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心中立

18/01/09 コメント:1件 柊木 つつじ 閲覧数:87

 障子戸を5センチ程開けて外を眺める。
 壁に背をつけて、煙管に火をつけフーッと煙を吐く。障子の隙間から覗く街の景色が酷く汚れて見えるのは私自身もまた酷く汚れているからだろう。

「紅葉さん、今日もそうやって一日をふいにしたのかい」
 優しく問いかけるのは弥七という呉服屋の跡取りである。透き通った真珠のような色白な肌にやせ細った風貌は女性のようにも見えた。
「毎日のよ・・・

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ふつかよい

18/01/10 コメント:0件 羽海 灯 閲覧数:89

久々に暖かくなった日曜日。
俺は何とも言えない頭の痛さと、内臓がひっくり返るようなムカつきを抱えたまま、ベッドの上で呻いていた。
カーテンの隙間から、朝日にしては明るすぎる光が飛びこんでくる。
無遠慮な光が瞼の裏でチカチカとやかましい。
本来なら感じる筈のない眩しさは、頭と足を逆向きに寝ていたせいだ。
せめてきっちりカーテンを閉めるか、ちゃんと枕に向けて倒れ込めと、昨・・・

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立つ鳥跡を濁さず

18/01/09 コメント:1件 薬包紙 閲覧数:113

 夕方、始発駅で停車中の車内。
 座席はちょうど人で埋まった程度の混み具合だった。

 座れたことに安堵しつつ、中吊り広告など見上げてぼーっとしていると、車両連結部のドアが開いて、一人の小柄な年配の男性(推定65〜75歳)が入って来た。
 ドカジャンというのだろうか。作業服の上から防寒のアウターを着込んでおり、赤らんだ顔、手ぶらのようすでポケットに手を突っ込みふらりふらりと・・・

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牛肉のビール煮

18/01/09 コメント:0件 エア 閲覧数:61

 それは仕事終わりが近付きつつあった日の事だった。
 ウチの会社にやって来た顧客がお歳暮に缶ビールのギフトをくれたのだ。
 しかも、缶には光り輝く金が豪華に施されていたことから、所謂プレミアムと呼ばれるものであることは分かった。
「お前も、どうだ」
 上司がそう言いながら、缶ビールを僕に渡したが、生憎僕はお酒が飲めない。かといって、せっかくのご厚意を無駄にする訳にもいかない・・・

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アバズレ星人

18/01/09 コメント:1件 チャンドラ 閲覧数:105

 今日のバスケサークル楽しかったなぁ。
 俺の名前は井上信二(いのうえしんじ)。バスケサークルに所属している都内の私立の大学三年生である。余談だが、俺は今まで彼女というものができたことがない。彼女いない歴=年齢である。
 時々、寂しいと感じることはもちろんある。去年のクリスマスは、一人寂しくアニメをパソコンで視聴していた。楽しかったが、どこか虚しさを感じられた。だからこそ、今は趣味に打・・・

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アバズレ食堂

18/01/09 コメント:1件 吉岡 幸一 閲覧数:98

「ハムエッグ定食とかつ丼、それとお冷をお願いします」
 外回りをしている先輩と後輩の営業マンが、店に入って壁にかけられた手書きのメニューから迷うこともなく選ぶと、厨房に向って声を投げた。
 ふたりの営業マンが昼食を食べにやってきたのは乙女通りの中ほどにある「アバズレ食堂」だった。
 引き戸を開けて入ると四卓のテーブルと十六脚の椅子しかない小さな食堂で、昼飯時も過ぎた午後二時だった・・・

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怪物に変身できる洋酒

18/01/08 コメント:0件 空 佳吹 閲覧数:92

あるクリスマスの夜――僕は、残響を終えて、マンションに帰宅途中、近くの公園で奇妙な洋酒を入手した。
ラベルに――G――の文字しかなく、少し怖かったが、クリスマスの奇跡を信じて、夕食後、グラスにそそぎ飲んでみた。
味はワインぽく、なかなか美味で、僕はウキウキした気分になった。
「久し振りに、クリスマスっぽい夜だな……」
一気に飲んでしまうのは、もったいない――と思った僕は、残・・・

