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草愛やし美さん

時空文学コンテスト開催100回、おめでとうございます。思えば、初めて私が、こちらに投稿したのは2012年5月のこと、もう4年近く経ったのですね。時空モノガタリさまが、創作の場を与えてくださったお陰で楽しい時間を過ごすことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。 また、拙い私の作品を読んでくださった方々に感謝しております。 やし美というのは本名です、母がつけてくれた名前、生まれた時にラジオから流れていた、島崎藤村作詞の「椰子の実」にちなんで……大好きな名前です。ツイッター:草藍やし美、https://twitter.com/cocosouai 

出没地 大阪あたりから京都、神戸……三都市
趣味 旅行が大好き。
職業 専業主婦
性別 女性
将来の夢 いっぱい食べて飲んでも痩せているっての、いいだろうなあ〜〜
座右の銘 今を生きる  

投稿済みの記事一覧

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私はあの日のお茶を生涯忘れないだろう

16/02/15 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1499

アパートのノブを見た瞬間おかしいと感じた、隙間がある、出る前にちゃんと鍵をかけたはず……だのに開いている、慌ててドアを開けた。いない、太一がいない。

「雨降ってるしパンツはいてへん子は連れていかれへん、お留守番しときなさい。お母さんはそこの若竹市場まで行ってすぐ帰って来るから」
 そう言い聞かせて外へ出たのは三十分ほど前だった。あひるのおまるに腰かけさせた子は相変わらずぐず・・・

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狂人の私が捨てたもの

16/01/31 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1072

気が付いた時、私は一冊の本を抱きしめていた。その頃、私が執心だった文学書だ。船の難破によって打ち寄せられた浜辺にあっても私が落ち着くことができたのはこの本のお陰に相違ない。救命胴衣の下に着ている作業服の胸ポケットから引っ張り出したその本は表紙こそ海水でふやけていたが中はそうでもない。その紙束を私は大事そうに胸に抱く。ここはどこなのかなど私にとってどうでもよいことだ。白い砂浜に波が押し寄せる音だけの・・・

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知らぬが人間

15/12/13 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:842

 ☆アムネ銀河研鑽所☆

「大変、Tゾーン球体からまたもや火柱が上がっているわ、汚染度レベル9って」
「レベル9か、こちらへ飛散しないように単体に防護用ドーム被せるしかないな。ということは、研修に来た聖徒たちの見学は無理か」
「いえ、こういう時の球体を見せることが研修になるはずよ。研鑽創立理念は学ぶこと」
「でも、この球体に未来なんてどう考えても望めないよ。あの194・・・

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今日も磨き続ける

15/11/28 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:874

 夕闇が迫る校舎をおろおろと息子を捜し歩く。旧校舎二階トイレの床で黒い影が蠢いている。
「宗ちゃん!」
「ママ、見てこんなに床がピッカピカ、凄いでしょ綺麗だろ」
「宗ちゃん綺麗にしたね、でももう日が暮れるからお家に帰ろう」
「うん」
 立ち上がった宗太は全身ずぶ濡れ。また掃除を押し付けられ苛められたのだと一目見てわかった。だけど、宗太の顔があまりにも満足そうだったので・・・

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おやじの夢

15/11/16 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:913

 おやじが逝ったのは58、何でそんなに早く逝ったのかわけわからねえ。夢も叶えないで逝っちまった。親父の夢は秘宝館オーナー、俺がちっせい頃から変なお宝と称するもんを押入れに保管していたっけ。中堅商社に勤務していたおやじは世界中あちこちに出張と称して飛んで行き、何やらわけのわからないものを持って帰って来た。

 おやじは趣味は女と豪語するだけあってエロそのものを愛する男だった。口癖はエロは・・・

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曖昧・MEの京都ドタバタ珍道中

15/10/31 コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:931

「ミイちょっと待って、愛の奴遅いわ」
「ナニデッカ、舞?」
「京都人育ちの愛は歩くのもまったりみたいやなあ」
「マッタリマース」
「ミイ、愛、ごめんねえうち坂道や階段は苦手やねん」
 ミイナ通称ミイはアメリカからやってきた留学生。日本文化を学びに大阪に住む私、舞の家にやってきて半年。私の家がホームステイを受け入れたのは初めて、海外からのお客さんにうまく付き合えるかと心・・・

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伝家の宝刀

15/10/19 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:883

 今夜も眠りに落ちて2時間もしないのに目が覚めた。原因は尿意を催したからだ。何となく出そうに感じ布団の中でもぞもぞと動きながら俺の下半身に伺いを立てる。「おい、ほんとに出るのか? また気のせいじゃないだろうなあ、いい加減、嘘つくのはやめろよ」 静かな夜の帳の中、俺と下半身だけの語らいは一方的に俺ばかりの疑問符で満ちるだけだ。今夜もあえなく会話成立せずの俺はトイレに立つ。「出るかもしれないじゃないか・・・

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雪塩奇譚

15/10/05 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1018

 宮古(ミヤコ)」という地名は、元は「ミヤク」であったと考えられている。大昔に渡来した古人が住み着いた島だったそうな。島の北側の海域は、八重干瀬(ヤビジ、ヤエビシ)と呼ばれる浅瀬が広がっている。宮古島の面積の3分の1にも及ぶこの浅瀬は、年に一度の大潮の干潮時に海水が引くと、珊瑚でできた広大な島が浮き上がってきたかのように見える。美しい月の夜、珊瑚礁に住む色とりどりの魚達がそわそわし出すとやがて奇跡・・・

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素敵なお宝が空を飛ぶ島

15/10/04 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:868

 男がこの南国の島に一年の任期を受け勤務し半年が経った。男にとって、紺碧の空と海に癒されるここでの生活は今まで体験したことがない充実したものだった。
男は5月だというのに3日前に南太平洋上に発生した台風のことを気にかけていた。
「急がなくては、また空港が不能になる」
 男は集荷業務に邁進していた。ここ宮古島の全エリアを網羅して毎日集荷、仕分け、宮古島空港からの配送とほとんどの業務・・・

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僕もいっぱい勉強して、アニメを描くお仕事をしたいと思います

15/09/19 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:900

 僕のママは壊れたアンドロイドなんだ。パパは気づいてないけど僕はゼッタイのゼッタイだと思ってる。だって、同じことばっか言ってるもん。
「匠海、宿題はしたの! またゲームしている、ダメじゃない怠けるから成績悪いのよ、頑張らないと高校に行けないわ。良い学校いけないと困るのはあなたよ……これだけ言ってもわからないの」
 わかってるママ。僕、今やろうって思ってたんだよ。ああ、ママは壊れたアンド・・・

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神輿に乗るには覚悟がいるのじゃ

15/09/07 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:974

「困った、ああ、困ったことよ」
「どうされました、阿歌塁比売神(あかるひめのかみ)様」
「爺か、娘が祭りを嫌じゃと駄々をこねておるのじゃ……」
「祭りが嫌とは一大事にござる。なぜに阿歌涙比売神さまは祭りがお嫌なのでしょうか。勇壮な祭りで素晴らしいではござらぬか」
「怖いと申すのじゃ」
「怖いとは?」
「神輿に乗って振り回されたり落されたりには耐えられないと言うの・・・

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碧落の村

15/09/07 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:972

「かっちゃん、久しぶりなあ」
「おう、来たな花」
「祭りだもん、絶対来るよ」
「勝二、一年振りだね」
「おう、和子か。守も来てっど」
「守はずっとここぞ」
「だったなあ」
「ふふふ」
「楽しみで寝られんごったど」
「うふふ」

 ◇

 山道に車が差し掛かった。台風一過、まるで湖の底へ引き込まれていくような碧落が続く細い・・・

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僕のことかい? とりあえず、文学好きな青年とでも名乗っておくよ

15/08/24 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1206

 人間の脳は僅かしか使われていないと思われているが、それは過去のことらしい。だが、イマイチ解明されていなくて謎だらけなんだとか。脳が発火するような刹那があるはずと僕は思っている。だって、時々特殊な能力を持つ人が現れるからだ。
 通常は先天的な脳障害や後天的な事故による欠損でこのバランスが崩れると、稀に特定の能力を司る領域が肥大する場合があると考えられている。先天的なものは「サヴァン症候群」と・・・

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小さな宇宙

15/08/20 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1344

 幼い頃、ばあちゃんの家で僕は宇宙に出会った。

 その日、ばあちゃんは田舎から上京してきた。だけど、いつものように大根も白菜も背中に背負っていない。僕はばあちゃんは必ず野菜のリュックを背負ってくる人だと思っていたので不思議で仕方なかった。きっとリュックを忘れてしまったのだろう。
 大勢の知らない人が黒い服を着てやってきた。ばあちゃんも黒い着物を着ている。たくさんのお線香がともさ・・・

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鹿は鹿でなくなった

15/08/10 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1078

 人間はその罠を仕掛けるために、森林を伐採した。大きな空地が山中だというのにできていった。円形の禿山状の傾斜ができあがった。人間はその縁の周りすべてに大きく頑丈な鉄製の罠を埋めていく。その中心に浅い穴を掘り杭が打たれ鎖が繋がれた。やがて一頭の鹿が連れてこられ、その鎖に繋がれると人間はその足元を泥で覆い鎖や杭を隠し笑い声を残し下山していった。
 鹿は山中でもがいた。足元が土中で固定されていて動・・・

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父に守られて生きていく

15/08/10 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1043

 あの日は、亡き父の遺品整理をした帰りだった。平日の夕方、郊外の私鉄は空いている。「あなた劇場で会った方よね」 隣に腰かけた白い花柄の紺色ワンピを着た若い女性に話しかけられた。
「ほらS小劇場の五月公演『非凡』」
「えっあなたも行かれたの?」
「主演の橘さん演技巧いね」
 橘は私の大好きな役者だ。すぐに私達は旧知の友達のように打ち解けて話していた。転職の準備期間で休職中だか・・・

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見えない大文字の山

15/07/27 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:912

 山は炎に包まれたようにしか見えなかった。あまりにも近づくと真実が何なのか見えなくなる。一度でも遠目から眺めれば容易く姿を想像できるというのに。昨日まで胎内で同化していたはずの子が離れたとたん母は逝ってしまった。その子に母の真の姿を想像することは難しく、そんな風にその子は育つしかなかった。
 京都左京のそこから大文字山が迫る。年数カ月間を除き、樹木が伐採されたようにしか見えない傾斜道にお盆の・・・

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美しすぎると罪なの? でも地獄はイヤ

15/07/26 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:1074

「あの人は下! 楽勝、私は美しい」
「前から来る女、結構綺麗。でも若い分、私が上よ」
 私は町を歩く時に女を見て自分と比べてしまう。相手の容姿が自分より上か下か判定する癖がある。勝ってると優越感に浸れる。お馬鹿な私は容姿で勝つしかない、ってのは言い訳かもね。他人には言えないことだけどみなやってると思ってる。これがばれたら美人を鼻にかけ嫌な奴って思われるだろうけど、言わないだけで美人はみ・・・

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磨かれたトイレ

15/07/12 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:2313

 夜中、俺はトイレに立った。年を取ったせいか近頃よく夜中に目が覚める。扉を開け一歩踏み出したとたん足を掬われた。床がない、うわあー落ちる。地面に叩き付けられて死ぬと固く目を瞑った。
 だが、不思議なことにゆっくりと足が地に着いた。見渡す限りの草原だ。どこだ、ここは?呟きはすぐに悲鳴に変わった。象の大群がこちらへ向かって来る。逃げようとしたが足がもつれ倒れた。けたたましい象の雄叫びが鳴り響く、・・・

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昭和日記より 大掃除

15/07/08 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1142

 この日、私達は早朝にたたき起こされた。
「今日は大掃除の日やで、はよ起きて顔洗い」 母の声が響く。普段は夏休みなので寝坊しているがそれでは間に合わないのだ。のろのろ起き出しご飯と糠漬け(どぼ漬け)をかきこむと、生活の場である六畳一間にある家財道具一式を裏庭に運び出すことから始める。母は大掃除しながら開店準備を始める。へっついさんにお釜をかけ右でうどんの出し汁、左でご飯を炊く。かつお節を入れ・・・

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エッセイ ウルフパークを訪れて

15/06/29 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1290

 アメリカのインディアナ州、ラファイエットのバトルフィールドにあるウルフパークには大勢のツアー客が詰めかけていた。今から13年ほど前に私が訪問したパークは、オオカミの整体研究を目的として建てられた施設だ。入り口でエンカウンターツアーの申し込みをする。時間になるとツアーガイドがやってきて客たちを桟敷になった木のベンチに座らせていく。ベンチ前には、金網で囲われたかなり広い草原が広がり何十頭かのオオカミ・・・

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こちらFMZOO

15/06/29 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1090

 じぇいおうゆうせすおう、こちらはえふえむずう、JOUSOこちらはFMZOO、世界各国の動物園を繋いで毎日楽しい話題と音楽を世界中に発信しています。20**年7月6日、今朝のFMZOOは、USO38よりお送りしています。ご案内はわたくしクレイン鶴、本日の通訳は5代目ターザンさんにお願いしています」
「おはようございます。全世界のみなさん、5代目ターザンです、よろしくお願いします」
「5・・・

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G線上のアリアはあるのか?

15/06/17 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:985

「お待たせしました」
 令嬢が話しかけるのに全く気づかなかった、ボディーガード失格かも。真摯な顔で苦笑いを隠しながら「お車の用意できていますよ」と答えた。何しろ令嬢なのだから相手がまだ小学生でも大人の対応をしなければと緊張していたはずだった。だが、頭の中はさっき地下駐車場での争いの時に男が吐いた言葉「新宿バッハ」のことでいっぱいだったのだ。

「私、バッハの練習曲は苦手なのケイジ・・・

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お蔭参りしたシロ

15/06/15 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1009

 なめくじ長屋の熊さん、朝早くから何やらゴソゴソしてると思ったら、なんと旅支度していたんだ。人間一生一度はお伊勢さんに参りに行くのが習わし。けどよ、お種ばあさんはいまだに伊勢参りできていない。死ぬまでにお蔭参りできなきゃ死んでも死にきれねぇっていうのに、つれの大工の茂作と死に別れてから心の臓が弱っちまって臥せっている。近頃じゃめっきり弱っちまって心残りで死に切れねぇってうわ言まで言い出す始末だ。隣・・・

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浮世絵の謎

15/06/12 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1534

 その子はまったく不思議な子だった。

 歌川家お抱え庭師佐平が満開の桜の枝に引っ掛かっている銀色の異様な物体を見つけたのは春爛漫の文化文政の頃だった。佐平は楕円の形状からそれを行李だろうと考えたが、見たこともない物体を怪しみ庭で燃やそうとしたが、赤子の泣き声に慌てて火中より拾い上げたのがその子だった。歌川家の奥方は捨て子を不憫と思い、役人に引き渡さず子供のいない佐平に託した。佐勘と名・・・

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阿弥陀籤を引いた男

15/06/01 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1072

 デジャブ? これって前にもあったか? カーステレオのCDをオンにする、大好きな曲が流れ出す。高速は今日は普段より流れているとスマホナビで調べて知っているから気が楽だ。家から隣県の取引先までは慣れた道だ。時間はまだまだある。新しく就任した部署の奴に会うため、今日は一日潰れそうだ。俺にとってはどうでもいいことだけど、会社には大事なこと。まあ、挨拶するだけで役目が終わるのだからあくせくして営業するより・・・

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クマクマペンペンって何者!?

