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ゆひさん

http://ameblo.jp/yuhi2

出没地
趣味
職業
性別 男性
将来の夢 言葉を生業とすること。
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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兄からの手紙

13/04/17 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:1169

 本当は双子のはずだった。だけど、母さんのお腹の中でぼくが”にいちゃん”と呼んでいたその彼は、この世に出ることなく、死んでしまった。その事実は両親も知っている。だけど、ぼくほどそのことを深く思ってはいないだろう。信じられないかもしれないが、にいちゃんは生きているのだ。ぼくの心の中にだけじゃない、ぼくとは別の世界で、確実に。その証拠は、こうやって届く、手紙だ。

 元気か? 最近なにか悩・・・

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かくれんぼ

13/02/09 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:1278

 それはただ、ひとり丘の上のベンチに座り、落ちていく太陽を見てた時のこと。
「きれいだね」
 ぼくのとなりにやってきて、そうつぶやいたのは、まだ赤い風船が似合いそうな幼い女の子。
「うん。きみはひとり?」
「かくれんぼしてたら、いつのまにかみんな帰っちゃったみたい。私、隠れるの得意なんだ」
 女の子はニコニコ笑っている。
「そう。みんな探してるんじゃない? この・・・

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二者面談

12/12/12 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:1330

「じゃぁ、最後に何か質問ある?」
 二者面談もこの生徒で最後。彼は、クラスでは特別目立つわけでも、脇役に徹するわけでもないような、どこかつかみどころない生徒だ。いつもはこんなこと聞かないのだけど、そのときはひと区切りしたかったのか、そう聞いていた。そして、その子がそんなことを聞いてくるとは思ってもいなかった。
「先生は、どうして不倫してるんですか」
 私は思わず「え?」と声を出し・・・

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僕らの子供は柑橘系

12/12/06 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:1914

 正月は、おせちよりも雑煮よりも、みかんがあればそれでいいと、僕は思っている。だから、ネットに入ったみかんなど、眼中にない。正月のみかんは、箱入りに限るのだ。そんな箱入りのみかんが、底をつき始めている。彼女が買ってきた、そのみかんは「三ヶ日みかん」という静岡産の、みかん。大みそかに買ってきたそれは、「三ヶ日」の名の通り、三日でなくなりそうな勢いだ。

「この3日で、どれだけビタミンCを・・・

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今日からオレは!

12/11/12 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:1399

「今日からオレは、コーヒーを飲むことにする」

13才になった日の朝、彼はパンをかじりながら、そう宣言した。
私はコップに注いでいた牛乳をテーブルに置いて、
「育ちざかりなんだから、牛乳のほうがいいんじゃない」
と、諭すように言った。

「牛乳は、給食に出てくるし、カルシウムは不足してない。
ほらだって、オレ、思春期だっていうのに、怒りっぽくもない。・・・

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バスに乗って

12/11/12 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:1420

私は今でもお父さんとお母さんがやりなおせばいいと思ってる。

私の心の中の幼い私が、
どうしようもなく泣いている。

きみはあのとき、泣かないことを決めたでしょ?

私はその子にそうやって言い聞かせる。

そうだったね。もう泣かない。

そうやって、幼い私をよしよしとしてあげるのも、
もう手慣れたものだ。

両親が・・・

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あなたは生きている

12/10/05 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:1213

「どうしましたー?」

犬の散歩をしていた近所の長瀬さんに声をかけられた。
私は犬小屋に手をかけてたところで、突然「わぁ!」と声をあげたのだ。

「あぁ、いいえ。今日はいい天気ですね」

私は冷静を保って、そんな当たり障りのない挨拶を返した。

「えぇ、本当に」

長瀬さんの連れている犬は「チャキ」という。
チャキは我が家・・・

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スナフキン

12/10/02 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:1316

スナフキンが好きだ。 孤独だけれど、ムーミン谷に帰ってくるスナフキンが好きだ。北海道に行って、友達に会っているとき、 ぼくはふと、スナフキンではないか、と考えた。別に孤独じゃないし、旅人でもないけれど。ギターもハーモニカも、緑の布切れも纏っていないけれど。 それでもなぜか、ムーミン谷に帰ってきたような気持ちになったからだ。もしも本当のムーミン谷に行ったとしても、 カバとかニョロニョロとした・・・

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ペデストリアンデッキ

12/09/03 コメント:1件 ゆひ 閲覧数:1391

「ペデストリアンデッキ」 高架等によって車道から立体的に分離された歩行者専用の通路のことをいう。 つまりここ、仙台駅西口ターミナルの上に作られたコンコース。 その「ペデストリアンデッキ」に、彼はいた。
「柏駅東口も、ここと同じ作りになっているんだけれど、そこの通称は「ダブルデッキ」と言うんだよ。どうして? っていうのは、ナシね? それ以上は知らんから」
ペデストリアンデッキの・・・

