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検索結果

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祖母と伯父とバームクーヘンと

13/10/22 コメント:16件 光石七 閲覧数:17899

 二年ぶりに実家に帰省した。父も母もバス停で待っていてくれた。久しぶりの孫たちとの再会に顔がほころんでいる。
「柊平君はやっぱり来れないのか?」
父が少しがっかりした声で聞いてきた。
「うん、仕事が大変みたいで。お父さんと一局指したかったのに、ってぼやいてた」
「そうか、残念だ」
将棋という共通の趣味を持つ父と夫は、会えば必ず対局する。父はパソコン等が苦手なため、オン・・・

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散文の山と緑の瞳

15/05/29 コメント:2件 松山椋 閲覧数:15188

僕は悩んでいた。
素人小説家(こういう言葉が存在していればの話だが。)として下手な小説を発表し始めてから半年、僕は悩んでいた。
『小説は読んでなきゃ書けない。』これが僕のモットーである。一篇の小説には十篇の要素が詰まっている。引き出しが空っぽの状態ではいいものは書けないのである。だが中にはいわゆる「天才」と呼ばれる人たちもいる。ゼロから面白いものを構築することができる人達が少数であれい・・・

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跋丸くんの跋文

15/02/27 コメント:14件 松山椋 閲覧数:14098

 さて、私(松山)は跋丸昌也くんの第153回芥川賞受賞作品『狂気の太陽』単行本の跋文(あとがき・解説)をこれから書かせていただくわけですが、まずこの場を借りて跋丸くんの受賞に心からお祝い申し上げたいと思います。本当におめでとうございます。
ところで、受賞作単行本のあとがきを書くというのは大変重要な仕事なわけなのですが、なぜ無名作家である私にお鉢が回ってきたのか、読者諸賢はきっと不思議に思って・・・

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天空の城 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/05/11 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:12005

 晩秋の晴れた早朝、円山川に霧が立つ。それは但馬の山あいに立ち込め、藍白色の雲海となる。
 竹田城はそれを天へと突き破り、宙に浮かぶ。まさに天空の城だ。
 その風景を眺望できるポイントが城と対峙する立雲峡。そこからは、まさに幻想的な情景を目にすることができる。
 京田一郎は崖の上から望遠レンズで、これから現出する夢幻の窮まりを撮ろうとカメラを構えてる。
 そんな時だった。雲・・・

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田代くんの帰り道

15/03/13 コメント:6件 松山椋 閲覧数:10891

まさしは3月の初春の日差しの差す商店街を歩いていた。
この物語の主人公、田代まさしくんは小学校3年生である。かつて一世を風靡したドゥーワップグループの一員でありその後芸能界入りした某お笑いタレントと同姓同名である。しかし覚醒剤所持という人として許されざる罪を犯したような男と一緒にされては困る。まさしは厳格な刑務官の父と優しくて美しい母に愛されて育った品行方正で将来有望なエリート小学生なのであ・・・

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ちょっとぉ妻と、いちおう亭主

14/05/04 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:10213

 このカップルは…神さまの悪戯?
 そうなのです、ほとんどの結婚が意外や意外の男と女の組み合わせ。誰も予想だにしなかった、いや、十年前には自分さえも夢にも思わなかった人と、同じ屋根の下で暮らすことになるのです。
 その動機は――もちろん好きだったからです。
 されども思い切って言わせてもらえば、イキオイとハズミで一緒になっちゃいました、ってことでしょうか。
 私の場合も思い・・・

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青いサーカス

13/03/11 コメント:22件 泡沫恋歌 閲覧数:10095

 私は八歳の時に一度だけサーカスを観たことがある。ボリショイサーカスというロシアのサーカス団だった。大きなテントの中で両親と一緒に空中ブランコ、綱渡り、猛獣ショーを手に汗を握りながら観たように思う。

 サーカスを観た夜、母が消えた。
 急に居なくなった母のことを父に訊ねたが「お母さんは入院した」というだけで、どこに入院しているのかも教えてくれない、病院にも連れて行ってくれなかっ・・・