15/05/31 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1018

 くそ、あんなにどならなくてもよさそうなものを、上司の狭井め! 明日のプレゼンの原稿提出が今朝の十時で時間ぎれだったなんて……、明日なんだから夕方でもかまわないだろう。書類に常務の判がいるんだったな。そうだよ狭山、お前が正しい、今朝が締切ってこと昨日言った、帰り際にわざわざ俺をつかまえて確認させたよ。わかっているさ、悪いのは俺だ。だけど、俺にも色々あったのさ。
 都合も何も考えずに予定はやっ・・・

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切り身の魚が海を泳ぐ

15/05/18 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1293

「みんな知っていますか、もうすぐ海の日がやってきます。そこで、今日はみんなに海の絵を描いてもらおうと思います」
「センセーイ、ぼく夏休みに外国の大きな船に乗るんだ、海いっぱい見てくるね」
「姉小路君、いいですねえ」
「センセーイ、あたしの家は今年もハワイ行くってママが言ってたよ」
「西園寺さん、ハワイはさぞ海が綺麗でしょうね」
「センセ、センセ、ぼくはプーケットに行く・・・

8

海に生きる男達

15/05/17 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1081

 ノニは、サナと結ばれた日の朝、二人して島の浜に立った。

 波の国がふるさとだとノニは言いきる。「海へ出るのはふるさとに戻ることさ。もし島に帰って来なかったらふるさとに戻ったと思ってくれ」──そう言ったきり男は口を閉ざした。遠い目は海の彼方の更なるものを見つめているのに違いない。だけど、女のサナには何も見えない。
「私はどうすればいいの」
「待っていればいいんだ。大潮、そ・・・

7

今日の海

15/05/16 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1234

静かな海の日

 優しく砂浜を抱きしめては
     戻って行く たぷたぷと
         何度もかいなに 抱き留める
 傷ついているあなたに
     貝殻のおみやげを残していきましょう





嵐の海の日

 激しく岸壁を打ち付ける  
      怒涛の波の中
       
 頭の中・・・

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癒しのブ秘術

15/05/04 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1199

 その後の三匹の子豚がどうしてるか知ってるかな、そこの人間の子供よ? 知らないじゃろう、お前は見るからに夢のない顔をしておる、最近の子供は童話を読まんからそうなるんじゃ。童話の世界のことをわしが教えてやろう。


 三匹豚家の長男はブータレ、次男はブヒブヒ、三男はブッタという名前じゃった。ん? 何か違うってか、細かいことは気にせんことじゃよ、それが世の中を潤滑に進めるわざってもん・・・

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女は呪われ豚になる。

15/05/03 コメント:4件 草愛やし美 閲覧数:1824

 わけわかんない、今朝目覚めると部屋中に異様な臭いが漂っていたの。食べ物の腐敗臭、あたしは飛び起き辺りを見回した。何てことベッドの周りに残飯が散らばっている。誰がこんないたずらをしたの──いえ、これはいたずらなどというものじゃないわ。明らかに誰かの嫌がらせに違いない。あたしは吐き気を覚え慌てて洗面所に走った。鏡の中のあたしの顔を見て再びびっくりした。顔中何かこびりついている、特に口の周りや鼻にべっ・・・

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罪悪の食卓

15/04/20 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1437

 砂を噛んでいるようだと感じ堪らなくなり箸を置いた。幼い頃は食事の時間が待ち遠しかった。母の作るものは何でも美味しく、父も母も祥子達が食べているのを見て笑っていた。食べることは楽しかったはずだった、あの日までは……。肉屋を営む父が祥子を仕事場に連れていったあの日までは、食卓に平和な時間が続くものと信じることができた。
 ◇
 祥子は溜息をついた。テーブルの上に乗っていた夕餉の皿は床に落・・・

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なぜ、その子はテーブルの上で息絶えていたのだろうか?

15/04/20 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:2017

 五月三日、世間がゴールデンウイークで賑やかなその日、幼い姉弟の遺体が発見された。
 なぜか、姉はテーブルの上で絶命しており、弟は姉が乗ったテーブルの足元で蹲るようにして息絶えていた。腐敗が進み悪臭が漂ってきたことから同じアパートの住人が通報し、やってきた警官によって発見された。警官はその凄惨な姿に顔を背けた。

 空っぽに近い冷蔵庫の扉は開けっ放しのままで、床には調味料の瓶や容・・・

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テーブルの上には女、床には男

15/04/18 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1419

 あの日、帰宅した俺をテーブルの上で待っていたものは温かい食事でなくて女だった。
 ◇
 疲れた……今日もようやく終わった、明日も同じことが続くだけ。馬塔の奴、顔も見たくない。俺を見れば上司風吹かせて小言ばかり。{馬塔さんあんたは国立大学出身のお偉い方だろうが、名前も知られていない三流私立大学出の俺があんたと同じことができるわけない}そう喉まで出てきた言葉を無理やり飲み下し何度食道の奥・・・

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新宿文芸バー『ここから』から全てが始まる

15/04/13 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:1272

 息せき切って一人の女が新宿のバー『ここから』に駆け込んできた。マスターは少し驚きカウンターに座った女に水を出した。
「大丈夫、愛ちゃん?」
「ふう、怖かった。ここんとこ誰かにつけられてるみたいで怖いんだ。だけどあたし合気道と剣道やってたから襲った奴コテンパンにやっつけてやる自信あるんだけどね」
 苦笑しながら愛はカウンターに数枚の写真を並べ、隣に座っていた男に話しかけた。

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消えなかったシミ

15/04/06 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1223

 高速を降りしばらく下道を走ると突然棚田が開けてくる。五月とはいえ山頂にはまだ雪が残っており雪を抱いた山並みが青い空に映えて美しい。山肌のあちこちにスキーリフトだろうか、幾つかの黒い鉄塔が散らばって見える。皐月になり燕もやってくる頃、さすがにスキー営業は終わっているのか山は静まり返っている。だが麓の棚田のある村には今朝も数名の子供達の声が響いている。地区毎に集まり集団登校する小学生達の声だ。

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たっくん怪獣なるに決定だー!

15/04/01 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1396

たっくんはピカピッカの一年生。学校の決り事で一年生は近所の上級生が一緒に登校することになっています。学校まではとっても遠いので大変。毎朝、六年生の咲姉がやってきます。
「たっくんもう通学路覚えた早く覚えなきゃダメだよ。横断歩道を渡る時は手を挙げて、その前に車がちゃんと止まったかを確認しなくてはダメ、宿題忘れちゃダメ」
何でもダメダメでつまらないことです。公園の横を通ると花壇に蝶々が飛ん・・・

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アメンボウと水紋

15/03/23 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1292

 水面に浮かぶアメンボウどうすればそんな器用に 
 水の上に乗れるものなのか 穏やかに水紋が広がっていく

「お子さんもご一緒に遊びにいらしてね、うちには子供がいないのでおもちゃがないんだけど良いかしら?」 彼女に子供がいないとその時初めて知った。一花に、唯一嫉妬させるものがあったのだ。
 世の中は不公平だらけだ。高校時代ずっと苛められてきた私に比べ、一花は女王様だった。一・・・

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紙達の夜

15/03/19 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1210

 今夜も、何やら紙達が騒がしい。
 ◇
「今は昔、鶴女房という憐れな物語ありけり。なぜか縁あってこの本の主人公様にお仕えすることはや二年……」
「何、ぶつくさ言ってるのよぉ、聞いてるカー君」
「あっ、はい、聞いていますよ。白雪姫は、毒をもられて死ぬのですぞ、それは苦しいこと、ハタを織っている方が楽かと……」
「そっか、苦しむのはヤダなぁ」
「でしょ、姫といっても・・・

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渋谷がキャベツ畑になった日

15/03/09 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1216

 西暦二千某年、この日の朝、通勤、通学で渋谷へやってきた大勢の人々が目にした光景は奇異なものだった。何と、渋谷のどこもかしこもがキャベツで埋もれていたのだ。スクランブル交差点はキャベツの畝の間を通り抜けて渡らねばならず、109の店内もキャベツで埋め尽くされ、何が何だかわからない店員が洋服を持ってオロオロしているだけ。道玄坂にはキャベツの段々畑が出現。原宿表参道から明治神宮に続く道はにも青々と茂るキ・・・

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最高のトモダチだよ

15/03/05 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1260

 その夜、渋谷駅前に自称、雪像職人三名が集まった。終電でやってきた彼らは小声で合図すると仕事に取り掛かった。
「おい、そっちの雪も全部持って来いよ」
「了解。何やってんだよぉ、お前も土台の雪集めしろよ」
「そうだぞ、早くやっちまわないとポリスでも来たらうるさいぞ」
「札幌雪祭りに匹敵する渋谷雪祭りの開催だ」
 三人は荒い息を吐きながら、大量の雪をせっせとかき集め、銅像・・・

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女武将は刀を包丁に持ち替え戦う

15/02/23 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1296


「やめときな、板前は男の世界だ、苦労するだけだ、念寧はお家に帰ってネンネしときな」そう言ってよく苛められた先輩板前の洋平が前列に座っているのが見えた。手に持つ「念寧ガッツだ!」と書かれた応援プラカードを千切れんばかりに振っている。念寧の目頭が熱くなった。{先輩の厳しい指導のお蔭です}と念寧は心で感謝していた。
「念寧、大賞だ、よくやったな。お前ならできると思っていたよ。だからこそ、厳・・・

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歴史探査機ワカトイ

15/02/21 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1062

 信長が本能寺の変で死んではいないという説がある。その謎を究明するため歴史探査機ワカトイが発進した。──といっても、糸山が自ら研究室と呼んでいる自室アパートの部屋から小さな四角形の機器が消えただけだったが……。
 ワカトイの名称は西暦2003年に打ち上げられた小惑星探査機はやぶさの探索目標であった小惑星イトカワに由来している。小惑星探査のため開発されたはやぶさは、地球の軌道と似た小惑星イトカ・・・

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クラシック音楽流れるうどん屋

15/02/05 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:1941

 昭和30年代、私の実家は京都で大衆食堂を営んでいた。亡き父は大正生まれだったが、死ぬまでクラシック音楽を愛した人だった。毎日ラジオで音楽を聞いていたが、それがレコードプレーヤーやテープレコーダーを使うようになり、やがてアンプを配し左右のラッパに繋ぎステレオで曲を楽しむという本格的なオーディオへと手を伸ばすようになった。臨場感あるクラシック音楽を楽しむためには本物の音を再現するしかないという夢を叶・・・

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蘇るベートーベン

15/01/30 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1531

「セラ、僕はベートーベンを蘇らせるのに成功したんだ」
「嘘、二百五十年も前の人だよ」
「あれほどの才能を持ちながら、五十六歳で死んだベートーベンは、死亡前に難聴の原因を調べるため、自分の解剖を依頼していたのさ。ヨハン・ワグナーという医師がベートーベンの家で解剖をやった、だから、遺体は残ったってことさ」
 ケンは手元にある本を読み始めた。

「1827年、難聴に苦しみ続・・・

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偽密駆空港

15/01/26 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:993

「さあ、並んで、ここに列を作って。私立桜高校の担任、相良です。参加人数十六名よろしくお願いします」
「先生も参加されるので十七名ですよね、領収書は持参されていますか、一人一枚ずつ確認しますので並んでください」
「は・はい、よ・よろしく……」
「固くならないでください、先生が一番緊張なさっているのでは? 先生も初参加でしょうか、宇宙旅行は楽しいですよ」
 そう言うと羽層空港特・・・

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夢を叶える空港

15/01/23 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1916

「じいちゃんは日本の田舎で米作ってます」
 そう言おうと思ったが強張った口から声が出てこない。頭の中が真っ白で、Grandpaしか出てきやしない。とにかく、気持ちをわかってもらわなくては。ここしかないんです──I do my best here!

 つい数日前の僕はニートだった。地方とはいえ、国立大学を卒業したのに何度目かの公務員試験に失敗。そこから悶々とするニートの日々が始ま・・・

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逢瀬の宿にて

15/01/11 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1229

 鄙びた山間にあるその宿で、男と女は互いに隣室の様子を窺っていた。二階の一番奥の部屋に滞在していたのは女、手前の部屋に男が入ったのは女のすぐあとだった。
 観光地から離れ老朽化した宿だが、経営が順調そうなのはこの宿が逢引宿として成り立っていたからだ。都会の煩わしさをから逃れ、誰にも知られない逢瀬を楽しめる宿。宿の一室で、道ならぬ恋に悶える男女がしのび逢う。宿の女将は客の事情を承知しているから・・・

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年の初めから隣りの部屋が満室だ!

15/01/05 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1426

「そちに悟空の術を授けてやろう、ありがたく思え」
「そういうあなたは?」
「私は、彼の有名な三蔵法師じゃ」
「何で、彼の有名なって自画自賛……」
「何か申したか?」
「いえ何も。でその有名なお方がなんで、私になど?」
「気にするでない、ほんの正月の気まぐれじゃ」
「気まぐれねえ、悟空とはあの孫悟空のことですか?」
「そうじゃ、三蔵法師といえば、それ以・・・

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洗濯師

14/12/29 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1619

 ついにこの日がやってきた、どれほどこの日を夢見たことか……。俺は生まれ変わるのだ。今までどれだけ惨めな人生だったことか、取り柄といえば体が丈夫なくらい、女に縁もなく、世間の奴らから守銭奴と罵られ、今じゃ命まで狙われる始末だ。貸した金を返して貰って何が悪い。だが、惨めな日々も今日までだ、全く新しい人生がこれから始まるのだ。今までの悲惨な日々はこの日の喜びのためにあったに違いない。
 卓越した・・・

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回禄の向こうにあったもの

14/12/25 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1116

「火事だ!」
 眠りについて間無しの俺は、携帯の喚き声に叩き起こされた。只ならぬ様子だが、何を言っているのか要領を得ない。午前四時、慌てて上着を羽織り自転車に飛び乗り、駅前商店街の入り組んだ路地奥にある花都小路へと急ぐ。遥か彼方だというのにサイレン音が一面に鳴り響き、きな臭さが鼻をつく。大火を肌に感じ体が震え出す。店は無事だろうか、打ち消す端から次々に大きな不安が頭をもたげてくる。遥か向こう・・・

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銀鱗ものがたり──喪失から復興へ願い届け

14/12/20 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1172

 川原に横たわり鮭は放卵し絶命していた。瓦礫を縫うようにしてやって来た小田は、嬉々とした表情で駆け寄った。
「おお、戻ってきたんだ!」
 だが、すぐに小田は顔を曇らせ、跪くと静かに手を合わせた。
「すまない、産卵に気づけなかった私を許してくれ。きっと故郷を蘇らせてみせると君に誓おう」 
 あの日からこの川に鮭は戻って来ないと誰もが考えた。だが、必ず戻ると信じてきた小田は、半・・・

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黒と白の不条理──1/fのゆらぎ

14/12/15 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1526

 そのゆらぎは、人々を心地良い音の世界へ誘う。

 ◇

 三歳の時、男は音楽の琴線に触れた。家人に音楽関係の者は一人もいなかったが、同じ年代の子供たちが遊びに興じている時も、男はどん欲に音を貪るほど音を愛した。やがて、ピアノに傾倒した男は、音の世界で名を馳せ始めた。十歳になった年、すでに男のピアニストとしての才能は、世間が放っておかないものに育っていた。男が有名になるのは・・・

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1+1=鍵ひとつ

14/12/09 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1605

 鍵はずっと錠前を探していた。
「私に合う錠前が必ずあるはず……、だがそれが見つからない。私は一体どこからやってきたのだろう。私に合う錠前はどこにいるのか?」
 鍵は放浪の旅を続けてきた。どこへ行っても自分を受け入れてくれる錠前は現われなかった。それでも諦め切れない鍵は、旅をやめることがなかった。ある日、ついに鍵は錠前の神に出会えた。
「神様、私の進むべき道をお教えください」

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ガロの死

14/12/01 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:2036

 昭和三十年代、人々は貧しく食べるために必死になって働いていた、そんな時代の話です。

 我が家ではずっと番犬として犬を飼っていた。一番印象に残っている犬は、雑種だが洋犬のようにふわふわした薄茶色の毛並をした『ガロ』という犬だった。大衆食堂に加え近所の工場へ給食を提供していた我が家では、残飯が出るので犬の餌には困らない。ガロは小柄なのに、毎日、残飯が入ったバケツに頭を突っ込んで食べると・・・

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別れは突然に!

