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ポテトチップスさん

夜が好きです。夜に仕事をして、太陽が降り注ぐ時間は寝ています。夜は静かで心が落ちつきます。

出没地 東京の田舎
趣味
職業 4トントラックのドライバー
性別 男性
将来の夢 時空モノガタリ文学賞に5回入賞すること。
座右の銘 七転び八起き

投稿済みの記事一覧

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初めて耳にした五分間近い肉声に僕は震えた

16/12/06 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:403

 そして、翌日はとても暑い日でした。綿アメのような雲がポコポコと、あっちの空にこっちの空に浮かんでいました。
 あの時の僕は、いつも薄汚れたボロボロの白いランニングシャツを着ていたけど、その日の正午前、母に新品のランニングシャツに着替えるように言われたんです。
 僕はまだあの時、8歳になったばかりだったから凄く嬉しかった。真っ白なランニングシャツの真新しい肌触りや、自分の体臭のしないち・・・

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山に振動を響かせサンタがやって来た

16/11/27 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:379

 岩に積もった雪で足が滑りそうになった。光一は後ろを振り向き、小学校が冬休みに入ったばかりの輝彦に、「気をつけろ!」と言った。
 輝彦は、父親に無理やり連れられて登山させられていることに、朝から機嫌が悪かった。
 来年の1月1日付けで、光一は東京に単身赴任することが決まっている。その前に、1人息子と登山に挑戦してみたいと光一は思っていた。
 光一は腕時計に目を向け、
「早朝・・・

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サンドウィッチマンのクリスマス

16/11/21 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:300

 丸い綺麗な月が出ていた。風はさほど強くは無いが、寒風が衣服を重ね着していても体に堪えた。
 青島は駅前の広場で、サンドウィッチマンの格好でただ立っていた。何度か激しく咳き込む。このところ咳を頻繁にするようなった。
 駅前を歩く若いカップルらは、幸せそうに手を固く繋いで歩く。まるで12月24日のクリスマスイブは、自分達のための記念日であるかのごとく、みな幸せそうに微笑みながら青島の前を・・・

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1943年の雪深い村にあった美術館

16/11/07 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:333

 昨夜から降りだした大雪は村全体をさらに雪化粧にし、この雪深い村に暮らす多くの者が、ため息を吐きながら朝から雪かきをしていた。
 大吉が家の前の雪かきをしていると、教科書などを風呂敷に包み、それを背中に背負って歩く、自分とさほど年の違わない少年が、近くの国民学校高等科に通うため、前の道を歩いて行く。
 大吉はその後姿を、羨ましげな気持ちで見つめた。
「早く雪かき終わらせ!」

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何度も現れる白髪に白髭の男

16/10/28 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:365

 玄関ドアが開く音がした。壁時計を見ると深夜2時を少し過ぎていた。
 京子は椅子から立ち上がり玄関に向かうと、玄関横の階段を上がろうとするタクミの背中に向かって怒鳴った。
「アンタ! 何時だと思ってるのよ!」
「うるせー!」
 幼少期は動物にも優しく接する、心優しい子供だった。中学を卒業し高校に入学してから、タクミは不良仲間と遊ぶようになった。
 高校2年生になったタ・・・

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グラスに残る唇跡

16/10/11 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:381

 土砂降りの雨が降る夜、今夜は客など来ないだろうなと諦めかけていると、ドアを開け中に入ってくる客がいた。
「いらっしゃい!」と、順子が笑顔で迎え入れる。
 室井という名の常連客の男は、カウンターの中央の椅子を引き、スーツの上着を脱ぐと、それを椅子の背もたれにかけて椅子に座った。
「ビールちょうだい」
「はい。ありがとうございます」順子はしゃがんでコールドテーブルから瓶ビール・・・

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最期のツッコミ

16/10/05 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:442

 佐川が病室に入ると、堀内がベッドの上で目を閉じていたが、物音に気づいて目を開いた。
「調子はどう?」佐川が聞いた。
 ゲッソリとやせ細り目の下に濃いクマができている堀内が、生気を失った顔に無理やり笑顔をつくり、
「調子はいいよ」と言った。
 会うたびに病状が悪くなっていく堀内をみるたびに、佐川は悲しい気持ちになる。コンビ結成20年のベテランお笑いコンビだったが、受賞歴はと・・・

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ここは僕の死に場所じゃない

16/09/26 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:479

 マコチ師匠が楽屋でタバコをふかしている横で、テリ&チキの2人は漫才をしているが、マコチ師匠は機嫌でも悪いのか、人差し指でテーブルをコツコツと叩いていた。
「おい、こら! 黙れ! 耳障りなんだよ」
 テリ&チキの2人は押し黙って、師匠に頭をさげた。
「師匠! いまの僕らの漫才、何がいけなかったのでしょうか?」
「何がいけないじゃなくて、うるさいんだよ」
「師匠! お言・・・

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時空を超え出会った老人と男

16/09/15 コメント:4件 ポテトチップス 閲覧数:768

 村井は腕時計で時間を確認した。午後5時30分ちょうど。ポケットからタバコを1本取り出し、火をつけて吸うと大きくむせた。
 赤く染まったタバコの先を見ながら、なんて粗悪品だとこの時代のタバコに雑言を浴びせる。もう一度煙を肺に吸い込むと、幾分体は抵抗力を持ったのかむせずにすんだ。
 村井は短くなったタバコを側溝に放り捨て、新しい1本にライターで火をつけた。煙を吸い込みながら空を見上げる。・・・

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死者に同情する記者

16/09/04 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:587

 新宿から電車を乗り継いで約1時間、八王子駅に到着したトキオは、黒いリュックから地図を取り出し住所を確認する。さらに徒歩で歩くこと15分、目的地の本屋跡地に着いた。
 もうすでに町田書店の店は取り壊され跡形も無かったが、深さ1メートル程掘られた形跡が、真実を物語っていた。
 トキオはリュックからデジタル一眼レフカメラを出して、現場の写真を数枚撮影すると、メモ帳に感じたことを書き留めた。・・・

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本を失った店内

16/08/30 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:548

 夜の7時、小池本屋の2階に魚屋の宮城と八百屋の福長が、椅子に座って待っていた。小池は部屋の冷房のスイッチを入れてから、宮城と福長と向かい合うように椅子に座る。
 八百屋の福長が言う。「もう、どんだけ頑張ってもショッピングモールには勝てない。あんなのができたせいで、商店はめちゃくちゃですよ」
 小池は福長の言葉に黙って頷きながら、1年前の谷町商店街の賑わいを懐かしく思った。
 谷・・・

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生きて帰ると言ったじゃない……

16/08/21 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:479

 松永が交番前で立哨していると、遠くの方からタエ子お婆さんの姿が見えた。そのおぼつかない足取りに心配に思うのはいつものことだが、タエ子お婆さんは気丈な女性で、手を貸そうとすると怒られるのを知っているので、松永は横目でチラチラと気にしながらも、正面を向いて立っていた。
 児童でも2分もあれば交番前に着く距離を、タエ子お婆さんはいつも15分かかる。前に年を聞いたことがあったが、93歳だと言ってい・・・

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カンボジアからの挑戦

16/08/01 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:434

 布団から起き上がると、テーブルの上に1万円札が1枚置いてあった。タカはその金を見て、あのババア、男の所に行ったから、しばらく家に帰って来ないなとせいせいした。
 歯と顔を洗い、いつも履いているジーンズとTシャツに着替えると、1万円札をポケットに詰め込んで家を出た。外は満月で明るい。
 いつもの公園に着くと、学ランを乱して着こなしているミツルが、ベンチに座ってタバコをふかしながら、タカ・・・