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竜宮風穴

14/04/21 コメント:11件 鮎風 遊 閲覧数:9990

『親からもらった命、粗末にするな!』
 ここは青木ヶ原樹海、その登山道の分岐点にこんな看板が掛かってました。
「自殺しに来たんじゃないよな」
 浩二に確認すると、「直樹、お前はバカか」と否定され、私はホッとしました。
 それにしても重なり合う樹木のせいで鬱蒼とし、とんでもなく蒸し暑いです。その上に、磁鉄鉱の溶岩だらけで磁石は使い物にならず、方向を見失います。
 こんな・・・

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死の天使 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/04/15 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:9716

「私たちの再会に、乾杯!」
 藍沢蘭子の発声で始まった小さなパーティ、それは高峰秋月の個展会場での二人の再会が切っ掛けだった。
「蘭ちゃんじゃない、ホントお久しぶり。見に来てくれたのね、ありがとう」
 幻想的な日本画を得意とする秋月、最近もてはやされてる。
「得意なイマジナティブなタッチ、ますます磨きがかかってきたようね。おめでとうございます」
 蘭子は、朝靄に消え行・・・

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征きし者たちの想い

13/05/01 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:9575

「母さん、これがゼロ戦! 小さいんだなあ」
「本当、こんな小さな飛行機で大きな空母に向かって逝くなんて」
「どう考えても、無駄死にだよ……」
「戦争ってそういうものよ。自分が国を救うと信じてみんな旅だたれた……母さんのおじいさんの弟さんも、ここ知覧から征かれたと聞いている」
 私は、大学生の息子を連れてここ知覧特攻平和会館にやって来た。どうしても、息子に、同じ年頃でありなが・・・

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とあるピアノコンクールにて -音楽とは何か、容姿かコネか出来レースか-

17/05/26 コメント:0件 藤原光 閲覧数:8945

光は、友人の朋子が参加するというピアノコンクールの話を耳にした。ただ朋子は「知り合いが来ると緊張するからダメ」と言っていた。

光は友人と、帽子をかぶり変装をしつつ、朋子にはこっそり会場に向かうことにした。光自体は音楽コンクール会場に来るのは初めてであったため興味津々で会場や周辺を観察していた。

朋子はあまり裕福な家庭ではなく、有名な先生に師事することはできない。それでも・・・

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とあるビジネスマンの公園内のベンチにて

17/05/09 コメント:0件 藤原光 閲覧数:8897

輝は生粋の仕事人間。日々仕事に追われる日々。仕事が人生。貯金額が伸びていくのが何よりの生きがいである。背筋を伸ばし、エリートオーラで風を切りながらきびきびと動く。常に一秒たりとも無駄にせぬよう、自己啓発書を肌身離さず持ち歩き、移動中は憑りつかれた様にオーディオブックを聞いている。

彼には平日も休日もない。もちろん日曜日も出勤である。休日に芝生でのんびり?何を考えているのか。そんなのは・・・

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青い花(永遠に幸せになりたかったから)

15/07/13 コメント:9件 松山椋 閲覧数:8877

 友だちがほしかった。
 いや、確かに恋人がほしいというのもある。大学を卒業した年に付き合っていた女の子と別れてから、それこそひと晩の付き合いこそあれど、基本的にひとりきりで日々を過ごしていた。
だけど普通の恋人では我慢ならなかった。同じ大学で知り合った同い年で、たまたま実家が近くて、休日には一緒に食事をして、映画を観て、夜は抱き合って眠る。そしていつか結婚をして平凡な家庭を築く。子供・・・

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【 雑記 】ペガサスの話

14/01/31 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:8818

 皆さんはペガサスのお話をご存じですか?
 ギリシャ神話に登場する背中に翼を持つ天馬のことです。ペガサスは天空を縦横無尽に駆けまわる美しい白馬ですが、気性は激しく、乗る者を選ぶといわれており、人間は誰も近づけようとせず、乗ろうと挑戦した者をことごとく振り落としたとされています。
 女神アテナが黄金の馬勒をつけることで、ようやくペガサスをコントロールできるようになったという伝説の馬です。・・・