14/11/30 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1419

 喧騒が嘘のような静かな家に私は一人残っていた。嫁いだ娘が、儀礼的に、「東京に出てくる?」と聞いてくれた。海外にいる息子は、仕事の都合で無理だろうと、帰国するのをやめさせた。子供たちにとって、私たち夫婦はどう映っていただろう、近所の人はどう見ていたのだろう、つまらないことしか頭に浮かばない。唯一、夫が私を疎ましく思っていたという確信はあった。私はいつの間にか夫が世界中で最も苦手な人になっていた。「・・・

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惜別

14/11/28 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1095

 年だから衰えてきただけだ。ちゃんと、日にちがわかるからな。今日は、七月……、七月だったかなあ、暑い、暑いからきっとそうに違いない。手帳の十五日の欄に誕生日と書いてある、妻の誕生日なのか? それより、今日は十五日だったかな。自分でおかしいと感じたのはいつだったのだろう? 少し計算が苦手になった感はあった。

 完治は無理だが、病気の進行を緩やかにできる薬があると医者に言われた。妻に癌宣・・・

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緑苔に暗渠のラインが浸食する

14/11/17 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1060

 数十年前に廃線になったそのトンネルでは、探検と称し年に一度、イベントが催されていた。使われていないトンネル内は暗く、イベント参加者たちに懐中電灯は必須だ。頭に留めたものや手に持つ形など様々な懐中電灯を携え、みな、初めはこわごわトンネルへ入っていくが、大勢の参加者と共に進む六キロほどの距離は、賑やかでそれほど遠くも感じない。楽しいハイキング気分が味わえるイベントとして、家族連れにも人気があった。<・・・

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ダンゴ虫学級

14/11/13 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1902

 僕は懸命に足を動かす、短足でゆっくりとしたものだが足取りは力強い。ここは快適、あいつもあの子も、行ったり来たり。同じ道のようで、みな違う線を描いている。平等を味わうことは心地良いと知った。全て世は事もなく、あるのは、絵の具で塗りたくられた山と海のみ。
 ◇ 
 転校生の平安君は、黒板の前にヌーと立ったまま、下を向いたままだ。初めから苛めの対象だって僕にはピンときた。僕も苛められてきた・・・

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刹那は蒼く散り深く沈む

14/11/11 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1763

 新月の夜、その船はひっそりと岸を離れた。

 黒い花に埋もれたルーの姿は見た目はとても美しい。首から胸にかけ広がる青い星状湿疹は、身に包んだ白い衣で見えないだけだが……。岸を離れるとすぐに、ルーは胸に組んだ両手をほどきその手で船底をまさぐり合図した。
 黒布を纏ったニオは黒い花影から起き上がると優しくルーを抱き締めた。抱き合った二人は無言。考えに考えて二人で出した答えだから、少・・・

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ああ、世界には何て知らないことが多いことでしょうか

14/11/03 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1099

 今、風が頬を撫ぜていったと思ったそこのあなた、事実は違うかもしれませんよ。

 あなた方は気づいていないのですが、世界には何と知らないことが多いことなのでしょうか。誰もが、この世界に住んでいる世界に、何か不可思議なものが存在していることに気づいていますが、実際に彼らを見た方々はほんとうに僅かだと思います。

 彼らは、私たちに見つからないように、こっそりと住んでいると思っ・・・

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VIOLENT SPEED WHEEL

14/10/28 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1241

「私、もう……あなたとは違うの、だから」
「だから、何だって言うんだ」
「だって……私には使命が」
「使命は君のせいじゃない。誰かの、いや、僕の父の仕組んだことだ。悪いのは僕たち……なんだ」
「悪くなんかない。だって、この使命はこの星を救うためのもの。だから、私は誇りを持って頑張っているの、でも……」
「でも?」
「……」
「でも? 言ってくれよ」
・・・

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歴密会・あきーnai.coi  密会への招待

14/10/20 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1088

「これって、怪しいよ」
「でもさ、行ってみようよ、イベントの一環だと思うんだ」
 大坂冬の陣、夏の陣から四百年、大阪では大阪城周辺で、イベントが繰り広げられている麦秋のとある日、逢坂高校の稲太朗は秋穂と城への道を急いでいる。秋穂はもう一度、携帯メルを食い入るように見た。
『歴史好きの善男善女諸氏、大坂城にて密会が執り行われる。このこと歴史好きの者のみへの秘密の誘いにて決して他言無・・・

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腐りかけの肉

14/10/20 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1054

 俺は、このBOXを壊すと決めた。そう決めさせたのはあいつのせいだ。後のことなど知ったことではない。秘密は、それを知る者が少なければ少ないほど価値が上がる。秘密をばらしたのは他ならぬ奴自身、俺に責務はない。もちろん義理なんて洟からなかったさ。秘密を暴露した罪の深さを思い知れ。俺は、奴を仲間と考えていたが、奴には違っていたようだ。秘密を自ら暴露するとは……。
 秘密は腐りかけの肉だ。洒落た言い・・・

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秘密のシータ

14/10/17 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1232

 あれ!? 公園のベンチで転寝していた僕の耳に奇妙な話し声が聞こえてきた。
「難しくはにゃい飼い主さんもきっと分ってくれるにゃん」
『ニャオ〜ン』
 ベンチの植え込みから三匹の猫が見える。何気なくその光景を見ていた僕は思わず跳ね起きた。
「えつ、今、猫が話した!?」 
 中にいる一匹の白猫が、確かに人間の言葉を話したのだ。僕の声に驚いた猫たちは一斉に逃げた──と思っ・・・

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舞い降りる光と共に 

14/10/06 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1117

 クリスタルの透明な面に陽光が舞い降りる。
「僕、光の妖精甲斐だよ」
 そう言って私の閉ざされた瞳の奥に僅かでも光を届けようとおどけて話してくれた人はここにいない。あれから、忘れてしまうほど時間が経ってしまった。見えない目は、全ての世界から、物の形と色を奪った。混濁した世界、怖い、きっと、どこまで行っても漆黒の暗闇でしかなくなる日がやってくるに違いない。
 無味な世界、白黒ははっ・・・

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空からお宝が……!?

14/09/29 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1520

 その町に入ったとたん、男は、町中の人々が空を仰いで歩いているという奇妙な光景に出くわした。あちこちでぶつかり合いイタタという叫び声が上がる。だが、額をさすりながら人々は再び空を仰ぎ歩き続けていく。
「何だ、空に何があるんだ?」
 道行く人に男が尋ねても空を見上げていて誰も答えてくれない。片端から尋ねていくとようやく一匹の猫が答えてくれた。
「時々、お宝が空から舞い降りてくるんだ・・・

8

心の墓標に誓いを!

14/09/22 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1031

「ヤダ、チイを連れて行かないで殺されるんでしょ。チイだって母さんヤギと、ずっと一緒に生きていたいはず。人間は良くってどうしてヤギは駄目なの、おかしいよ」
「心海、父さんは生まれた時に、このヤギには名前をつけるなと言っただろう。名前などつけるから、感情移入してしまうのだ」
「母さん、何とかならないの? チイのこと可愛がっていたじゃないの」
「母さんはせめて家を出て行くまではって思っ・・・

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ため口のおっぱい

14/09/17 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1574

「聞こえてるんでしょ、帆花」
「誰?」
「あんたのおっぱい」
「嘘、乳房が話すわけない」
「こないだからずっと話しかけてるのに無視してたでしょ。私は右ぱい」
「右のおっぱい、ってことは、左右は別人格、知らなかった」
「知っておくとよいよ、おっぱいは左右対称じゃないでしょ、別物だからなのよ」
「右だけが話せるって左は、寡黙な詩人とか?」
「ほら、しゃべ・・・

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詩人の本能

14/09/08 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:1780

 嬉しい時も、悲しく辛い時も、それでも蜘蛛は巣を編み続けます。詩人がそうであるように、息をするかのように糸を編み続けるのです。 
 ◇ 
 山奥の、とある橋の欄干に蜘蛛は巣を張るため草叢から這い出してきました。生まれて初めて巣を張るのです。蜘蛛の本能は生きるために、この橋の欄干に巣を張ることがよいと申しています。生まれ出る前から、その能力は備わったもの、人は本能と呼びますが、それは、ど・・・

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僕は本当に困っています。 

14/08/29 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1261

 僕は困っています。

 近所に住む仲間四人で一緒に学校へ行っています。僕は優等生なので、その集団登校のリーダーを先生に命じられてやっていますが、学校へ行くだけで、大変疲れてしまいます。みんな好き勝手なことばかり言って、列がすぐにバラバラになってしまいます。毎朝、僕は、みんなを遅刻させないように必死なのに、誰も僕の言うことを聞いてくれません。

猫:「嗚呼、あの瞬いていた星・・・

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ふかんきょり

14/08/21 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1143

「小夜、少しいいかな、話があるんだ……」
 父の様子が明らかにいつもと違う、緊張したその面持ちから、今から何が話されるのか察しがついた。私は冷めた表情を悟られまいと視線を落とした。避けたいだろう話を、どうして父はわざわざ告白しようとしているのか、母に話したので終わりにすればよい、あなたに義務などないのに。むしろ私は育ててもらった恩を感謝しなければいけない身。
「高校の入学手続きで戸籍見・・・

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カタ子とツムリの物語

14/08/14 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:954

「ねえ、ツムリ、真面目に学習しましょうよ」
「嫌だ」
「そんなこと言わないで。ね、ちゃんと一緒にお勉強しましょう、あなたに残された命はあと数日なのよ」
「言われなくても、わかってら〜」
「だったら、早く学習して告白してくれなくちゃ……」
「そんなせっついてやりたくねえ」
「だけどねえ、よく考えて、ちゃんとお勉強して学ばなきゃ、子無しってことになるのよ」
「・・・

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神の恩赦

14/08/11 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1003

「ゼウス様、早くお決めになっていただかないと、間に合わなくなってしまいます。いろいろと手配に時間がかかりますので……」
「アダム、そうか、恩赦を決めなければのぉ」
 神ゼウスは、娘ミクラの婚礼の恩赦を考えた。ここ神様界では祝い事があると、全能の神ゼウス様が、下界の人間達に恩赦と称して何か祝儀を与えることになっている。それは、紀元前からの慣わしとして、もう幾度となく実施されているのだが、・・・

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REーEARTH

14/08/09 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:964

「あと数カ月で百億年か……。今度はどんな星になるのだろう、青いこの星は美しく輝いているというのに。前回は赤い星だった、その前は黄色。私としては、この青い星が好きだ。今日まで、懸命に人間なる生き物が生きている姿を見てきただけに、あと数カ月で消滅することは堪らなく辛い。どんな形にしろ、あのお方は何も残さないだろう、ずっとそうだったから。以前の紫星の時、ノアという者に姿を変えられ、再生を引き延ばされたこ・・・

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未来に布を織る

14/08/05 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1103

「幸、さちぃ〜」
 誰かが呼んでいる私の名前を。大嫌いな名前、お願い呼ばないで、呟いた私の唇に優しくキスされた。辛かった頃の夢を見ていたようだ。
「私ったら眠ってしまっていたのね」
 目尻に涙が滲んでいるのを感じ、慌てて、あくびが出た振りをしてごまかす。
「どうしたの? ハニー、大丈夫、新婚旅行が強行軍で、疲れさせちゃった?」 
「ううん、大丈夫よ、樹(イツキ)」

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拡散効果は凄かった

14/07/28 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1318

「ど・ど・どうした研ちゃん、お前の手光ってる!」
「シー! 声がでかい」
「どうして……この間の蛍狩り?」
「う・うん、あの時、何かに呪われたのか、夜になったら光るんだ、どうしよう。将、俺、死んじまうのかな?」
「呪いって、研ちゃん……」
 夜の闇に鮮やかに碧く光る俺の手、蛍の光より、LEDライトのような碧色で綺麗に光っているのだけど、俺には大問題だ。蛍の呪い、あるい・・・

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青く光る森の妖精

14/07/24 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:2346

 その森では、今も夜になると仄かな青い光が灯るという……。あれから、何年経ったのだろう。少年はその森で何を見たのだろう?
 自国のみが唯一の民と主張する独裁者バドは、テロやゲリラ戦を仕掛け隣国ナモハに攻め入り支配下に置いた。バドの狙いは、その地に眠るエネルギー資源。その採掘場はナモハの北の果ての森にあった。だが、莫大なエネルギー物質は、人の命を危険にさらすものだった。採掘に従事させられたナモ・・・

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あいつとあたし

14/07/12 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1109

 あいつ、剛太郎は、幼稚園からほんと泣き虫だった。ちょっとしたことでビービー泣くもんだから手に負えない。引っ越して来た家が近所だっていうだけで、一緒に通学することになったけど、道に出たとたんにビクっとしてもう泣き顔だ。
「とかげは何もしないってば」
「だってぇ……」 
 都会から電車でほんの二時間ちょっとの漁港のあるこの田舎町。あたし、灯(あかり)の家も、漁業で生計を立てている。・・・

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もうひとつの天の川

14/07/07 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:2987

「かあ……たん……」
 虚ろな母の目に、四歳の娘は映らず、再び名を呼ぼうとした小さな声は夜の闇に消えた。梅雨明け前の七夕は雨が多い。だけど、その日は珍しく月の綺麗な夜だった。月の光が、青白い母の横顔を優しく照らす。
 その日、夏奈が、保育園で貰った小さな笹飾りが、ザワッと揺れた。母の手は颯音のか細い首に回され力が込められていた。苦しさにもがき空を切る幼い手が、壁際に持たせかけてあった笹・・・

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残響の途

14/06/30 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1216

 ルート311∞車線、そんな途あったのだろうか……? 僕は、ずっと必死で車を走らせているだけだ。どうして走っているのか考えられないのは、この切迫した空気のせいか。ひたすら走り続け、僕はどこへ行こうとしているのだろう。この一車線道路は、さっき出ていた道路標識で一方通行だと知った。それなら、のんびり走っていてもいいのでは。だのになぜ、僕は何に怖れこんなに急がなくてはならないのだろうか。
 追い越・・・

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What Happened On The Road? ──道路で何かが起こっている

14/06/25 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:1657

 太陽が昇ってきた。今日も、俺は熱せられるのか、アスファルトになってまだ二年、慣れないままだ。昨日、子供が落としたアイスクリンのため、俺の体の片隅に染みが残った。蟻がやって来るようだ。昔は、蛆が体を這ったこともあるが、今は蟻か……。
 田舎の田んぼだらけのど真ん中にできたアスファルト道、今どきの人間は違和感を持たないのだろうか。この辺りが急に賑やかになったのはつい三年ほど前だ。俺の前に開ける・・・

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転がる石の秘密

14/06/15 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1235

 嵐の夜、高台にあるT別荘地で一人の男が警察に逮捕された。土砂崩れの被害状況を調べに来た消防隊員たちによって発見された時、男は、山肌から流れ出る土砂にまみれ這いつくばって叫んでいた。
「止めてくれ、石が転がる、ああ、石が流れていく」
 隊員たちはみな、男が助けを求めているのだと思ったが、男の立つ斜面に白骨化した腕が突き出ているのを見て驚いた。殺して埋めた死体が露出し焦った男が、必死に証・・・

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転がる宝石のように!

