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娼婦ローズマリーの遺言

18/01/13 コメント:0件 冬垣ひなた 閲覧数:335

 リンダが深い川に身投げしたらしい。派手な看板を掲げ軒を連ねた娼館では噂でもちきりだった。遺書はあったが死体は見つからずじまい、下働きでしかない娘とはいえ、その死は様々な憶測を呼んだ。
 愚図で痩せっぼっちだったリンダ。
 7歳で借金のかたに売られたこの娘が、年頃になるのを待ち誰が『水揚げ』するか賭ける客もいて、猥雑な生活に嫌気が差したのだ……と憐れむ者もいたが、娼婦の一人は首を横に振・・・

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或る女のこと

18/01/13 コメント:2件 野々小花 閲覧数:337

 四畳半の小さな部屋に住んで一年になる。アパートというよりは簡易宿所といったほうが正しいのだろう。風呂は無くトイレは共同で、住んでいるのは優一と同じく日雇い労働者がほとんどだった。壁には拾ってきた、いつ壊れてもおかしくない振り子時計が掛かっている。
 その壁の向こうから、くぐもった声がする。男と女の声だ。何かを叩き割ったり、女が殴られる音も聞こえないから、どうやら今日はマシな客らしい。優一は・・・

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傷跡に零れる

18/01/13 コメント:4件 野々小花 閲覧数:416

 待ち合わせのカフェに着いたのは、有希子よりも私のほうが早かったらしい。いつもの席に座ると、透明なグラスと水の入ったピッチャーが運ばれて来た。  私は溢れそうになるくらいまで、ゆっくりと水を注いだ。水は溢れそうで溢れない。もう少しなら足せる、と思ったところで、聞き慣れた静かな声が頭の上から降ってきた。 「こぼれるよ、水」  有希子が表情のない顔で私を見下ろしている。 「表面張力が見たくてさ」  お・・・

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上条家の丙午の嫁

18/01/13 コメント:0件 斎藤緋七(さいとうひな) 閲覧数:292

玄関のチャイムが鳴る。 「またか。」 十三日トミカは台所で飲んでいたビールを慌てて隠す。 昼間から、ビールなんか飲んでるところを親戚連中に見つかったら、何を言われるか分からない。 「十三日さん?いないの?」 姑・繁の声だ。 「いますー。」 「なんだ、いるんじゃない。」 繁、登場である。 また、鍵を開けて勝手に入ってきている。 ここは「息子の家」だと言う事を夫の和喜側の親戚はまるで分っていない。 「・・・

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ナズナ

18/01/13 コメント:2件 そらの珊瑚 閲覧数:291

 明け方、私の布団にもぐりこんできたのは、やわらかな白い毛糸玉。 「ナズナ、また朝帰りか。このあばずれめ」  眠りの浅い私は、起こされた腹いせに小さく舌打ちしながらそうつぶやいた。彼女は返事をするかのように、ごろごろと喉を鳴らした。  発情期になると、ナズナは雌であるという呪いが突然かかったように、私がドアを開ける隙を狙って外へ飛び出し一晩帰ってこない。最初の頃は心配で、外へ出させまいとして家の中・・・

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カナシイ サケ

18/01/12 コメント:0件 斎藤緋七(さいとうひな) 閲覧数:305

 「あの子が人妻?うそだろう!」  長吉芳樹40は驚いた。  「年、25だって。」  情報を仕入れてきた鈴木は言う。  「25で人妻、子供はまだらしいよ。」 『あの子』とは最近アルバイトで入ってきた女性職員の夏生の事だ。夏生は小柄で眼が大きく胸も大きいのが目立つ。素肌が綺麗ですっぴんでも美しく、顔が小さくて、足が細い。幸運な事に、配属されたのは芳樹のナナメ前の席である。そしてあろうことか、芳樹は人・・・

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お酒の力

18/01/12 コメント:0件 ひらい 閲覧数:273

思わず強く目を閉じて吐息をもらしてしまった。
建物の中にある浴場から出てきて、一瞬にしてすっかり冷えてしまった体には露天風呂は天国のように思えた。
降り続く雪によって少し熱く感じる程度になった温泉は、体の奥にゆっくりと沁みていく。
押せば倒れてしまいそうな竹づくりの柵に囲まれた露天風呂には、他にもう一人初老の男性が入浴しているだけだった。
湯気がひっきりなしに立ち上っている・・・

