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カシヨさん

久しぶりに投稿しました。楽しんでいただけると嬉しいです。 (それにしても、2000字以内ってむずかしい……)

出没地 古い町のいろいろなとこ
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投稿済みの記事一覧

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はつこひ

14/06/21 コメント:4件 カシヨ 閲覧数:1034

 村はずれの神社はすっかりさびれ、お供えはおろかお参りに来る人もほとんどいない。 祠の柱に体を預け、じっと息を殺す。足場の悪い山中をやみくもに走ったせいだろう。痛めた足首を押さえながら、ぎゅっと目を閉じるお通は、もうずいぶん長いこと闇の中にあった。
 ふいに名を呼ばれて顔を上げると、心配そうな面持ちの男が立っていた。
「……吾助」
「心配したっちゃ。明日は祝言ちゅうのに、花嫁がお・・・

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林檎

14/06/21 コメント:0件 カシヨ 閲覧数:642

 病棟に併設されたカフェは、患者だけでなく付き添いの家族にも評判が良かった。天井まで届く窓には薄ベージュのシェードがかけられ、和らいだ明かりがフロアを包む。
 辺りは非常に混雑していた。
 先を行く郁実と、続く保科の二人は、かろうじて空いていたすみのテーブル席に腰を下ろした。
「大人になってから久々に怒られた気がする」
 笑みすら浮かべて郁実が言った。
 高校の元同級・・・

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絵梨

14/05/29 コメント:0件 カシヨ 閲覧数:728

『私たち結婚しました』

 いわゆる”いい歳”になると、そう高らかに宣言することは気恥ずかしくて、千織は当初、ハガキを出すことをためらった。とはいえ、ウェディングドレス姿はめずらしく写真写りがいい。夫の聡の「きみの好きにしたらいいよ」という言葉に背を押され、結局作ることにした。
 アドレス帳を繰っているとき、ふと手が止まった。
 中島絵梨。
 今は確か、近藤姓だったは・・・

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結婚指輪

14/05/19 コメント:4件 カシヨ 閲覧数:730

「経理の落合さんて……結婚されてるんですよね」
 まさか自分が話題になっているとは知らず、あやうく寛之はのれんに手を掛けるところだった。そっと後ずさり、ひとまず壁ぎわに身を寄せる。廊下に面した給湯室に扉はなく、その薄い布がわずかに目隠しの役割を果たすばかりだ。
「そうそう。左手の薬指。指輪してるもんね。私も最初見たときはさ、もしかしてダミーじゃないのって思ったから、本人に訊いたくらいだ・・・

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ほな、また来年。

12/05/23 コメント:0件 カシヨ 閲覧数:1905

 午後八時十五分、火床に組まれた薪の炎がごうごうと燃え立つと、明見山に船形が浮かび上がる。久しぶりに西賀茂の実家に戻った赳夫は、北の方角にそのなだらかな里山を見た。
 澤井のおっちゃん。
 盂蘭盆の最終日。送り火を見るたび、彼はそう呼んでいた人のことを思い出す。父の友人だったが、赳夫にとっても年の離れた友人のようで、誰よりも身近に感じていた大人だった。

 両親が共働きで多・・・

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恋の神さん

12/05/12 コメント:2件 カシヨ 閲覧数:1833

 石段の最初の一歩目でつまづき、よろめいて手すりをつかんだ。買ったばかりのミュールに傷がついたのは間違いない。たいした段差ではなかったが、階段の両側に立ち並ぶ朱色の燈籠に見とれていたのだ。美桜子の口からは自然とため息がこぼれ出た。
「何やってんねんな。山奥に来んのわかってて、なんでそんな靴で来たん」
 ずいぶん淡然とした声が聞こえ、とたんに彼女の気持ちはひしゃげてしまう。美桜子は「そら・・・

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京都嵯峨化野(あだしの)幽霊伝説殺人事件

12/05/09 コメント:4件 カシヨ 閲覧数:2666

 この街ではよく殺人事件が起こる。
 現場は祇園、西陣、鞍馬、嵐山あたりが多く、だいたい市内の中心部か北寄りだ。午後九時から十一時にかけて、平均二、三人が殺される。月曜か金曜、土曜日が一般的だが、木曜八時台もおなじみだ。
 
「おはよう、しょうちゃん。きのうのドラマ見た? 九時からのやつ。あれ、しょうちゃんちの裏の竹林やろ? 血がぶしゅーって飛んですごかったな。『幽霊伝説殺人事件・・・

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いけず

12/05/06 コメント:2件 カシヨ 閲覧数:2150

「京都に行ったけど、やっぱり別に意地悪なんてされなかった」

 関東出身で在住の友人が、二泊三日の京都旅行を終えて口にした言葉だ。
 京都が好きで、「いずれは町家に住みたい」とそのために貯金までしているという彼女は、京都に生まれ育った私なんかよりよほどこの地に詳しい。おいしいと噂の店や期間限定で特別拝観している寺など、色々知っている。
 そんな友人の、もう何度目になるかの京・・・

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どしゃ降り、のち、少しだけ晴れ

12/05/04 コメント:4件 カシヨ 閲覧数:2005

小松彩菜は窓ガラスに打ちつける雨がつたい落ちるのを眺めていた。始業時間はとうに過ぎている。
「おれ、好きな子ができたみたいだ」
ふいに隣から聞こえてきた声に、彼女は一瞬気づかないふりをしようとしたが、答えなければきっと男は話をやめない。
「あっそう」
顔をそらしたまま、短く言う。どうしてはっきり断定しないのか。語尾を曖昧にした相手の心理はわからないが、彩菜はそれ以上尋ねる気・・・

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