14/06/05 コメント:21件 草愛やし美 閲覧数:1835

 悦子は、先程から洗面所に閉じ籠っている。鏡の前で、しきりに顔の表情を変えていく。大きく口を目いっぱい開け、「あいうえおー」喉の奥まで見えるようにと手鏡を持つ手にも自然と力が篭る。口角を引き締める美容法だ。これを毎日やれば豊齢線など、への河童だと心に言い聞かせる。鏡の中の自分の顔の老いに気づいてもう何年になるだろう。若い頃、自画自賛できるほど、綺麗だった。道をゆけば、振り返る男もいた――はず、そう・・・

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ポーの水車

14/06/02 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:1042

 その人は、川縁に座り、腕を組んで物思いにふけっていた。川の水の色を見ているのだ。水の色の濁りに細心の注意を払っているのだ。汚れ具合によって、水車の回転を速める。この川は、未来へと流れるもの。だからこそ、澄んでいなければいけない。ポーの島は、川の中州にあった。島を囲む川には水鳥が群れ動物達も水を求めやって来る。いつ頃から、その島があったのか、そして、その島にいつから、この人が住み始めたのか、誰も知・・・

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スパイ135: 諜報員名『卑弥呼』

14/05/30 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:1224

 乙姫子は、苦渋に満ちた表情でスペクテーの部屋をノックした。ここは、某海底数メートルに設置されているPKR基地(パクリの略)、ボスであるスペクテーは、部屋の奥にある豪華な椅子にふんぞり返り座っている。暗くてその顔は見えないが、無類の愛猫家であるスペクテー。相変わらず膝の上に愛猫を乗せている。現在、飼われているこの猫、真っ白な毛並はもちろんだが、瞳の色が左右違うオッドアイが素晴らしい。右眼は真紅のル・・・

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十五年分の幸せ

14/05/19 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1096

「母さん、元気?」
「おお、久しぶりやね、元気よ。和はどう?」
「話があって……実は、結婚したい人ができたんだ」
「ええ! ほんと、アラフォーでついにゲットだ、おめでとう。で、どんな人?」
「それが……」
「何、言い難いことあるの」 
「年上の人なんだ。十五歳……」
「えっ!」
 急な話に驚いて小夜は受話器を落としそうになった。今、流行りの年上妻が自・・・

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絶滅危惧種

14/05/14 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1083

「あなたのおっしゃる通りに致します。はい、わかりました」
 なんて響きの良い言葉だろう。はいと答える女の白い顔が美しい。黒髪を腰のあたりまで伸ばし、ゆるく結わえた姿に、白い呂の着物がよく似合っている。その髪は、いわゆる鳥の濡羽色。俯き加減に落とした目元に黒いまつげが震えている。正に僕の理想の女、こんな女を探していたのだ。僕がずっと独身でいたのはこの女に出会うためだった。
 僕は有頂天で・・・

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14/05/04 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1275

 母が亡くなって十五年経った――あの日、予感したことを、私は、生涯忘れることはない。

 母は七十八歳になっても働きに出ていた。貧しい家計では必須。毎朝、電車に乗り、二十分かけて小さな開業医さんの家に行き、お手伝いさんをしていた。部屋の掃除、買い物、食事の支度、こま鼠の如く働いて七時前に帰宅。今度は、自分の家事が待っている。文句ひとつ言わないで、同じ生活を二十年以上続けていた。忙しい母・・・

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つばめ

14/05/01 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1103

 その年、燕はやって来なかった。
  ◇
 ばあちゃんは目が見えない。病気で見えなくなったと言うけれど、本当は見えているのじゃないかと思える時がある。僕がやらかした失敗を言い当てたりするからだ。
「ちぃ、お前昨夜もやらかしたやろう? 洗濯物増やしてもうて、おかあの仕事も大変やろうて。ちゃんと心して謝ったか? 面倒くさげに、わかっとよって言い方はいけんぞ。それにな、お前のそそうすっ・・・

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うちが救世主や!

14/04/21 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1252

「そないなこと言われても、うち忙しいんや」
「そう邪慳にしないで話聞いてくださいよ」
「あかんって、主婦はいろんな用事あるんや、あんた自分の仕事やろう、そんなたいそうな仕事頼まれてもかなわんわ」
「そこを何とか。貴女様の気前のよさに惚れました」
「気前えぇんは、大阪のおばちゃんみんなやでぇ」
「ですが、貴女様は格別の気前の良さで」
「まあな、そのため、百均行った・・・

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超局地激雨顛末記

14/04/15 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1469

「──たくもう、なぜだ」
「わかんねぇ、俺に聴くなよ」
 激しい雨はこの一か月振り続けている。初め、彼らには全く原因がわからなかった。
 ◆
 担任の荒木がため息をつく、誰にもわからない。なぜか、この激雨は春姫中学にだけ降っているのだ。隣接する小学校も公園も団地もどこもかも他は晴れているというのに、この学校だけが雨だった。
 雨は段々激しさを増し、校庭は泥沼状態でサッ・・・

9

太陽のせいって?

14/04/07 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1575

 みなさん、ご存じかのぉ、太陽のすぐそばに住み、太陽のお世話をしていた民がいたことを。昔から、太陽は、人間に神として崇められておった。光はありがたく、命を育てるのにとても大切なものじゃ、植物が育ち、それを食べ、みんなは大きくなるのだから、そのことは、すぐにわかるな。それに、温かく、素晴らしいエネルギーをもたらすこともな。だが、むかしむかしのその昔には、太陽はすぐに汚れてしまうものじゃ。ご存じの方お・・・

9

口伝

14/04/02 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1468

 十五になった年、八左衛門は父に呼ばれた。
「八、お前もついに十五になったか」 
 八左衛門は、妙にあらたまった父親を見て気持ち悪くなった。
「父さん、どうしたの、熱でもあるのか?」
「熱などないわ! 今日はお前に我が田川家の大事を話さねばならぬ」
「ええ、どうしたの? 母さん、父さん気が狂ったー」
「母は捨ておけ。まずはそこへ坐れ、いいか八、お前の名前がなぜ八・・・

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畏敬卵胞

14/03/26 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1081

 宇宙X年某月某日、カロという男が恋人と再会するために環状箱型流刑船に乗ったことは、世間ではニュースにもならなかった。だが、俺は知っていた、カロがどれだけルクを愛していたかを……。あんな酷い世界から、人類は更に五十年も生きながらえていた。罪人は誰も帰還せず、食物は底をついているというのに、マザーコンピューターのメンテ関係の数人の人間は生き続けていた。なぜだ? ロボット生産も素材不足で滞っているとい・・・

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紙切れ一枚に勇気をください

14/03/24 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1135

 目の前に座る医者は羊水検査をするようにと話している。せっかく授かった命をどうしろというの? ショウガイジって何? 私の子よ、誰が何と言おうと……、そんなメイショウいらない。だけど、もし、障害のある子供だった時、私はその子を、ちゃんと育てていけるのか自信が持てない。自分の母性がこんなちっぽけなものだったのかと悲しくなる。子供を持ったことのない私だけど、妊娠する前から、お母さんになりたいって思ってき・・・

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いったい僕は何人殺したのだろう!?

14/03/14 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1331

 
『逃げる女の髪の毛をグイと掴み女を引き倒した。恐怖に引き攣った女の顔が欲情をそそる。俺は、第三の殺人は刺殺と決めていた。用意したサバイバルナイフを振りかざし、女の背中に突きたてると、女はグエーとこの世のものと思えぬおぞましい声を発した。
 第一の殺人は、絞殺、第二の殺人は毒殺、第三が、この刺殺だ。やり口が違っていれば、捜査連中は連続殺人と思われないはずだ。ヒヒヒ、俺は腹の底から湧き・・・

11

おまけの奇跡

14/03/08 コメント:17件 草愛やし美 閲覧数:1429

「父だ!」
 思わず大声を出した。

 久しぶりに休みを取った日、簡単な昼食を済ませた後の気怠い眠気と戦いながら、ぼんやりと見ていたテレビ画面に私は釘付けになった。画面は、京都の錦小路、雑踏の中、卵焼き屋の前で立っている父を見たのだ。再放送のサスペンスドラマ、映しだされた映像は、たまたま録画された錦市場の一場面だった。主人公が、推理しながら通り過ぎる市場の店先に父がいたのだ。慌て・・・

9

奇跡の水

14/03/05 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1179

 伯父さんの残した言葉がこれさ。「良いんだ、わしのことを気にかけてくれなくても……。ここに来た時から、わしには覚悟ができていたさ。雨水一族として立派に散るだけと悟ったさ。美しい生き方をしている仲間だっているけどね、同じ水の仲間なのにわしはトイレタンクに来てしまった。旅立ちの時に、臭い奴らに逢いに行った。トイレのフラッシュペダルが押される音が、今もわしの耳に残って眠れないんだ」
 だから、俺は・・・

10

三角形の崩し方

14/02/24 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:1835

 綾の部屋に忍び込む。親友だった女だから彼女の習慣は熟知している。就寝前、必ず飲む甘い赤ワインに毒を盛る。夫の前で鼻を鳴らしていたあの得意顔の女は苦しみに歪んだ酷い形相で死に絶える。綾は死ぬしかない女。憎い、どうして親友の私の夫を寝取るなんてことができるのか。あいつは女の風上に置けない、いや、人間じゃない。ドラマのような酷い話が、吾身に起こるなんて思いもよらなかった。
 夫は私のもの、私にぞ・・・

13

本妻と愛人

14/02/20 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:1814

【本妻】




ぬくぬくと眠りをむさぼる冬の朝
これほど愛しいと思うものがあろうか……

布団……
これこそ私の恋人だ

私を抱き留めてくれるその暖かい思いやりに
私もまた応えたいと抱きしめ愛を語る

夢見心地のまま 
あと5分 あと5分だけ
愛撫しあいたい

この愛を成就するには短すぎる・・・

9

絶望という名の乳母車

14/02/09 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1277

義母の車椅子を押す
空が俄かに曇り出し
ポツポツ雨が降ってくる
私は田んぼ道を
転がるように急ぎ
車椅子を押して走る

いつの間にか
車椅子だと思った握り棒は
乳母車のそれに変っている

そうだった
かあさん乳母車に似合うのは風車だよね
風車持ってくるから
待っていてかあさん

何度も同じ回想が繰り返さ・・・

8

絶望の二乗

14/02/05 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1299

 我が子が、亡くなった、保育所で……。事故!? 嘘よ、殺されたのだ。

 保育所から、その一報が入ったのは、私が職場で忙しく働いている時だった。オートメーションの食品の検品作業、無理に頼みこみ、長い産休を貰っていたがようやく戻ってきたばかりだった。
「お子さんの様子がおかしいので、今、救急車で病院へ運びました」
「どこ? どこの病院!?」

 慌てて駆けつけた病・・・

8

絶望がドアを叩く

14/01/31 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:1331

 ベートーヴェンの交響曲第五番を知っている人は多いだろう。『運命』と名づけられたその交響曲の始まりは、運命が扉を叩く音を表しているという……。運命が、扉を叩く音とは、どんなものなのだろうか。突然、やってくるその音は、誰が叩くものなのか? 天命といわれるように、それは天空の采配の仕業か、あるいは生まれた時に、人の生き様は全て決まっていて扉を叩く時を待っているのだろうか。人は運命から逃れる術を知らない・・・

7

ロバのパン屋さん

14/01/28 コメント:17件 草愛やし美 閲覧数:1886

 お読みくださる方、もしよろしければ、このyoutubeをお聞きくださればとお願いします。ロバのパン屋さんのテーマ曲です。どうぞ、よろしくお願いします。

   http://www.youtube.com/watch?v3Ck5JKVaGRM#t14



   ♪ ロバのおじさん チンカラリン
      チンカラリンロン やってくる♪
   ・・・

7

テレビが来た日

14/01/27 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1344

 昭和三十年代、世間の最たる注目の的はテレビだった。まだ放送開始直後のこの時代テレビは破格の値段だった。テレビを持っていることは金持ちの証で、どこの家にもあるという代物ではなかった。

 誰かの家がテレビを買ったとなると知り合いの人々が見せて欲しさに押しかけてきたりしたものだ。おもしろいことに、テレビ受像機を単にテレビとは呼ばず、なぜか東芝テレビとか日立テレビとか、メーカーの名前も合わ・・・

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愚か者

14/01/22 コメント:25件 草愛やし美 閲覧数:2462

 あれほど心焦がした純粋な想い、あのエナジーを表す言葉なんて見つからない。目を瞑ればあの刹那が網膜を焦がし蘇る。だが、愚か者に答えは見出せない。蒼ざめた唇が砂を噛んだ日々は二度と戻らず。

 記憶の糸を辿る、何も、ここに来て哀愁に浸るつもりなどなかったはずなのに……。洋子と離婚調停が纏まったからだろうか? なぜここに来てしまったのか、自問自答しても答えは出ない。自分が、生きてきた証を失・・・

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一杯の麦ご飯

14/01/18 コメント:18件 草愛やし美 閲覧数:1961

 昭和三十年代、戦後十年経っても、日本中のほとんどの家は貧乏で食べることに精一杯の生活をしていた。

 子供の頃よく貸し本屋さんに行った。漫画の本や雑誌いろんな新しい本が並ぶ貸し本屋。本は高くて買えないので借りてくるのだ。テレビもゲームもない戦後、貸し本屋は娯楽の王様として発展した。今の時代でいえば、レンタルDVD屋さんだが、当時はまだチェーン店形式などなく個人が経営する店だった。私は・・・

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オリオンの輝く夜

14/01/13 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1217

 男の纏った毛布からはすえた異臭が漂っている。人々が寝静まった軒先に積まれたダンボールを持とうとしたがブルブルと震えた手はそれを落とした。寒風を避け横になった男の目は、虚ろで何も映っていない。

 ある冬の夜、その男は死んだ。男の亡骸のはるか天空にオリオン座が輝いている夜だった。男は、両手を突き上げ掌でオリオン座を抱きかかえるかのような仕草をして道路のど真ん中に突っ立った。走ってきた車・・・

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幸せのかたち

14/01/07 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1567

 宇宙X年某月某日、僕は罪人になった。地球の歴史は、何千年もの時を遡っているようだ。恋人のルクは、飢えて死にかけている妹のためにパン一個を盗んだ咎で逮捕された。西暦千八百六十二年という太古の時代に書かれた物語と同じ罪で、彼女に、流刑罪が下された。

 罪人たちは、箱型船に乗せられ時空を超えた時の果てへ流される。流刑船は、環状になった線路を淡々と走り続ける。駅でなく偵察地点は点在するが、・・・

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量産型バク

13/12/30 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:1294

 雨洞は、暗闇の中にいた。ここはどこなのか? 温かいのか寒いのか、何も感じない。真っ暗で何も見えていないはずなのだが、先程から不思議な感覚を覚えている。白い塊が向こうにいるようだ。蠢く物体に気味悪さを感じながら雨洞は、目を凝らしていた。遠目に奇妙な黒い物体が進んで来るのが見える。何だ、あれは? わしは、どうなったのか、もしかすると、もはや死して黄泉の世界に来ているのか?
「助けてくれー、誰か・・・

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空に浮かんだくじら

13/12/27 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1294

 私は、ゴマ鯖になって海を泳いでいた。狙われているのは、わかっていた。必死になって逃げ惑う。息があげってこれ以上は泳げない。海面近くに上がってきたのは、海の中まで差し込む日の光に誘われてのことだ。温かい日差しに乗っかって漂っていると急に日が陰った。大きな影が海面を覆っている。何かしらと、空を見上げた私は、あっと小さな叫び声をあげた。何と空に巨大な鯨のようなものが、浮かんでいたのだ。
「凄いね・・・

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アオゾラ猫

13/12/25 コメント:26件 草愛やし美 閲覧数:1643

 あの日、あいつは私の目の前に現れた。ドアを開けた私の目に飛び込んできたのは真っ青な色だけだった。鮮やかな水色の小さな塊が私のベッドの下へサッと潜りこんだ。何!? 幽霊にしては鮮やかすぎる生き物? 私は、買ってきたスーパーの荷物を落として立ち竦んだ。
 そう、それはまさにあの夏の日の海に輝いていた青空の一部が落っこちてきたようだった。まさか、こんなクリアな色は霊とは思えない。動く物体を探しこ・・・