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71年後のナイン

16/08/01 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:472

 銀蔵は薄っすらとした意識で天井を見つめていた。開けている目からは、もう光しか感じられなく、今は昼なのかどうかさへ分からなかった。遠くなる耳に妻や息子夫婦、それに今年高校生になる孫の声が小さく聞えた。
 俺の命はついに尽きるのか。死んだらきっと、1人であの世に行き、光があるのか無いのか分からない世界で、輪廻の時が来るまで、じっと膝を抱えて孤独に待つのだろうかと思った。
 誰かが銀蔵の手・・・

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先人の言い伝え

16/07/19 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:474

「ただいま、婆ちゃん!」
トオルは、土間で靴を脱ぎ座敷に上がった。座敷の中央では、トメ婆ちゃんが囲炉裏鍋の中を杓子でかき混ぜていた。
「もう、外は真っ暗だよ。こんな時間まで外で遊んでちゃ、隠し神がさらいに来ちゃうよ」
「大丈夫だよ。ユウタ君もトモキ君も一緒だから。ねぇ婆ちゃん、今日の夜ご飯なに?」
「今日の夜ご飯は、シシ鍋だよ。拓造のお爺さんが猟で仕留めて、少し分けてくれた・・・

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タスケアイ

16/07/18 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:386

村の集会場に果樹園農家の人間が11人集まっていた。
持田盛光は傷んだ畳の上で腕を組み、あぐらをかいて座っていた。
円を描くように座った11人の中で、岸辺庄司は背中を丸め、正座をして座っていた。
何かが飛び跳ねるのを感じ、下に目を向けた盛光は、親指でそれを潰した。ノミだった。
潰したノミを人差し指で弾いた後、岸辺を見ながら意見を述べた。
「会長さん、オラは反対だ。自分の・・・

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タップシューズ

16/07/10 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:588

光長が店に着くと、まだ開けていないシャッターの前で、沙世がコートの襟を立てて、寒そうに佇んでいた。
「ごめん、待った?」
「今、着いたばかりです」沙世は、屈託のない笑顔で言った。
光長はシャッターを上げながら「どうしたの、こんな早い時間に?」
「今日、午後からバイトが忙しいんです。午前中しか練習できる時間がつくれなくて、もう靴の修理終わってるだろうなと思って、朝一で取りに来・・・

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真夜中に響く警笛

16/07/04 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:481

友也は家に帰るとすぐに服を脱いで洗濯機を回し、シャワーを浴びた。体を拭いて部屋着に着替え寝室のドアを開けると、明子がマスクと透明なゴーグルをつけてベッドに寝ていた。
「ただいま。調子はどう?」
「おかえり。調子悪い……」明子は、ゴーグルの中の眼を瞑った。
「薬は飲んだ?」
「飲んでない。どうせ、効き目無いから」
「そんなこと言うなって。ちゃんと毎日飲んでれば、そのうち・・・

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100kgの負荷がかかる肩

16/06/20 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:492

ミーティングが終わると、杉林は光浦だけ部室に残るように言った。
他の部員は帰り支度をして部室を出て行った。
1人だけ部室に残された光浦は、長椅子に座って俯いていた。
「光浦、オマエをレギュラーから外すことに決めた」
光浦は俯いたまま、首だけコクンと頷いた。
杉林は、きっと悔しいだろうなと思った。誰よりも練習を頑張り、誰よりも野球に対して貪欲な高校球児だった。長い監督生・・・

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信子の門出

16/06/20 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:457

正信は深夜11時に帰宅した。顔を赤らめ、呼気からはお酒の臭いがした。
「ただいま」カバンから取り出した弁当箱と花束を信子に手渡した。
「あら、綺麗な花束ね」
「会社の人から貰ったんだ」
「お酒は誰と飲んできたの?」
「同僚とだよ。居酒屋で定年退職を祝う会を開いてくれたんだ」
「あなた、ビールで乾杯しましょう」信子は、そう言って弁当箱と花束を持ってキッチンに向かっ・・・

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汚れた手

16/06/06 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:668

さと美は、山谷地区に店を構える立ち食い蕎麦屋の引き戸を開け中に入った。
「へい、らっしゃい」店の店主の中谷平蔵が、皺くちゃな顔に笑顔で迎えてくれた。
「温かい蕎麦ちょうだい」
「へい、かしこまりました」
さと美は、店の壁に掛かっているカレンダーを見て、今日が12月25日だと言うことを知った。もうすぐ正月がやって来る。どうりで寒い訳だと納得した。
83年も無駄に生きてい・・・

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雨に震える

16/05/23 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:513

タケルはベッドに横になり、布団を頭からかぶって耳を塞いだ。
窓を閉めていても、雨音が部屋に響いた。
酷い頭痛と早まる鼓動に、言い知れぬ不安と恐怖に怯えた。
ベッドから起き上がったタケルは、病院でもらった精神安定剤を3錠、水と一緒に飲んだ。
夜、バイト先のコンビニに自転車で向かい、昼勤のスタッフと入れ替わった。明日の朝5時までが勤務時間だった。
同じ時間に勤務についた安・・・

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2人旅

16/05/09 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:593

「メシはまだか?」ベッドに横たわったまま、顔だけ向けて幸彦が言った。
「父ちゃん、メシは10分前に食ったばかりだろ」和樹は、街中でもらった無料求人誌に顔を戻しながら言った。
「そうか、メシは食ったばかりか。父ちゃん、頭がバカになってきてるから、和樹に迷惑ばかりかけて申し訳ないな。父ちゃんなんか、早く死んだ方がいいんだ」
今年87歳を迎えた幸彦の口癖である、父ちゃんなんか、早く死ん・・・

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悔しさを洗い流してくれない雨

16/04/25 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:565

2月に収穫し倉庫で寝かした甘夏みかんは、酸が抜け食べごろとなった。
宇和島の空と海は、あと数ヶ月で夏が訪れる前兆のように、ここ最近は早い夏日のような天候が続いていた。
武藤正一は、伊吹町で30年経営する武藤商店の店先に、食べごろをむかえた甘夏みかんを並べた。
店は伊吹町市営団地に囲まれ、客の大半は団地に住む住人だった。30年前に建てられた団地は、当時は若い夫婦と子供が大勢住み賑や・・・

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咲かない向日葵

16/04/21 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:590

「ただいま」
「お帰りなさい」
留美は、玄関で雅人のニット帽と肩に積もった雪を手で払いのけた。
雅人は紙袋を留美に渡し、コートを脱いで雪を振り落した。
「魚の缶詰だけ?」
「うん」
「いくらしたの?」
「5個で5000円」
留美は大きくため息を吐いた。
「薬は?」
「取り寄せるまで、1ヵ月待ちだって。でも、ちゃんと申し込んできたさ」

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Y県の壁

16/04/10 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:471

「Y県を壁で遮って隔離します」


田中総理の命令により、Y県は他県と接する県境に、高さ10メートルの分厚い壁が永遠と、わずか1日で完成した。これにより、Y県民はこの遮断壁の中でしか行動できない自由を奪われた。
「光浦知事、我々は日本国民に見捨てられたんですよ!」Y県庁知事秘書の柿生が言った。
光浦は知事室の椅子に座りながら、湯呑の冷めたお茶を一口飲んだ。
「も・・・