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一人でカクテルを飲む理由

18/01/11 コメント:2件 小峰綾子 閲覧数:336

あの日は終電まで働いてふらふらしながら家路に向かっていた。疲れてはいるものの、煮詰まった頭の中をすっきりさせたいし、誰かと話をしたい気分でもあった。ブラブラと歩いていると、平屋建ての、日本家屋を改装した感じのバーが視界に入る。
雰囲気は良さそうだし、ちょっと一杯飲むだけだし、一度一人でバーに行くのも良いなと前から思ってはいたところだ。建物横の駐車スペースにはminiとライトバンが停まっている・・・

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A・婆・ズレ に 乾杯

18/01/11 コメント:2件 斎藤緋七(さいとうひな) 閲覧数:408

亜美の姑の木根子は、「あばずれ」だ。
 この前、暇だったので、グー○ルで検索してみたら、
「あばずれ = 品行が悪く厚かましい者」と書いてあった。
 いきなり「あばずれ」と言うワードを調べたのかわからない。
ただ、姑の木根子の言動を見ていたら、頭に「あばずれ」と言うワードが浮かんできて、急に検索したくなった。解らない事はすぐ調べるのが亜美の性質なのだろう。
 「私く・・・

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トミナガトミコと働き蜂の私(たち)

18/01/11 コメント:2件 秋 ひのこ 閲覧数:408

 トミナガトミコは、全裸でうつぶせになって川に浮いているところを発見された。  県を代表する風光明媚な渓流で、秋なら紅葉、春なら桜、初夏なら青葉がその醜い身体を少なからず美しく覆っていたかもしれないのに、と私はまずそんなことを思う。凍てつく寒空で川は水位が低く、そこここで雪と泥と枯葉が混じる。なんとみすぼらしい世界で死んだのだ。  旅館「あおき」に私が十八で仲居見習いとして入った時、すでにトミコ・・・

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愛を教えて

18/01/11 コメント:2件 向本果乃子 閲覧数:778

五日前に別れたはずの男に睨み付けられ美優は戸惑う。 「もう男がいるって本当かよ」 聞かれて正直に頷く。別れた次の日に今の彼と付き合い始めた。 「もう、したのかよ」 男の言葉に美優は首を傾げる。 「寝たのかって聞いてんだよ」 美優はびっくりしながら頷く。つきあい始めたその日のうちに抱かれた。 「やっぱり噂どおりだったんだな」 睨み付けている目が少し濡れているように見えた。 「試してみて正解だったよ」・・・

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愛するための行為

18/01/10 コメント:1件 ぜな 閲覧数:321

「浮気をしましょう」

先週の月曜日の夜、仕事帰りに安藤義広(あんどうよしひろ)は見知らぬのどこかのホステスのような格好をした女性に路地裏に連れて行かれ、静かにそう告げられた。彼女は、あばずれ女として有名だった。路地の先にあるホテル街で、よく男とホテルへと消えて行くのを色んな人に見られていた。そんな彼女のターゲットに自分が当てられてしまったようで、義広はとても困っていた。
し・・・

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マーキング

18/01/10 コメント:1件 れいぃ 閲覧数:316

 自分で結んだのと他人に結んでもらったのでは、見た感じが微妙に違う。  だから、すぐに分かってしまう。 「ヒナコ、またヤッてたんだ」  一、二時間目をサボッておきながら、三時間目の頭に何食わぬ顔で席に戻ってきた友人を横目で見て、れみはため息をつく。 「今、何してんの」  小声で訊かれ、「百六十ページ」と教えてあげるけれど、本当はもう教えてあげたくないと思っている。  授業抜け出して、先輩といかがわ・・・

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心中立

18/01/09 コメント:1件 柊木 つつじ 閲覧数:271

 障子戸を5センチ程開けて外を眺める。
 壁に背をつけて、煙管に火をつけフーッと煙を吐く。障子の隙間から覗く街の景色が酷く汚れて見えるのは私自身もまた酷く汚れているからだろう。

「紅葉さん、今日もそうやって一日をふいにしたのかい」
 優しく問いかけるのは弥七という呉服屋の跡取りである。透き通った真珠のような色白な肌にやせ細った風貌は女性のようにも見えた。
「毎日のよ・・・