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地下帝国

13/12/20 コメント:20件 草愛やし美 閲覧数:1429

――ここはどこだ? 鉄格子が見える、なぜ牢屋に、何が起こったのだ。叫ぼうとした私は、暗闇の中で蠢くものに口をつぐんだ。そいつの正体はもぐらだった。何か話しているが、理解できそうもない。もぐらが話すこと自体おかしい。これは悪夢だ、そう自覚している自分がいる。

 いつの間にか、私は鉄格子をすり抜けあちこち眺めまわっていた。大きな氷の塊があちこちに置かれている。
「マ・マンモスだ…・・・

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雪ちゃんとお地蔵様

13/12/16 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1309

 雪ちゃんに、お友達が一人もいないのはね、雪ちゃんがお家から少しもお外に出ないから。 雪ちゃんのお顔の色はみんなと少し違っているんだ。お父さんと一緒で黒いの。それはお父さんが夏しかない国の人だから。お父さんは日本に来て初めて雪を見たんだ。綺麗だと感動したので雪の日に生まれた赤ちゃんに雪ってお名前をつけたの。
 元気だった雪ちゃんが急に笑わなくなって幼稚園に行かなくなった。お外に行きたくないっ・・・

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南の島に雪が舞う

13/12/13 コメント:18件 草愛やし美 閲覧数:1744

「雪だ、雪が降ってるだ!」
「雪だって、どこに?」
 草いきれに荒い息遣いをしながら目を瞑った俺は、田辺の声に薄目を開けた。恨めしいくらい綺麗な青空が広がっているが、もはや起き上がる力はない。幾日も水しか飲んでいない。最後に口にしたのは、土中のみみずだった。大きな異国の蟻が体を這い噛みついてくる。聳える椰子の木を見上げてもその実を得るすべはない。銃弾はとうの昔に尽きた。何のために戦って・・・

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墓雪(ぼせつ)に眠る

13/12/07 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:1398

──北の墓標は墓雪 さう云ふ人がゐる 夜に渡る冥府 待ち人來たらず 雪に逝きを重ねれば 迷へる者を 白き雪は優しき眠りへと導く── 

 人の幸、不幸はどこで決まるのだろう。明晰さ、美貌、財産、それとも……。日本海を望む山寺にその墓はあった。北に位置し山道の急斜面にある墓は、冬には、深雪に閉ざされる。霜月の声を聞く頃には、すでに雪が降り出し、毎日のように深々と降り続けると、やがてそこは・・・

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復讐は闇のままに……

13/12/02 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1298

 復讐は闇のままに進む……。
   ◆
「で、復讐したいから、ここへ引っ越して来たいって? どゆこと、そんなでかい体で。無理でしょ、自分でわかんないの、月は地球の四分の一しかないんだよ。あんた馬鹿じゃない。太陽に行けば、あっちなら、地球の百倍ほどあるじゃん」
「太陽では、海の僕は一瞬にして蒸発して消滅だ」
「だからさ、復讐なんか考えないの、あんたは、地球に必要なの、わからん・・・

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ケネディ大統領そして、私感としてのアメリカ

13/11/22 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:1566

 ◆ 前置き ◆

 今、アメリカからやって来られた新駐日大使のキャロライン・ケネディ氏が、話題になっています。ご存じのように、彼女は、第35代アメリカ合衆国大統領、ジョン・F・ケネディ氏の長女、母親はジャックリーンさんです。ケネディ大統領は、遊説先のテキサス州ダラスの市内をオープンカーでのパレード中に狙撃され、暗殺されました。奇しくも、今年は、その暗殺から50年、アメリカでは追悼式典・・・

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正当な復讐

13/11/22 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:1696

 都会の片隅にあるH町の商店街、中程に総菜屋がある。午後八時を回ると人が集まってくる。十分過ぎる頃には、立派な行列が出来上がる。みな、半額の惣菜を狙って来ているのだ。もう誰も買わない、八時半になれば毎晩半額販売が始まることを知っているからだ。

 俺がやって来たのは、もう八時二十分を回っていた。すでに、半額狙いの奴らが、かなりの行列を作っている。「チッ、遅れちまったか」慌ててトレイに少・・・

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プリンの力

13/11/16 コメント:20件 草愛やし美 閲覧数:2596

 そのプリンは、オーラを放っている。冷たくプルルンと揺れる卵黄色したプリンは夢の世界を醸し出す。誰よりも、待っていたのは私達親子だった。

 昭和五十九年、少し肌寒い春の日。
「さあ、行こう、じいちゃんばあちゃん、待っているで」
 息子二人は、嬉しそうに自分達の荷物をリュックに詰める。終業式を終えたその日、私達親子三人は隣県にある実家へ遊びに行った。小学四年の長男は、少し風・・・

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記念日スイーツ

13/11/13 コメント:25件 草愛やし美 閲覧数:2018

 私は、ケーキを焼いている、スポンジケーキだ。さっき、クッキーも焼けた。香ばしい匂いがキッチンに漂よっている。


 夫に三か月前、離婚を言い渡された。その夜、夫に何を言ったかよく覚えていない。たぶん、罵ったのだろう。夫に女の影を感じてから、もう一年以上になる。夫は、その夜から、平気な顔をして夜遅く帰ってくるようになった。居直ったのだろう。離婚の理由を散々問いただしたが、愛がなく・・・

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櫛 くし

13/11/04 コメント:27件 草愛やし美 閲覧数:2660

「母ちゃん、こんな綺麗な櫛落ちてた」
 母は、あからさまに曇った表情になった。
「櫛……母ちゃん」
「あのね、未奈、櫛は駄目なの」
「何で? 綺麗な櫛だよ」
「櫛は、九四の数字に当てはめて、苦や死を指すの。だから、病人や不幸な人が、自分の苦しみや不幸を誰かに代わってもらいたい時に、道端にわざと置く物なの。そして、拾った人は、その苦死を受け継ぐことになる。早く元の場所に・・・

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部屋番号195号室

13/11/03 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:3074

 格安優良物件、空き部屋有り〼 日払いOK。部屋番号は、賃貸希望の方のみにお教えいたします。

  ★

あたちねぇ さっちゃん
さっちゃんって名前良いでしょ!
これね自分でつけたんだよ

だって幸せになりたいんだもん だからさっちゃん

いくつって?
う〜んと……産まれてすぐだから 2分くらいかなあ?
おうちは・・・

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マジン都市伝説

13/11/02 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:2107

 僕はお金が欲しい。ずっと悩み死にたいとさえ考えた。だけど、あることを知って僕は、立ち直った。新しい道を歩むために、僕にはお金が必要なんだ。しかも、親に内緒で貯めなくては。コンビニバイトだけではそうたいした額は稼げない。そんな時、ネットで『ときそら物語』を知った。テーマに沿った物語を書きうまくいけば賞金が貰える。凄いこれって僕は叫んだ。文章を書くのは昔から好きだったから投稿を始めた。けど、みんな凄・・・

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かごめかごめ都市伝説

13/10/28 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:2704

かあごめかごめ 籠のな〜かん鳥は いついつ出やる よあけの晩にぃ 鶴と亀が滑ったあ〜後ろの正面だ〜れ
かあこめ囲め 籠の中の囚われ いついつ出やる 夜明けの晩げ つるりと滑った 後ろの正面だあれ

 またこの歌……このところ毎夜、眠ると聞こえてくる歌。わけがわからず気味が悪い。マリッジブルー? きっとそうだ。でも、不安で居たたまれない。昼間も残響のように歌が聞こえ耳を塞ぐこともし・・・

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救急箱を持って

13/10/21 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:1511

 ねえ、いつか結ばれる男女は、小指を見えない赤い糸で結ばれているって知っている? この赤い糸を司るのは、月下老人『月老』と呼ばれているんだけど、その月老様って、結婚や縁結びなどの神様なのよ。
 中秋の名月に満月に出逢える夜は限られているわ。そんな希少な満月の夜、瞳を凝らして満月の少し下を見ると小さな星の瞬きが見える。その星に、月老様の住む月下の世界があるのよ。その満月の日にその星を見てごらん・・・

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ラッキーは変態から

13/10/15 コメント:18件 草愛やし美 閲覧数:1714

 昔から、私は限りなく鈍い。そのため、よく人にからかわれた。むきになって怒る私に、友はケラケラと笑いながら言う。「ほんと、気づかないんだもん。やっきになって、ほんとあなたをからかうと面白いわ」 私は何も言い返せないで、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で立っているだけ。実の親にだって騙された。まあ他愛のない嘘なのだが……。
「あれ? 柱時計変えたの」
「えっ、今頃気づいたの、一週間前に変えて・・・

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恋愛未満

13/10/09 コメント:20件 草愛やし美 閲覧数:1739

 世の中、どう変わるかわからない。いつか何かが生まれると信じられる者は幸せだ。赤い糸を信じない女だったが、心の片隅に恋を信じる欠片があった。その欠片が、石ころだったとしても、恋と思えば成立する。恋愛未満は、後悔はしないのが鉄則だ。
 ★
「戦士やってる限夢(げんむ)です、只今入院中。年は二十五歳、誰か戦い仲間になってくれませんか?」
 SNSバトルゲーム『薔薇の夢』に嵌って一か月・・・

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オーラ石

13/10/07 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1434

 イザナミには生傷が絶えない。暴れているような踊りとハイトーンの歌声に世間の連中は、キャーキャーと騒ぐ。溜息をついたり泣いたり大騒ぎだ、挙句の果てに興奮で失神する奴まで現れる始末だ。「アイドルイザナミは危険だ」と言われれば言われるほど、人気は上がっていく。俺はそれを予測できていた。
「オーラ石効果はすげぇよ、イザナミ」
 彼女はイザナミ、日本を創った神話の女神名の通り、日本の芸能界を創・・・

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イブシの銀ちゃんアイドル路線まっしぐら

13/10/04 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1522

――香山銀次のことどうしても聞きたいって? マスコミは誰でも取材するって聞いていたが、まさかあっしのような、パイプに聴こうだなんて。けどよ、あんた、いい勘しているぜ、あっしはこの家のじいさんに彼是、四十年以上愛用されてきたパイプ、銀次のことなら何だって知っているからな。
 銀次は、若い頃からのアイドル志願者で、孫娘の結芽にアイドルの話をよくしていたな。昭和の大戦が始まった頃に生まれた銀次の時・・・

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無人駅の子

13/09/20 コメント:27件 草愛やし美 閲覧数:2788

「しいちゃんここで待っていて、母さん、すぐに戻って来るからね」
 そう言って母は、改札を出て行った。田舎の駅、初めて来た知らない駅。誰もいないホームにポツンと一人残された私は、母を待った。手には母が置いていったジュースの小瓶と、少しばかりの菓子の入った袋を持ち待っていた、何時間も無人駅で。最終列車らしきものが、通り過ぎても母は戻って来なかった。山奥のその駅の近くの人からの通報で、私は、その駅・・・

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待ち続ける人

13/09/14 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1586

 あなたが、眠る場所へ僕は訪れよう。
「探したよ。あれから、何年になるかな? 君はやっぱり待っていてくれたんだね、遅れてごめんよ。何も言わなくてもいい、僕にはわかるから」
 
 ☆       ☆

 気だるい朝が、またやって来た。私は、のろのろ起き上がり、鏡の前に立った。自分の顔を見て思わず溜息をつく、何という疲れ切った顔。「皺増えたわ、もうすぐ六十……疲れたわ」<・・・

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昭和日記 1964年東京オリンピック その2

13/09/09 コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:2332

  祝、2020年東京オリンピック再びあの感動を!!

 昭和日記東京オリンピックのその2です。


  ☆      ★      ☆



 1964年10月10日(土曜)開会式は壮大な始まりの時を迎えていた。前日には台風が接近していたというがこの日は抜けたような青空の秋晴れだった。国立陸上競技場に出場選手が入ってきた。行進する選手の前に掲・・・

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昭和日記 1964年初めての東京オリンピック その1

13/09/09 コメント:3件 草愛やし美 閲覧数:1979

 祝、2020年東京オリンピック再びあの感動を!!

 私は、ライフワークとして5年前くらいに「昭和日記」を書いていました。その中より、今回、1964年に開催されました、東京オリンピックの思い出話を自由投稿してみたいと思います。過去作ですので、文章も整っていませんが、7年後のオリンピック開催が嬉しく、2回に分けて投稿させていただきます。私が、どんな風に初めてのオリンピックを感じたかを書・・・

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永遠の好敵手

13/09/09 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1292

「ママさん、うちの人また暴れたそうで……いつも迷惑かけてすんません」
「奥さんこっちこそいつも迎えに来てくれはって助かりますわ。重さん、奥さん来やったでぇ」
「なんや、お前、こんなスナックまでのこのこ来んでえぇのに、帰れ! わからんのか、くそったれが帰れて言うとんじゃわしはまだ飲むんや」

 美代はわしにはすぎたよぅでけた嫁やった「言うといたるわ、わしには、見合いするずっと・・・

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毒がまわる

13/09/04 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:1829

 もうあいつが追って来ることはないだろう。あいつは今頃、倒れているはず……、無様なあいつの姿。沿道では大騒ぎになっているだろう。私、早耶と、あいつ、香菜は同じ企業に属するチーム阿多川のメンバー。チーム阿多川は、マラソンチームとしては海外にもその名を知られている。
 大学こそ違ったが、中高と香菜とは同じ陸上部仲間だった。仲間……昔はそう言っていた。ライバル、都合の良いその言葉をあいつはいつも使・・・

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緊急神お告げ

13/08/26 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1649

 二千某年、その年の夏の暑さは酷いものだった。酷暑、猛暑、炎暑、激暑、暑さの形容詞を全て羅列しても足らないほどの気温が連日連夜続いた。少し動くだけでも、汗がダラダラと流れ、人々は辟易としていた。連日、熱中症で死者が出たとニュースが報じられた。地球温暖化が原因なのか、誰も正確な解明はできないまま、日々、一人二人と、熱中症で倒れる者が増え続けていた。ついには、神の怒りかもしれないと言い出す者まで現れた・・・

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荒漠の地

13/08/22 コメント:17件 草愛やし美 閲覧数:1768


──人には、記憶という技を習得する技が備わっている。覚えていることが楽しいと思う時ほど、人にとって、幸せな時はないだろう。だが、時に、忘れるという所作が、その人をより幸せにすることもある。神が、この二つの技を人間に与えたのは、生きるための最高の贈り物ではないだろうか──

  ☆     ☆

 神様、私はどうなってしまったのでしょう。気が狂ってしまったのでしょうか・・・

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トイレの女神様

13/08/13 コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:1785

 トイレに行った、すると、そこに人影が!
「ヒイ〜、誰?」
 女の子が便器に座っている。私は、一人暮らしのはず……。
「キャアーおばけぇー」
 再び叫ぶ私。それには驚かないでその子はにこりと笑って花子と名乗った。
「げっ! トイレの花子、ギャー、何で女神じゃなくておばけの花子が出るのよぉ」

私は掃除が大嫌い。俗に言う片付けられない女。汚部屋になってもゴミ・・・

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おわら風の盆

13/08/12 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1463

 今、思えば、すぐにわかるべきだった。貴女だと気づいたのは、全てが消えてしまった後だった。こんな僕のために、貴女は……。

 裏町のBARであの夜、僕は酔い潰れていた。もう終わったと呟きながら……。大賞を狙っていたわけではない、だが、せめて何かの賞という名が欲しいと、そんな甘い考えとっくに捨てたはずだったのに。だが、特別な公募だから応募してみないかと、出版社の編集者から煽てられた。創立・・・

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無口な子

13/08/02 コメント:24件 草愛やし美 閲覧数:2401

 我が子は、一言も声を発することなく、私達とは違う世界へと旅立った。何のために辛い不妊治療を受けてきたのだろうか。二十週目から、私はずっと大事を取って産院に入院し続けてきた。ようやく授かった我が子に、一言の言葉もなく逝かせてしまったのは、私の身体がいけないのだ。あの時、あんな選択をしなければ……。後悔しても遅いことも、どうしようもできないこともわかっている。それでも、私は、罪人だ。経済的な理由で、・・・