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お母さんを知らないか

15/02/26 コメント:11件 松山椋 閲覧数:8623

 俺本当に困ってるんだけどだれか俺のお母さんを知らないか。この近くに来てるはずなんだよ。きっと俺のことを探し疲れてこの渋谷のどこかで泣いてる。だれか俺のお母さんを知らないか。
 なんでお母さんがこの近くにいるかというと、今朝俺の部屋に来ていた痕跡があったからなんだ。俺のアパートの部屋には毎日自衛隊が攻めてきていて(いやちゃんと証拠があるんだ。アパートの前に怪しい男が毎日立っている。絶対俺のこ・・・

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とあるフレンチレストランにて

17/05/01 コメント:0件 藤原光 閲覧数:8407

ここはとあるフレンチレストラン、「アステューシュastucieux」。海辺の景色が見えるこの店は、インターネットでの評判によると、料理の味もいいと、評判である。メニューも安めのものから高めのものまで揃っている。特に隠しメニューの「モアジー風」のものが人気とのこと。予約も数か月先まで取れないらしい。輝は友人とこのレストランにやってきた。

輝たちは、なんてことのないコーナーの席に案内され・・・

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南京虫

12/09/10 コメント:15件 泡沫恋歌 閲覧数:8395

「女物の小さな時計のことを昔は南京虫って言ったんだよ」
 ふいに、おばあちゃんの声が耳の中に響いた。
 半年前に亡くなった祖母の遺品整理をしていた時だ。和箪笥の中からたとう紙を引っ張り出しら、コトリと何かが落ちた。見ると、布佐に包まれた小さな婦人用の時計が入っていた。
 その時、おばあちゃんの声が耳の中でした。

 私はおばあちゃんっ子だった。両親が共働きだったので小・・・

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マリアージュ

12/06/07 コメント:6件 泡沫恋歌 閲覧数:8126

 ――どうして私がこんな席に座ってなきゃいけないの?

 今日はいとこの美帆の結婚式だ。
 彼女は純白のウエディングドレスに身を包み、誇らし気に笑みを浮かべている。そして、その隣でデレデレ笑っている新郎が、私の元カレの和貴――。
 親戚でなければ、こんな結婚式には絶対に出席したくなかった。怒りでグラスを持つ手が震えた。

 美帆は父の妹夫婦の娘で私より一歳年下・・・

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オリンピックランチ

12/08/15 コメント:8件 泡沫恋歌 閲覧数:7814

「オリンピック」という創作料理のお店があるというので、主婦四人でランチを食べに行くことになった。メンバーは関西の気さくな奥様の琴美さん、おっとりしているが芯の強い翡翠さん、一見平凡な主婦だが実は武術家のポポさん、そして天然おばさんの蓮子こと私である。
 そのお店は駅から歩いて五分ほどの距離にあり、ビルの一階で店舗の周りには五輪の旗や万国旗でデコレーションされていた。お世辞にも趣味が良いとは言・・・

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世界が終わる夜に

15/03/15 コメント:6件 松山椋 閲覧数:7390

目が覚めると死にたかった。
生島次郎31歳。別に今の生活に不満があるわけではない。決まった時間に起きて、新聞を読み、嫁である渚が作ってくれた朝ごはんを食べて、銀行に出勤する。午前中に事務仕事を済ませて午後は上司と外回り、夕方戻ってきて日報を書く。定時には帰ってきてまた渚が作ってくれた夕食を食べてたわいのない話をする。風呂に入る。一緒に並んで眠る。
大学を出て銀行に就職し、同じ職場で受付・・・

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自動販売機の上のカラス

16/04/24 コメント:6件 吉岡 幸一 閲覧数:6566

 いつのころからか真っ赤な自動販売機の上にカラスがいるものだから、誰も飲み物を買えなくなっていた。
 大学の購買棟の横にある自動販売機には他所では買うことができない炭酸入り缶コーヒーが売っていたので、一部の学生からはまずいと言われながらもよく買われていた。
 普通のコーラや緑茶やオレンジジュースなども売られてはいたが、それらは購買棟の中でも買うことができるので、カラスの存在に困っていた・・・