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ふつかよい

18/01/10 コメント:0件 羽海 灯 閲覧数:287

久々に暖かくなった日曜日。
俺は何とも言えない頭の痛さと、内臓がひっくり返るようなムカつきを抱えたまま、ベッドの上で呻いていた。
カーテンの隙間から、朝日にしては明るすぎる光が飛びこんでくる。
無遠慮な光が瞼の裏でチカチカとやかましい。
本来なら感じる筈のない眩しさは、頭と足を逆向きに寝ていたせいだ。
せめてきっちりカーテンを閉めるか、ちゃんと枕に向けて倒れ込めと、昨・・・

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立つ鳥跡を濁さず

18/01/09 コメント:1件 sandie 閲覧数:339

 夕方、始発駅で停車中の車内。
 座席はちょうど人で埋まった程度の混み具合だった。

 座れたことに安堵しつつ、中吊り広告など見上げてぼーっとしていると、車両連結部のドアが開いて、一人の小柄な年配の男性(推定65〜75歳)が入って来た。
 ドカジャンというのだろうか。作業服の上から防寒のアウターを着込んでおり、赤らんだ顔、手ぶらのようすでポケットに手を突っ込みふらりふらりと・・・

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アバズレ星人

18/01/09 コメント:1件 チャンドラ 閲覧数:307

 今日のバスケサークル楽しかったなぁ。
 俺の名前は井上信二(いのうえしんじ)。バスケサークルに所属している都内の私立の大学三年生である。余談だが、俺は今まで彼女というものができたことがない。彼女いない歴=年齢である。
 時々、寂しいと感じることはもちろんある。去年のクリスマスは、一人寂しくアニメをパソコンで視聴していた。楽しかったが、どこか虚しさを感じられた。だからこそ、今は趣味に打・・・

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アバズレ食堂

18/01/09 コメント:1件 吉岡 幸一 閲覧数:308

「ハムエッグ定食とかつ丼、それとお冷をお願いします」
 外回りをしている先輩と後輩の営業マンが、店に入って壁にかけられた手書きのメニューから迷うこともなく選ぶと、厨房に向って声を投げた。
 ふたりの営業マンが昼食を食べにやってきたのは乙女通りの中ほどにある「アバズレ食堂」だった。
 引き戸を開けて入ると四卓のテーブルと十六脚の椅子しかない小さな食堂で、昼飯時も過ぎた午後二時だった・・・

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怪物に変身できる洋酒

18/01/08 コメント:0件 とむなお 閲覧数:283

あるクリスマスの夜――僕は、残響を終えて、マンションに帰宅途中、近くの公園で奇妙な洋酒を入手した。
ラベルに――G――の文字しかなく、少し怖かったが、クリスマスの奇跡を信じて、夕食後、グラスにそそぎ飲んでみた。
味はワインぽく、なかなか美味で、僕はウキウキした気分になった。
「久し振りに、クリスマスっぽい夜だな……」
一気に飲んでしまうのは、もったいない――と思った僕は、残・・・

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引火メチル着火アルコホル

18/01/08 コメント:1件 クナリ 閲覧数:1004

 中学二年生になったばかりの岡田マイは、普段から愛想がない。 「お母さんの、キャバクラの仕事って忙しいみたい」 「へえ」  同じ団地に住む、しかし常にそっけない幼馴染みの加藤ケイスケと、昨年からゴーストタウン化したその団地の物陰で話すのが、マイの日曜日の過ごし方だった。  地面に打たれたコンクリートが、何のせいなのか一メートル四方ほどクレーター状に浅くえぐれた場所がある。そこにはよく水が溜まってい・・・

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ストレス発散には晩酌と幽霊

18/01/07 コメント:0件 チャンドラ 閲覧数:337

 俺の名前は北口祐介(きたぐちゆうすけ)。都内のIT企業で働いており、今年で28歳で、メガネをかけたいかにもサラリーマン風の容貌をしている。
 最近、俺がはまっているものが一つある。
 ――それは、晩酌だ。俺は、仕事終わり一人暮らし用の部屋で酒を飲むのに最近ハマっている。