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逃げても逃げても追って来る

16/03/25 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:541

閉館時刻の午後8時を過ぎた。
館内の照明が消され、水族館で飼育されている大小さまざまな魚たちの餌の時間になった。
直樹は館長に呼ばれ、館長室に入った。
「館長、話ってなんでしょうか?」
「おう、ちょっと話があってな」
尾長館長は、腕組みをしたまま直樹に向かいあった。
「他の従業員には黙っててもらいたいんだか、経営が厳しい状況なんだ。それで従業員を5人ほどリストラ・・・

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才能が欲しかった男

16/02/29 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:510

賢太は茶封筒を大事に抱え、エレベーターで4階に上がった。ドアに(株)サミューズとプレートが掛かっているドアを開けて中に入ると、パソコンに向かって仕事をしている数人の女性が賢太に顔を向けた。
「あのう、すいません。オリジナルのシナリオを書いたんですが、読んで頂けないでしょうか?」
1人の女性社員が椅子から立ち上がって「うち、そういうのお断りしてるんです」と言った。
「読むだけでいい・・・

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予想屋の暗い過去

16/02/23 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:537

澄み切った青空を見上げて、芳吉は大きく深呼吸をした。長年吸っているタバコのせいで、小さく咳きこんだ。まだ朝8時の府中競馬正門前駅には、人がまばらだった。
芳吉は右手に競馬新聞を丸めて持ち、長年愛用している牛皮のショルダーバッグを肩に下げて、東京競馬場へと続く下り坂を歩いて行った。
場内には入らず、東門広場の一角に座り込み、ショルダーバッグから、『競馬予想屋』と手書きで書いたノートを取り・・・

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長雨が止むとき

16/02/15 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:594

秀介が会社の車庫に戻ったのは、夕方5時を少し過ぎた頃だった。
昨日降った雨のせいで、トラックのバンボデーには泥がこびりついていた。軽く洗車をした後、車庫に隣接するプレハブの事務所に入ると、社長が電話をしていた。
流し台の蛇口をひねり、顔を洗ってタオルで顔を拭いていると、電話が終わった社長が声をかけた。
「お疲れさま」
「社長、お疲れさまです」
「今日も寒かっただろ」<・・・

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チョモランマで初めまして

15/11/17 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:554

自転車で朝刊を配り終えた。
畠山仁志が販売所に戻ると、所長の鬼塚が待っていてくれた。
「お疲れさま」
「お疲れさまです」
鬼塚は「はい、先月分のお給料」と言って、茶封筒に入ったお給料を仁志に渡した。
「ありがとうございます」
「誕生日祝いと登山の前祝いをかねて、気持ち分だけちょっと多めに入れておいたから」
「ありがとうございます。絶対に登頂成功させてみせま・・・

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真っ赤な炎

15/11/10 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:709

6畳ほどの小さな取調室で、テーブルをはさんで向かいの椅子に腰かける狩野という名の若い刑事が、眉間に皺をよせながら、苛立たしく何度も「オマエがやったんだろう!」と言った。
成田修介は俯いたまま無言をつらぬき続け、そんな成田を見て狩野は、何度も吐いているため息を再度吐いた。
「やったのかやってないのかハッキリ答えろ!」
取調室の隅で、腕組みをしながら立って様子を窺っていた牧田刑事が「・・・

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やけに肌寒い夜

15/10/13 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:667

「恭一、どこに行くんだい?」年老いた美津子が杖をつきながら玄関の外に出て言った。
「どこでもいいだろ」
「また、あそこに行く気かい? 頼むからあそこには行かないでくれ」
恭一は母の言葉を背中で聞き流しながら、前に歩みを進めた。美津子の泣き声が鬱陶しく感じ、買ったばかりの紺色のジャケットのポケットからタバコの箱を取り出し、一本抜いてそれを口にくわえて火をつけた。10月の肌寒くなった・・・

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悪魔のささやき

15/07/14 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:725

20畳ほどの部屋に30人ほどの聴衆が、並べられたパイプ椅子に座って俺を見ていた。
俺の足はガクガクと震え、軽い眩暈すら感じはじめ、あれほどスピーチの練習をしたのに、何から話したらよいのか、すっかり忘れてしまった。
そうだ、まずは自己紹介だと思い、目を瞑って深呼吸をしたあと、目を開け上ずった声で自己紹介をした。
「皆さん、こんにちは。僕の名前は上杉友和と申します。あのう……、これか・・・

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押入れの閻魔さま

15/06/23 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:820

「本日は、ハウスクリーニングをご利用頂きまして誠にありがとうございました。以上で作業の方は終わらせて頂きます」
富樫裕二は、笑顔で客にお辞儀をした。
「キッチン周りが驚くほどキレイになって、本当にハウスクリーニングを頼んで良かったわ。また次回も頼みますね」
「ぜひ、またご依頼を頂けますと助かります。それでは、本日はありがとうございました」
裕二はもう一度、客に笑顔でお辞儀を・・・

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SAIGO

15/06/02 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:929

閉館日まであと6日と迫っていた。
多摩ふれあい動物園で飼育されている40種の動物達の引き受け先は、ほぼ決まったが、今年、人間の年齢にすると80歳を迎えるアフリカゾウの花子だけは、引き受け先がまだ見つかっていなかった。花子は老衰が激しく、自力で立ち上がるのもやっとで、獣医からは、もっても今年いっぱいだろうと診断されていた。そんな花子を他の動物園が引き受けてくれる訳もなく、園長の長谷部は安楽死さ・・・

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命のバトンタッチ

15/05/05 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:878

会社に警察から緊急の電話がかかってきたのは、終業間際の時間だった。
徳谷隆弘がその電話で告げられた病院に駆けつけたのは午後6時を少し過ぎた頃だった。
「愛里……」
緊急治療室で人工呼吸器をつけられた、今年成人式を迎えたばかりの一人娘は、頭に包帯を巻かれて、固く目を瞑っていた。
顔中に痛々しい傷跡が残る娘を茫然と見つめながら、徳谷は強く握った拳を小刻みに震わせていた。
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海を行きかう工作員

15/04/21 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:859

中朝国境の街、丹東に到着した阿久津忠彦は、カメラや洋服が詰まったバッグを背負ったまま、丹東中華国際旅行社に向かった。
中に入り、日本語が話せる中国人担当者から、北朝鮮ツアーの簡単な説明を聞いた後、3泊4日のツアー料金、13万5千円を人民元で支払って北朝鮮のビザが手渡された。
昼の12時10分、代理店の人間と一緒に丹東駅から平壌行の列車に乗り込んだ。
駅から少し走るとすぐに橋を渡り・・・

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豚に涙

15/04/07 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:830

「おい、沢木、ちょっと話があるから休憩室に行こう」
諸橋課長に呼ばれ、俺は胃がグ〜と痛くなった。きっと仕事でミスばかりしている俺を、お得意のチクチクと説教するつもりだろう。
俺は諸橋課長の背中をうつむき加減で見つめながら後をついていった。
休憩室の喫煙コーナーで諸橋課長はタバコに火をつけて吸った。
「どうした? 顔色が悪いぞ」
「いえ、大丈夫です。俺もタバコを吸っても・・・

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漂流者

15/03/31 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:980

遅い昼飯を牛丼店で済まし街路地に出た修一は、薄っぺらい財布を尻ポケットにしまい空を見上げた。約束の時間までは、まだ30分早かったが集合場所に着いた修一は、立ったままタバコを一本咥えて火をつけた。タバコの煙を何度か吐き出していると、若い青年が黒いリュックサックを背負って近づいてきた。
「すいません、治験の方ですか?」
「そうだよ。君も治験やる人?」
黒いリュックサックを背負った、ま・・・