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引火メチル着火アルコホル

18/01/08 コメント:0件 クナリ 閲覧数:133

 中学二年生になったばかりの岡田マイは、普段から愛想がない。
「お母さんの、キャバクラの仕事って忙しいみたい」
「へえ」
 同じ団地に住む、しかし常にそっけない幼馴染みの加藤ケイスケと、昨年からゴーストタウン化したその団地の物陰で話すのが、マイの日曜日の過ごし方だった。
 地面に打たれたコンクリートが、何のせいなのか一メートル四方ほどクレーター状に浅くえぐれた場所がある。そ・・・

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ストレス発散には晩酌と幽霊

18/01/07 コメント:0件 チャンドラ 閲覧数:110

 俺の名前は北口祐介(きたぐちゆうすけ)。都内のIT企業で働いており、今年で28歳で、メガネをかけたいかにもサラリーマン風の容貌をしている。
 最近、俺がはまっているものが一つある。
 ――それは、晩酌だ。俺は、仕事終わり一人暮らし用の部屋で酒を飲むのに最近ハマっている。

 仕事というのはつくづくストレスが溜まるもんだ。
 嫌な上司、無茶な要求をしてくるクライアント・・・

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甘い水

18/01/07 コメント:2件 黒谷丹鵺 閲覧数:155

「悟のお祖母ちゃん、怖いよね」
 近所の仲良しとそんな話をしたのは小学何年生の頃だったか。
「怖くないよ。なんで」
「だって私のこと睨むんだもん」
「それ、たぶん祖父ちゃんのせいだ」
 悟は私の耳にだけ届くような小さい声で続けた。
「弥生の祖母ちゃんが好きだったんだって」
 祖母は30代で亡くなっていて、写真で見ると農家の嫁らしくないエレガントな美人だ。<・・・

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夫婦の戦い

18/01/07 コメント:0件 バビロン 閲覧数:80

 冷蔵庫のビールが切れている。最近夫の辰己は仕事から帰ってくるなりすぐに就寝するため会話もめっきり減ってしまった。あまり飲まなくなったのはいいけれど、こうも機械的になると自分が退屈で飲んだくれてしまっている。
 ジャケットを羽織ってバイクにまたがった。コンビニに駐車したところで、周囲から妙に視線を感じた。女性のバイク乗りは珍しいからよくあることだが。
 六本入りの缶ビールとおつまみを購・・・

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17階の窓からきた彼女

18/01/07 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:84

 地上17階の窓際に座り、はるか眼下の景色をながめながら、ちびちびと酒をのむのもまんざらではない。高所だと、人間の姿にわずらわされることがないのがなによりだった
 朝からのみはじめたボトルも、そろそろ半分ほどになったころ、酒は極力控えるようにとの医者の言葉が蘇り、ボトルに蓋をしかけたそのとき、誰かが窓をこづいた。
 まえにいちど、鳥がぶつかったことがあったので、こんどもそれかと窓をみた・・・

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牙をむく未来

18/01/07 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:74

 耳もとのアラームがけたたましく鳴り響いた。例によって核爆発が一インチとなりで起きたかのような爆音だ。引き続いてオペレータの無慈悲な一言。「非常呼集。ポイントSにてガンマ線量上昇中。隊員は十分以内に最寄りの発着場に集合してください」
「最寄りの」というのは単なる修辞的な表現にすぎない。〈アンチ・フューチャー〉所属の下っ端は一人の例外もなく、亜軌道シャトル発着場の付近に住まわされている。マスか・・・

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酒のつまみにうってつけの男

18/01/07 コメント:0件 田中フラミンゴ太郎 閲覧数:86

ガリガリで、ノッポの、スルメイカのような男がユラユラしながら立っている。 そこへそいつの友達が駆け寄ってきて問いただす。 「おい、なにがあったんだ! いったいなにがあったんだ!」 スルメイカっぽい男はいう。 「おれは痩せすぎた。痩せすぎてしまった」 「取り返しがつかないのか!」 「そうだ。もう、取り返しがつかない」 「お前は痩せすぎた!」 「そうだ。おれは痩せすぎた……今のおれはさながら、酒のつま・・・