 仕事というのはつくづくストレスが溜まるもんだ。
 嫌な上司、無茶な要求をしてくるクライアント・・・

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甘い水

18/01/07 コメント:2件 黒谷丹鵺 閲覧数:489

「悟のお祖母ちゃん、怖いよね」
 近所の仲良しとそんな話をしたのは小学何年生の頃だったか。
「怖くないよ。なんで」
「だって私のこと睨むんだもん」
「それ、たぶん祖父ちゃんのせいだ」
 悟は私の耳にだけ届くような小さい声で続けた。
「弥生の祖母ちゃんが好きだったんだって」
 祖母は30代で亡くなっていて、写真で見ると農家の嫁らしくないエレガントな美人だ。<・・・

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夫婦の戦い

18/01/07 コメント:0件 バビロン 閲覧数:279

 冷蔵庫のビールが切れている。最近夫の辰己は仕事から帰ってくるなりすぐに就寝するため会話もめっきり減ってしまった。あまり飲まなくなったのはいいけれど、こうも機械的になると自分が退屈で飲んだくれてしまっている。
 ジャケットを羽織ってバイクにまたがった。コンビニに駐車したところで、周囲から妙に視線を感じた。女性のバイク乗りは珍しいからよくあることだが。
 六本入りの缶ビールとおつまみを購・・・

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17階の窓からきた彼女

18/01/07 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:295

 地上17階の窓際に座り、はるか眼下の景色をながめながら、ちびちびと酒をのむのもまんざらではない。高所だと、人間の姿にわずらわされることがないのがなによりだった
 朝からのみはじめたボトルも、そろそろ半分ほどになったころ、酒は極力控えるようにとの医者の言葉が蘇り、ボトルに蓋をしかけたそのとき、誰かが窓をこづいた。
 まえにいちど、鳥がぶつかったことがあったので、こんどもそれかと窓をみた・・・

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牙をむく未来

18/01/07 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:278

 耳もとのアラームがけたたましく鳴り響いた。例によって核爆発が一インチとなりで起きたかのような爆音だ。引き続いてオペレータの無慈悲な一言。「非常呼集。ポイントSにてガンマ線量上昇中。隊員は十分以内に最寄りの発着場に集合してください」
「最寄りの」というのは単なる修辞的な表現にすぎない。〈アンチ・フューチャー〉所属の下っ端は一人の例外もなく、亜軌道シャトル発着場の付近に住まわされている。マスか・・・

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私とお酒のこと

18/01/06 コメント:0件 浅月庵 閲覧数:382

 高校を卒業して、そのままとある不動産会社の事務員になるけど、未成年とはいえお酒の席はつきもので、新入社員歓迎会で上司にアルコールを勧められる。少人数の小さな会社? アットホームな職場?にかこつけて、無礼講と叫びながら、やってることは犯罪だ。未成年の飲酒に対し、より一層厳しくなったこのご時世で、よくもまぁヘラヘラと「おら、ビール飲め」なんて言えるもんだ。

「高野さん、飲まなくていいよ・・・

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白雪とギャル男

18/01/06 コメント:1件 いっき 閲覧数:291

「私、今度の土曜日に男と遊びに行くの」
デートの最中に電話で話していた友美に尋ねたら、さらっとそう宣告した。
「何で…どんな奴?」「野崎って人。ネットで知り合った人なの。自衛隊員だって」「やめろよ。そんなの、危ないじゃないか」
普通の男友達なら、百歩譲ろう。でも、彼女をそんな奴に会わせたくない。
「大丈夫よ。電話で話した感じは普通の人だったし」「そんな問題じゃないって。僕達・・・

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溺れた男

18/01/06 コメント:2件 マサフト 閲覧数:338

さて寝ようの布団に入ったものの、いかんせん寝付けないまま時間が過ぎたせいか、体が硬直してしまった。頑張っても指先すら動かない。これはまさか話に聞く金縛りというやつではないのかと思い、目を開けてみようとすると、不思議と瞼だけは動いた。 暗闇の中目を凝らすと、腹の上にぼんやりとしたものが乗っかっているではないか。腹の上に乗っかっておれの安眠を妨げるとは、不届きなやつだ。失礼じゃないか。えいと腹・・・

