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松定 鴨汀さん

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将来の夢
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投稿済みの記事一覧

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ずるずる

14/06/30 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:670

 この道を進むと決めた当初、私はなぜ道にびっしりと手形がついているのかを知らなかった。
 噂によれば、ハリウッドには有名人の手形やサインが道いっぱいに広がっている観光名所があるらしいから、その真似でもしているのかと思っていた。だって、ほら、この道に進む人って、大抵、最終的にはそこを目指しているだろうから。

 でも、違った。
 こっちの道の手形は、くぼんでいるんじゃなくて、・・・

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私こそが

14/06/02 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:638

 彼は私を愛していた。
 私も彼を愛していた。そして、彼を殺した。

 彼がこの国に来て、はじめてが私だったんだって。
 そんな些細なきっかけで、30年近くも付き合ってた。

 彼は人を殺す前、かならず私を必要とした。そんな時はわずかに、ほんのわずかに手が震えていたから、すぐにわかった。
 彼は人を殺した後も、かならず私に慰めを求めた。そんな時は、彼の身体・・・

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赤い門

13/04/22 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:1287

 夢をみていた。
 夢では3年間の浪人生活が報われていた。
 桜吹雪のなか、意気揚々と東大の正門の前にたち、シンボルである時計台を仰ぎ見る。
 勝ったのだ。ついに私は第一志望を勝ち取ったのだ。
 これから私は輝かしいキャンパスライフへ、約束された未来へ、新たな一歩を踏み出すのだ。

 が、いざ一歩進もうとしても、すすめない。
 気づけば、すでに前には有象無・・・

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がまぐちおじさん

13/04/08 コメント:2件 松定 鴨汀 閲覧数:1495

 あなたの町にはもう『がまぐちおじさん』は来ましたか?
 おや、ご存じない?

 『がまぐちおじさん』は山高帽をかぶったおじさんでしてね。
 夕暮れ時によく現れるんです。
 学校帰りの子供たちが公園で散々に遊びつかれて、おなかもすいたことだしそろそろ帰ろうか、という気分になるころに、ふらっと現れてこうたずねるんです。
「がまぐちはいらないかい?」
 って。・・・

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あまったおひなさま

13/03/10 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:1759

「ねえせんせい、おひなさまって1人じゃないの?」
 紙コップと折り紙でつくったおひなさまを先生に渡しながら、さちこちゃんはたずねました。
「それは、さちこちゃんのおうちのおひなさまが1人だから?」
 先生はさちこちゃんのおひなさまを手のひらでそっと宝物のようにうけとると、赤いテーブルクロスをかけた長机のひなだんにかざりながらたずねられました。
「うん」
「じゃあ、さち・・・

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拍手兄さん

13/02/25 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:1200

 たくさんの受験生が息をとめて見守る中、ついに時間が来た。
 校舎の前に張り出される大きな紙。

(あった!)

 僕は安堵した。
 他の受験生たちの悲喜こもごもの叫び声の渦の中、次第に実感と言いようもない喜びがわきおこる。
 ここまでこれたのは『拍手兄さん』のおかげだ。

 『拍手兄さん』が何者かは僕は知らない。
 最初にであったのは私・・・

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オンエア

12/10/29 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:1057

もしもし、ワシやワシ。
実の兄貴の声を忘れんなや。
ところでおまえ、今、テレビみとる?
あー、明日は昇進試験やからそれどころやない? すまんすまん。
でもなー、明日の今日やろ。今からやってもあかんあかん。しょせん付け焼刃や。あきらめなはれ。
それよか、今3チャンみてみ。ワシ映ってんねん。キヒヒヒ。
映っとらへん? は? 司会の女子アナしか映っとらへん? あたりま・・・

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ラテアート

12/10/29 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:1174

 私はなにも気づいていない。
 いつものように無邪気なそぶりで、いつものように連れ立って歩いて。
 彼の不機嫌そうな顔も、時々見せる憐憫のかけらも、そう、全然気づいていない。
 つなごうとした手をふりほどかれちゃった時には、さすがにすこしくじけたけど。
 大丈夫。気づきそうになったこと、きっと彼には気づかれなかった。
 私は私。いつもの私。
「どこに行こう?」っ・・・

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押し出し

12/09/10 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:1369

「見事な押し出しです。もう一度見てみましょう」
「まずはふいをついた体当たり」
「相手は怯むことなく取っ組み合いに」
「相手は執拗に足を狙っていたようだが」
「包帯していましたから。一週間前の負傷で」
「際までもつれあった上で、腕をかえして相手の重心を崩したのが決め手になりましたね」
「もはや完璧な死に体だ」
「半年ほど前から申し合いもあったのですが、まさ・・・

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やぶれ坂

12/08/06 コメント:1件 松定 鴨汀 閲覧数:1388

 やぶれ坂を自転車で上がりきれば、願いがひとつ叶うという。
 ただし、一度も足を地面につけてはいけない。
 自転車で進むうちに恐ろしいことが起こるが、それに惑わされてはいけない。

 とくに最後の言い伝えのせいで、僕ら近隣の小中学生は勾配的にはゆるやかなこの坂を極力避け、通らなくてはいけない時はわざわざ自転車を押して歩いた。


「本当にやる気かよ」

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超体験型水族館

12/07/02 コメント:3件 松定 鴨汀 閲覧数:1739

 ようこそ! ミステリーツアーのお客様方

 当水族館はすでに閉館、皆様の他にお客様はいらっしゃいません。
 順路も時間もお気になさらず、どうぞご自由にお楽しみください。


 ほう、そんなにクラゲがお好きで?
 潮の流れに身を任せ、ふわふわと優雅に漂って…
 …いっそ、クラゲになってみませんか?
 いえいえ、戯れ言ではございません。
 ・・・

