした。「もう出よう」
女は特にそうする理由もなかったが、メニューをきれいに並べなおしたり、紙ナプキンを折り畳んだりしていた
 駐車場に派手な車が入ってきた。濃いサングラス・・・

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y年度x大学二次募集問題ができるまで

13/02/21 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:1209

 栓をひねると蛇口から水が流れてきた。ひやりとした水だ。両手をその流れの中に差し入れて水を掬い取り、三回ばかり顔を洗った。顔をこすりつけるたびに、水は暖房のせいで不快に火照った頬から気持ちよく熱を取り除いていった

 もうホテルに四日間もカンヅメだ。いや、五日か

 そんなことを考えながら顎の下に手をやると、不快なざらつきが指に感じられた。タオルで顔を拭き、鏡を覗き込む。鏡・・・

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握手をしたら

12/12/18 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:1417

 新たな一年を迎え、そして使い古した一年を捨て去るそのときほど自らの年齢を強く意識させるものはない
 人は言う。歳を重ねることはある種の変容であると。その変容を決めるのはあなた自身である。あなた自身の取り組み方次第では年齢を重ねることも肯定することができる。その習慣を続けることができたならば、もしかしたら老いにも幸福を見いだせるかもしれない。重要なことは正しい結果でなく正しい姿勢である、と<・・・

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兄弟のかたち

12/11/26 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:1388

「それで?」彼女はそういって僕を眺めている
「それだけさ。この話はここでおしまいだ」僕は答えた
 それでも彼女は不満げな顔をしていた。それで僕はつけ加えた
「だから言ったろ?楽しい話じゃない、って」そう言ってからゆっくりと煙草に火を点けた

 駅からの近道の公園を抜けたところで僕たちを光が照らした。シュウウ……という音を立てて車が通り過ぎていく。雨はすでに止んでいたが・・・

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帰路

12/11/23 コメント:2件 サトースズキ 閲覧数:1562

 街はすっかり変わった
 僕たちがまだ子供だった頃に感じた街の息吹は確実に失われ、かわりに小奇麗に整ったロータリーと、広々とした快適で道幅の広い大通りが駅前に広がっていた。以前はそこに独特の存在感を放ちながら存在していた、いんちき臭いタバコ商店やら漢方薬局やらはその姿を消していた。そんなものがあったことを連想させるものは一つもなかった。それらはただ僕の記憶の中に残り続けるだけで、そしてそれさ・・・

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どくろの丘の一両列車

12/09/30 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:1192

 いくつかの電燈がスポットライトのようにプラットフォームを暗闇の中にくっきりと浮かび上がらせていた。それ以外は全てが暗闇だった

「ねぇあなた、あたしのお母さんを見なかった?」
 少女は訊ねた。僕はちょっとびっくりして彼女を眺める。というのもこのフォームに彼女がいるなんてことに全く気が付かなかったからだ
 フォームに人はほとんどいなかった。隣の、鼻をつく異臭を立ち込めさせて・・・

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ペテンのための反復練習

12/09/22 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:1293

「あなたさまに必要なものは規律正しい生活です」
老婆はそう言った

「それで、そいつは一体いくらなんだい、ばあさん?」
俺は尋ねた

町から町へのどうどう廻り、ぬすっとでうそつきのひとごろし
うばった金をありったけ、無用なものに使いきる
それがこれまでのすべてで、そしてこれからもそうやっていく
どうしてそんなことになっちまったのか。一度じっくり・・・

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ラウンド7、カウント6

12/09/08 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:1206

「男はありもしない誇りだとか夢だとかにこだわる奴が多い。なんでだと思う?俺にはさっぱり見当もつかない。男の世界なんてもんは俺がガキの頃にはもうすっかり無くなっちまったし、今後もそんな時代は帰ってこないだろう」そういって葉巻を灰皿に押し付け、懐から札束を取り出す。ベンジャミン・フランクリンの厳めしい顔が俺を睨む
「確かにいい時代だった。俺もそういう時代に生きる事が出来ればよかったと思う。だがも・・・

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猫なんだ。難しく考える必要なんて何もない

12/09/06 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:1266

「ねぇ、助けてほしいの」窓のサッシに白猫がひょいと飛び込んできた
「多分そうは見えないでしょうけど、私すごく困ってるのよ」
 若い雌猫だ。毛並みは最高に上等。太陽の光を背に受け、ふわふわの毛の先端がそれぞれ光を捕まえて彼女の輪郭をぼかす。それは写真立ての中の動物写真を思わせる
「いや、ちゃんと困っているように見える。本当さ。それに関しては何も心配しなくてもいい」
俺はイヌハ・・・