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これは私の片想い

18/01/05 コメント:0件 Motoki 閲覧数:293

 朝食の用意をしていると、背後で起き上がる気配がする。
 振り返れば、彼は二日酔いの頭痛に顔を顰めながら、眉間に皺を寄せてこちらを見遣っていた。
「すまない…」
「いえいえ。何を仰いますやら、先生」
 少しの悪戯を含んで言えば、幼馴染の近藤健一は「ハーッ」とこの世の終わりのような絶望さで溜め息を吐く。
「僕は昨晩、君に絡んだりしなかったかな?」
 お酒で記憶を失・・・

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ブランデーが織りなす夢

18/01/05 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:373

 ミジンコのはいったガラス容器に目をやりながら、悠然とブランデーグラスをかたむけるときが、麟三の至福のときといえた。
 IT関係の仕事にあけくれ、まる一日人と一度も顔をあわすことなくパソコンにむかって過ごすのが常態となっている彼にとっては、ミジンコといえども血の通った生き物で、家にかえって部屋にひとり、机にならべた容器のなかにこまかくうごめく微小生物に、そこはかとない愛情を覚えたとしても誰が・・・

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酒では酔っても酔わされない

18/01/05 コメント:0件 桜野 閲覧数:291

酒は飲んでも飲まれるなという言葉があるが、誰だって酔わなきゃやっていられない時もある。

「お客さん、そろそろ止した方のが……」
「いーや!今日は朝まで飲むの〜」

失恋したばかりの女に効くのは、今はお酒しかないのだから。

バーのマスターはため息をつき、どうしたものかと困り果てていると、扉が開く音が店内に響く。

「マスター、カクテルお願いで・・・

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レディキラーにご注意を

18/01/05 コメント:4件 氷室 エヌ 閲覧数:504

 二十歳になって、初めての飲み会。お酒に詳しくないと言うと、同じサークルの先輩たちが親身になっていくつものカクテルを紹介してくれた。最初に渡されたのは、オレンジ色の美しい液体に満たされたグラスだった。 「これは何ですか? 綺麗な色ですね」 「それはスクリュードライバー。オレンジジュース主体だから飲みやすいと思うよ」 「はあ、では」  一口口に含むが、確かに飲みやすい。フルーティーで、まるでジュース・・・

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雪は独り白く

18/01/04 コメント:0件 吉岡 幸一 閲覧数:316

 赤い雪が焼鳥屋の店先にふっている。忘れてしまいたい悲しみが赤い雪に乗って舞いあがっていく。
「ごちそうさまでした」
 引き戸を開けて出てきた彼にお礼を言って頭をさげると、彼は硬い指先で私がさげた頭をポンとたたく。
「どういたしまして。これからどうする」
 慣れたようにそう聞く彼に困ったような素振りを見せながら私は答える。
「もう帰らないと。親がうるさいから」
・・・

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最古の酒、とほぼ同じもの

18/01/03 コメント:0件 TWWT 閲覧数:282

「殿下、籠城していた連中から降伏したいと使者が」
「うむ、通すが良い。待ちかねたぞ」
 目前の城から様々な物資を、調達した牛車や馬車たちが運び出すのを見ながら、満足気に頷いた。実際彼は嬉しかった。一年にも及ぶ攻城戦の末、ようやく立てこもる相手の心をへし折ることができた。半ば無断で兵を出した結果ではあるが、これで兄王たちとの後継者争いでも一つ優位に立てるはずだ。
「殿下、参られまし・・・

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世界禁酒計画

18/01/03 コメント:0件 TWWT 閲覧数:262

 某国某所、世界中の権力者たちが一堂に会する集まりが催されていた。もっとも、彼らの正体は世間には知られていないが、その実力は絶大で、各国の大統領すら彼らにしてみれば、即座に交代できる看板のようなものに過ぎない。そんな怖いものなどない権力者たちは、皆一様に疲れ切っていた。
「分かった。やむを得んな。世界の一般市民に関しては、酒を飲ませることは止めるという方針を進めていく。結局酒席や酔漢がいなく・・・