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恋時計

12/08/27 コメント:1件 ゆひ 閲覧数:1427

私の部屋の壁かけの時計は3時5分のまま、止まっている。
もう2年近くもずっとだ。

電池が切れていて、その電池を交換するのが面倒なだけ。
極めてまっとうな理由だけれど、それを気に掛けながらも、
時計を動かそうとしない私はまっとうではないのかもしれない。

私にはそういうものが多い。
たとえばブックオフで大量に購入する105円の小説も、

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ボウズアタマ

12/07/28 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:2020

「この暑い中、よくやるね」

彼女のその言い方は、なんの悪意もないものだ、と僕は読み取る。
だから、「ほんとだね」と相槌を打つことに終始した。

テレビの中では、高校球児が白球を追っている。
気温は35度を越えている、と、実況が言葉を挟むと、
彼女は「ひゃー」と、驚きの感嘆詞を声にした。

まるで野球に興味のない彼女は、
小顔になるという・・・

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存在と時間

12/07/16 コメント:1件 ゆひ 閲覧数:1478

気分転換に部屋の模様替えをしていた、春の夜。
押し入れの隅っこに置いてあったそれが目に入り、時間が止まる。

去年の夏にしなかった花火の束。

手を伸ばしそれを手に取ると、
歯磨き粉の匂いがする。

そういえば、花火と歯磨き粉をいっしょに買ったんだった。
それが入った袋を私が落としてしまったとき、
彼がそれを避けきれずに踏んでしまって、<・・・

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めぐさん

12/07/10 コメント:1件 ゆひ 閲覧数:1627

隣の部屋から、めぐさんの声が聞こえてきた。

「起きてるかー!」

起きてるに決まってる。
あと10分もしたら出勤しなければいけない時間だ。

「またチャリ乗せてってことー?」

大きな声なら聞こえるほどの薄い壁に向かって、ぼくはそう返事をした。
その数秒後には、ノックもせずににめぐさんが、ぼくの部屋のドアを開けた。

「お、・・・

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安いドラマ

12/06/02 コメント:1件 ゆひ 閲覧数:1832

それはもう少し、若かったころのことだ。

町のすみっこの小さなカフェで、僕と彼女は別れ話をしていた。
ドラマでよくある風景だなぁ。長い別れ話の最中にそんなことを考えて、
ふとカメラを探してキョロキョロしたりした。
けれどそれはどこにもないから、あぁ、現実なんだなとわかった。

現実は、たぶん安いドラマよりひどい。

このコーヒーを飲み終えると、・・・

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おやすみなさい、また明日

12/05/09 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:1881

お父さん、元気にしてますか。
私はいま、修学旅行で、京都に来ています。
新学期が始まったばかりで、まだ新しい友達もできてないのに、
泊まりがけで旅行なんて、私はちょっと変だと思うな。
でも、知らないところに行くというのは、楽しいとも思った。
お父さんも、私の知らないところで、楽しくしているのかな。
そうだったら、いいな。

今日は、清水寺に行きました・・・

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佳奈子の傘、琴子の手

12/04/16 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:2041

雨の日、琴子が窓に顔を張り付けている。

彼女は外に行きたいのだ。
その仕草は、佳奈子と同じで、
私は少し不思議な気持ちになる。

「おかあさん、おさんぽ、いきたい」

その口調も佳奈子とそっくりなものだから、
思わず、琴子のことを「佳奈子」と呼んでしまいそうになる。
間違わないように気を付けながら、
「琴子も雨が好きなんだねぇ」<・・・

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初めてのデート

12/04/06 コメント:1件 ゆひ 閲覧数:2115

映画を観に行こう。と、友浦君に言われて、
あっさりと私は「いいよ」と返事をした。

いちおう、友浦君と私は付き合っている。
「いちおう」というのは、
「好きです」「私も」というやりとりをしたからなのだけれど、
いまいち、「付き合う」という感覚が、わかっていない。
そして、まだちゃんとデートもしていない。

友達に相談すると、「チュウしたら、恋人・・・

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ぼくと彼女と、たこわさび

12/03/21 コメント:1件 ゆひ 閲覧数:2796

「やさしくなるには、どうしたらいいんだろう……」

彼女は、そう言って、ぼくが頼んだ中ジョッキを飲み干した。
まずは人のお酒を横取りしないことから始めたらいいんじゃないですか。
そう言ってみると、彼女は「いいこと言うね」と満面の笑みを浮かべた。

「ところで、いいんですか? あっちは」

ぼくは”あっち”を指さす。
彼女はどこかの職場の飲・・・

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44.6メートルの空

12/03/07 コメント:0件 ゆひ 閲覧数:2945

新宿の高層ビルの25階。
昼休みのチャイムがなる2分前に、窓の外を眺めた。
徹夜明けで、瞼は今にも閉じそうなくらいに重い。
狭くなる視界に映るのは、地上100メートルの空だ。

ふと、10年前の出来事が脳裏に浮かんだ。

そのときぼくは、仕事で大失敗をして、ひどく落ち込んでいた。
どこかに逃げたい、本気でそう思い詰めた。
そして辿り着いたのは「・・・

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