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優しさ。無神経で冷酷で暴力的なくらいには

12/09/02 コメント:1件 サトースズキ 閲覧数:1314

「ごく控えめに言って、最低の気分です」

 会場は五人ほどの報道関係者と機材が入るだけで一杯になる小さな部屋だった。駅から近く都内にあるという事だけが選ばれた唯一の理由で、講堂を大急ぎで小ざっぱりときれいにした、そんな会場だった
 だが、俺の発言は会場の中に延々と広がり続ける孤独な空間を作り出した。会場の誰もがその場にあるべきでない言葉を耳にし、混乱の中に巻き込まれ、そして隣の席・・・

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最後の夏

12/08/25 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:1174

 雁の一群が飛び去ってゆく

 低く傾いた夕日が鈍い茜色にゆらぐ。雁たちはそれぞれ自分の影を背負い僕たちの上を飛び去る。誰も他人の影は背負うことはできない。できたとしても、誰もそんなことはしないだろう

 自分の重さは、きっちり自分で、自分の分だけを背負っていくんだ
 それは僕の兄貴がよく言っていた言葉だ
 兄貴は、もういない。どこか僕の知らない街へ行って、そし・・・

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導火線に、火をつけて

12/08/13 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:1178

 周りを取り囲むのは、笑顔。かわいらしい盛りの子供たちだけの間に許された、とびきりに上等な笑顔。無邪気な笑い声。それらが彼らの為に、そして、ごく自然に宿っている時期は驚くほど短い

 今、火にくべられているのは僕の友人だ。声を限りに叫んでいる。今まで彼がそんな声で叫ぶなんて知らなかった。おまけにぶすぶすと煙が出てピンクだったり、エメラルドグリーンに変わったりして燃えている。彼がそんなに・・・

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部品なんて、やってられるか

12/08/06 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:1265

 高原地帯に差し掛かり、景色は豹変する
 鬱蒼と生い茂り、狭苦しくも夏の真昼の太陽を優しく遮っていた背の高い樹々は、二つ前のカーブを最後にぱたりと見ない。 風景は悪辣な自由を想像させる雄大な眺望となり、高原の山頂部分に開けた道は蛇のように丘の上を走り、左右にはそのどちらにも遠くにそびえる山が見える。山の頂と頂の間にはさらに遠くの山が顔をのぞかせる。集合写真のように互い違いになり、それは山々が・・・

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魚だってそれなりに大変なのさ

12/07/30 コメント:0件 サトースズキ 閲覧数:1389

「連中はバカさ。救いようなんてこれっぽっちもない、掛値なしのバカだね」
そう言ってトラザメは悲しそうに首を振っていた
「連中って?」
ホホジロザメはトラザメのその呟きを聞いて上層からわざわざ降りた
ホホジロはトラの話が大好きだったのだ。トラの話の半分は何の役にも立たないでまかせの嘘っぱちで、残りの半分は彼が考えた屁理屈だった
それでもホホジロは彼の話が好きだった

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山小屋

12/06/21 コメント:2件 サトースズキ 閲覧数:1717

「荷物はここでいいのか?」
父はそう言って、祖父の返事を待たず荷物を肩からおろした。鈍い音が部屋に響いた。
祖父の住んでいる小屋のある山は標高二千メートルに満たない。だが登山口の標高も低く累積標高差は大きい。
久住の連山は九州に位置していても冬になれば雪に覆われる。季節はまだ秋だが山は冷え込むようになっていた。

「山から下りて一緒に暮さないか?」父は棚のウィスキーを・・・

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つけない嘘

12/06/18 コメント:4件 サトースズキ 閲覧数:1787

 駅の西口を出たところにあるガードレールに腰かけていた。それはツツジの垣根と一緒になって道路と歩道を分けていた。花はまだ当分咲きそうにもない固く閉じたつぼみだった。
 せっかくの日曜だったが、空はたっぷりの雲で覆われていた。ときおり西から流れてきた低い雲がビルの中層あたりにぶつかり、まっぷたつに分割されている。それぞれがビルをぐるりと回り込んで反対側で合流する。それはまるでそうなる事が運命で・・・

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