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ショパンを愛した二人の男

15/01/14 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:861

演奏を弾き終えた。羽根岸健一はピアノの鍵盤からゆっくりと両手を離し、余韻に浸るように目を瞑ったまま、聴衆からの鳴り止まぬ拍手に歓喜した。
目を開け、椅子から立ち上がって会場の聴衆に一礼をした後、マイクを手に取った。
「本日は私の、羽根岸健一 2014年 ウインターソロピアノリサイタルにお越し頂きまして、誠にありがとうございます。いま弾いた一曲目の曲は、私の大好きなフレデリック・ショパン・・・

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バードストライク

15/01/01 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:851

休日が明け、千歳空港第一バードパトロール隊の詰所で作業服に着替えていると、横島彰浩が近づいてきて話しかけてきた。
「保田さん、昨日バードストライクがあったんですよ」
「マジで。飛行機大丈夫だった?」
「それが離陸する飛空機の操縦席にヒビが入っちゃって、急きょ飛行のとり止めになっちゃったんです」
「怒られた?」
「怒られましたよ。バードパトロール隊は何をしてるんだってね・・・

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フライ級を制するこの拳

14/12/16 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:826

体重計に乗った。55.4キログラムだった。相模力也は体重計の針を見つめたままため息を吐いた。
合田ボクシングジム会長の合田守が体重計を後ろから覗きこんで言った。
「あと3.4キロの減量か」
「そうっすね」
「計量日まであと8日だ。そろそろ地獄部屋に行くか?」
「明日からにしたいんです。今日はちょっと、バイトがどうしても休めないんです」
「まあ、いいけど。でも明日・・・

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くもり時々雪そして涙

14/12/09 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:695

兄さんへ

 突然の手紙を送って申し訳ありません。兄さんが父さんと喧嘩をして家を飛び出したのは、ちょうど20年前の雪がパラパラと舞う寒い夜のことでしたね。10年前に父さんが死んだ時も、こうして手紙を出して知らせましたが、兄さんは葬式にも顔を出さず音沙汰なしでした。
 母さんは兄さんの事をとても心配していました。俺が兄さんの居所を父さんが亡くなる前年に探しだし、母さんに言うと、母さ・・・

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仮面を脱いだ都民

14/11/19 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:829

「武彦、明日から職探ししろ」父の洋一が、日本酒を注いだコップを持ちながら、苦悶の表情で言った。
「はあ? 何でだよ」
「いいからそうしろ」
「父さん、いつもそんな風に自分の意見ばかり勝手に押し通すから、人から嫌われるんだよ。死んだ母さんも、そんな父さんの一面を嫌っていたの分かれよ!」
「死んだ母さんの話は、今は関係ない。とにかく、明日から職安に行って職探ししろ」
「父・・・

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人間の恨みは蛇となって生き続ける

14/10/21 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:832

黒の礼服を来て14年振りにタケシの実家に行った。タケシの母親は泣きながら俺にお辞儀をして、家の中に入るように勧めてくれた。
玄関を上がるとお線香の匂いがし、『ああ、やっぱり本当だったんだ』と俺は思った。
1階の8畳の和室に祭壇と棺が置かれ、その中でタケシは目を瞑って死んでいた。
俺はタケシの死に顔から目をそらした。タケシは顔中に青あざがあり、顔が倍近く膨れ上がっていて、見るに堪え・・・

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暗い海底で貝のように生きる

14/10/07 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:996

「チクショ、やっちまった!」
顔を横に向けると横断歩道の青信号が、ちょうど点滅を始めたところだった。
前方10メートル程先に横たわる男の姿。
俺は車から降りようとして止めた。深夜11時の時間帯のおかげで人影はない。それに田園風景ばかりで民家もない。
俺は、先月に納車したばかりのトヨタ ランドクルーザーのギアをドライブに入れ、急発進で横たわる男の横をすり抜けた。
心臓が・・・

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かかあ天下

14/09/23 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:697

時計の針が深夜0時を少し過ぎた。玄関のチャイムが鳴り、恭子はいつものようにドアを開けて主人である武彦を迎えた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
洗面所で手を洗い終えた武彦がキッチンのテーブルの椅子に座ると同時に、いつもと同じように冷やした瓶ビールとグラスを武彦が座るテーブルの前に置いた。
冷やした瓶ビールを美味そうに喉に流し込み、空のグラスをテーブルに置くと、すかさず恭子・・・

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罪の根源は欲深さ

14/09/16 コメント:3件 ポテトチップス 閲覧数:762

「お母ちゃん、ただいま!」
「おかえり。ちゃんと学校で勉強してきたか?」
「うん。僕ね算数のテストで78点とったんだよ」
「へー、偉いこと。ちゃぶ台の上に焼き芋があるから、一本食べな」
「お母ちゃん、これから松ヤンと外で遊ぶ約束してるの。松ヤンの分も焼き芋持って行ってもいい?」
「いいよ。松ヤンに大きなお芋を選んであげなさい」
「うん」
ちゃぶ台に敷かれた・・・

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言葉は嘘ばかり

14/09/02 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:771

「優貴君、負けちゃダメだよ。僕はいつも君の味方だよ」黒部正輝が目を見つめながら言った。
優貴は目に涙を浮かべながら頷いて、小さく微笑んだ。
秋の日没はもうそこまで来ていて、ブルーな1日がやっと終わることに優貴は安堵した。
「イジメる奴らは可哀想な人間だと思って、逆に心の中で笑ってやりなよ。アイツらは仲間でつるんでいないと何もできない幼稚な人間なんだ。僕はじっとイジメに耐えている優・・・

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グラウンド・ゼロ

14/07/01 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:764

東京の夜空が一瞬、カメラのフラッシュのような強い光で包まれた。町田駅から自宅に向かって歩いていた野口洋介や周りにいた人々が、光につられて空を見上げると同時に、凄まじい爆音が鼓膜を振るわせた。落雷する音とは違った人工的な何らかの爆音に、野口や周りにいた人々は耳を両手で押さえた。
星のない夜空に浮かび上がるキノコ雲を見た時、両手で耳を抑えたまま息をのんだ。
『あの方角は都心だ……』野口は携・・・

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思春期は苦い

14/06/21 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:789

スタートライン  海援隊
            作詞 武田鉄也  作曲 千葉和臣

夜明け前の薄暗い道を 
誰かがもう走っている
ひろった小石で誰かが書いた
アスファルト道のスタートライン
寒い身体を言い訳にして
町は眠ってる曇り空の朝に
自分の汗で自分を暖めて
寂しさ目指して走る人がいる
今 私達に大切なものは
夢や恋を語・・・

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14/06/06 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:880

武藤誠一が自宅に帰宅すると、妻の悦子が台所の床に座り両手で顔を覆って泣いていた。周りは争った跡が色濃く残り、食器などが割れて散らばっていた。
「ただいま」
「あなた、智樹を何とかしてよ」
顔を両手で覆ったまま、悦子は涙声で言った。
「智樹は2階か?」
うん、と悦子は頷いた。
誠一は背広姿のまま、2階へと続く階段をゆっくりと上った。上がりながら、なぜあの優しかった・・・

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愚行の石

14/05/31 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:780

(はい、警視庁蒲田署です)
「いま、人を殺しました」
(殺人を犯したご本人からのお電話ですか?)
「はい。友人から借金の返済を迫られて、カッとなって包丁でやっちゃいました」
(いま、あなたと被害者はどちらにいますか?)
「殺した友人のアパートにいます。住所は大田区蒲田2‐〇‐〇 ハイワコーポ202号室です」
(念のため、あなたのお名前と年齢、携帯電話の番号を教え・・・

