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黒板は今日も緑

17/08/01 コメント:1件 miccho 閲覧数:146

「この世は虚構と欺瞞だらけだ!」
 隣で六車正和が騒いでいる。
「いいから早くチョーク片付けろ」
 同じ日直当番としてなすべき行為を指示してはみたが、この男が聞き入れる様子はない。
「青信号なんて言いつつ、青くないではないか!」
 それは日本人が元々青と緑を区別していなかったからでは?
「それに」
 正和は俺にツッコむ暇も与えずまくし立てる。
「黒板・・・

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そして帰途へ

17/07/31 コメント:2件 四島トイ 閲覧数:194

 歌とか歌ってよ、と助手席の女子高生が不貞腐れる。
 夜の山道には街灯の一本もなかった。ガードレールすら途切れ途切れの不慣れな道には、微かに不吉な香りが漂っている。こんな夜更けだというのに、どこかでサイレンが聞こえたような気すらする。サイドミラーにはただただ暗闇しか映っていない。ハンドルを握ったまま「歌と言われても」と口にした自分の声の自信のなさが、泣きたくなるほど滑稽だった。少女の膝に置か・・・

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たびたびすみませぇん、たびのものですが…

17/08/01 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:232

 S市にある富便町の列車の本数は三時間に一本ほど。路線バスは午前と午後の二回だけ来る。僕はそんな交通の便が悪いこの町の観光案内所に勤めて三年になるが、いつも思う。海と山の美しさだけが売りのこの町に、観光客達はわざわざお金を払ってまで何を求めて訪れるのだろう。自然が豊かな町なんて、この町以外にも沢山ありそうなものなのに…。僕はお金が勿体無いので、自分で旅行なんて行こうとは思わない。

 ・・・

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誕生日を覚えてる。でも、伝えるすべもない。

17/07/31 コメント:3件 滝沢朱音 閲覧数:293

 古びた誕生日占いの本をめくる。三六五日それぞれの頁にはあちこちに名前が記されていて、どれも旅の途中で会った友達≠フはずだけど、正直あまり覚えていない。だけど今日、八月三十一日の頁だけは別だ。
 航くん――旅の途中で私の誕生日を尋ねてくれたのは、彼だけだった。

 転校生として紹介されるとき、いつも私は無愛想を演じた。あの夏の日もそうで、チャイムが鳴ると私は周囲に構うことなく鞄・・・

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旅の浮き木

17/07/31 コメント:9件 むねすけ 閲覧数:294

 私は寝てばかりいた。
 目のきかないあたしのことを、父さんはかわいそがってなにもさせなかったから、あたしは日がな寝っ転がって遠くに音を探したり、歌を唄い過ごした。
 外に出たいと、言ってみたこともある。家の仕事を手伝いたいと言ったこともある。だけど、父さんはなにもさせてはくれなかった。あたしのためだ、という言葉を強く押し付けてきたけれど、あたしにはどうにも、あたしのためのようには感じ・・・

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道草しながら、馬の旅

17/07/31 コメント:0件 冬垣ひなた 閲覧数:196

 私は人間が苦手ですが、馬はとても好きなのです。
 トロくてドジな私ですが、馬はひゅうひゅうと私を乗せて気持ち良く駆けてくれます。
 私がバカで分からずやでも、馬は愛くるしく長い顔で頬ずりしてきます(たまに鼻水や涎をつけて服を台無しにしますが)。
 風になびくたてがみや滑らかな体毛に、しなやかな筋肉質の体躯と力強いひづめ。馬は時に、俺様といわんばかりに我が儘で、誰もいないとヒヒー・・・

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だってきみは

17/07/31 コメント:4件 氷室 エヌ 閲覧数:333

 端的に言えば僕はいじめられていた。
 何をきっかけに始まったのかはもう覚えていない。いじめている男子数人のグループだって、多分覚えていないと思う。そんな些細なきっかけとは対照的に、僕は今クラスの全員から無視されるようになっていた。以前仲良かった友人も、自分がいじめられる標的になりたくはないからと、今では僕とあまり話さなくなっている。
 それは多分、仕方のないことなのだと思う。それを理・・・