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宇宙から見た花火

12/08/04 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:6489

「キャプテン、この星、空気もあり水もあり、我々の星によく似た惑星のようですよ」
「そうか、ラキア−、それじゃもう少し接近してみてくれ」
 時空貫通システムを使い旅をしてきた宇宙探索船。いわゆるUFOは、現在月の辺りでホバリングし、地球を窺(うかが)っている。

 彼らが住む星は50年後に大きな隕石が落ち、滅びることが判明した。
 これにより移住できる星を見つけ出せとミ・・・

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流転

15/05/05 コメント:2件 松山椋 閲覧数:6407

 あ、はい、失礼します。すみません、失礼します。本日は面接の機会をいただきありがとうございます、葛西です。いやあ、海の家の面接ってこんな時期にするんですね。まあそりゃそうか。今から従業員集めておかないと夏場に間に合いませんもんね。ええ、わかります。世の中にはこんな求人もあるんですねえ。こんな世界もあるんだなあ、へえ。
はい、名前は葛西道蔵、26歳です。ちなみに聞かれる前に学歴を言っておくと、・・・

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聖餐

15/03/23 コメント:7件 松山椋 閲覧数:6074

 あ、どうも、あなたが○○文藝の記者さんですか?いやはや、今日は遠方よりお越しいただきありがとうございます。はじめまして、私が松山です。私のような駆け出しの小説家にインタビューしていただけるとは、誠に光栄です。なんでも聞いてくださいね。むさくるしい所ですが、どうか固くならず。足崩してください。
さっそく本題ですか。どうぞなんでも聞いてください。え?私が生き甲斐としている事は何か?よくぞ聞いて・・・

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夢の格闘者

12/09/01 コメント:9件 泡沫恋歌 閲覧数:5962

「ずいぶんストレス指数が高いですね。98%もありますよ。放って置いたら大変なことになるところでした」
 白衣を着た怪しげな男は俺の頭にヘルメットのような器具を被せて、その機械が弾き出した数値を見てそう呟いた。
「やっぱり、そうか……放っていたら、どうなっていた?」
「希死念慮や殺人衝動という危険な行動に出るところです」
「このままだと壊れそうだと俺も思っていたよ」
<・・・

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いつか相合傘で…

12/04/29 コメント:7件 ゆうか♪ 閲覧数:5795

しとしと しとしと
今日は雨降り
心が濡れて
泣いています
寒くて風邪を引きそうで

     しとしと しとしと
     まだ梅雨には早いのに
     心のなかに
     降り続く雨
     誰か傘を差しかけて…


ふと見上げたら
いのまにか頭上に
誰かの傘が…
そんな夢をみました
明・・・

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フルーツ・ドロップ

16/04/26 コメント:0件 j d sh n g y 閲覧数:5751

・水間艿㮈(にな)は、フルーツドロップを一つ口にほおばった。
・口の中に、パインの香りが広がる。
・カットされたパインの食感を思い出しながら、艿㮈はゆっくりと舌の上で溶けていくドロップを味わった。
・次に手のひらに転がったドロップはメロン味だった。
・ドロップを人差し指と親指ではさみ、レンズのようにのぞき込む。
・・・

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マイ エドワード

13/10/12 コメント:16件 そらの珊瑚 閲覧数:5737

「おはよう、エドワード」僕は心の中でささやいた。ベッドで寝息を立てているエドワードを起こさないように。エドワードは本名ではない。外国人でもない。かつ僕専用の秘密の呼び名。そう呼ばれている本人でさえこの呼び名の存在を知らない。大学の友達や君の恋人も君を「エド」と呼ぶ。苗字が江戸だから。頭の中で自然とカタカナ表記になってしまうのは君のルックスによるところが大きいだろう。おじいさんがスウェーデン人らし・・・