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へべのれけなのだ今

18/01/07 コメント:0件 田中フラミンゴ太郎 閲覧数:80

ドアのノックが鳴りやまない。僕が、出てやらないからだ。客人に「いらっしゃい」とか、「どなた?」とか、そういったことをいわなければならないのって、面倒くさい。腰をあげるのもしんどい。いま飲んだくれてんだよ。勘弁してよ。 それにしても非常識。何時間叩きつづけるつもりだろう。誰なんだよいったい。しまいにはドアがすり減ってなくなるのではなかろうか。何考えてんだよ。ムカつくな。よし、ぶっ飛ばしてやろう。目に・・・

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アン・ボニーとメアリー・リードみたいな二人でしたね

18/01/07 コメント:1件 田中フラミンゴ太郎 閲覧数:105

母さん、小学生のころ、めったに風邪をひかない僕がめずらしく学校で熱をだして倒れたとき、仕事をほうって飛んできてくれたことがありましたね。母さん、あなたと僕はいつも、なんというか、バックトゥーバックの関係でしたね。いろんなことがあったけど、決して僕たちは、敵同士ではありませんでしたね。アン・ボニーとメアリー・リードみたいな、ふたりでしたね。母さん、中卒の若いシングルマザーの母さんの事を、いろんな人が・・・

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内臓くれえ

18/01/07 コメント:0件 田中フラミンゴ太郎 閲覧数:69

ひとりの女がバーで酒をのんでいる。背後からひげ面の男が近づいてきて、女のとなりに座る。 「ビールを」と男は注文する。 すぐには出てこない。 「いやあ、ひどい夜だ」男は喋りだす。「君も雨宿りかい?」 女が首をふる。彼女はボーイフレンドを待っているのだ。だけど、恋人を待つあいだに他の男から口説かれて、ゆらめいてしまってもいいと思っている。私を待たせるあの人が悪いのだ 「内臓をくれ」 ぽつりと、男がつぶ・・・

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アップルパイとソーダ

18/01/07 コメント:1件 田中フラミンゴ太郎 閲覧数:74

アップルパイとソーダ。それだけでうへえな夜もある。そんな夜って、めったにないけどね。 ある晩、僕は歩いていた。自分が何者であるかはしっかりと自覚していた。だから繁華街ですれちがう人たちに、「やあ、スーパースター」と声をかけられても、べつに戸惑ったりはしなかった。まさしく僕はスーパースターなのだ。 未成年。天才ロックンローラー。スーパースター。それが僕の肩書きだった。 「待って、あなたに夢中よ」家・・・

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グレープフルーツ

18/01/07 コメント:1件 田中フラミンゴ太郎 閲覧数:87

医者のもとに一人の女がたずねてくる。 「先生、私、おっぱいが三つになっちゃったんです」 「ふうむ、あなたは不思議な人だ」 「なおりますか?」 「まかせてください」 女が胸をはだける。二つのたおやかな乳房のあいだで、おおきなグレープフルーツがゆれている。 「おや、これはグレープフルーツですね」 「そうでしょうか」 「間違いありません。いま、とってあげましょう。ほら、とれた」 「あなたはそれをどうする・・・

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私とお酒のこと

18/01/06 コメント:0件 浅月庵 閲覧数:136

 高校を卒業して、そのままとある不動産会社の事務員になるけど、未成年とはいえお酒の席はつきもので、新入社員歓迎会で上司にアルコールを勧められる。少人数の小さな会社? アットホームな職場?にかこつけて、無礼講と叫びながら、やってることは犯罪だ。未成年の飲酒に対し、より一層厳しくなったこのご時世で、よくもまぁヘラヘラと「おら、ビール飲め」なんて言えるもんだ。

「高野さん、飲まなくていいよ・・・

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白雪とギャル男

18/01/06 コメント:1件 いっき 閲覧数:88

「私、今度の土曜日に男と遊びに行くの」
デートの最中に電話で話していた友美に尋ねたら、さらっとそう宣告した。
「何で…どんな奴?」「野崎って人。ネットで知り合った人なの。自衛隊員だって」「やめろよ。そんなの、危ないじゃないか」
普通の男友達なら、百歩譲ろう。でも、彼女をそんな奴に会わせたくない。
「大丈夫よ。電話で話した感じは普通の人だったし」「そんな問題じゃないって。僕達・・・

