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isocoさん

ほかでの書いているもの。 http://upppi.com/ug/sc/user/1559/

出没地 東京
趣味
職業
性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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屋根裏へ恋を放る

12/10/23 コメント:0件 isoco 閲覧数:1143

 そろそろ現実と向きあわないとやばいよね。友人がビールのジョッキをかかげながら言った。きたばかりの枝豆をいくつかつまみながらニヤけている。変だ。まだ乾杯したばかりなのに、もう酔っているのだろうか。
 現実と向きあわないと何がやばいの。居酒屋特有の喧騒が鬱陶しいので、顔を寄せて聞いてみた。後ろではネクタイを緩めた男衆が大きな笑い声をあげている。友人の言葉を静かに待っていると、わたしたちのテーブ・・・

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脱皮のあと、煙

12/09/26 コメント:0件 isoco 閲覧数:1264

 右も左も真っ暗なので、あぐらをかいて深呼吸。
 何度まばたきしても、星ひとつ見えない。
 そうこうしているうちに耳から秋が入りこんできた。
 しがみつくようによじ昇ってきては、
 両耳から入りこんできた。
 いつ会っても人懐っこい。
 こうなってしまえば、
 鼻先で香るのは濃厚な闇ではなく、
 真っ赤な秋。
 背中を見せている方はそれでもまだ・・・

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優越感×劣等感

12/09/14 コメント:0件 isoco 閲覧数:1164

 私は、誰よりも、思春期のよき理解者だった。高校生にして、青春というものを熟知していた。才能だろうか。早熟なだけだろうか。どちらにせよ、同年代の子たちは、とても幼く見えた。ひよこの群れが動きまわっている。休み時間中のみんなを見ていると、ティッシュの空き箱に入れられたそんな集まりを想像してしまうことすらあった。だって、みんな、足りない。異性の目を気にしながら自分を飾り立てることで必死で、他人の気持ち・・・

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物心の再発行

12/07/20 コメント:0件 isoco 閲覧数:1371

「あら、起きてたの。ちょうどよかった」
 レインコートを着た母が部屋にやってきて言った。
「ちょっとお留守番してて。お醤油切れちゃったから」
 まだ熱があるんだからじっとしてなさい、ゲームしちゃダメよ、などとひとしきりお小言をいうと母は家をでていった。暗い室内に取り残された私は布団の中で一歩も動かず、母が出かけていく音を聞いた。自転車の留め具が外されたときの金属音や、後輪が地面に・・・

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雲でアミダくじ

12/07/16 コメント:1件 isoco 閲覧数:1499

 もうすぐ四十歳になるというのに遭難している。

 着の身着のまま気の向くままに、いつも通り近所の山に足を運んだ。それなのに山道は段々と私から方向感覚を奪っていった。それもこれも強い霧のせいだと思う。牛乳を一気飲みした後のコップみたいな、濃い白煙が周囲を覆っているのだ。歩きだそうと伸ばした足は幽霊に抱きつかれたかのように膝下からぼやけて見えた。逆に、転がる石はくっきりと見え、まるで地蔵・・・

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上半身だけ檻の中

12/07/11 コメント:2件 isoco 閲覧数:1460

「動物園の獣たちは野生というより半野生、半分が人間の保護というぬるま湯に浸かって生きているよね」
 サチエはバスの最後尾に座り、先のような難しいことを得意気に言い出したと思ったら、窓際に行儀よく立てていた十本の指を、ピアノを引くみたいに慌ただしく動かし、ちょうどいい角度で差し込んでくるお日様に向けて鼻先を伸ばした。縁側の猫みたいだ。

 エサやり体験バスというものに乗っている。ゾ・・・

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影にかくれたマネキン

12/07/08 コメント:0件 isoco 閲覧数:1420

 盗んだお金で温泉旅館に逃げてきた。盗みを働いたという罪悪感に少しだけ胸の内を抉られながら、露天風呂で全身を弛緩させている所である。手ぬぐいを温泉の中から引き上げると、つららみたいなお湯が慌ただしい音を立てた。一本一本がとても重く輝くそれらが途切れるのを待ちつつ、ここまできたらお金は綺麗に使いきろう、などという自分本位な覚悟をし始める。

 一度手をつけてしまった以上、クヨクヨ悩まず使・・・

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夫婦栽培

12/06/16 コメント:2件 isoco 閲覧数:1816

 大掃除をしていると置き去りにしてきた期待というものによくでくわす。たとえば挫折した教材とか、冒険して買ってみたけど尻ごみして結局着れない洋服とか、あとそれと、じょうろ。鏡がわりになれる銀色のじょうろ。週に一度だけ泊まりにくるあの人が置いていったじょうろ。やりきれたことといえば庭に植えたトマトを枯らしただけのじょうろ。僕らが一緒に作った期待の数だけ穴が空いたじょうろ。

 刃物は置いて・・・

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消灯させない

12/05/18 コメント:0件 isoco 閲覧数:2325

 お賽銭箱の前で、幽霊に声をかけられた。
 初対面の幽霊である。それなのに、久しぶり、会いたかったよ、などという。メガネをかけた薄い顔立ちをした男性だ。身の危険を感じ、即座に逃げようとするも肩をつかまれた、はずなのに彼の手は私の体を通過した。彼は透けているのである。

 一万円札をお賽銭箱にいれ、再生させたい者の名前を唱えながらお参りすると、その死者を蘇らせることができる。ここは・・・

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雨の精

12/05/04 コメント:0件 isoco 閲覧数:1764

 カエルが私に向かって恨みごとを言う。
「わしの背中で遊ぶなんていい度胸だ。仕返ししてやる」
 魔法を食らえ、カエルは言うと、ゲッ、ゲッ、ゲッ、と空へ向かって三回鳴いた。とたんに雨の勢いが強くなった。いっきにザーザー振りだ。真夜中だからまぶしいはずがないのに目を細めないと空を見上げられない。前髪はもう張り付きはじめている。すべり台の上をすべる雨粒を見て、深夜の公園には雨が似合うな、と思・・・

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嘘からでたホンマ

12/05/03 コメント:1件 isoco 閲覧数:1942

「ちーちゃんって猫みたい」
 名前が?それとも顔が?私はたこ焼きを頬張っているからたこ焼きみたいな顔をして首をかしげるだけで、何が猫なのか声をだして聞こうにも聞けない。
「性格がほんとさぁ、猫みたいなのよ」サチエはそう言ってブランコを漕ぎ始めた。自分の膝の上に乗せているタコ焼きからかつお節が舞うと、魂がもう猫だね、こっちに首だけ向けて言ってくる。
 魂が猫。見た目は人間なのに魂は・・・

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