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イクメンなんぞいらない

17/07/31 コメント:1件 家永真早 閲覧数:156

 何がイクメンだ。お前は昼夜関係なく3時間おきに泣き出す新生児を世話したことがあるか。オムツを替え、ミルクを与え、なかなか出ないゲップに辟易し、腕の中で眠っても布団に置いた途端泣き、削られていく睡眠時間に果てしない疲労を覚えたことがあるか。吐いたミルクに積み上がる洗濯物の山。哺乳瓶は洗って消毒。そして洗ってはまた使う徒労。替えたそばから汚れるオムツに途方に暮れたことがあるか。いつ泣き出すか分からな・・・

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アナログメール

17/07/31 コメント:1件 八王子 閲覧数:132

 最初は面倒ごとを押し付けられたものだと思った。
「こらー、高山ー。ちゃんと机くっつけて教科書見せてあげるんだ」
「はーい」
 教師にそう言われて、仕方なく僕は机を引きずって隣の席とくっつけた。
「あ、あの、ありが、ごめんなさい」
 隣の席の阿部さんも遠慮がちに机を引きずって僕の机とくっつけようと寄せるが、僕たちの机の間には手を縦にすれば通るような隙間が空いている。<・・・

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見つからず

17/07/31 コメント:1件 タック 閲覧数:125

一年前、母を亡くしました。やせ衰えた病死で、私を育てた苦労が体を蝕んでいたのだろう、そう思わせる末期でした。父を亡くし、母一人、娘一人の寂しい家庭でしたから、半身を千切られたような思いがし、目を腫らして日々を過ごしました。私は三十三になりますが、友人もおらず、恋人もおらず、苦痛を明かせる親しい人もいません。そのために人生をともに過ごし、心を許せた唯一の相手だった母を亡くした衝撃は、計り知れないほど・・・

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黒板

17/07/31 コメント:2件 風宮 雅俊 閲覧数:172

「おはよう」
 体育会系の部活の子は、みんな真っ黒だ。
「夏休みの宿題終わった?」
 後ろの席の映美が聞いてくる。
「家でトドをやってた奴に見せる宿題はありません」
 演劇部で色白なのは映美だけだ。文化祭のシナリオを考えるとか言って、炎天下の土手で発声練習している時も来ない。声量を決めるのは体力だと言う事で炎天下のグランドで陸上部と競ったりした時も来ない。そんな奴に見・・・

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バナナを食べる熊

17/07/31 コメント:0件 そらの珊瑚 閲覧数:116

 とある日曜日。秋の空は気持ちよく晴れ、秋の雲も気持ちよく整列していた。溜まっていた洗濯物をベランダに干し終えた時だった。網戸越しにドアチャイムが鳴るのが聞こえた。
 部屋へ戻り、キッチン横の壁に付けられたモニターの通話ボタンを押す。
「はい」
「おはよう。ビビアン。ちょっと近くまで来たから寄ってみたんだけど」
 モニターの小さな画面に映っていたのは、ニューヨークヤンキー・・・

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さっさと戻れ

17/07/31 コメント:2件 宮下 倖 閲覧数:157

 光と衝撃と闇を一気に感じたあと、恐ろしいほどの静寂がやってきた。
 おそるおそる目をひらくと、俺のまわりは真っ白な世界だった。
 あ、死んだなと思う。
 今までずいぶん無茶と好き勝手をしてきた。十代で死ぬとは思わなかったが、これも寿命かと妙な諦めがある。よく憶えていないが事故に遭ったのだろうか。
 まあ死んでしまったものは仕方ない。ずいぶん殺風景だがここが地獄か?(俺が天・・・

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万国黒板博覧会

17/07/31 コメント:1件 蒼樹里緒 閲覧数:204

 おれが生まれてもいなかった大昔、学校の教室には黒板ってもんがあったらしい。
 目の前のでっかい透明なケースの中に、それはかざられてた。クラスのやつらも、すげーとか大きいとか言ってコーフンしてる。そのうちのひとりが、担任の先生に聞いた。
「せんせー。黒板は『黒い板』って書くのに、どうして緑っぽいんですか?」
「最初は黒かったけど、黒板を作るための材料とかの問題で、真っ黒よりも緑色・・・