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美酒と愛執

18/01/03 コメント:0件 蒼樹里緒 閲覧数:283

 日の昇らぬ常闇の世では、酒呑みの刻限も無きに等しい。
 木の匂いに囲まれた小さな居間には、仄かに甘い香りも漂っている。
 座布団に正座し、娘はぷはぁ、と満足気な息を吐いた。両の手に包んだ湯呑茶碗には、白く濁った液体が揺れている。
「今宵の甘酒もなかなかに良い出来ではござりませぬか、あるじ様?」
「うむ。また一段と腕を上げたのう」
 開かれたままの障子戸の向こうで、老・・・

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一升瓶

18/01/02 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:285

 仕事帰りに、たちよった居酒屋で、ビールをのみながら三つ四つ料理を食べるのがぼくのいつもの夕食だった。
 ビールは一本しか頼まない。もっとのみたい気持ちがあっても、追加注文はしないことにきめていた。両親とも酒が好きで、酒のうえの醜態を、子供のころなんども目にしていたぼくは、じぶんだけは酒にのまれないようにと肝に銘じていた。
 酔った勢いで日ごろのうっ憤をぶっつけあう父と母、ときには物が・・・

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マリア

18/01/02 コメント:0件 吉岡 幸一 閲覧数:310

「一ヶ月間泊めてくれてありがとう」
 マリアは小さな鞄を一つ持つと男の部屋のドアを開けた。男は見送りに出ることもなく、煙草を吸いながら部屋の奥からじっと見つめていた。
 閉まったドアに向かって深々とお辞儀をすると、錆びた鉄の階段を降りていった。「次はあの人の家に行かなくっちゃ」足取りは軽く階段の音は朝の晴れた空高くに響いた。
 高校を卒業すると同時に家を飛び出したマリアは男の家を・・・

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幻想痛

18/01/01 コメント:1件 泡沫恋歌 閲覧数:356

真夜中に足の痛みで目が覚めた。
左足の膝から下にえぐるような痛みを覚え、泣きながら今夜も目覚める。
その痛みは私を責め続けているのだ。あの日からずっと――。

深夜の高速道路、ハンドルを握る私、永遠に続く暗い道、一瞬の睡魔、ふっと意識が飛んだ。
気づいた時、中央分離帯のブロックが目前に迫っていた。
慌ててハンドルを切ったが間に合わない。全身に激しい衝撃を受けた。・・・

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水底のマヤーリュビーマヤ

18/01/01 コメント:0件 君形チトモ 閲覧数:276

 初夏のある夜。近くの村へ寄った帰り、数年前行方知れずとなった恋人に再会した。
「ゾーイカ!」
 白樺の森にひらけた、月の光が静かにおりる場所。あの頃と変わらない彼女が白い服を着て、木から吊るしたブランコに腰かけて歌っていた。自分を呼ぶ声にゾーイカは歌を止め、僕の姿を認めると微笑んでブランコからするりと降りる。僕は駆け寄った。
「ゾーイカ、今までどこに行っていたんだい? ああ、で・・・

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再生してゆく未来で、私たちは

18/01/01 コメント:1件 冬垣ひなた 閲覧数:365

 路線バスがありふれた日常を走る。
 短期大学に通っていた私は、家から駅まで毎日バスで通っていた。昭和から平成に入り、町はずいぶん様変わりしていたけれど、のどかな風景を残した車窓を眺めていると乗客の声が耳に入る。
「この先の団地で、昔火事があってね。それは……もう酷かったの」
 酷い火事。言葉に詰まってしまうその人の心情に同調するように、私の心は過去へとさかのぼる。
 団地・・・

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今年も君と、これからも貴方と

18/01/01 コメント:0件 徒然 閲覧数:202

「うっわ人すっごい…こんないるんだ。」
夜11時52分、俺と加奈子は神宮の境内に到着した。
近くの駐車場は全部満車で、仕方なく若干遠くの駐車場に停めた事からいくらか予想はついたが、境内は札幌駅の改札前に劣らないくらいの人口密度を誇っていた。
予習が甘かった反省点はあるが年越しを車内で迎えなかったから良しとしよう。
隣に目をやると加奈子は口をぽかんと開・・・

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秋の蝶は春の夢を見る

18/01/01 コメント:0件 黒江 うさぎ 閲覧数:201

「…ねぇ、シンタ」 「ん?どうした?ユウ」 「シンタはさ、秋の蝶って言葉、知ってる?」 「いや、聞いた事ねぇな」 「秋の蝶ってね、俳句で使われる秋の季語なんだー」 「へぇー。  で、どういう意味なんだ?」 「…淋しさや悲しさ、あと儚さ。そういう意味で使われる事が多いみたい。  …秋の蝶ってね、温かい時期の蝶に比べるとずっと弱々しいんだって。  だから、そういう意味で使われているんだと思うの」 「な・・・