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それでも会いたい君に…

14/05/05 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:965

5月に入り仙台駐屯地内の正面道路の両脇で満開に咲きほこっていた桜は、樹の下のアスファルトの地面をピンクに染める日が続いた。
夕方5時にラッパの音で国旗が降りるのを敬礼で締めくくり、今日1日の任務も平時に終わった。
「小野寺、国分町で一杯飲まないか?」上松勝也が口角を上げて言ってきた。
上松は小野寺よりも1歳年上だが、幹部候補生として幹部になるための教育を受けた同期で気心の知れた同・・・

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家柄が故に

14/04/27 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:770

花粉が飛んでいた。マスクをしている涼子が目を痒そうにしている表情が、とても可愛らしく思い、森田太一はそんな彼女の髪を歩きながら撫でた。
駅から歩くこと10分あまりで太一の実家が見えてきた。
「これ、俺の実家」
「すごい大きなお屋敷ね」
西から東に大きく延びる敷地を囲むように、立派な塀が森田家を要塞するように建てられていた。
東京近郊にあるこの町で、森田一族と言えば富豪・・・

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勇気・元気・能天気

14/03/08 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:847

勇気ってなんだろう・・・

 心を奮い立たせないと湧かないもの?



      元気ってなんだろう・・・
    
       心が楽しくないと生まれないもの?



        
            能天気ってなんだろう・・・ 
 
             心が広くないと感じられないもの?<・・・

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阿弥陀如来の見つめる中

14/02/11 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:1004

革靴が床を踏み歩く音が近づいてきた。
岩間光次は近づいてくる足音がいつもと違うように気づいた。目をつぶり深呼吸を繰り返すが、心臓の高鳴りはおさまらず、冷たい汗が背中をつたった。
革靴の音が止んだ。
「岩間死刑囚、ついて来なさい」
目を開けると、所長をはじめ幹部がそろって立っていた。
「なんだ、死刑執行か?」
「そうだ」所長の水戸孝康がハッキリとした声で言い切った・・・

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お大事にどうぞ

14/01/27 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1011

「お大事にどうぞ」
国谷和夫は女性の後ろ姿に声をかけてやった後、カルテを看護師に渡して次の患者を呼ぶボタンを押した。
しばらくして悩みありげな顔をした、ロングの髪を金髪に染めた女性が診察室に入って来た。
椅子に腰を下ろした女性に「どうされました?」声をかけた。
「三角関係で悩んでいます。この診療科ではこう言った悩みも扱っているんでしょうか?」
「ええ、扱ってますよ。私・・・

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あ〜カミ様

14/01/13 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:870

洗顔後、東野裕也は鏡にうつる自分を不思議な感じて見つめた。目鼻立ちのハッキリした面立ちで、まるで二枚目俳優でも通じる顔。しかし目線を少し上に向けると、二枚目俳優からお笑い芸人のような腑抜けた顔に様変わりしてしまう。
学生時代は女性からアプローチを受けることが多かった東野だが、最近では街を歩いていると、育毛シャンプーの試供品を配っている女性からアプローチを受けることが度々あった。
鏡の中・・・

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祖父の残した和製ルガー

13/12/30 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1165

正月を少し過ぎた1月某日、山田邦彦の祖母が老人介護ホームで死んだ。雪がパラパラと舞う中で、葬式はしめやかに身内だけで執り行われた。
邦彦の父である洋治は、必死に涙を堪えていた。
2月に入り寒風はひどく吹き荒れ、まるで石油ファンヒーターで暖まっているこの部屋に潜り込みたいかのごとく、邦彦の部屋の窓を寒風はガタガタと鳴らした。
夕方、パートから帰って来た奈津子が邦彦の部屋をノックして・・・

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村八分

13/12/23 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:913

村八分(むらはちぶ)
江戸時代以降、村落で行われた私的制裁。村のおきてに従わない者に対し、村民全体が申し合わせて、その家と絶交すること・・・(コトバンクから引用)


隣町に建つ『スーパー植松』の駐車場に、一台の真新しい白い乗用車が止まった。
木戸満男は珍しい車だなと横目で見ながら、自分の軽自動車のドアを開けた。
「木戸さん、どうも」と、誰かに声をかけられた。<・・・

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人生を物語る酒

13/12/16 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:937

深夜1時になった。横浜市桜木町の駅から少し離れた場所で、ラーメン屋台の提灯に灯りをつけた。この辺りはあまり人通りが少ないため、前の道路を通り過ぎる人影は少ない。
石川光男はこの場所でラーメン屋台をやり始めて40年が過ぎていた。
以前は石川の屋台と隣接するように、4つの屋台が店を深夜に開いていたが、横浜市が屋台禁止条例を制定した結果、この場所で屋台を深夜に開いているのは石川の店だけになっ・・・

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快速トラック野郎物語

13/12/09 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:1137

(はじめに)
先日、私はユーチューブで『長距離トラック運転手の過酷な労働』というタイトルの動画を観ました。その動画の内容の一部を参考にして、この作品を書き上げました。
決して動画に映っていた方々を誹謗中傷する意図があって書き上げたつもりはありません。
これを読んで不愉快な思いをされた方がいましたら、誠に申し訳ありません。ただ、どうしてもこの題材で書いてみたいと思い書かせて頂きまし・・・

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オレだよオレ

13/12/02 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:909

相模湖で手漕ぎボートに乗った。妻の明恵と娘の真奈美は満面の笑みでボートに乗っている。私はボートをさらに漕いで、船着場からどんどん離れて行った。
12月の澄んだ空は青空が広がり、ボートを漕ぎながら私は目を瞑った。
鳥のサエズリが心を静め、遠くから吹いてくるそよ風が心を浄化するようだった。
突然、風が強く頬を撫でた。明恵と真奈美が悲鳴をあげた。私は心配ないよと思いつつ、ゆっくりと目を・・・

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放送法 第64条

13/11/25 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:1062

 放送法 第64条
 
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。
ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置し・・・

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真夏の悪魔の実

13/11/22 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:1017

俺が渡辺哲也と出会ったのは、入学した高校で同じクラスになったからだ。
俺の後ろの席だった哲也は、高校生なのに陰険な目をしていた。入学式当日にコイツを初めて見た時は、近寄りがたい奴に思えた。
翌週の月曜日、授業が始まると後ろから消しゴムのカスが何度も飛んできて、俺の肩と机をカスだらけにした。俺はマジでブチ切れそうになったけど、クラスの悪い奴らに変に因縁をつけられるのを恐れて、我慢した。<・・・

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12月の初雪Tokyo

13/11/19 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:945

「もしもし、明日の有明でのピッキングのお仕事はまだ受け付けてますか?」
『もう定員がいっぱいになりました』
「そうですか。分かりました」
望月友則は公衆電話の受話器を元に戻し、また携帯電話の画面をしばらく見た後、10円玉を緑の公衆電話に入れダイヤルを押した。
『はい、イーストタートルサービスです』
「もしもし、明日の新木場での倉庫内作業の仕事はまだ受け付けてますか?」・・・

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来世は家畜になる兄弟

13/11/10 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1039

車のフロントガラスに雪がポツポツと当たってはすぐに溶けた。
信号で止まるたびに、豊橋慎吾は太ももの上においた左手の拳に力をこめた。
早く着きたかった。早く終わりにしたかった。
自分を虐待した両親を殺すのを……。
慎吾と兄の光也は、幼いころから父と母に虐待されて育った。食事はろくな物を食べさせてもらえす、食べれない日も日常茶飯事だった。とくに父はパチンコで負けて帰ってくると、・・・