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モテない奴には旅をさせろ

17/07/31 コメント:2件 plum 閲覧数:147

 もしもあなたが独身で、異性との出会いを求めているならば、旅を強く勧めたい。友人に紹介を頼んだり、結婚相談所に登録したり、合同コンパや婚活パーティーに参加する必要など全くない。ただ気軽に旅へ出ればよいのである。少々のお金があれば他に何もいらない。必要なものは全て旅先で手に入る。ましてや異性との出会いなんてありすぎて、必要以上と言ってもよいぐらいだ。
 私自身がその証拠である。スマートフォンの・・・

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週末ヒロイックサーガ

17/07/31 コメント:1件 小高まあな 閲覧数:211

「はい、お土産ー。まわしてー」
 週明け、少し憂鬱な月曜日の会社。隣の席の米原さんからお菓子の入った箱を渡された。読めない記号のような言語でかかれたパッケージだが、その下に小さく日本語が書かれている。
「ゴブリンが作りますです、アクリーセスのクッキー」
 読み上げる。
「日本語、不自由だよね。でも美味しいよ、試食して買ったし」
 米原さんは、いつもの朝と同じようにゼリ・・・

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地平線を越えろ

17/07/30 コメント:2件 本宮晃樹 閲覧数:158

 既知宇宙の最果てで〈マジックマッシュ〉は今日も繁盛していた。宇宙はあまりにも広く、人びとはあまりにも腰抜けだからだ。
〈マジックマッシュ〉は〈プロスペクター〉たちを相手にまずい安酒を出す憩いの場である。年季の入った太陽光発電システムを全方位に貼りつけ、空気はここ数世紀ほど二酸化炭素フィルターを通った再使用のみ、水は客が足した用を失敬してろ過したしろもの。まさに自給自足だ。
「おい、俺・・・

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エンカウンター

17/07/31 コメント:0件 夏野夕暮 閲覧数:137

 『勇者』。
 それは剣術と魔術を極めし救世主とされている。
 太平の世が長く続き、この言葉も形骸化していた。だが悪しき力で世界を掌握せんとする『魔王』が現れ、その手先である魔獣が各地で跋扈するようになった。
 世界は危機に貧し、人々は勇者の到来を待ち望んだ。

 私の旅の相棒、ヴァン。若き天才と名高く、彼の剣術と魔術の冴えには並ぶ者が居ない。正式に勇者と認められるの・・・

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組み立て式の夢

17/07/30 コメント:5件 入江弥彦 閲覧数:527

 空から降ってきたみたいな煙突が何本も並んで、そのどれもがごうごうと煙を噴き上げている。
 何かを燃やして出たものなのか、はたまた水蒸気か、もしかすると出ているように見えているだけで空の成分を吸い込んでいるのかもしれない。工場は十年前――二〇七七年だったと記憶している――に完全に機械化されてしまったので、本当のところはわかりっこない。
 防犯意識の欠片もないがばがばの有刺鉄線の間を潜り・・・

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旅の行く先

17/07/30 コメント:2件 日向 葵 閲覧数:239

 私は、からっぽの人間でありました。
 どこかに人間らしさというものを置いてきたのか、お前には何もないと昔から言われて参りました。
 
 「人を知りなさい」

 父から告げられた言葉は、もうこの家に私の居る意味は無いのだと悟るには十分でありました。そんな厄介者の私が家を追い出されるのは、むしろ自然なことであったのかもしれません。
 ただ、両親にも一匙ほどの良心が・・・

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時計のない旅に出る

17/07/30 コメント:4件 みや 閲覧数:277

その駅は銀色に光り輝いていた。まさしく近未来と呼ぶに相応しいスタイリッシュなその駅は、列車で宇宙旅行に行ける駅だ。

列車で宇宙旅行だなんて、遠い昔に古いアニメーションで見た記憶があった。レトロな列車で宇宙を旅する少年、と彼を見守り導く美しい女性ー
思い出すだけで中年の私も少年の頃に戻った様に胸が踊る。そんな夢物語が、今では現実のものとなっている。そのアニメーションの作者は未来が・・・

