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tahtaunwaさん

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投稿済みの記事一覧

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恋の落人

12/06/20 コメント:0件 tahtaunwa 閲覧数:2337

「ここ耶馬溪町の雲八幡神社で行われる河童祭りには、およそ300年の歴史があります。
源氏に敗れた平家の落人の妄念が河童となって悪さをしていたため、その霊を鎮めるために始まったのが・・・」
 レポートをしながら切ない気分がこみ上げてきた。戦に敗れて逃げてきた落人か・・・。
まるで私みたい。すっかり結婚する気でいたディレクターの彼氏を後輩アナウンサーに略奪された。実際には彼が若い娘に・・・

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狐の嫁入り

12/06/06 コメント:1件 tahtaunwa 閲覧数:1811

 その老人ホームは、のどかな田園の中にあった。青々とした芝生の庭からは稲荷山が見える。誰が読んだのか、またの名を“天国へのスロープ”という。
 
 久々に娘が老人を訪ねてきた。ウエディングドレスを着て。
「お父さん、長い間、お世話になりました」
 芝生に三つ指をついて頭を下げる。
「私、お嫁に行きます」
 こんな光景、こんなセリフを、昔、見たことがある。老人は思・・・

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とんかつ雲

12/06/02 コメント:0件 tahtaunwa 閲覧数:1921

 母の葬儀も済んで東京に帰ってきた。今日から職場である「とんかつ伊勢」の厨房で見習いコックとしての生活が再開される。
 会う人のごとに「大丈夫か?」「顔が暗いぞ」と言われるのは何故だろう?自分では精いっぱい笑顔を浮かべているつもりなのに。
 理由は分かった。この雲のせいだ。なぜか田舎からついてきた。俺1人分の小さな雲。頭上50pほどのところにずっと浮かんでいる。おかげで炎天下でも僕の顔・・・

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29階で途中下車

12/05/18 コメント:0件 tahtaunwa 閲覧数:1918

 気がつくと「とんかつ伊勢」という店にいた。
「大丈夫ですか?」エレベーターガールのコスプレをした女が覗き込んでいる。「途中で気分が悪くなっちゃう魂、いるんですよね。上はとんでもなく高いところにありますから。高山病みたいなもんです」
「ここ、どこ?」
「新宿NSビル29階、とんかつ伊勢でございます」
本当にエレベーターガールなのか?でも、そんなビル、来た憶えがない。
・・・

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天狗さまとキス

12/05/11 コメント:0件 tahtaunwa 閲覧数:1713

 闇に閉ざされた鞍馬の山中。今にも燃え尽きそうな松明を持った女がひとり、さまよっていた。髪は乱れ、着物はボロボロ、素足は泥と血で染まっている。
「天狗様!どうか、義経様の仇を討ってください!憎い頼朝の首を!この願いが叶うなら私のこの身を差し上げます!」
 女の叫びは鞍馬の山中にこだました。だが、それに応えるものはない。
 女は力尽きた。神仏にも見放されて、この山で人知れず白骨にな・・・

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日傘の下で微笑んで

12/05/10 コメント:1件 tahtaunwa 閲覧数:1741

 記憶の中で、母は、いつも日傘を差している。僕が太陽の下を走り回っているのを微笑みながら見守っていた。
 その母と日傘は、同じ棺に入って燃やされて、煙になって天に昇っていった。以来、僕は空ばかり見上げて暮らすようになった。そんな僕の目を心配して、父はサングラスをくれた。
 サングラスをかけた小生意気な男の子は、日傘の女の人が歩いていくのを見るたびにあとについていった。母が戻ってきたのだ・・・

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昼行燈

12/05/08 コメント:1件 tahtaunwa 閲覧数:2556

 幕末の京都。とある居酒屋で、関東から上洛してきたばかりの浪人が売り出しに躍起になっていた。男の名は大田一蔵。
「わしの名前は江戸ではちょっとしたものだったぞ。ある道場主などは、道場破りが来るたびに助っ人を頼みにきたくらいでな」
「そんな情けない道場主がありますかね?」
 一緒に飲んでいた瓦版売りが疑いの目を向けた。
「わしを疑うのか?」
 そのとき、一蔵の目に店の奥・・・

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蛇の目の恐怖

12/05/07 コメント:0件 tahtaunwa 閲覧数:1919

 降りやまない冷たい雨を、ただ見上げている。なのに何だかうれしい。うきうきしている。もうすぐママが迎えにきてくれるのが分かっているからだ。ママと一緒に相合傘で家に帰る。ただそれだけなのにうれしくてたまらないのだ。
 来た!ママだ。大きめの大人の傘を差して、手には小さめの傘を持っている。な〜んだ。相合傘じゃないのか。ぼくは、ちょっとがっかりした。
 大きな傘と小さな傘。ふたつ並んで歩きだ・・・

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濡れた傘に御用心

12/05/03 コメント:0件 tahtaunwa 閲覧数:1880

 雨の人混みの何が嫌いかって、無神経に傘を振ってるやつほど嫌いなものはない。後ろを歩く人間の足を突き刺す勢いで傘の先を突き出してきやがる。思うに、そういうのは男より女に多い気がする。今、俺の目の前を歩いているこの女のように。
 危ね!またか。あやうく俺の脛に刺さるところだ。あの金属製の鋭利な尖端が当たったら間違いなく怪我するぞ。
 どんな女なんだよ。生意気な尻しやがって。確かにそそる曲・・・

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座敷わらしと柱の傷

12/04/30 コメント:0件 tahtaunwa 閲覧数:2075

 また引っ越しのトラックがやってきた。
 真っ先に家の中に飛び込んでくるのは子供たち。
 いいぞ。一緒に背比べしよう。柱の傷に思い出を刻もう。
 写真は嫌いだ。僕だけぶれてしまうから。
 だから、背比べしよう。
 今でも傷に触れると、血が噴き出すように思い出が甦る。
 
 悪ガキたちの罵声を背に帰ってきたきみ。
 歯を食いしばるその頬をそよ風のふりし・・・

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菖蒲湯の鯉

12/04/27 コメント:1件 tahtaunwa 閲覧数:2943

 幼い頃の我が家は貧乏で、鯉のぼりなんてありはしなかった。端午の節句の恒例行事といえば、父に連れられていく近所の銭湯の菖蒲湯くらい。もっともガキだった当時の僕には菖蒲湯のありがたみなんか分からなくて、お目当ては他では見ることのできない鯉の絵だった。
 それは、銭湯に来ていたどこかのおじちゃんの背中に鮮やかに描かれていた。滝を昇る一匹の緋鯉。持ち主の背中の筋肉と一体になって、まるで生きているよ・・・

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