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溺れた男

18/01/06 コメント:0件 マサフト 閲覧数:81

さて寝ようの布団に入ったものの、いかんせん寝付けないまま時間が過ぎたせいか、体が硬直してしまった。頑張っても指先すら動かない。これはまさか話に聞く金縛りというやつではないのかと思い、目を開けてみようとすると、不思議と瞼だけは動いた。
暗闇の中目を凝らすと、腹の上にぼんやりとしたものが乗っかっているではないか。腹の上に乗っかっておれの安眠を妨げるとは、不届きなやつだ。失礼じゃないか。え・・・

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これは私の片想い

18/01/05 コメント:0件 Motoki 閲覧数:90

 朝食の用意をしていると、背後で起き上がる気配がする。
 振り返れば、彼は二日酔いの頭痛に顔を顰めながら、眉間に皺を寄せてこちらを見遣っていた。
「すまない…」
「いえいえ。何を仰いますやら、先生」
 少しの悪戯を含んで言えば、幼馴染の近藤健一は「ハーッ」とこの世の終わりのような絶望さで溜め息を吐く。
「僕は昨晩、君に絡んだりしなかったかな?」
 お酒で記憶を失・・・

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ブランデーが織りなす夢

18/01/05 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:126

 ミジンコのはいったガラス容器に目をやりながら、悠然とブランデーグラスをかたむけるときが、麟三の至福のときといえた。
 IT関係の仕事にあけくれ、まる一日人と一度も顔をあわすことなくパソコンにむかって過ごすのが常態となっている彼にとっては、ミジンコといえども血の通った生き物で、家にかえって部屋にひとり、机にならべた容器のなかにこまかくうごめく微小生物に、そこはかとない愛情を覚えたとしても誰が・・・

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酒では酔っても酔わされない

18/01/05 コメント:0件 桜野 閲覧数:98

酒は飲んでも飲まれるなという言葉があるが、誰だって酔わなきゃやっていられない時もある。

「お客さん、そろそろ止した方のが……」
「いーや!今日は朝まで飲むの〜」

失恋したばかりの女に効くのは、今はお酒しかないのだから。

バーのマスターはため息をつき、どうしたものかと困り果てていると、扉が開く音が店内に響く。

「マスター、カクテルお願いで・・・

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レディキラーにご注意を

18/01/05 コメント:4件 氷室 エヌ 閲覧数:147

 二十歳になって、初めての飲み会。お酒に詳しくないと言うと、同じサークルの先輩たちが親身になっていくつものカクテルを紹介してくれた。最初に渡されたのは、オレンジ色の美しい液体に満たされたグラスだった。
「これは何ですか? 綺麗な色ですね」
「それはスクリュードライバー。オレンジジュース主体だから飲みやすいと思うよ」
「はあ、では」
 一口口に含むが、確かに飲みやすい。フルー・・・

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液体生物、酒

18/01/04 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:68

 獣、虫、菌、ウィルス……人類が太古の昔から戦い続けてきたモノたちだ。多大な犠牲を払いながらも、打ち勝ち、利用さえできるようになった現代では、人類は他生物に勝利したと言っても過言ではないだろう。
 しかし未だに劣勢である、強大な敵もいた。

 液体生物、酒。

 酒から被害を受けると、軽いものでも頭痛や発熱、吐き気を起こし、重くなってくると部分的な記憶喪失や理性崩壊も・・・

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雪は独り白く

18/01/04 コメント:0件 吉岡 幸一 閲覧数:115

 赤い雪が焼鳥屋の店先にふっている。忘れてしまいたい悲しみが赤い雪に乗って舞いあがっていく。
「ごちそうさまでした」
 引き戸を開けて出てきた彼にお礼を言って頭をさげると、彼は硬い指先で私がさげた頭をポンとたたく。
「どういたしまして。これからどうする」
 慣れたようにそう聞く彼に困ったような素振りを見せながら私は答える。
「もう帰らないと。親がうるさいから」
・・・