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青い空と緑の地平線

15/08/11 コメント:1件 松山椋 閲覧数:5703

 ――きっかけですか?
 僕のきっかけといっても大したものではないですよ。
 平成二年七月二十七日の午前中に、僕はこの世に生まれてきました。これが最初のきっかけですかね。父、母、妹、おばあちゃん、おじいちゃん。そして友人にたくさん愛情を注がれながらここまで歩んできました。
 さて、本題に入ります。
 そもそも少年時代は野球少年でした。しかし野球は運動神経の鈍い僕がやるスポー・・・

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おじさんの楽園

13/10/21 コメント:25件 泡沫恋歌 閲覧数:5619

 どうして、こんなことになったんだ!?
 気がつくと俺はジャングルの中に倒れていた。大きな草に囲まれて周囲が見渡せない。草叢からオームが現れた。ナウシカに出てくる巨大な甲虫だ。しかし……ただのダンゴ虫だった。大きな蟻も歩いていた。
 不思議なことに俺の周りの物が巨大化しているぞ! いや待て、この俺が小さくなっているのか?

 昨夜は、地方に転勤させられる俺の送別会だった。<・・・

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沖縄のカエル

15/09/21 コメント:0件 runaruna 閲覧数:5396

波の音が聞こえるほら、貝殻に耳を当てて聴いてごらん。聴こえるでしょう さざ波は砂に覆いかぶさり海は太陽を浴びた。空は星を光らせ夜は月を照らした。 夜風に吹かれながら走った。真っ暗闇をただただ ひたすら真っ直ぐに走った。行く当てもないのに海は青い色彩をキャンパスに塗った空のパステルブルーを雲を塗り潰すように描いた君は本当の空を知らないの?うん本当の海を知っている?海なら解る。海は恐ろしいほど青かった・・・

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傍屋

16/06/14 コメント:0件 j d sh n g y 閲覧数:5169

 須野 香(すの かおり)は同僚の渡辺千嘉(わたなべ ちか)と帰宅中、立ち喰い処傍屋に立ち寄った。

 傍屋は彼女たちの降りる駅のすぐ前にあり、値段も格安なのでたまに暖かな提灯の誘惑に負けてしまう。

 この店は一応居酒屋ではあるのだが、看板メニューはやはり蕎麦だ。

 出汁のきいたつゆに浮かぶほそくしなやかな麺。丼からうっすらとのぼる湯気。

 シ・・・

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悦子という女 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/04/27 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:5037

 賢(まさる)は入社以来馬車馬のように働いてきた。そのため女性と知り合うチャンスがなかった。その上、安アパート暮らしは花も実もあるとは言い難く、十年も続ければ嫌になってくるものだ。
 味気ない独身生活からの脱出、そろそろ身を固めたい。賢は思い切ってパートナー紹介倶楽部なるものに入会した。
 思慮深くて、しかし、生きて行くことに大胆な女性。
 婚活サイトの希望欄にこう記入した。それ・・・

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もしも世界がピエロだったら。

13/02/27 コメント:2件  閲覧数:4989

 白塗りの化粧をするのも大分慣れてきた。高校に入学してから一ヶ月の間は化粧をするというはじめての経験に戸惑いがあったが、毎日の習慣になってしまえばあまり気にならなくなるものだ。中学生を卒業し高校生になるという人生の段階の大きな一つを無事に渡ることができた気がする。やっと世間の中に溶け込むことができるのだ。物心ついた頃から白塗りの化粧をした大人たちを見るたびに、素顔のままでいる自分を恥ずかしく思い、・・・

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A Colorful Umbrella

16/05/13 コメント:0件 j d sh n g y 閲覧数:4982

•Mr. White sleep in the bus. He is holding a smart phone in the hand.
•screen of his smart phone contains a crack.
•It was sprinkling,water drops remained to the windows.
&・・・