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あともどりはできまへん

18/01/01 コメント:0件 井川林檎 閲覧数:346

 ここはどこだ。
 
 うちの中ではない。草むらの上で大の字で寝ていたらしい。
 はっと目を開いたら、見知らぬ犬覗き込んでいた。くうん。

 抜けるような青空に、純白の雲が流れてゆく。もさもさの茶色い雑種犬は、心細そうに耳を垂れていた。

 起き上がると頭が痛い。二日酔いである。
 そうだわたしは昨晩、適当な居酒屋に入って、しこたま飲んだのだ。一度も・・・

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消えてゆく悲劇に、私たちは

18/01/01 コメント:7件 冬垣ひなた 閲覧数:575

 溢れかえった悲劇のニュースが、一つ、一つ、世の中から消えていく。  多くの人が悲しみに耐えかね、その存在を手放してしまうのだ。生きていくために仕方がないと呟きながら。  私たちは、どうなのだろう?  ……ある日、友達が死んだ。  無理心中と呼ぶには陰惨な事件の巻き添えだった。  あと1年くらい通えば卒業する小学校から、O君がいなくなったという事実は、先生の口からは事務処理的に述べられただけだ・・・

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酒場

18/01/01 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:243

 仕事帰りに、新しい店を探す。趣味の無い私の唯一の楽しみだ。
 なぜ、新しい店を探すのか。それは、演奏家の違いで曲の良さの引き出し方が違う。と言うイメージだ。出張先でふらりと入った酒場でそんな出会いをして以来、路地裏を彷徨っている。
 以前通った時には見なかった店が開いていた。名前は『酒場』なんともストレートなネーミングだ。

 薄暗い店内、広がる酒の匂い。様々な酒の匂いが・・・

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崩れてゆく世界で、私たちは

18/01/01 コメント:1件 冬垣ひなた 閲覧数:741

 私は生まれて初めて、新聞を読んだ日を覚えている。  真夜中に響く消防車のサイレンの音に目を覚ました私たち家族は、火災現場が驚くほど近いことに不安を覚えた。複数のサイレンが大きな火災を知らせる。 「団地が燃えているらしい」  その言葉に私は息を飲む。9棟からなる川向こうの大きな団地には、私の友達が大勢暮らしていた。しかし情報を得る手段の少ない昭和の時代、詳細は分からず、10才やそこいらの子供だ・・・

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世界一の朝食

18/01/01 コメント:0件 みや 閲覧数:243

目が覚めてすぐに腹が減ったなと男は思った。

そう言えばいつか妻と世界一の朝食と称賛されている店に行った事があった。外国の有名な店らしいのだが男は全く興味が無かったのだけれど、妻がとても行きたがり無理やりに連れて行かれた。
パン・ド・カンパーニュは焼き過ぎていて耳が焦げていたし、オーガニックスクランブルエッグはシンプル過ぎて味がしないし、ベーコンとソーセージは如何にも外国と言った・・・

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スーサイド・ワールド

17/12/31 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:308

 会社からの通達は次の通りである。 「大晦日やら正月三が日などというばかげたシステムを採用しているのはこの国だけだ。当社は世界基準でものごとを考える。あとはわかるな?」  ここらで持論を表明してみたい。みんなちょっとばかり働きすぎてないか?      *     *     * 「あたし、今日は絶対――いいですか先輩、これ片づけたら絶対! お昼で帰りますからね」  後輩のかすみは雄々しく決意を・・・

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虹の向こうに

17/12/31 コメント:0件 Motoki 閲覧数:517

「虹の根元には、宝物があるんだって」

君がそう言ったのは、
いくつの時だったろう。

「もっと大きくなって、バスに乗れるようになったら、2人でたしかめに行こうよ」

夕立の後そう言って、
焼けた顔に白い歯を覗かせた。

指差す先には、
大きな虹。

濡れた朝顔の葉と、

夕焼けと、

君の笑顔。・・・

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