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旅の記憶

17/07/30 コメント:0件 つつい つつ 閲覧数:212

 嘘みたいにガタガタと揺れ、キーキーとものすごい音を立てながら進む列車に、僕はネジの二、三本もはずれてんじゃないかと心配になった。乗り合わせた人達は気にならないらしく何事もないように大人しく座っている。
 降り立った村はガイドブックにも載っていない、ただ果樹園が広がるだけの辺鄙な村だった。これまでリュック一つで外国のいろいろな町や観光地を巡ってきたけど、ふと、全く何の情報もないところに行って・・・

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旅人

17/07/30 コメント:4件 田中あらら 閲覧数:136

 彼は詩人であり、思想家であり、旅人だった。招かれればどこへでも行き、詩を朗読し、彼を招いた熱き思いの人々と語り明かした。出された食事や酒は、ささやかであろうと豪華であろうと、なんでも感謝して食べた。持ち物は少なく、ずた袋に入っているものは着替え1組、手帳、数冊の本が全てであり、定住地はなかった。タゴールの「我家のないものは、全世界を住処とすることができる。友無き者には他人はいない」の詩文に感銘を・・・

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旅する男ディン・ディディン ―ディン・ディディン旅行記を書く

17/07/30 コメント:0件 mokugyo 閲覧数:93

私はディン・ディディン。世界中を旅している者だ。旅では、主に歩く。喧噪の街中も、灼熱の砂漠も、極寒の大地も、きらめく海辺も、自分の足で歩いてみるのがいい。車や電車も飛行機も捨てがたいが、やはり「自由に歩く」という行為は人類に許されたぜいたくの一つだろう。健康にも良い。


私は大都会の街中を歩いていた。大通りには、ミュージカルを観終えた観客たちの群れがリズムカルに歩く。街の片隅、・・・

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着いたところは……

17/07/30 コメント:1件 忍者猫 閲覧数:91

 物心付けば、粛々とレールの上を流れている状態だった。いや、動く歩道の方が正しいか。
 進路に自分の意思は無く、ただ流れるに任せるだけだ。
 気付けば何もかも誂えられ、与えられ、でもそこに何一つ自分の思想は無く、与えられるまま身に付けるしかなかった。
 もうすぐここを出て行くが、それすら自分の意志ではない。
 さてはて、この先自分には、何かを自分で選ぶ事は出来るのか、いや自・・・

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彼のために旅に出る

17/07/30 コメント:10件 あずみの白馬 閲覧数:503

――7月某日 土曜日 午前7時40分 東京駅20番線

「美菜子さん、元気でね!」
「ありがと!」

 ホームには、白いボディに銀と青のラインが光る新幹線「はくたか553号」7時48分金沢行きが発車を待っている。
 その前で、大学の文芸サークルで一緒だった、大学2年、同級生の美菜子が友達の見送りを受けていた。急に家業を継ぐことになり、中退することになったらしい。・・・

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恋すれば旅の始まり

17/07/29 コメント:2件 忍川さとし 閲覧数:193

 姫のバッグを、今誰かが持ち去ろうとしている。
 だから俺はホームを飛び降りたが、線路を越えながら、迫る電車に仰天した。
「ぎゃあっ――――!!!?」
 そして人々の視線が痛いのが、俺が間一髪対岸のホームに飛びつけた事を教えてくれた。
「ふうっ…………」
 ともかくバッグは無事だった。少し向こうに、走り去る犯人の背中が見えた。俺は構わず、やや大きめの桜色のボストンバッ・・・

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旅人の哀歌

17/07/29 コメント:9件 待井小雨 閲覧数:445

 物置部屋で一幅の絵を見つけた。
 手前から奥に向かい、遠くの山への道が長く伸びるだけの絵だ。その道に、馬を連れてこちら側に背を向けて歩く男の姿が描かれている。これは旅人の絵だ。
 何となく惹かれ、書斎に飾る事にした。
「傷んでいるな」
 長い事放置されていたのだろう、くすんだ色が気になった。空しい色合いの絵に指を伸ばす。と、触れた部分が仄淡く色づいた。
「しまった」・・・