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馬鹿

13/10/01 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:1116

肌寒い夜気が長袖セーターを身にまとった肌を冷やした。
半年振りに家族が暮らす家へと続く道を歩いていると、これで何もかもが終わった。これからは新しい人生が始まるのだと麻生宅見は思った。
赤く染まった満月が家々の屋根と道路を薄く照らしていた。
『麻生』と書かれた表札の前に立つと、右手の人差指でそれをなぞってみた。明かりが窓からもれる家の中からは、2人の子供達の声が外にまで響いていた。・・・

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悪徳商法

13/09/10 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1198

原宿竹下通り沿いに建つカフェテラスで、野見山健吾は運ばれてきたアイスコーヒーにミルクと砂糖をいれスプーンでかき混ぜた。
平日とはいえ竹下通りは人の流れが途切れることなく行き来し、そんな人々を野見山は欠伸をしながら退屈そうに眺めていた。
「野見山さん、お待たせしました」
後ろから声をかけられた野見山は、瞬時に顔に笑みを湛えて席から立ち上がり、後ろを振り向いた。
「京子さんこん・・・

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一瞬のシャッターチャンスを待つ2人

13/08/28 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1345

水しぶきがレンズを濡らした。
萩野和弘は屈んでリュックからレンズタオルを取り出した。
「もうそろそろだぞ。シャッターチャンスは一瞬だぞ」
水木昭一が三脚にセットしたカメラのファインダーを覗きながら言った。
風が頬を掠り、木々の擦れあう音が圧倒的な滝の音とともに聞こえてきた。
萩野和弘は固唾を呑んで、三脚にセットしたデジタル一眼レフカメラのファインダーを覗きこんだ。

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役者道

13/08/13 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1586

 新宿駅東口の改札を抜けるとムッとした蒸し暑い大気に体が一瞬にして包まれた。夏の装いをした人々が東京の中心とも言える新宿の街を、あたかも生まれ育った故郷のごとく颯爽と行き来していた。
 奥田哲春は腕時計で時間を気にしながら、足早に新宿駅東口から歌舞伎町に向かった。昨晩、奥田が所属するタレント事務所の社長から「明日の朝10時に事務所に来るように」と電話があった。電話を切ったあと、仕事が舞い込ん・・・

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神へ怒りをぶつける男

13/07/29 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:1375

 村の真田神社の境内で、白い装束を身にまとった神主による五穀豊穣祈願祭が村人の見つめる中、終わろうとしていた。
「皆様、御祭神であります大神様に今年の豊作を祈念させて頂きました。今年もきっと、大神様が豊作を皆様にお与えくれるでしょう」そう神主は言って、集まった村人に一礼した。
 村に建つ普段はひっそりと佇む真田神社の境内の片隅では、村の主婦方が作った豚汁が大きな鍋で煮だって、湯気ととも・・・

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サイゴのノゾミ

13/07/15 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:1112

 正次郎が玄関を出ようとすると、妻の菊子が後ろから呼び止めた。正次郎は後ろを振り返らずに、黙っていつもの道具を持って玄関を出て行った。
 風邪をこじらせて緊急入院したのは3週間前で、3日前に病院から自宅に帰ってきたが、まだ完全に病気は回復していなかった。菊子はそんな正次郎の体を心配して池に行くのを止めているのだが、そんな妻の気持ちを知ってか知らずか正次郎は朝食を食べ終わるといつものごとく、長・・・

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心の天秤

13/07/01 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1910

 高木正人は携帯電話のボタンを押し電話を掛けた。深夜0時過ぎの公園には人の姿はなく、耳に当てた携帯電話の発信音が2回3回鳴り響くが、相手が出る様子はなかった。
 高木は電話を切り、虚しく発光する液晶画面を見つめたまま小さくため息を吐いた。7月初旬の夜気は少し蒸し暑さを残していて、昼間の職場での出来事をいつまでも引きずらせるようだった。
「高木は無慈悲な奴だよな。俺は課長の立場を理解した・・・

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曇り空

13/06/17 コメント:3件 ポテトチップス 閲覧数:1376

 サンドイッチをほお張っていると電話が鳴った。国武正志はコーヒーを口に含み胃に流しいれ慌てて電話に出た。
 「はい、シャーロック探偵事務所です」
 『坂下です。すみません社長、尾行に失敗してしまいました』
 「また? これで何度目だよ」
 『すみません。ターゲットが喫茶店に入ったのでしばらく出てこないだろうと思って、コンビニのトイレに入ったんです。どうやらその間にターゲット・・・

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真っ平な人生

13/06/09 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:1847

雨は上がり、雲の隙間から星が顔を覗かせ始めた。久世卓巳は閉店間近のマクドナルドの前の路上に立って、神経質に近くに立つ複数の男達を横目で気にした。
『餌取り』は縄張り争いがあって、ホームレスになったばかりの新顔には、容赦なくホームレスから餌取りを邪魔される。昨日も、別の閉店後の飲食店で餌取りを待っていたら、ボロボロの汚れた服装にどす黒い顔をした複数のホームレスに、餌取りを邪魔され食料を得ること・・・

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チャイニーズ・ヌードル

13/05/21 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:1386

「はい、どーも! チャイニーズ・ヌードルです。皆さん、僕たちのこと知らないと思いますので、簡単に自己紹介すると、僕がツッコミ担当の板橋で、僕の隣にいるこの金髪の彼がボケ担当の和山と言います。僕たちは高校時代の同級生なんです。おい、オマエもなんか言えよ!」
「客少ないな」
「それ言っちゃ駄目だろ。ごめんなさいね、お客さん。和山君はいつもこんな調子なんです」
15分間の漫才が終わり内・・・

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ランナー

13/04/27 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:1849

ポツポツと雨が降り出してきたようだ。
どこからか子供の泣き声も聞こえてくる。
先ほどから激しい睡魔が襲ってきて意識はしだいに深い深い闇の中に沈もうとしている。
なんとか目を開けて暗い部屋の中に目を向けると、テーブルの上に睡眠薬の入っていたビンと少し水が残っているコップが置いてある。
川岸昭一は手を伸ばしてコップに入っている水を飲もうとしたが、途中で手をだらりとフローリングの・・・

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(呪上巻) ・ (呪下巻)

13/04/08 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1585

『私は明日、自殺します。彼に裏切られた私は、もう生きる希望が持てません。だから明日、自殺します。彼が憎くてしかたがありません。私は悪霊となって、彼を呪います。 
2001年 6月8日 田中美幸』


墨田図書館の入り口を抜けると本の匂いがたちこめ、柿野亮平は大きく鼻から空気を吸った。子供の頃から図書館の匂いが何よりも好きだった。
大学へ進学するため東京に上京したのは今・・・

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精神を病んだ青年

13/03/16 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:1501

 やけに暖かい夜だった。気持ちが良い暖かさというよりは、昼間の太陽の熱がアスファルトにこもり、地面から立ち昇る嫌な暖かさだった。
 渡辺直樹は店で牛丼を食べ終え店から出た。
 深夜0時を過ぎた駅前商店街は、牛丼屋とレンタルビデオ店だけがまだ営業をしていた。
 渡辺は商店街を進みながら大きく欠伸をした。ここ数日、残業が続いていたせいで、寝不足気味だった。
 自宅アパートに着い・・・