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永遠のテラ

13/07/28 コメント:4件 草愛やし美 閲覧数:1929

「成功だ! これで、この星は救われる。もう、二度と戦争も飢餓も犯罪もない、平和な世界がやってくるのだ。永遠の平和を願って、私は、何百年も研究を重ねてきた。故郷の仲間から、ソラはおかしくなってしまったと言われようと構わなかった。この小さな島国で、私は、ひっそりと研究をして暮らしてきた。故郷の星を捨ててまで、この星のためになぜそこまでと、他の仲間達に諭された。だけど、この星を滅ぼしてしまうなんて、私に・・・

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無慈悲な女(ひと)に仕えて……

13/07/25 コメント:22件 草愛やし美 閲覧数:1722

 ああ、まただ、あのきゅうり君、捨てられるぞ。この家の奥さん、昨日は、色の変わった茄子さんを生ゴミの仲間へ投入した……数えればきりがない。野菜室の前に座ったかと思うと、野菜達を一瞥し、無表情に汚いもののように指先で持ち上げ、生ゴミ入れに放り投げる。何という無慈悲な仕打ち……。可哀想な、この野菜達は、つい三日前までかろうじて息をしていた。カビどもが、侵入して来ると、あっけなかった。きゅうり君が亡くな・・・

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ウ・ラ・探偵スクール

13/07/10 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1607

 夫に裏切られた。正確に言えば、元夫、あいつは、十年間、私を騙していた。女好きで浮気を繰り返していたのに、私は全く気づいていなかった。あまりにも自分が情けなくて涙も出なかった。十年もの間も、夫を信じきっていた馬鹿な私。夫から、離婚して欲しいと言われ、初めて事実を知った私の怒りは、一気に爆発した。信じてきただけに、気が狂ったように喚いた。
「出て行け! 顔も見たくない。こっちから、離婚だー。金・・・

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よろず人探しつかまつる

13/07/08 コメント:4件 草愛やし美 閲覧数:1609

 ギシギシと廊下を踏む足音が、響いてくる。老朽化したビルの一角の、とある部屋の前で女は立ち止まった。ドアの前にぶら下がった『よろず人探しつかまつる』と毛筆で書かれた木札を見つめ女は、顔を曇らせた。木札は、かなりの年代物、字は剥げ小汚い。女は踵を返して帰ろうとした瞬間、バタンとドアが開いて男が飛び出して来た。
  ☆
「ようこそ、我がよろず探偵社に! お客様どうぞお入りください」
・・・

8

半夏生の庭

13/07/01 コメント:21件 草愛やし美 閲覧数:1775

 来るはずのない貴男を待ってみる。「今度の土曜に、建仁寺の茶席に予約入れたからね」そのメルが来たのは、この前出逢ってすぐ後のことだった。京都での逢瀬は、これで何度目だろう、何度も逢った。その日数を、数えることができるのに、私は、それを記憶の外へ、追いやる。生涯唯一愛する人、こんなに楽しい時間が、自分に来るなんて考えてもいなかった。
 初めての出会いは、普通の上司と部下として、貴男も私も、何も・・・

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迷いの美学

13/06/30 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1778

「ねぇ、萌、高校どうする? 北高、西高」
「まだ、迷っているの。部活からいえば当然西高だけど、ずっと部活続けるかどうかわからないし、進学率からいえば北高がよいしねえ」
「でも、萌は、いいよ、公立いけるもん。私なんか、私立も駄目かも、先生も親も、併願諦めて専願で陽春に行けって」
「陽春の制服可愛いよデザイナーの沙織作でしょ。美咲に、似合いそうだよ。公立では、とてもブランド制服なんて・・・

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リーズン トゥ ラブ 

13/06/27 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1590

「俺、ちゃんと働くことにしたから、これは男のけじめだ」
 誠からの言葉を聞き、私が、喜んだのは確かなこと。
「安心しろ、仕事も見つけてきたんだ、初めはバイトだけど、正社員登用もありだって、大手のドラッグストアだぜ凄いだろ」
 つきあってもう三年、誠との出会いは運命だと思っていた。友達の佳織に誘われて行ったバルのライブで、誠は、ギターを弾いていた。小さなバルは、週一で、ライブと称し・・・

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笑顔になる魔法の言葉

13/06/17 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:2101

 私は、中華そばを見ると、必ず思い出すことがある。その思い出は、「美味しかった」という言葉と共に、いつも、私の心の中で生き続けている。
  ☆    ☆
「植田さんとこに、この中華そば出前しといで」
 忙しく立ち回りながら、母は手早く岡持ちに木蓋を被せて、中華そばの丼鉢を入れた。今まで数回、出前には行かされていたが、中華そばを運ぶのは初めてだ。うどんや、丼の茶碗と違い、中華そばの・・・

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命のラーメン

13/06/13 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:2144

「加古川さん、来週木曜は究極の晩餐日、何か食べたいもんある?」
 酸素を吸入している加古川は、薄っすらと目を開け答えた。
「おおきに、わしな、どうしても食うてみたいんや。初めて勤めた町工場のおやっさんが、食べさせてくれた京都の鱧寿司が忘れられんのや」
 そう言っていた加古川は、その日、もったいのぅて食べられんなと眺めた後、両手を合わせ拝んでから鱧寿司を美味しそうに食べた。
・・・

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純金の名古屋巻き

13/06/03 コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:2047

 男は、さきほどから、喫茶店のテーブルに置かれた皿と睨めっこをしたまま微動だにしない。皿に盛られているのは「あんかけスパゲッティ」、最近、有名になりつつある名古屋B級グルメの一つだ。今朝、喫茶店の開店と同時に入ってきた男は、モーニング全種類を注文した。ウエイトレスは、後から、連れが来るものと思って注文した品を運んで行った。
 ここは、名古屋駅傍の、とある喫茶店。名古屋名物のモーニングで有名な・・・

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みどり苔

13/05/31 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:1781

「今日、何日やって聞いとるんや、おんどりゃ、耳ないんか」
「二十八日です……」
「何月分の新聞代や」
「今月五月分の集金です……」 
 小声で答えた私の言葉に、拳を振り回して、男はわめき出した。
「みてみぃ、まだ二十八日や。今月、後、何日ある、二十九、三十、三十一日、三日もあるやろわからんのか。今月分の集金ってのうのうとほざきやがって、おんどりゃ何様やちゅうんや。三日・・・

8

でら名古屋のえぇ嫁

13/05/31 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1569

「ホテル安いとこ、ネットで見つけたよ。名古屋まで出てくる交通費高いやろ、滞在したほうが、安くつくし、ミルクちゃんの体も樂やで、そうせぇへんか。うちも見舞い行くね」
「ほんまか! 彩ちゃん言うんやったら間違いないそうするわ」
 姉は、通称ミルクちゃん、色白で、走ると顔が蒼白になるのでついたあだ名だ。戦後すぐの昭和に、標準の半分の重さしかない未熟児で生まれたため、体が弱く成長もいたってのん・・・

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秘密

13/05/21 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1684

「ねぇ〜」
 彼女は僕に向かって言った。僕の頭を撫ぜながら彼女は言葉を続ける。
「お前にだけ言おうかなぁ、私の秘密……聞いてくれるかな?」
 それから彼女は意を決したように、きりっとした顔を僕に近づけた。
「ううん、絶対聞いて欲しいのお前に! 私……、わたしね、浮気したの一度だけ! あの人に内緒で。彼は私が唯一愛した人」
 彼女はそう言うと遠い目で空を仰いだ。だけどそ・・・

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へたれ新婚さん奮戦記

13/05/17 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:2346

 新婚旅行から帰って、すぐ月曜日が来て相方が新居から会社へ出かけた。いよいよ本当の新婚生活が始まったのだ。相方の帰宅時間に合わせて夕飯を作る。初めての夕飯のメニューは、ハンバーグ、相方の大好きなメニューと聞いて決めていた。大きなハンバーグをこねこねしてハート型にまとめる。焼き加減や付け合せなど細心の注意を払いかなりの時間をかけて作った。
 焼いている間に、どんどんハンバーグは膨らみ、ハートな・・・

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籤に当たった新人

13/05/15 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1766

 毎日、妻は泣きあかしていた。一月前に夫が、死んでしまったのだ。朝になっても起きてこない夫を起こしに行った妻は、変わり果てた夫と遭遇した。急いで救急車を呼んだが、夫はすでにこと切れていた。通夜も葬式も、妻にとっては、嘘のように思え、泣き暮らす妻の姿は憐れだった。それでも、時間だけは、過ぎていった。ある晩、痩せ細った妻が、夫の遺影を見て泣いていると声がした。
「泣かないでくれよ」
「その・・・

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地球の危機を救え大作戦

13/05/10 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:2005

 終わりが見える時こそ、そこに始りがある。この物語は、地球存続の危機を神に託され、日夜、海の下で生みのために、山の上で、つきやまぬ想いを尽くした姫たちの奮闘記である。

 西暦&%$#年、浦島次郎が浜にさしかかると子供たちが海亀の産卵の邪魔をしていた。海亀が卵を産もうと掘った穴を面白がって埋めている。
「こら!」
 子供たちは散り散りばらばら、走って逃げていっちゃった。・・・

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海に流された小瓶のお話

13/05/04 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1921

 私を拾ってください。何度もお願いしました。でも、この浜の人たちにも、気づいて貰えず、また、私は旅立ちました。今度は、どの浜辺に辿り着けるのでしょう。思えば、何年前のことでしょう私が旅立ったのは……。私のご主人様は、あの故郷の浜から、私を海へ放り投げたのです。私は、波に揺られ続けました。お魚に食べられそうになったこともあります。嵐の日に大波にのまれ海底へ沈んでしまい何年も海底に留まっていた時は、さ・・・

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征きし者たちの想い

13/05/01 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:8462

「母さん、これがゼロ戦! 小さいんだなあ」
「本当、こんな小さな飛行機で大きな空母に向かって逝くなんて」
「どう考えても、無駄死にだよ……」
「戦争ってそういうものよ。自分が国を救うと信じてみんな旅だたれた……母さんのおじいさんの弟さんも、ここ知覧から征かれたと聞いている」
 私は、大学生の息子を連れてここ知覧特攻平和会館にやって来た。どうしても、息子に、同じ年頃でありなが・・・

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微笑み桜

13/04/24 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1647

「あぁどれだけ待ってもあの人は来ないわ……、今年も春は終わってしまった」
 桜の木は悲しそうに呟いた。

 山奥の小高い丘の上に、いつの頃からか、見事なまでに、桜の花を咲かせる一本桜が立っていた。あまりに険しい山々を越えたところにあったため、その木を訪れる人はいなかった。

 それは、もう百年以上も前のこと。戦いに駆り出された一人の若者が、戦の途中、山道に迷った。・・・

10

奪われた時間

13/04/19 コメント:17件 草愛やし美 閲覧数:2525

 奪われた時間は、永遠に止まったまま。彼らは、待っている……寂しさを埋めてくれる誰かを。
 
  ◇    ◇ 

「お父さん、何でそんなこと聞くのよ、友達だって言ってるじゃない」
「心配なんだ、結のことが」
「男の子だって、友達なんだから、いちいち詮索しないでよ」
 私は、父に構わず、どんどん先にたって歩き出していた。中学生にもなったというのに、父はまだ・・・

7

浅草ふぁんたじぃ

13/04/15 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1869

 浅草寺の前で、雷門の大きな提灯に見とれている僕の、袖を誰かが引っ張った。
「おっさん、おらの金斗雲知らないけ?」
 乱暴な口調に僕は、むっとして振り返った。奇妙な格好をした三、四歳の女の子が、足元に立って僕を見上げている。迷子かと思ったが、何となく様子が変だ。チャイナ服なのか、空手の稽古着のようにも見える奇抜な恰好をしている。
「おっさんは、酷いなあ。僕は、この春に、大学生にな・・・

6

さいふのひみつ

13/04/08 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:1625

 ぼくには、ひみつがあります。だれにも、言ってはいけないよと母ちゃんから言われた二人だけの、さいふのひみつです。
 
 学校から帰ったら、母ちゃんが、家にいません。父ちゃんにきくと、母ちゃんは、にゅういんしたと、言いました。ぼくは、ばあちゃんに母ちゃんのびょうきのことをきいたけれど、けんさがすむまでは、びょういんには、いってはいけないとだけ、言われました。

 ぼくの家は、・・・

11

真実

13/04/02 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1976

 僕には、何が本当で、何が嘘なのかわからない。いつまで経っても、頭の中にはわからないことだらけ、だけど、あの日、僕に手渡された赤い財布は、真実のものとして残っている。

「あんた起きてたの?」
 隣室の物音に昼寝から目を覚ました僕の目に入ってきた光景は、箪笥の前で何かをしている母の姿だった。まだ六つの僕には、母がしていることを理解できなかった。
「ほら、これ、あげるよ。お腹・・・

9

13/03/29 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1958

「また負けかあ、準、補欠の準、お前何でうちのチームにいるんだ──ったくもう、やる気失せるよなあ。うちの野球部が、○○県の万年、準チームなのはお前のせいかもな。その名前が、どうにも、縁起悪すぎる気がするよ。いつまで経っても俺ら、準チーム枠から脱け出せない原因はそこにあるかもだ――ったく、やってられん」
 試合に負けて、また先輩が、愚痴ってきた。補欠の僕は、今日の試合に出てもいないのに、負けたの・・・

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13/03/27 コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:1811

ドンドンドン! ドンドンドンドン!!