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11のたび

17/07/29 コメント:1件 いちこ 閲覧数:140

あるところに、足袋を履いた猫がいた。
彼はマタタビが大好物だった。
あまりに好きすぎて、あるとき、彼は旅に出ようと考えた。
隣町の猫に、片開きの戸から出てきたおじいさんがとても上質なマタタビをくれたと聞いたことがあったからだ。
彼は、自分もそんなマタタビを得て、度々自慢してくる隣町の猫をを見返してやろうと思った。
いや、何やかんやと理由をつけても、結局はマタタビがほし・・・

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彼女の頭の中

17/07/29 コメント:0件 木原式部 閲覧数:170

 僕が仕事から帰ると、妻が悲しそうな表情をしながら言った。
「今日、病院に行ったら、あの子、やっぱりしゃべるのが遅いかもって言われて……」
 僕は幼児番組を食い入るように見ている娘に目をやった。確かに僕も娘がなかなかしゃべらないのが気になっていた。
「でも、それって個人差があるんだろう?」
 僕は妻の深刻そうな表情とは反対に、わざと気にしていないような声を出した。
「・・・

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噴水の中から夜を見上げる

17/07/29 コメント:0件 文月めぐ 閲覧数:157

 大きな公園の中にある、大きな噴水。その中に私は住んでいる。この公園は木々が青々と茂っていて、餌になる昆虫も多い。恰好の住処というわけだ。毎日毎日きれいな水を浴びて身体を潤し、夜になると広大な星空を見上げる。暗い暗い夜空に輝く無数の光、その光はこんなちっぽけな存在にも等しく降り注いでくれる。ああ、私は本当にちっぽけな存在だ。たとえではない。私は本当にちっぽけな、噴水の中の蛙に過ぎない。噴水の中の蛙・・・

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ツイスミ不動産 物件2:八季庵号

17/07/28 コメント:0件 鮎風 遊 閲覧数:163

 真夏の昼下がり、サファリキャップを粋に被った紳士と、キャペリン帽子のつばの奥から微笑む貴婦人がツイスミ不動産を訪ねて来た。Iと名乗るこのシニアカップル、子供たちはとっくに巣立ち、親の介護も昨年終えたという。きっとこの歳に至るまで色んなことがあったに違いない。だが今は人生終盤の自由を満喫しているようだ。
 応対に出た笠鳥(かさとり)課長とスタッフの紺王子(こんおうじ)を前にして、夫人はおもむ・・・

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旅の始まり

17/07/28 コメント:0件 榊真一 閲覧数:189

普段から使っているスマートフォン。
私は今まで付いていたSIMカードを抜き取りもう一枚のSIMカードを差し込んだ。
メールを確認した私は迷いもなくアウトストラーダを北西の方角へと進む。
「ありがとうございました、さようなら」
有料道路は如何にもといった機械的音声で私を一般道へと送り出す。
ミラノマルペンサ空港から一時間程のドライブはこの「コモ」が目的地であった。

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ご婦人とやさしさのたび

17/07/28 コメント:0件 日向夏のまち 閲覧数:175

 和室の隅に黒々の仏壇がひとつ。
「……。」
 手を合わせる白い和服のご婦人がひとり。
 ため息をひとつ。初夏の陽気に溢れかえる縁側を見やります。光と影、モノクロのコントラストに、目を細めました。
 そうして、四分と二十六秒ののち。
 ずばっと音を立て豪快に立ち上がったご婦人は、半世紀も前に新婚旅行で使って以来の旅行かばんを引っ張り出しました。

 翌日の・・・

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Dad

17/07/28 コメント:0件 ぴっぴ 閲覧数:181

「やめれ!やめ!やめ!」
バンバンと机を叩いて音楽プロデューサーの江崎が立ち上がった。眉毛がねじれている。
古いスタジオで新曲の御披露目をしていた新人バンドが慌てて音を止めた。バンドのリーダーであり作詞作曲担当の小笠原が鋭く歩み寄った。こちらも相当殺気立っている。
「なにが悪かったんすか!」
マイクの音が反響しなくなったことを確認して江崎が言った。
「駄作なんだ・・・