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クラブホールディング

13/03/04 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1444

 アパートの階段を矢田誠司は重たい気持ちで一歩一歩上った。
 分厚い雲が、月と星を遮っていた。
 「ただいま……」と、玄関を開けて言ったが返事は返ってこない。靴を脱ぎ、狭く短い廊下を進むと、居間に妻の美香子と4歳の奈菜美がテレビを観ていた。
 「ただいま……」と改めて小さく言うが、いつものごとく返事は返ってこない。
 美香子がテレビに顔を向けたまま、誠司に掌を見せた。誠司は・・・

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着付け司

13/02/16 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1360

愛車のスバル・レガシィのハンドルを握り、辺見拓は東京JCTから東名高速道路にのった。
照りつける太陽が眩しく、ハンドルを握りながらもう片方の手で黒いサングラスをかけた。
お盆の時期は10日前に過ぎていたが、会社の都合で今日から1週間のお盆休みをもらった。
スピードメーターの針が110キロを示す。
辺見拓は車内の冷房を切り、運転席側の窓と助手席側の窓を開けた。
吹き込ん・・・

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飛行機雲の下で教習

13/02/01 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:2400

空を見上げると飛行機が一機、南に向かって飛んでいた。
2月の澄み切った青空に、一筋の飛行機雲が描かれた。
小岩隆弘は、欠伸をしながら『クボタ フォークリフト教習所』の門をくぐった。
受付で名前を伝えた後、指示された第一教室の扉を開けた。
「おはようございます。お名前は?」
白髪混じりの男が苛立たしげに聞いてきた。
教室の席には、7名の受講者が座っていた。
・・・

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面影

13/01/17 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1518

教室のドアが開き、金子先生が教科書を片手に持って入って来た。
教室の窓からは、午後の気持ちのよい日差しが差し込んでいて、直子は手の甲で目を擦って眠気を紛らわした。
グラウンドでは、隣のクラスの3年4組の生徒達が準備体操を始めているところだった。
「はい、授業を始めますよ」
クラスの生徒達は皆、金子先生の号令を無視して、会話に夢中の者や机に突っ伏して仮眠中の者ばかりだった。<・・・

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赤い高級スポーツカー

12/12/24 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1591

バス停前の食堂でメンチカツ定食を食べ終えた島村昭人は、店の主人に680円を支払って店を出た。
12月の青空は澄んでいて、滋賀県の山間にあるこの街は、東京では決して味わうことの出来ない落ち着いた時間を、肌や目、耳を通して感じることができた。
島村はしばし目を瞑り、耳を澄ませた。
遠くの方で、鳥の鳴き声や水の流れる音が聞こえる。
それに、自分の心臓の音までが聞こえてくるかのよう・・・

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末裔の赤い血

12/12/21 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1421

通っている中学が冬休みに入り、僕は久方ぶりに平穏な生活を送っている。
このまま冬休みがずっと続いてくれればいいが、時の流れを止められる人間はどこにもいない。
だから悩んでいるのだ。
なぜなら冬休みが終われば、僕はどちらかを選ばなくてはいけない。
中学2年の僕にとっては、とても決めかねる選択だ。
武田君か上杉君かにだ……。

半年前、僕が通う台東区さくら中学・・・

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悪人のたどり着く場所

12/12/18 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1614

2012年が今日で終わろうとしていた。
明日からは2013年が始まる。
先ほど父は、近所のドラッグストアーに胃薬を買いに出かけた。
母も最近は鬱気味な毎日を送っていた。
毎年、正月が近づくと父と母は体調がおかしくなる。
こんな体に異変が起きる正月が始まったのは、5年前からだ。
そう、私の兄が帰郷するようになったのが原因だ。

私と兄は10歳も年が離れ・・・

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零れる2人の涙

12/11/13 コメント:3件 ポテトチップス 閲覧数:2477

シトシトと降る雨が傘にぶつかり音を立て、遠くの方からは酔っ払いと思わしき複数の男性の甲高い叫び声が聞こえていた。
達也は足を止めて後ろを振り返ると、美鈴が俯き気味で後ろをついて来ていた。
美鈴の後方では、雨の中でも2012年のクリスマスを楽しもうとするカップルが、手を固く繋いで繁華街の方に歩く後ろ姿が見えた。
「美鈴、ちゃんと傘させよ」
髪と肩が雨で濡れた美鈴が顔を上げて頷・・・

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北風公園での決戦

12/11/10 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1452

文太は全身が映る鏡で服装と髪型を確かめた。
硬めにセットしたリーゼントが彼のトレードマークだった。
右手の手でジーンズの尻ポケットに手を当てると、ナイフの感触が手に伝わり、思わずニヤリと笑った。

部屋を出て玄関に行くと、リーゼント姿の元太が靴を履いているところだった。
「おう、元太兄ちゃん、こんな時間から出かけるのか?」
「文太こそ、こんな時間にどこに出かける・・・

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灯篭崖の夜

12/11/02 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1566

今朝の朝刊を開くと、また今日も自殺の記事が載っていた。
詳しく読み進めると、またあの崖から70歳の男性が投身自殺をしたらしかった。
桑田邦彦はマグカップに入ったコーヒーを啜りながら、きっと昨夜に来店したあの初老の男性だろうと思い、やり切れなさに口の中が苦く感じた。
もう何人目だろうかと思った。
あの店をオープンしたのが5年前の夏の事だから、もう10人以上は超えているだろう。・・・

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青あざの店長

12/10/28 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1184

「亀田君、明日から夜勤で働いてもらえないかな?」
「夜勤ですか?」
持田店長が頭をかきながら俺に言った。
「夜勤の田中君が今日で辞めちゃうんだよ」
「何かあったんですか?」
「うん……」と言ったきり店長はその後を話そうとしない。
今月に入って夜勤のバイトが2人すでに辞めていた。田中というバイトは、先週から夜勤のバイトで雇われた新人だった。
俺が勤務する24・・・

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裕福な少年

12/10/20 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:1522

マンション管理人室の電話が鳴った。
コーヒーを飲もうと薬缶に火をかけていた黒津庄治は、3回目の呼び出し音で受話器をとった。
もうすぐ11月に入ろうとしている今の時期は、寒さが身にしみる。
長年、九州で暮らしていた黒津にとって、この時期の東京の寒さはどうにも体が適応できない。
おかげて先週から体調を崩し、今も微熱がある。
54歳の黒津は、3ヶ月前の8月の半ばに東京に上京・・・

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第二の人生 

12/10/10 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1393

「母さん! こんな時間にどこ行く気だよ!」
「うるさいわね! 母さんの自由でしょう!」
両手を広げ制止させようとする俺の手を、母は振り切って玄関から外に出て行った。
ドアの閉まる音が悲しく響き、閉まる寸前に夜気の空気が入りこんできて、怒りに震える俺の体を一瞬包んだ。

右手の拳を強く握り、このやり切れない怒りを壁にぶつけた。
「ドン!」
手に痛みが伝わって・・・

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逃亡

12/10/07 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1440

六畳一間の部屋は悪臭が漂い、部屋の壁紙はいたる所にシミが浮き出ている。
フローリングの片隅には布団が年中敷きっぱなしで、その上で田所茂光が仰向けにタバコをくわえて横たわっていた。
タバコの先から白い煙が天井に昇っている。
田所茂光が横たわる布団のすぐ側には、小さなカゴの中で1匹の白い毛をしたハムスターが、絶えず動き回っていた。
まるで田所を怖がり、隙があればこのカゴを抜け出・・・