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最古の酒、とほぼ同じもの

18/01/03 コメント:0件 TWWT 閲覧数:84

「殿下、籠城していた連中から降伏したいと使者が」
「うむ、通すが良い。待ちかねたぞ」
 目前の城から様々な物資を、調達した牛車や馬車たちが運び出すのを見ながら、満足気に頷いた。実際彼は嬉しかった。一年にも及ぶ攻城戦の末、ようやく立てこもる相手の心をへし折ることができた。半ば無断で兵を出した結果ではあるが、これで兄王たちとの後継者争いでも一つ優位に立てるはずだ。
「殿下、参られまし・・・

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世界禁酒計画

18/01/03 コメント:0件 TWWT 閲覧数:87

 某国某所、世界中の権力者たちが一堂に会する集まりが催されていた。もっとも、彼らの正体は世間には知られていないが、その実力は絶大で、各国の大統領すら彼らにしてみれば、即座に交代できる看板のようなものに過ぎない。そんな怖いものなどない権力者たちは、皆一様に疲れ切っていた。
「分かった。やむを得んな。世界の一般市民に関しては、酒を飲ませることは止めるという方針を進めていく。結局酒席や酔漢がいなく・・・

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美酒と愛執

18/01/03 コメント:0件 蒼樹里緒 閲覧数:93

 日の昇らぬ常闇の世では、酒呑みの刻限も無きに等しい。
 木の匂いに囲まれた小さな居間には、仄かに甘い香りも漂っている。
 座布団に正座し、娘はぷはぁ、と満足気な息を吐いた。両の手に包んだ湯呑茶碗には、白く濁った液体が揺れている。
「今宵の甘酒もなかなかに良い出来ではござりませぬか、あるじ様?」
「うむ。また一段と腕を上げたのう」
 開かれたままの障子戸の向こうで、老・・・

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一升瓶

18/01/02 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:78

 仕事帰りに、たちよった居酒屋で、ビールをのみながら三つ四つ料理を食べるのがぼくのいつもの夕食だった。
 ビールは一本しか頼まない。もっとのみたい気持ちがあっても、追加注文はしないことにきめていた。両親とも酒が好きで、酒のうえの醜態を、子供のころなんども目にしていたぼくは、じぶんだけは酒にのまれないようにと肝に銘じていた。
 酔った勢いで日ごろのうっ憤をぶっつけあう父と母、ときには物が・・・

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マリア

18/01/02 コメント:0件 吉岡 幸一 閲覧数:104

「一ヶ月間泊めてくれてありがとう」
 マリアは小さな鞄を一つ持つと男の部屋のドアを開けた。男は見送りに出ることもなく、煙草を吸いながら部屋の奥からじっと見つめていた。
 閉まったドアに向かって深々とお辞儀をすると、錆びた鉄の階段を降りていった。「次はあの人の家に行かなくっちゃ」足取りは軽く階段の音は朝の晴れた空高くに響いた。
 高校を卒業すると同時に家を飛び出したマリアは男の家を・・・

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幻想痛

18/01/01 コメント:1件 泡沫恋歌 閲覧数:153

真夜中に足の痛みで目が覚めた。
左足の膝から下にえぐるような痛みを覚え、泣きながら今夜も目覚める。
その痛みは私を責め続けているのだ。あの日からずっと――。

深夜の高速道路、ハンドルを握る私、永遠に続く暗い道、一瞬の睡魔、ふっと意識が飛んだ。
気づいた時、中央分離帯のブロックが目前に迫っていた。
慌ててハンドルを切ったが間に合わない。全身に激しい衝撃を受けた。・・・

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水底のマヤーリュビーマヤ

18/01/01 コメント:0件 君形チトモ 閲覧数:104

 初夏のある夜。近くの村へ寄った帰り、数年前行方知れずとなった恋人に再会した。
「ゾーイカ!」
 白樺の森にひらけた、月の光が静かにおりる場所。あの頃と変わらない彼女が白い服を着て、木から吊るしたブランコに腰かけて歌っていた。自分を呼ぶ声にゾーイカは歌を止め、僕の姿を認めると微笑んでブランコからするりと降りる。僕は駆け寄った。
「ゾーイカ、今までどこに行っていたんだい? ああ、で・・・