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【育児能力教習所】

17/07/28 コメント:0件 憂木コウ 閲覧数:149

 咳一つ許さない厳粛な静寂が、この日、会場を満たしていた。場席には総勢四十名。糊の利いた紺色の制服をかちりと身にまとい、照明を浴びて黄色く輝く舞台の方を、緊張と高揚とがない交ぜになった表情で眺めている。
 その舞台に、一人の人物が上っていった。きびきびと力強く、かつ洗練された所作である。中央の演壇の前に立つと、マイクを退けて文字通り壇上に立ち、自身に畏敬の視線を送る面々をぐるりと見渡してから・・・

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river

17/07/27 コメント:4件 野々小花 閲覧数:278

 中学三年の夏休み、僕は誰とも遊ぶ気分になれなかった。黙々と机に向かい、宿題を片付けていく。最後に、作文だけが残った。テーマは「旅」だ。クラスの皆は、家族旅行の話でも書くのだろう。そこには、楽しい思い出が綴られているはずだ。でも、僕にはそんな作文は書けない。
 夏休みに入ってすぐ、僕の名前は変わった。両親の離婚に伴い、母親の旧姓を名乗ることになった。十三年間「杉原秀一」だった僕は、一週間前か・・・

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内向的旅行

17/07/27 コメント:2件 篠崎ショウ 閲覧数:158

 旅行が趣味の友人がいる。彼は凄くフットワークが軽い。国内だけじゃなく海外までも時々足を運んでいるのだから。
 何故そんなに旅行するのかと聞いたら、彼曰く「新しい発見があって楽しい」からだそうだ。
 そんな彼を私は羨ましく思う。だって、私には未知の土地へ足を運ぶ勇気なんてないから。
 私は自他共に認める出不精だ。外に出て行く先は近くのコンビニやスーパー、ドラックストアぐらい。たま・・・

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自分を探す旅

17/07/27 コメント:0件 t-99 閲覧数:177

三年間勤めた会社をやめた。
わずらわしい人間関係にピリオドを打つ。
バックパック片手に、自分探しの旅にでた。
ホームに到着した列車に飛び乗る。
どこに向かうべきか、自分自身に問うていた。

【そうだ、海外へいこう!】

ヒッチハイクで金髪女性と運命の出会い。
そして、困難を乗り越え互いに愛を誓う。
これこそ、フォー・エヴァー・ラブ。

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電話口にて

17/07/26 コメント:0件 緑の葉っぱ 閲覧数:162

 電話口にて、僕は母親にさらっと言った。
「父さん、来月結婚するんだって」
「あらそう」
 僕の覚悟は何だったのだろうか、これまでの思考の全てが一瞬で無に帰った。少しでも、母親が感情を露わにするのではないかと思っていた。僕の両親は、僕に物心がついたばかりの頃に離婚し、母親に引き取られて24歳まで育てられた。兄弟4人を一人で育ててきたことには頭が上がらない。裕福ではないながらも、僕・・・

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無粋な旅の前に

17/07/25 コメント:0件 朽葉ノイズ 閲覧数:137

 近所の書店。猫耳フードのパーカーを着て旅行ガイドの棚で唸っているのはわたしの友達のネコミちゃんだ。
「ふむー。……あ、ラッシー。おはよー」
 そばまで寄ったわたしに気づく。
「おはよー、ネコミちゃん。どーしたの、眉間にしわを寄せて唸っちゃって」
「えっ! わたし、眉間にしわが寄ってる?」
「口なんてへの字に曲がってる」
「ふむー。実はわたし、旅に出ようと思って・・・

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Golden good morning

17/07/25 コメント:0件 和泉結枝 閲覧数:234

 初めまして。このメッセージを読んでくれているということは、僕はもう動けなくなっているね。このメッセージに興味を示してくれた、あなた。あなたがどこの誰なのか、僕には知ることが出来ないのが残念だよ。でも、わがままだと思うけれど、僕はあなたに、僕について知ってほしい。ちょっとした贈り物もあるから、どうか暇つぶしか何かと思って、このメッセージに最後まで付き合ってくれると嬉しい。
 僕は、今はもう遥・・・

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タビダチノウタ

17/07/25 コメント:2件 犬塚比乃子 閲覧数:160

 息を吐いた。それは鈴木勝彦自身のこれから人生における生命活動には不必要なことだった。
 自発的に呼吸をすることが難しくなってから数年。病に臥せってからというもの酸素マスクをはずしたことがなかった彼にとっての最期の呼吸は深く、長く。しかし、街に唯一の入院施設がある大学病院の寝台(ベッド)の周囲にはべる周囲の人びとからしてみればひどく短いものに感じられた。
 五十二歳の彼は、中学校で数学・・・