 ん!? 何だ? 音が遠くから……。うーん、俺は寝返りを打った。まだまだ眠くて起きたくない。眠り続けていたいのに、うるさいなぁ、音が止まらない。
 それはドアが叩かれる音だった。ドンドンドンドン!! 激しく叩く音と一緒に聞き慣れた声がしている。
「起きてー! 大変、大変なのよ!!」
 金切り声ががんがん耳に響いて来て、俺・・・

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孤高のサーカス

13/03/25 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1795

『俺らを助けてくれたけど、それとこれは別だろデニス。俺ら猫は人間になんか、靡かねぇって……』
『兄ちゃん、オイラ高いとこ怖いよ』
 猫のソランとポランは、朝から気が重い。
『兄ちゃん、お腹空いた』」
『お前、餌のためにこの俺に、あの綱に乗っかれなんて言わないだろうな』
『言わないよ兄ちゃん、猫は人間には靡かないんだよね』
『そうだ、よく覚えておけよポラン』

9

転校生

13/03/20 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:2205

「転校生の内田太郎君です、みんな仲良くして下さいね」
「内田太郎です、よろしくお願いします」
 先生は、僕の家が、サーカスだという事は言わない、苛められるからと言って僕が頼んでいるからだ。
 まだ小四だというのに、これで何度目の転校だろう。初めは数えていたが、今では、そんなことはどうでもいい。どうせ、僅かの間しかいられない学校、友達なんてできるわけない、今までもそうだった。見せか・・・

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水のものがたり 

13/03/17 コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:1487

 少年は 初めて釣りをしました小さな川で……。ちっとも釣れないけれど少年は長い時間、糸を垂らして座っていました。
 もう諦めて帰ろうと思った時、糸がツンツンと引きました。竿を引き上げると、なんと、澄んだ青空よりも綺麗なコバルト色をした小さな魚が針にかかっていました。少年はバケツにその魚を入れました。魚はピチャピチャと音を立ててバケツの底に沈みました。ヒラヒラと 動く尾びれの先にはオレンジの・・・

9

雛人形会議

13/03/10 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:2741

「いよいよ今夜ですぞ」
「嬉しいことじゃ、年に一度の雛人形会議。今年は、どんな議案が話題になるかのぉ」
「姫様、今年もまた、新規参加希望者がおるそうですが、かなり珍しい人形だということ」
「それは、まことか、右大臣」
「そのように聞いておりまする、姫」
「珍しきとは、如何様な人形か、早う見たいものだのぉ」
「お殿様、これ以上、雛の会が大きくなるのは、わらわは嫌じ・・・

6

雛の日

13/02/28 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:2245

 雛の日が、巡ってきた。一人娘、雛の生まれた日だ。だが、今年の雛の日に、娘はいない。僅か十歳で逝ってしまった。長く生きることが叶わないとわかっていた……そのはずだった。だが、この空しさはどうすることもできなかった。胸が痛く、心は空っぽだったが、それでも、何とか耐え、私は生活していた。
 去年の雛の日、私たち夫婦は、病院から雛を連れて帰った。雛人形が飾られている居間を見た雛は、たいそう喜んだ。・・・

6

恋人みかん

13/02/25 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:1806

「大丈夫かな?」
「どんな試験だべ。それって、痛いのか? くすぐったいのだったらオイラ我慢するだんべ、だども痛いのはなあ……」
「駄目なんて言わせないぞ、俺らは絶対試験に受からなくちゃならないんだ。なにしろ俺らには、この実冠村の未来がかかってるんだからな」
「だよなあ、村のためにみんなで頑張って来たんだもん、絶対合格するよ」
「ところで、オイラまた忘れちまったよぉ、何て試験・・・

10

人生

13/02/22 コメント:17件 草愛やし美 閲覧数:1810

 唸っている私。昨日から大変な苦しみだ。産みの辛さがこれほどとは……、脂汗が滲み、硬く握り締めた拳の爪が手のひらに食い込む。それでも産まれぬ。この子はそれほど大きいのか? 産婆が呟く、こんな大きな赤ん坊は初めてだ、このまま産むのは無理かもしれぬと……。それでも頑張るしかない私は、いきんでいきんで、もうこれ以上は呼吸さえ止まるかと思えるほどいきんだ。

 突然、目の前に火花が散った。私の・・・

4

13/02/21 コメント:4件 草愛やし美 閲覧数:2331

 昭和40年代、私は先生になりたくて大学進学を目指していた。厳しかった父に反発してぐれてしまった姉二人は、中学を出ると就職したため、進学の道に進んだのは、姉妹の中で、唯一私だけだった。ずっと、我が家の商売(食堂)は、儲けが少なく、生活するのが精一杯で貧しかった。だが、父は受検させてくれることを許してくれた。受験回数は、かなり絞ったが、それでも、無理して数校受けさせてくれた。

 大正・・・

5

卒業

13/02/15 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1694

「この映画館だった、ここで私たちはあの映画を見たの……」
 憔悴しきった彩の顔が、パッと明るくなった。高校生だった忠志と初めてのデートで来た思い出の映画館は、まだそこにあった。古い映画館が、潰れていくご時世だというのに、時代遅れの空間になってはいたが、ちゃんとそのまま残っていた。
 彩は、迷うことなくその映画館に入っていく、まるで何かにとり憑かれたかのように。育ててくれた祖母が亡くなっ・・・

6

TNT映画館☆プレミアム試写会

13/02/14 コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:1737

「プレミアム試写会にご招待、TNT映画館だって……、聞いたことないね」
「N市に映画館ってあったっけ?」
「お前が、試写会に応募したんだろう?」
「ネットかなあ、私、全く記憶ないんだけど、いいじゃん、行ってみようよ」
「上映映画は?」
「TNTリメイク版怪獣映画だって、面白そうね」
 どこからか、舞い込んだプレミアム試写会の招待状を持って僕と彼女は、その映画館へ・・・

6

バレンタインの奇跡

13/01/30 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1738

 バレンタインデーになると、僕は、必ず思い出すことがある。

 あの時、僕は、まだ4歳だった。忘れられないその出来事、あの女の人は、誰だったのだろう? 僕は、手にチョコを握っていた。忘れられないことなのに、記憶の中のその女の人の顔だけは、どうしてもぼやけていて思い出せない。

 泥まみれのチョコの包装紙は、破れている。かすかに残る記憶のはしに浮かんでは消えていく文字――愛を・・・

7

宇宙船アカン号

13/01/27 コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:2695

「おはようございます。宇宙光年▼○△☆年&月$日の朝のニュースをお伝えします」
 うるさいアナウンサーの声が宇宙ステに響いている。宇宙ステとは宇宙ステーションの略ではない。宇宙棄て、要するにゴミ棄てのための宇宙船だ。地球上がゴミの星に化してから、いったい何年経ったことか。ゴミは棄てても棄てても増え続ける。焼却にも限りがある。昔から存在するダイオキシンなどの有害物質より恐ろしいdai大キシン・・・

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バレンタインには仮想商店街へ♪

13/01/23 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1902

「君が、この星を救うのだ。第四新東京村に来てくれ!」
「えっ!? 何? どうなったんだ僕は……」
「星を救うのが君の任務だ」
「あなたは、誰?」
「君の父親だよ、成貴」
「しげきって僕の名前知ってるのか、でも僕はあなたを知らないんだけど」
「今日はバレンタインデーだね、星の危機なんだ、救ってくれ成貴」
「バレンタインと星の危機とどういう関係なんですか?」<・・・

5

生滅の時に

13/01/21 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:2604

「何って言ったの、あんたって子は」
「白紙や、白紙で出してきたんや」
「あんた、高校受検何と思うてるの、どないするつもりなん」
「僕は、お寺は継がへんって言うたのに、無理やり仏教系の私立専願行けって、誰も頼んでないわ。僕は、サッカーやりたいだけや」
「お前は、寺の息子、それも長男やのに……」
「継がないって言っただろう」
 母は、悲しそうな顔をして僕を見つめただ・・・

8

修行するものたち

13/01/17 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1865

 私は、この寺の梵鐘。誰かがこの寺の鐘楼にやって来る。私は、その人にひたすら呼びかけ請うてみる。
「梵鐘をついてみませんか? この私を……一度でいいのです、この私をついて下さい。それはそれは良い音がしますのよ。ゴーンンンンンて、余韻を持ったその音は聞く者の心に響き精進できると言われています。日本の三名鐘にひけをとらない梵鐘と噂されこの寺を盛り立てています。一度鳴らしてみれば私の良さがわかる・・・

12

究極バイトどっとkami

13/01/11 コメント:26件 草愛やし美 閲覧数:2145

 正月だというのに美咲は、全く元気がない、バイト先の居酒屋がクリスマスを最後に閉店してしまったからだ。
「えーっと、究極バイト.kamiっと」
 携帯に入力して美咲は遠い目で雪の散らつく空を仰いだ。
「切ないなあ、今年もばあちゃんのいる田舎に帰れそうもないや。ばあちゃん待っているだろうなあ、今年こそ帰省できるように頑張ったのに……。でも落ち込んでられない。バイト探さなくちゃ」

5

希望の桜

13/01/09 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:2109

 目の前には海の広がりが見えます。これほどまではるかな水平線を見たのはもっとずっと昔のことでした。

 あの頃まだ私は枝振りも少なく自然花芽も僅かでした。あれから何年経たことでしょう。ごく当たり前のように時代の流れを受け止めてきました。私は、北国の小さなお寺の境内に植えられた桜です。海辺の外れにポツンとあるその寺には優しい和尚様がおられました。土塀ができ私は、海を見ることはなくなりまし・・・

10

とおりゃんせ

12/12/28 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1845

――とおりゃんせ とおりゃんせ――
  ――ここはどこの細道じゃ……
「どこ? 真っ暗じゃんか」
 塔子は、先程からひたすらに歩いていた。なぜ、歩いているのか、記憶は、全くない。ただ、歩かなければという義務のようなものを感じているだけだ。
「怖い、暗すぎる」
 ふと、手に握りしめた携帯に気づいた。
「これこれ、これがあるじゃない、塔子の馬鹿馬鹿、なにやってんのよ・・・

5

迦具夜学園モノガタリ

12/12/21 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1838

「比命理事長、来季の受験生は今季より更に減少する模様です。月世界学科、月宇宙技術学科どの学科も全てでございます。3年前から要請している月ツアーコンダクター養成学科の申請が、却下されたため、新学科を考え直さねばなりません」
「時代の流れじゃのぉ」
 ここ、迦具夜学園は月旅行のノウハウを学ぶための学校である。60年の歴史を持つが、一般世間の人々には知られていない、学園は募集も受験も全て秘・・・

10

あなたのための喫茶店

12/12/13 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:1963

 純は、家への帰り道を疲れた足取りで歩いていた。会社であったことが脳裏を過り、自然に溜息がもれる。勤続20年、男性なら表彰されて意気揚々となる時期かもしれないが、純にとってその年数は辛いものだった。お局さまと陰口を言われることにはもう慣れていたが、話す相手がいないのはやはり寂しかった。会社では孤独だった。上司から疎んじられ、他の女性社員からは敬遠されていた。相談する家族もいない純にとって、何のため・・・

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ねぇ、遊ぼうよ

12/12/11 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:2145

「ねぇ遊ぼうよ、タロ、ジロ、こんなところにいたんだ」
「返事がない、どうしたんだい、僕だよポイだよ、黙ってないで、いつものように元気に鳴いておくれよ?」
「どうしてここに座っているの、それより、いつの間にこの星に来たの? 淋しかったよ、僕……、実は一人になってしまったんだ。宇宙拡張船に乗ってある星に着いたんだけど、そこでみんな……うううぅぅぅ。宇宙ウイルスにやられたんだと、サラが言って・・・

8

毛皮

12/12/10 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1840

 何のことはない私はずっと暗闇にいるというのに、聞き続けている。うるさい奴があれこれ言ってくるものだから、眠るわけにいかないのだ。今日も私のすぐ横でそいつはため息をつき憐れな声を出してくる。
「なぁ、お前、よく平気でいられるな、こんな暗闇で。考えてみろよ僕らの不幸を……、お前も悔しいだろう、こんな姿のまま暗闇に放り込まれ、不幸以外の何ものでもない」
 私が何も答えないでいると、奴は私・・・

10

ばあちゃんとお箸

12/12/07 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:2176

 祖母は、箸を握りしめ口の中で何か呟いている。
「ばあちゃん、またこぼしたよ、あたしより下手だよ」
「脳梗塞で、お箸は無理なんだけど、ばあちゃんはお箸がいいみたい。でも、使うことはリハビリになるから、みんなで応援しようね。あなたの小さい頃、お箸の使い方教えてくれたのは、ばあちゃんだよ、ばあちゃんの時代の人は、お箸の使い方とか、達人だと思うよ」
 妻の言葉に娘の利香は小さく頷いてい・・・

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お星様のご寄付をお願いします

12/12/03 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:2731

 のろまな天使のポジは、いつも失敗ばかり、女神様はそんなポジが心配でたまりません。でも、めげずに頑張るポジを密かに応援しています。ポジが、女神様に呼ばれました。
「よくお聞きなさいポジ、あと3日でクリスマスです、でも、今年のクリスマスは迎えられないかもしれません」
「ええ!? 女神様、クリスマスのために私たち天使は、一所懸命、準備をしているというのに、迎えられないなんて、そんなことって・・・

4

たった一人のサンタ

12/12/01 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:2028

 男の名は、クロス。彼は、今年も僅かばかりの贈り物を手に、クリスマスの夜に子供たちの元を回った。彼の選ぶ子供たちに、差はない。どんなところでも、子供がいるところなら、彼は現れる。だが、一晩で回ることができる数には、物理的に限界がある。彼は、体力の許す限り回り続ける。
 ある年、クロスは、戦火に翻弄されているある国の子供の元を訪れた。枕元に、少しばかりのキャンディと一輪の花をそっと置くと、優し・・・

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コーヒー染めの恋

12/11/26 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:2936

「染めてみたの……」
 僕の前にぬっと突き出されたそのスカーフは見覚えがあった。
「確か、それって……」
「うん、そう、あなたが贈ってくれたものよ」
「真っ白だったよね」
「そう、白かった、でも、それは、過去形。こんな色になったの、コーヒーで染めたのよ」
「コーヒーって!」
「さあね、琥珀色といえば聞こえはいいけど、もう、白でなくなったわ。あの時、あなたは・・・

4

食べられなかったパン

12/11/21 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:2090

 昭和30年代、私が、小学校4年の夏休み、姉二人が家出した。家出する前に、上の姉は私に、もうこの家には帰って来ないと言った。それから、真顔になって私をじっと見て諭すように言った。
「あんただけは残り! みんな出て行ったらお母ちゃん可哀想やし」
 一応、止めたが聞く耳持たない姉の強さに、何も言えない私だった。三人姉妹の私たち姉妹の上下関係はしっかりしていた。長姉は、姉妹間で特別な存在で怖・・・

4

ウインナーコーヒー

12/11/19 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:1897

「杏子、今日は立ち寄りたいところがあるので、付き合ってくれる?」
「えっ?」
 私はその言葉が意外だったので疑問詞を投げかけしばし母の顔を見つめたまま立ちすくんだ。父の命日で、母と共に墓苑にやって来た私だったが、一瞬、戸惑ってしまったのだ。
 私には、戸籍上、父はいない。母が妊娠中に父は亡くなったと聞いている。だから、今、目の前に建っている墓石の名字は私のものとは違う。母は父の墓・・・

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アゲインエレベーター

12/11/10 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:2323

 男はベッドに横たわっている妻を車椅子に乗せると、そっと病院を出た。誰にも見られなかったことは、男にとってラッキーだった。医師の許可なしに、意識不明の妻を外へ連れ出すなんて許されるはずがないだろう。追いかけて来る者がいないかと、何度も後ろを振り返りながら、男は駐車場へと急いだ。車を走り出させ男は、ほっと安堵した。ハンドルを握る男の手は、冷や汗でじっとりと濡れている。
「安全運転だね、綾子、も・・・

2

書店で何かが起こっている!

12/11/09 コメント:4件 草愛やし美 閲覧数:1530

「おい、増刷決まったぞ!」
「本当ですか、部長」
「長かったなあ、これでわが出版社も救われる」
「長かったです……」
「お前がこの付録を提案して3年、実現できただけでも出版界に一石を投じたと考えていた。だが、売れなければ何にもならないからな」
「部長、書店からの注文がどんどん入っています」
「そうか、これで紙書籍も見直されることだろう。付録というのは、電子書籍で・・・

2

前世エレベーター

12/11/06 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1817

「早く乗ってくださらんか」
「左右、どちらに乗ればいいんですか?」
「どちらでも、お好きなほうへ」
「本当に大丈夫? 何だか怖いわ。あの人も乗るって言ったの?」
「後程、案内することになっておる。時間をずらしているのは、顔を合わせるのは気まずいじゃろうという配慮じゃよ」
「配慮なんて余計なお世話よ、もうあの人のことは他人と思ってますから平気よ」
「そうかいのぉ、・・・

4

人類の未来はシェアファミレスから!