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安寧の日々の終わり

12/06/25 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:1508

「汝はこの男を夫とし、良きときも悪きときも……」
 ついにこの日がきた。
 待ちわびていたこのときが。
 
 思えば長かった。幼馴染は成人する一歩手前で病死し、一人目の彼は結婚式前日に圧死した。
 もう誰も好きになるまいと思っていたところにあらわれたのが、今、隣で神妙に神父様の言葉を聴いている彼である。

「……死が二人を分かつまで、ともに添い遂げることを・・・

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観音様の赤い糸

12/06/25 コメント:2件 松定 鴨汀 閲覧数:1695

「へぇー、赤城山がよく見えるぞ〜!」
 なんとかとバカは高いところが好きという言葉の通り、寛治ははしゃぎっぱなしだ。ここは高崎白衣大観音の内部。ありがたみがないほど人工的な白い壁に囲まれて、しんどいだけの朱塗りの急な階段をあがりきった9階、最上階。こんな苦行でもやる気になれたのは、ひとえにここにまつわる噂があったからだ。

『高崎観音山の観音様に入ったカップルは破局する』
・・・

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ほんまごめん、あのときのおやつ

12/06/11 コメント:4件 松定 鴨汀 閲覧数:1783

 たっくん、げんきですか?
 ぼくはげんきや。
 あたらしい学校は、たっくんの学校よりたくさんたくさん人がおるよ。山のようにおるよ。
 てん校生も多いから、ぼくみたいなやつはぜんぜんめずらしくあらへん。
 とおくからじろじろ見られるだけってこともなく、5日もしたら、ふつうに友だちが何人もできたよ。
 たっくんの学校とえらいちがうやろ?
 ぼく、たっくんの学校みた・・・

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ウルトラマン定食

12/06/01 コメント:5件 松定 鴨汀 閲覧数:1976

 入口をみた時からもしや、と思っていたが、席について確信した。
 ここだ。父が僕らを連れてきてくれた場所は。
 NSビル29階。新宿の街が眺められるとんかつ屋「とんかつ伊勢」。
 もう20年も前のことなのに、はっきりと思い出されるのは、仕事一筋だった父との数少ない思い出だからだろうか。

 たしか日曜日だった。
 兄が急に、『お父さん』という題で作文を書く宿題・・・

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さよなら係長

12/05/14 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:1899

「係長の栄転を祝って、かんぱーい!」
 一斉に掲げられるビールに新宿の夜景が黄色く映る。
 宴会用に仕切られた、窓際の5つの4人がけテーブルのちょうど真ん中。
 普段スポットライトが当たるのに慣れていない本日の主役は、しばらく居心地わるげで落ちつかない風だったが、ビールを飲んで人心地ついたのか、目の前にいる今日の幹事に声をかけた。
「藤田君、ここを予約してくれてありがとう」・・・

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葵祭と教授たち

12/04/30 コメント:0件 松定 鴨汀 閲覧数:2270

 ある年の葵祭の日、京都工芸繊維大学の教授は講義がはじまるなりこう言った。

「皆さんの多くは、京都にきてようやく2ヶ月目ですね。今日は本当に京都らしい伝統行事がありますから、京都の大学に来た醍醐味を味わいに行ってください。講義は以上!」
 そして学生が歓声をあげながら去っていくのを見届けると、自身の研究をしにラボへ戻っていった。



 同じ頃、立命館大・・・

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「ねえ、はいる?」

12/04/18 コメント:2件 松定 鴨汀 閲覧数:2125

 GWもGWが名残惜しい時期もとうに過ぎ、私は会社という日常に戻っていた。
 今日も6時とは思えぬ強い日差しを浴びながら駅へと歩く。通勤地獄のスタートラインへと。

 駅が見えてきた。どんどん人が吸いこまれていく。数分後には自分もそのうちの一人かと憂鬱な気持ちになっていたものだから、ふいにかけられたその声に最初は気がつかなかった。

「ねえ、はいる?」

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まだ駄目だ

12/04/16 コメント:2件 松定 鴨汀 閲覧数:2766

雨の夜の帰り道。
きみは一人ではない。
きみの傍にはたくましい男性が並んで歩いている。
きみはその男性の手をにぎり、そのぬくもりを感じでいる。

だが、駄目だ。まだ安心してはいけない。

きみのカーディガンの袖は2人分の傘からしたたる雨水をぴとりぴとりと吸い込んで、変色している。
しかし、彼はまだ気づかない。
会社であったこと、将来の夢、昨日見・・・

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大喜利市の居酒屋

12/04/15 コメント:3件 松定 鴨汀 閲覧数:1973

 平凡な町、大霧市が『大喜利市』ともじって町おこしをはじめたのは数年前のこと。
 知名度がUPしたとは聞かないが、市民はわりと楽しんでいる。


 例えば、駅前に並ぶ居酒屋には『本日のオススメ』とともに、こんなものが貼りだしてある。


〜居酒屋A・先週の大喜利〜

お題:店に入るなり店主が「出ていけっ!」 いったいどんな人?

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まんなかの緋鯉

12/04/06 コメント:2件 松定 鴨汀 閲覧数:2271

「ねえ、あれって僕達みたい!」
 久々に3人で買い物に出かけた、その帰り道。
 彼の子が指差したのは、戸建の屋根にはためく鯉のぼりだった。
「1番上の青いのがパパ。1番下の小さいのが僕なの」
 無邪気な声の続きが怖くて、私は先回りをして訊ねた。
「じゃあ、真ん中の赤いのはお母さんかな」
「ちがうよ! お母さんはどっか遠くに行っちゃったんだから」
 指差して・・・

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