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再生してゆく未来で、私たちは

18/01/01 コメント:1件 冬垣ひなた 閲覧数:144

 路線バスがありふれた日常を走る。
 短期大学に通っていた私は、家から駅まで毎日バスで通っていた。昭和から平成に入り、町はずいぶん様変わりしていたけれど、のどかな風景を残した車窓を眺めていると乗客の声が耳に入る。
「この先の団地で、昔火事があってね。それは……もう酷かったの」
 酷い火事。言葉に詰まってしまうその人の心情に同調するように、私の心は過去へとさかのぼる。
 団地・・・

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ケモノのムラ

18/01/01 コメント:0件 竹田にぶ 閲覧数:114

 東西を急峻な山々で囲まれた山間にムラがあった。北は大国、南は新興国に接しながら、どちらの国の支配も受けずにきたのには理由がある。交通の要という地の利を活かし、交易で財をなした。それも一つ。もう一つは、妖の術である。
 この時代の戦は、肉と肉がぶつかり合う戦である。世が下り、兵器を使って指先一つで幾十幾百の相手を倒すのとは、戦いの根本が違う。自らの腕を振り上げ、なぎ倒し、突き刺し、体重をかけ・・・

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今年も君と、これからも貴方と

18/01/01 コメント:0件 徒然 閲覧数:69

「うっわ人すっごい…こんないるんだ。」
夜11時52分、俺と加奈子は神宮の境内に到着した。
近くの駐車場は全部満車で、仕方なく若干遠くの駐車場に停めた事からいくらか予想はついたが、境内は札幌駅の改札前に劣らないくらいの人口密度を誇っていた。
予習が甘かった反省点はあるが年越しを車内で迎えなかったから良しとしよう。
隣に目をやると加奈子は口をぽかんと開・・・

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秋の蝶は春の夢を見る

18/01/01 コメント:0件 黒江 うさぎ 閲覧数:68

「…ねぇ、シンタ」 「ん?どうした?ユウ」 「シンタはさ、秋の蝶って言葉、知ってる?」 「いや、聞いた事ねぇな」 「秋の蝶ってね、俳句で使われる秋の季語なんだー」 「へぇー。  で、どういう意味なんだ?」 「…淋しさや悲しさ、あと儚さ。そういう意味で使われる事が多いみたい。  …秋の蝶ってね、温かい時期の蝶に比べるとずっと弱々しいんだって。  だから、そういう意味で使われているんだと思うの」 「な・・・

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あともどりはできまへん

18/01/01 コメント:0件 井川林檎 閲覧数:159

 ここはどこだ。
 
 うちの中ではない。草むらの上で大の字で寝ていたらしい。
 はっと目を開いたら、見知らぬ犬覗き込んでいた。くうん。

 抜けるような青空に、純白の雲が流れてゆく。もさもさの茶色い雑種犬は、心細そうに耳を垂れていた。

 起き上がると頭が痛い。二日酔いである。
 そうだわたしは昨晩、適当な居酒屋に入って、しこたま飲んだのだ。一度も・・・

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消えてゆく悲劇に、私たちは

18/01/01 コメント:6件 冬垣ひなた 閲覧数:183

 溢れかえった悲劇のニュースが、一つ、一つ、世の中から消えていく。  多くの人が悲しみに耐えかね、その存在を手放してしまうのだ。生きていくために仕方がないと呟きながら。  私たちは、どうなのだろう?  ……ある日、友達が死んだ。  無理心中と呼ぶには陰惨な事件の巻き添えだった。  あと1年くらい通えば卒業する小学校から、O君がいなくなったという事実は、先生の口からは事務処理的に述べられただけだ・・・

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燃える水を入手せよ

18/01/01 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:72

 山奥の村に住むその少年は、幼少期から冒険者になる夢を持っていた。そして十二歳の誕生日を迎えたこの日、決意を胸に、長老の元へと赴いた。
「ふむ。やはり来たか」
「はい。要求も理解されていますよね」
 村には掟があった。外の世界に移住してはならない――。
 村の人々には外の人間とは異なる特徴があり、恐れられると同時に差別され、またそうした差別は村の祟りによって避けようがないと・・・

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水曜日の凶行(140文字小説)