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天国と地獄

12/08/13 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1547

3本目のカップ酒を飲み干した。
4本目のカップ酒を飲もうと、手をカップに伸ばしかけて止めた。
いつまでも、グズグズしていたら決心した心が折れてしまう。
部屋の蛍光灯は1ヵ月近く前に寿命が切れてしまい、それからは蛍光灯を点けない夜を春樹と2人で過ごした。
以外に月明かりは明るい。
六畳間の部屋の隅で、小学4年生の春樹が膝を抱えて畳の上に座っている。
俯く顔に前髪が・・・

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第3回道路工事オリンピック

12/08/10 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:1461

1時間前に空からポツポツと雨が落ちてきた時には、大会関係者や出場選手、さらに応援に来ていた誰もが、大会の中止にヒヤヒヤした。
雨はすぐに止み、いま上空を見上げると眩しくて目を開けられないほど、雲ひとつない青空が広がっていた。
喉が渇いた私はペットボトルの水を口に含み、ゆっくりと喉に飲み込んだ。
選手の緊張感が移るのか、すぐに口の中が渇く。
パイプ椅子が並べられた観客席には、・・・

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馬鹿キャプテン対決

12/08/07 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1439

野球部の部室で、2年生のキャプテン大場大吉は、多賀弘明と水野純と一緒にタバコを吸っていた。
水野純が、低い鼻の穴から煙を吐き出しながら言った。
「キャプテン、練習の後の一服は最高っすね」
「そうだな。これのために練習しているようなものだからな」
「キキキ!」と、コオロギの泣き声のような笑い声をあげて多賀弘明が笑った。
「キャプテン、来年こそは俺達も甲子園に出場できたら・・・

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月兎のしもべ

12/08/03 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:1634

5日前に都内で起きた殺人事件は、容疑者の自首という結末で終止符をうった。
テレビニュースでもこの事件は取り上げられ、コメンテーターのタレントの女性は、「物騒な世の中になりましたわね。最近の若者達は、一体どうしちゃったのですかね」と、溜め息と苦渋の表情で言った。
テレビを消した俺は今朝の新聞を広げ、何度も繰り返し読んだ事件の記事を、改めて読み返した。
『5日前に起きた、葛飾区立東第・・・

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人事だと思うなよ

12/08/01 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1747

出入り口に吊り下げている風鈴が、キーン、キーンと鳴った。
「おう、風が出てきたな」
紺の作業ズボンに、白のU首シャツを着た竹中源吉が、自転車のパンク修理をしながら出入り口を見て言った。
30分程前に、中年の女性が自転車を押して店にやって来た。タイヤがパンクしたので直して下さいと言われ、直るまでの間、近くのスーパーで買い物をしてくると。
店の棚の上に置いたラジオから懐かしい曲・・・

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夢でもいいから

12/07/30 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1621

白鳥直美と窓際のテーブルに向かい合って座った。
冷房の効いた店内には、制服は違うが同じ高校生が何人か、中央のテーブルや隅のテーブルに友人達と一緒に座って、ハンバーガーを食べていた。
俺はダブルチーズバーガーを大口を開けて齧りつきながら、白鳥直美の話を聞いていた。
「とうとう来週だね」
「ん?」
「甲子園大会」。直美は笑みを浮かべたその口元でストローを咥え、マックシェイ・・・

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死骸

12/07/30 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1512

子供や大人達の歓声が外まで聞えていた。
福島光一は、建物の周りの水路を目を凝らして見て歩いたが、この日も見つける事は出来なかった。


荒川からほど近いこの場所に、大型商業施設プールの建設の話が持ち上がったのは、今から1年半前の事。
この大型商業施設プールが出来る前は、小川の流れる荒地だった。
この土地の地権者と大型商業施設プールを運営しようとする企業との話し合・・・

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18・44メートル

12/07/23 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:1717

目を開けると白い天井が見えた。ここわ何処だ? と思い、体を起そうと思ったが体が動かない。なぜだ? と呆然とした。
丁度その時、ドアが開く音がして
「佐々木さん、意識が戻ったのね!よかったわ。今、先生を呼んでくるわ」と女性が言って、ドアが閉まる音がした。
意識が戻ったのね? 先生を呼んでくるわ? 一体、何の事なのか佐々木聖一は天井の一点を見つめながら考えた。

そうか!・・・

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町 営 水 族 館

12/07/22 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1312

「おい、田中! それが終わったらこれ倉庫に運べ!」
「あっ、はい」
「ホント、オマエはとろいよな。テキパキ動けよ」
馬場直樹が舌打ちを鳴らし、倉庫から出て行った。田中は、小さく胸につかえたモヤモヤとした息を吐いた。
青いパレットの上に、三段重ねで飲料水のケースを積み終えた。額からは大粒の汗が流れ落ち、首に下げたタオルで汗を拭った。
真夏の倉庫内に冷房設備などはなく、連・・・

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目覚めぬ 悪夢

12/07/21 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1519

川沿いの道路を武部と竹下と一緒に、西に向かって全力で走った。後ろを振り返る俺に、武部が「いいから走れ!」と怒鳴った。
俺達3人は、夜空に輝く星ぼしから身を隠すように、川に架かった橋の下に隠れた。
満月の月の光が橋の下まで差していて、顔を歪めながら荒い呼吸をしている武部の額に浮んだ汗を、照らしていた。
砂の上に胡坐をかいて、うな垂れている竹下に視線を向けると、目を瞑って必死に何かを・・・

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じ て ん 車

12/07/17 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:1506

「お父さん、新しい自転車買ってよ」
「いま乗ってる自転車、まだ乗れるだろ」
「だって、浩司君も弘田君もみんな、新しいマウンテンバイクに乗ってるんだよ」
智樹はソフトクリームを舌で舐めながら言った。
公園の噴水は、水しぶきを辺りに吹き上げながら、7月の青空に向け勢いよく昇っていた。
そこから発生した小さな7色の虹は、32年前の虹を急に思い出させ、4年前に病気で亡くなった・・・

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群馬の虎

12/07/04 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1783

初夏の陽射しが乾いたアスファルトを照らし、遠くから吹いてくる微風には生暖かい空気に混じって、東京に住む勝ち誇った人間の咆哮や、反対に負けた人間の喚き悲しむ遠吠えが聞えてくるかのようだ。
三科亮一は腕時計に目をやった。
待ち合わせ時間を5分過ぎていたが、いつもの事だと諦め上野駅構内の売店の前で立って待った。
背負っている青のリュックには、3日分の衣服と洗面用具などが詰め込まれていて・・・

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12/06/10 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1850

 風呂から上がった草野正人は、冷蔵庫から缶ビールを1本取り出し、部屋の中央に置いてある大きめなソファーに腰を下ろした。
 プルタブを開け、缶ビールを呷った。
 今日で俺も40歳になったのかと、時の経つ早さに驚きと寂しさを感じた。
 しみじみと缶ビールを飲み、3本程空にすると、ようやく酔いも回ってきて、心の奥深くにしまってある、大切な思い出が入っている数ある壷の中から、ひときわ鮮や・・・

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絶品とんかつ

12/06/10 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1713

 携帯電話の呼び出し音が鳴り出したらしく、隣で寝ていた真知枝が私の体を激しく揺すった。
 「あなた電話よ!」
 寝室の暗闇の中、目覚まし時計で時間を確認すると午前2時を少しばかり過ぎていた。
 「あなた、小次郎社長からじゃないの?」
 ここ最近、深夜に小次郎社長から急な電話が掛かって来る事が多かった。
 雑誌の刊行日が近づいていたからであったが、深夜に電話が掛かってき・・・

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