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暗闇トンネル

12/04/12 コメント:2件 小春日和 閲覧数:4840

「こども園の運動会でね」
妻のレイコが息子のユウを抱きかかえながら言った。
「大きな鯉のぼりの中を走り抜ける障害物競争があるのよ。今日、ユウの練習を見たんだけど、鯉のぼりを見ただけで怖がっちゃって、とてもやれそうにないの」
 4歳になるユウは引っ込み思案で臆病な性格だ。初めての子どもで男の子。将来はやんちゃだった俺のようなたくましい人生を送ってほしいとの期待を、目下、裏切りつづけ・・・

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Bitter Love〜雨、時々、涙〜

13/10/19 コメント:21件 ふぐ屋 閲覧数:4749

『チョコレートパフェとチョコバナナパフェ、どっちが甘いと思う?』
貴方の質問に、私はどうして何も答えて上げなかったんだろう。

いつもと同じ時間、同じ場所、何も変わらない私。
夕方4時半、西に面した窓際の席に腰を下ろした私を少しだけ傾いた陽射しが照らす。
そして、紺色のショルダーバックの中から文庫本を取り出した。
跳ねっ返りな女刑事が難事件を解決していく、ミステ・・・

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氷山の一角

13/08/23 コメント:2件  閲覧数:4740

 思い返せば神様を探していた。小さい頃は神様なんているとも思っていなかったし、いないとも思っていなかった。別に考える必要なんてなかったんだから。だからいつもふざけたギャグと下品な言葉だって使うテレビが、天皇皇后に対してだけは最高敬語って言われるものを使ってることに僕ら兄弟は不満だった。
「なんで天皇の時だけ様をつけたりするの?」
と、若干苛立って尋ねると母はすかさずこう言った。
・・・

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ピンポン小僧

14/10/24 コメント:22件 泡沫恋歌 閲覧数:4731

 この一瞬のスリルに俺は全てを賭ける。
 各家のチャイムを押して回ると、誰にも見つからない内に、疾風の如くに逃げ去るのだ。単純なイタズラだけに面白くて止められない!

 希望退職を募っていたので、このまま働き続けても出世も昇給も望めそうもない俺は退職金20%上乗せという言葉に思い切って決めた。自分一人の判断ギリギリまで家族には黙っていた。
 まだ五十五歳、次の仕事はすぐに見・・・

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すきやきの日

14/01/17 コメント:24件 泡沫恋歌 閲覧数:4618

 私が小学校の頃、昭和の日本は貧しい国だったと思う。
 いや、違う! 貧しいのは我が家なのだ。昭和三十年代、冷蔵庫や洗濯機といった便利な家電品が一般庶民にも持てるようになってきたが、貧乏の子たくさん、もう絵に描いたような貧しい一家は小さな住宅に大家族で暮らしていた。
 収入源は父の給料と、朝から晩まで母は内職の電動ミシンで割烹着を縫っていた。
 貧乏な我が家の唯一の楽しみといえば・・・

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幸運の傘

12/05/06 コメント:7件 寒竹泉美 閲覧数:4502

 初めて来た土地で勝手が分からずうろうろしていると、空から白いものが次々と降ってきた。雪だろうか? と思って、男は足を止めた。でも、ここはずいぶん温かい土地だ。半袖でも充分なほどの陽気で、日が照っている。いくら異常気象が増えているとはいえ、こんな日に雪は降らないだろう。

 髪にくっついた白いものを摘み上げて、よくよく観察してみると、何かの植物の綿毛のようだった。しかし、見たことがない・・・

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東山公園

13/05/24 コメント:21件 泡沫恋歌 閲覧数:4481

 東京から名古屋へ出張で来た。予定していた会議が相手の会社の都合で急遽取り止めになり、明日の早朝に変更された。日帰りのつもりだったが、また明日出直すのもロスなので栄にビジネスホテルを予約して一泊することにした。その旨を会社に報告して、自宅にも電話を入れた。出張が延びたことを妻に告げるとなぜか嬉しそうな声だった。
《亭主達者で留守が良い》ってやつか? たぶん、今からヒマな主婦を誘ってホテルのラ・・・

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漢字一文字の旅 連載12

13/09/18 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:4479


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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チャラ男とツン子