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愚鈍な私が成長するために  

17/07/25 コメント:0件 浅月庵 閲覧数:258

 ◇
「あなたには本日より、この子を専属で育てていただきます」
「こちらは一体……」
 私は上司の貝原さんに手渡された透明なケースを確認すると、その中身を見て地面へと放りたくなる衝動に駆られた。
「政府から託された機密事項なので詳しいことは言えませんが。紛れもなく“子ども”ですよ」
「子ども……?」
 私にはそれが、携帯電話ほどのサイズをしたダンゴ虫のように見え・・・

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テンジョーさん 〜リカちゃんとちゃうで

17/07/25 コメント:0件 秋 ひのこ 閲覧数:142

 どこをどうみてもリカちゃん人形なそれが、野太いおばちゃん声で喋った。
「長旅お疲れさんでした。この度は『テンジョーさん』のご利用おおきに、ありがとうございます。最初に言うとくけど、リカちゃんちゃうで。マイちゃんや」
 ロサンゼルス国際空港で、アサミは人形を片手にスマホでアプリを起動させたところである。
「今日から5日間お世話させてもらいますよって。早速やけど飴ちゃん食べる?」<・・・

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赤ちゃんロボット

17/07/24 コメント:4件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:214

 明夫はカーテンの隙間から、庭にしょんぼりたちつくす妻の都を、思いやりにみちたまなざしでながめた。
 家庭菜園をかこむ柵の向こうの道をいま、母と子が手をつないで、なにやらたのしげに歌をくちずさみながら、歩いていた。
 その二人の姿を都は、いつまでも目でおいかけている。
 こちらからはうかがいしれないその顔には、あからさまな羨望の念がやどっているのにちがいなかった。
 ふだ・・・

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私、母親、ソダチマル

17/07/24 コメント:5件 クナリ 閲覧数:543

 高校生になった私は、身長では母を上回った。大人っぽいね、どっちが親か分からないね、と近所の人たちによく言われる。
 母子家庭で一人っ子だったので、娘の私がしっかりしなくてはいけないと自分に言い聞かせてきた。
 母は大人しい人だったが飲酒癖があり、酔っても暴力を振るったりはしなかったけれど、泥酔すると恐ろしく悲観的で自虐的になる悪癖があった。
「お父さんがいなくてごめんね」「女の・・・

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健やかな寝息

17/07/24 コメント:2件 井川林檎 閲覧数:295

 あやちゃん、と振り向いた時、後ろをついてきているはずの子供がいなくなっていたとしたら。

 二歳になりたての子は歩きたがって、抱っこをすると嫌がって降ろせと言う。
 車から降りた時、スーパーで買い物をしている時。
 ばたばたと暴れて悲鳴交じりの声を上げる。
 歩きたいのだと。

 軽快な音楽が流れる店の中で、わかったよ、じゃあ歩いてみな、だけど悪い子だっ・・・

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ニート、世界へ

17/07/24 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:169

「まったく怖気をふるうほどの経済格差がいま、この国を席巻している!」
 カリスマニート・城島武志氏が街頭演説をぶつと聞いて、物見高い人びと――そのほとんどが定職を持たない同類ども――がまったくの自己犠牲精神を発揮して駆けつけた。むろん彼を鼓舞する目的でだ。
 彼らの結束力は侮れない。社会の最底辺に滞留するメタンガスのごとき人間は、普段の生活で同族に巡り合うことはまずない。ところがどうた・・・

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スペアガール

17/07/23 コメント:0件 miccho 閲覧数:157

 行列の進みは遅い。この調子だとあと三十分はかかるだろう。
(どうせならディズニーランドか、せめて水族館がよかったな)
 私の恨み節に気づく様子もなく、森さん、明美ちゃん、めぐちゃんはこの動物園の主役との対面を待ちわびてはしゃいでいる。

「パンダって育児放棄するんだってさ」
 森さんが得意気に話し始めた。
「イクジホーキって?」
 これはめぐちゃん。いつ・・・

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