18/01/01 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:102

 その連続通り魔の犯人は、予想通り水曜が定休日の者だった。事件はいつも水曜の日中に行われていたからだ。
 動機を問い詰めると、
「水曜日は休肝日なんですが、飲めないと思うとストレスが酷くて」
「もうそれなら飲んでくれたほうが」
「いえ、休日に飲むと飲み過ぎて、事件起こすから休肝日に」

(了)・・・

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酒場

18/01/01 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:75

 仕事帰りに、新しい店を探す。趣味の無い私の唯一の楽しみだ。
 なぜ、新しい店を探すのか。それは、演奏家の違いで曲の良さの引き出し方が違う。と言うイメージだ。出張先でふらりと入った酒場でそんな出会いをして以来、路地裏を彷徨っている。
 以前通った時には見なかった店が開いていた。名前は『酒場』なんともストレートなネーミングだ。

 薄暗い店内、広がる酒の匂い。様々な酒の匂いが・・・

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父とのお酒

18/01/01 コメント:0件 大久保 舞 閲覧数:80

私は、お酒が大嫌いだった。

私の父は大酒飲みで、食事の時も、水のかわりにお酒を飲むような人だった。
普段は真面目で厳格な性格をしている父が、お酒を飲んで酔っ払うと、いきなり性格が変わる。

酔っ払いになると下品なことばかり言って、一人でゲラゲラと笑う。
そんな時の父とは、一緒にいるのが本当に苦痛だった。

それでも、酔っ払った父の相手をするのは私だ・・・

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崩れてゆく世界で、私たちは

18/01/01 コメント:1件 冬垣ひなた 閲覧数:211

 私は生まれて初めて、新聞を読んだ日を覚えている。  真夜中に響く消防車のサイレンの音に目を覚ました私たち家族は、火災現場が驚くほど近いことに不安を覚えた。複数のサイレンが大きな火災を知らせる。 「団地が燃えているらしい」  その言葉に私は息を飲む。9棟からなる川向こうの大きな団地には、私の友達が大勢暮らしていた。しかし情報を得る手段の少ない昭和の時代、詳細は分からず、10才やそこいらの子供だ・・・

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世界一の朝食

18/01/01 コメント:0件 みや 閲覧数:90

目が覚めてすぐに腹が減ったなと男は思った。

そう言えばいつか妻と世界一の朝食と称賛されている店に行った事があった。外国の有名な店らしいのだが男は全く興味が無かったのだけれど、妻がとても行きたがり無理やりに連れて行かれた。
パン・ド・カンパーニュは焼き過ぎていて耳が焦げていたし、オーガニックスクランブルエッグはシンプル過ぎて味がしないし、ベーコンとソーセージは如何にも外国と言った・・・

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スーサイド・ワールド

17/12/31 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:122

 会社からの通達は次の通りである。 「大晦日やら正月三が日などというばかげたシステムを採用しているのはこの国だけだ。当社は世界基準でものごとを考える。あとはわかるな?」  ここらで持論を表明してみたい。みんなちょっとばかり働きすぎてないか?      *     *     * 「あたし、今日は絶対――いいですか先輩、これ片づけたら絶対! お昼で帰りますからね」  後輩のかすみは雄々しく決意を・・・

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虹の向こうに

17/12/31 コメント:0件 Motoki 閲覧数:205

「虹の根元には、宝物があるんだって」

君がそう言ったのは、
いくつの時だったろう。

「もっと大きくなって、バスに乗れるようになったら、2人でたしかめに行こうよ」

夕立の後そう言って、
焼けた顔に白い歯を覗かせた。

指差す先には、
大きな虹。

濡れた朝顔の葉と、

夕焼けと、

君の笑顔。・・・

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井守

17/12/31 コメント:0件 いっき 閲覧数:94

穏やかに流れる清流。
メダカ達が喜ぶように泳いでいて、イトトンボが水面に尻をつけて波紋をつくり産卵している。
水草の中から、黒くて腹の赤いイモリが体を揺らしながら現れ、川底の泥に足をつけた。

今となってはこの国でも珍しい、昔ながらの清流。
清らかな川と青々とした山林が、村民達に豊かな恵みをもたらしていた。



ある時、この村を囲む山の麓に製・・・

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