13/07/07 コメント:14件 泡沫恋歌 閲覧数:4385

「バカ野郎! もう来るなっ!」
 そう叫んで、立ち去る男の背中に向けてテッシュの箱を投げつけた。だが間一髪、玄関のドアに阻まれて当たらなかった。
「ちくしょう!」
 ドアの向こうから笑いながら立ち去る男の靴音が聴こえる。
《あんな無慈悲な男とは絶対に別れてやる!》
 病人の私を見捨てて出て行った、男への怒りが収まらない。

 ここ数日、風邪を引いてアパート・・・

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お正月は嫌いです

12/12/13 コメント:17件 泡沫恋歌 閲覧数:4370

年が改まり 今日から新年なんだ
モソモソと布団から這いずり出して 袢纏を引っ掛け 
いつものように 新聞をポストに取りに行ったら
電話帳みたいな ぶっとい紙が捻じ込まれていた

こんなもん、取れるかい!
小さなポストから無理やり 引っ張り抜いた

大晦日も元旦も仕事の私にとって
お正月なんで 煩わしいだけで なんの感慨もない 
母も亡くな・・・

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貴船 蛍岩に想いを寄せて

12/05/22 コメント:1件 草愛やし美 閲覧数:4362

 本日は拙い私の掌編にお越し下さいまして感謝いたしております。語り部の草愛と申します。よろしくお願い申し上げます。ここは京の都の北に位置しておりますとある川原。皆さま耳を澄ましてみて下さいませ、せせらぎの音に混じりましてあちらより話し声が聴こえてまいったようでございます。
「おはよう」
「おはよういい天気だね」
 どこからか、話し声が響いてきております。辺りはまだ暗いというのに…・・・

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宅配アイドルでーす!

13/10/03 コメント:15件 泡沫恋歌 閲覧数:4293

 ピザを頼んだら、玄関に変な女が立っていた。
 インターフォンが鳴ったので、てっきりピザ屋だと思って、俺は二階から駆け降りた。台所に置いてある母親の財布からピザの代金を掠めて、慌ててドアを開けたら、
「宅配アイドルでーす!」
「はぁ? なにソレ? そんなの頼んでないから!」
 そう言って、鼻先でバタンとドアを閉めた。
 なんだよ、あの女は? ヒラヒラのミニワンピ着て、・・・

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純文学の書き方

16/01/04 コメント:2件 みや 閲覧数:4197

まず風景や行動の描写を出来るだけ長くしてみて下さい。そうですね、鳥居を抜ける恋人達のこの写真を見てただ単に「二人は鳥居を抜けた…」ではなく、「二人は熱い想いをそれぞれの胸に秘めて真っ赤な朱色の鳥居を加速する鼓動の早さと同じ速度で通り抜けた…」と表現してみては如何でしょうか?そうする事により恋人達の感情が温度となって読み手に伝わりますし、芸術的要素も加味されるのではないでしょうか?芸術的要素は純文学・・・

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剣闘士

12/09/12 コメント:10件 そらの珊瑚 閲覧数:4183

 古代ルピーナ帝国において、皇帝は「パンとサーカス」と呼ばれる政策に力を注いだといわれる。その両輪がうまく回っていれば、市民は大人しいのである。
 パンは飢えさせないこと。重税など課そうものなら、市民の反乱が起き、政権が倒される。サーカスは娯楽である。コロッセウム(円形闘技場)で開かれる剣闘士の命を賭けての試合は市民にとって何よりの娯楽であった。

 強い剣闘士は市民のアイドルの・・・

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懐中時計 【 ブレゲ No.160 】

12/09/15 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:4162

「アナタ、この古くさい時計、どこかへ売っぱらってきてちょうだい!」
 リヴカは朝から機嫌が悪い。朝食のためテーブルについた夫のアブラハムに、懐中時計を差し出し、怒鳴りだす。
 アブラハムは妻がなぜ不機嫌なのかわかっている。だから素直に、「ああ、そうするよ」と答えた。

 1ヶ月ほど前のことだった。泥棒市場で、アブラハムはこの金の輝きを持つ時計を見つけた。手にするといかにも精・・・

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