12/11/01 コメント:4件 草愛やし美 閲覧数:1749

「ようこそ、シェアファミレスへ! お席は薔薇バイゾウ、ヨイ桜、コウヨウもみじよりお選びください」
「うーん、今日はもみじでお願いします」
「私は薔薇で……」
「かしこまりました、桜と薔薇ですね、こちらへどうぞ」
 ウエイトレスが案内した席は、それぞれの色のもの、男は桜色、女はピンクの薔薇色の座席に座った。
「ご注文は?」
「今日はポイントでかなりの金額いけそうだ・・・

3

家族ちゃん

12/10/25 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:1763

「おはよう、母さん、父さんじゃなかった。この番組はマミィ、ダディだった。自分で決めたのにもう忘れている、僕って駄目だなあ」
 起きるとすぐに彼はテレビをつける。彼の家族は、テレビに住んでいる。住むというよりビデオ番組がランダムに流れているだけなのだが、彼は日々テレビと共に生活している。彼はビデオ番組の内容によって、その都度、家族を変える。アメリカ映画の時は、呼び方は洋風に変わる。その時代に使・・・

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アイボゥ

12/10/20 コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:1743

「オイラの名前はアイボゥ、これでもれっきとした犬だよ、ロボットだけどね。この頃、誰もオイラのことをかまってくれないけど、昔は凄い人気もので、この家に初めて来た頃なんて、オイラの取り合いで家中、大騒ぎになったんだ。あちこちから、声をかけられたもんだ。オイラが原因で子供たちの喧嘩になることもあったりして困ったこともあったけど、命じられた通り、尻尾を振ったり臥せをしたりみんなのために頑張ったんだ。毎日大・・・

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大雪山伝奇 雪女と雪ん子

12/10/13 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:2036

 雪ん子は雪女の娘、雪女が愛した男との間にできた子。だが、彼女が愛した男は人間だった。素性を知られた雪女は愛する男の元を去らねばならなかった。
 雪女は北国に聳えるふるさと大雪山に戻り赤子を産んだ。大雪山は雪神の支配する国があった。雪女の父でもある雪神は雪を操る雪族の当主だ。雪ん子と名づけられたその娘は、人間にも雪族にも属さない子ゆえ、そこに住むことは叶わない運命にあった。雪女は、生まれてす・・・

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憧れのコンビニバイトに採用決定!

12/10/05 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:1681

「怖い、怖いよ〜」
 他の人にとっては何てことない夜道だろうが、私にとっては凄く怖いものだ。何時からだろう、こんな極端な怖がりになったのは……。たぶん、暗がりで凄く嫌な思いしたからかな? 極度の暗がり恐怖症の私は、暗いというだけで恐怖にかられてしまう。こんな恐怖症なのに、私のいる町は田んぼや畑ばかりで、田舎そのもの。農業主体の町だから仕方ないが、夜は底無しに暗い。街灯はあってもところどころし・・・

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タイムカプセル

12/09/18 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:1742

 四季が巡って来るように、僕はこの駅に戻って来る。このホームに立ち、君の笑顔を思い出す、それ以上にもそれ以下にもならない笑顔を……。心に閉じ込めた君はいつも笑顔でなければいけない。
 駅のあの階段を小走りで駆け上がって来る君は、僕を見つけると満面の笑みで、嬉しそうに近寄って来る、息せき切って。僕の広げた腕に飛び込んで来た君を受け止めるのが、僕の役目、君は最高の笑顔をしていて、とても可愛かった・・・

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どうにかならなかったの……

12/09/11 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1682

『オハヨウ、オキロー! オハヨウ、オキロー』

 目覚まし時計がさっきから叫んでいる。私の使っている目覚ましは言葉で起してくれるものだ。だけど、私は眠っている、だってこれは夢なのだ。まだ夢を見ていることにしちゃえ……眠いんだもの。大丈夫、あれは架空の音よ。これは夢だからまだ朝じゃない――そう考えて私は眠りを貪っている。私は金縛りにあったから布団から抜け出せないのだと言い聞かせる。そうよ・・・

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格闘技いうたら、プロレスやろ!

12/09/10 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:2425

「格闘技いうたら、プロレスやろ」
 父は懐かしそうに目を細めた。酒をやめなければ体に悪いと何度言っても聞かない。うるさく注意すると、上目使いに「これ一杯だけで終わるから」とか「息子と飲む酒は格別だから今夜だけは許してくれよ」なんて言い出す。私はその言葉に弱い。同居をしようと言っても父は頑として首を縦に振らない。それどころか、「たまに会うから酒も美味いんだ」と笑ってごまかす始末で、いつも話をは・・・

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猫は秘密諜報部員

12/09/08 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:1576

「天宮涼さんですね」
「わあ! パ・パ・パソコンが金色に光ったあ」
「パソコンの画面をお借りしてお話しています。決して怪しいものではありません。私は先日、めざしを盗んで3丁目でおばさんに追いかけられている時、あなたに助けていただいた、亀じゃなくって、猫です。猫のきんと申します」
「ね・ね・猫化けえ〜」
「そう驚かないでください。これはほんにゃく器というもので話しかけているだ・・・

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ブルームーンの夜に

12/09/07 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:1590

 ブルームーンを見ると幸せになるという言い伝え知っている? ブルームーンっていうのは、本来は月が青く見える現象のことなんだけど、天文学的には、ひと月のうちに満月が二回ある場合の二度目の満月のことをいうの。難しいことを言えば月の満ち欠けが平均29日程の周期なのに、グレゴリオ暦の1月の長さは30日余り。だから、月初に満月になると、同じ月の月末に再び満月が巡ってくることになる。
 単なる都市伝説だ・・・

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高速で駆け抜けた男

12/08/30 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:2425

 男は先ほどから自室で悶々と呟き続けていた。
「何てことだ、医者はこれ以上走るなと言った。オリンピックを夢見て誰よりも練習した結果がこれだというのか……」
 2年前、男はマラソン界で注目を浴びた。オリンピックに出場できる逸材だとあちこちのマスコミに騒がれたが、それがいけなかった。練習時間を増やしたことは却って足を限界に導いてしまった。あれほど騒いでいたマスコミは潮が引くように去ってしま・・・

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瞳に住む妖精プリネル

12/08/17 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:1770

 知っている? 瞳に住む妖精のこと。静かに! 彼はいつもひとりごちているから、静かにしていればきっと声が聞こえてくるよ。ほら、呟いているだろう。ミクロの彼は、声もとっても小さいからよく耳をすまして聞いて。それとその姿を見て嬉しくなったとしても騒いだり声をかけたりしないでね。彼に気づかれないように注意だよ。

   ☆  ☆  ☆

 この世には知らないことがいっぱいある。人・・・

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花火大会をご一緒に……

12/08/10 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1789

 ここはひなびた海辺の一軒宿、珍しく今日は泊まり客がいるようだ。

 宿の女将が挨拶にやって来た。
「ようこそ、こわい荘へお越しくださいました。女将のお菊でございます」
 襖を開けると女将が恭しく三つ指ついてお辞儀をしていた。
「今夜、対岸の八雲市で花火大会がございます。当館の裏の小泉海岸より花火がよくご覧いただけます。夕飯後にぜひ浜辺の方へお出ましくださいませ」

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忍者のご先祖さまと、ともに甲子園へ

12/08/08 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:1990

 親父の思惑通りだった。ご先祖さまも野球好きになってくれた。丁度2年前、彼は突然我が家の庭にやって来た。いや、正確には枇杷の木の下に立っていたのだ。驚いた、その姿は忍者そのものだった。腰には短刀を差し、手には手裏剣を握っていた。戦の途中だったのかと思ったが違っていた。忍術の修行中だったようで助かったのだ。戦の真っ只中に時空間移動があったのなら、彼は近づいた僕をすぐさま切り捨てたことだろう。
・・・

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神になった人間――イルカモノガタリ

12/07/30 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:2235

 しぶきをあげ今まで水面から飛び上がっていたイルカの動きが、突然止まった。警報ランプに反応したのだろう。女性トレーナー小百合と男性飼育員の僕は一斉に叫んだ。
「みんな逃げろー!」
「逃げてぇーー!!」
 会場に警報が鳴り響いている。小百合は水槽に飛び込みイルカを抱きかかえるようにした。観客はみんな一斉に席を立ち出口へ駆け出した。
「捕まったら死刑だぞ!」
 誰かの声が・・・

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精霊流しと線香花火 

12/07/27 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:2132

 ジジジージィ……。線香花火の火玉が音を立てている。線香花火はその火が終わる時に結構大きな音を立てる。まるで、命の終わりを知らせるように……。

 ジジジジィジィジィ、音が止まないので、変だなと思ってよく見たらそれは蝉だった。僕が手に掴んだ蝉が暴れて鳴いている音だった。
「洋、蝉はいけんよ、すぐに死んでしまうと、離してやらんね」
「だって、せっかく捕まえたのに……」
・・・

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この国を救うのは君だ! プロジェクトJに参加しよう

12/07/24 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:2059

「ようやくここまでたどり着いた……」
 僕は感慨深い気持ちで呟いた。このNPO団体を知ってからここにたどり着くまで、随分時間がかかったように思えたが本当のところ数ヶ月だった。
 
 僕の担当職員がやってきた。
「ようこそ安藤さんお待ちしていました。このNO378があなたの乗る自転車です。画期的な自転車発電が可能です。明日朝スタート、2時間ぶっ通しで漕ぐのですが大丈夫でしょう・・・

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嘆きの水族館

12/07/11 コメント:10件 草愛やし美 閲覧数:1895

 僕は恋をした。一昨日ここに初めてやってきたあの人に……。仲間――仲間といえるかどうかだが――ここのみんなは無関心を装っている。いつものことだが、ここでは自分以外のものに関心を持つ奴はいない。関心を持ってもしようがないと言うのが本音だろう。生かされているだけの世界、ここでは命が限られている。

 僕がここにやって来た時、水族館なんて呼ばずに生簀と呼べよと誰かが言っていた。僕には何が何だ・・・

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大分豊後名物モノガタリ 

12/07/09 コメント:3件 草愛やし美 閲覧数:1909

「本日はようこそこの豊後国鶴亀バスにお乗りくださいましてありがとうございます」
 バスガイドさんの澄んだ声がバスに響いている。
「バスガイドのとりてん、運転手はゾーリンです、よろしくお願いいたします。修学旅行にここ豊後国をお選びくださいまして、ありがとうございます。これより、皆さまを豊後名物旅へとお連れいたします」
 ガイドのとりてんの豊後かぼす姫伝説の話が始まりました。
・・・

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効能は神経痛・きりきず・愛情増進!?

12/07/06 コメント:4件 草愛やし美 閲覧数:2761

「お風呂きっと空いていると思うよ……、ここの露天風呂は赤城山が凄く綺麗に見えるそうなんだ……」
 遠慮気味にいう夫の言葉に頷いてみせた。でも入る気など毛頭ない私だ。私の体には大きな傷跡がある。2年前、夫の引き起こした車の事故のため私の体はぼろぼろになった。命は取りとめたものの大きな傷跡が残った。助手席に乗っていた私は事故の衝撃をまともに受けてしまったのだ。夫を怨むつもりはなかったが、体に傷が・・・

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国東半島 仏に導かれ出逢った女(ひと)

12/07/03 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:3113

「静けさや 岩にしみいる 蝉の声……」
 かしましく鳴いている蝉の声さえ届かない静寂の世界に彷徨いこんだかのように私の心は、穏やかな波動を描いていた。一人この地に立った私は熊野磨崖仏と対座し瞑想に耽っていたのだ。
 
 フルート奏者の私は心傷つき大分にやってきた。世間の評価など気にしていないと口にしたものの辛辣な批判の前に音楽家としての私の自信は砕け散ってしまった。未来を見失い思・・・

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六月の奇跡 約束

12/06/19 コメント:4件 草愛やし美 閲覧数:2195

「結婚式なのに、黒猫って……」
「黒猫を連れてるわよ、あの人」
「何あれ! 縁起悪いわよねぇ」
「式場に猫なんか連れてきてもいいのかしら」
「何か特別申請してるそうなんだって、でもね黒猫なんてひんしゅくものよ」

 ヒソヒソ声が式場のあちこちから聞こえてきている。だけど私は平気だ。この黒猫は私の一番大切な付き添いなのだから。
「キチ、よく見ていてね、私、き・・・

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ウエディングケーキ請負人 朝倉真帆

12/06/12 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:3170

「ウエディングケーキプロデューサーの朝倉です。今回はどうのようなケーキをご希望でしょうか?」
「私たち、香川県出身でしてうどんに目がないのです」
「香川といえば、有名な讃岐うどんですね。それで?」
「うどんケーキでお願いします」

 頼まれた私はどんなケーキであろうと絶対首を横に振らない。それは意地というものではなく、その人たちにとって一生一度の結婚式だからこそ、お式・・・

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とんかつ山のたぬきさん

12/06/09 コメント:0件 草愛やし美 閲覧数:2208

 僕は今日もこの『とんかつ伊勢』にやって来た。この席だった、この奥まった席に初めて僕はタヌ吉と向かい合って座った。向かい側のタヌ吉の緊張した顔が今でも思いだされる。もちろん人間に化けていたけれど……、その化け方のうまさには感心させられた。タヌ吉は上ロースかつ定食を頼んだ。二人で向かい合ってとんかつが来るのを待った。

「わあ! うまそうじゃな」
 人間の言葉を習ったのが仙人だった・・・

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究極結婚チャーチ

12/06/08 コメント:4件 草愛やし美 閲覧数:1964

「亜里沙、このゼゼシィに出ている究極結婚チャーチってのどうだろう?」
「何々? 究極の結婚式が出来ます――ゼウス協会、何だか怪しいネーミングね。究極って大丈夫かしら慶太」
「究極なんだから凄く素晴らしい式が出来るんじゃないのかな」
「ゼウスってあの全能の神の?」
「かもな、面白そうじゃんか、行ってみようよ」
「そうね、体験会無料だもんね」

 二人の若者は・・・

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ウエディングベルの丘 

12/06/06 コメント:2件 草愛やし美 閲覧数:2332

 長い冬が終わり、生れたばかりの白うさぎは、お母さんと一緒に初めて穴から出てきました。春の野に出た白うさぎは、丘の上で眩しさに驚きました。可愛いピンクの花が 咲いています。
「なんて可愛くキラキラ輝いているんだろう」
 白うさぎはその花に恋をしました。でも、白うさぎはその花に話したくても、恥ずかしくてどうしても話すことができません。毎日丘の上に登って行き、木陰からじっと小さな花を見つめ・・・

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京都祇園から東山へ 八坂さんの都市伝説

12/05/28 コメント:2件 草愛やし美 閲覧数:2966

「なんて人が多いんだろう」
 私は京都の四条大橋に佇んでいた。みんな楽しそうに歩いている。そんな喧騒の中、私は一人ぽっちだった。心細さにくずおれそうな心を抱え、それでも自らの足で京の地を踏めほっとしていた。
 私は死ぬつもりで京都へやってきた。なぜって、一言で言えば失恋。相手は二股も三股もかけていたのに私は有頂天だった。友人には知ったかぶりしていたが、本当のところ恋なんかさっぱりわかっ・・・

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京都伏見 酒蔵情話

12/05/27 コメント:1件 草愛やし美 閲覧数:2283

 
 母が亡くなって1年法事のため私は実家へやって来た。母は昔から丈夫な人で家族みんな病気とは無縁の人だとばかり思ってきた。病に気づいた時はもう手遅れで家族はみんな悔やんだがどうしようもできなかった。
 私は隣の県に嫁いだが、母は私のことを心配してくれた。嫁ぎ先が兼業農家だったため嫁である私は年中農作業に駆り出された。
「都会育ちのあんたに田植えなんかできるん? 腰はどない、無理・・・

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週末は、とんかつマジック

12/05/25 コメント:0件 草愛やし美 閲覧数:2434

「明日はとっておきの手品、とんかつマジックを見せよう」
 ある週末の前の日、突然お父さんがそう宣言をしました。テレビを見ていた子供たちは驚いた顔をして振りかえってお父さんを見ました。
「何? 何なのお父さん、とんかつマジックってなぁに?」
「とんかつを食べにいくぞー」
 一斉に子供たちは歓声をあげます。
「やった〜〜とんかつだ!」
「とんかつ、とんかつ、凄いよお・・・

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貴船 蛍岩に想いを寄せて

12/05/22 コメント:1件 草愛やし美 閲覧数:4087

 本日は拙い私の掌編にお越し下さいまして感謝いたしております。語り部の草愛と申します。よろしくお願い申し上げます。ここは京の都の北に位置しておりますとある川原。皆さま耳を澄ましてみて下さいませ、せせらぎの音に混じりましてあちらより話し声が聴こえてまいったようでございます。
「おはよう」
「おはよういい天気だね」
 どこからか、話し声が響いてきております。辺りはまだ暗いというのに…・・・

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