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罠尾軒の人々。

16/01/17 コメント:16件 滝沢朱音 閲覧数:2279

 灰次郎は、今日も天秤棒をかつぐ。
 桶には「猫、買い〼(ます)」の札。にゃうにゃうと騒がしい蓋の隙間からは、かわいい手が交互にのぞく。年の瀬は仕入れ時だ。
 人目を避けて近づく着流し姿の男は、憔悴した顔をしていた。まだ若そうな三毛猫が、男の懐からちょこんと顔を出している。
「文猫(ふみねこ)ですか?」
 灰次郎が聞くと、男は首を横に振った。
「では、あ・・・

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ラプラスの魔眼

16/02/05 コメント:18件 石蕗亮 閲覧数:1795

 競馬で大負けをした。
今月の家賃も突込んでしまった。
やばい。
残る金で今月はのりきれない。
今日は馬との相性が悪い、と考えてしまうのがギャンブラーの悪い癖である。
自覚があってもやめられない。
これもギャンブラーの悪癖である。
そして僅かな残金を持ってパチンコ店へと足を向けた。
河岸を変えれば風向きも変わるであろう。
そう思ったものの、それ・・・

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恋という妖

16/01/06 コメント:11件 石蕗亮 閲覧数:3549

「こんな寒い夕暮れ時はストーブを背負って怪談をするに限る。
 寒さが孤独感を後押しして寂しさを増すから、話すなら悲恋ものが良い。」

雪で止まった電車を待つために駅の待合室には数人が集っていた。
田舎のため、駅員も居なければ復旧を告げるアナウンスも流れない、昭和の匂いが残る古い駅舎であった。
今時珍しく携帯の電波も届かないほどの田舎である。
下手に携帯を視ても情・・・

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巻頭歌に踊らされ

16/07/10 コメント:9件 デヴォン黒桃 閲覧数:1886

 

 〜巻頭歌

 胎児よ

 胎児よ

 何故躍る

 母親の心がわかって

 おそろしいのか



「はあ、成る程、三大奇書と云われる中の一つ、夢野久作先生のドグラマグラで御座いますな。巻頭歌」

 男は、カフェで見かけた女に、下心タップリで声を掛けた所、コレを知ってるか? と問われた・・・

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好奇心と最後のダンス

16/07/09 コメント:16件 デヴォン黒桃 閲覧数:3112

 僕は親友と、田舎の爺さんのとこに泊まりに来ている。
 と言っても、ほとんど会った事も無かった。

 来年就職するから、今のうちに旅行にでも行きたい、ナンテ母に言ったら、
「アンタ、小さい頃に行ったお爺ちゃんの事、覚えてる? アソコの海は綺麗だから、行くと良いよ。お爺ちゃんのトコに泊まれば安く上がるわよ」

 ダカラ、会った事すらアマリ覚えてない爺さんの田舎に来・・・

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えのぐ

14/01/27 コメント:32件 泡沫恋歌 閲覧数:2867

 男は暗い顔でパリの街を彷徨っていた。
 売れない画家の彼は、いつもセーヌ川の畔で観光客相手に似顔絵などを描き細々と生計を立てていた。恋人は踊り子で彼の絵のモデルだった。
 小さなアパートメントで二人は暮らしていたが、貧乏暮らしに愛想を尽かしたのか、ある日、恋人が居なくなった。男はパリ中を探し回ったが見つからなかった。。
 その上、彼女は金貸しから借金があった。残された彼の部屋に・・・

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スウィジ・ゴースト・トラップス

16/08/20 コメント:7件 クナリ 閲覧数:1094

 随分前にリフォームしたらしいそのアパートに引っ越してきたのは、僕が大学四年の時だった。住んだ人間が何人か蒸発している事故物件で、オンボロながら格安である。
 大学院へ進むことが既に決まっており、周りに比べれば少し弛緩した日々を送る中で、その事件は起きた。
 アパートの風呂場はユニットバスになっていたのだが、あちこち傷みがあり、洗濯物を干すための心張り棒を左右の壁にかますと、わずかに壁・・・

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私はあの日のお茶を生涯忘れないだろう

16/02/15 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:1462

アパートのノブを見た瞬間おかしいと感じた、隙間がある、出る前にちゃんと鍵をかけたはず……だのに開いている、慌ててドアを開けた。いない、太一がいない。

「雨降ってるしパンツはいてへん子は連れていかれへん、お留守番しときなさい。お母さんはそこの若竹市場まで行ってすぐ帰って来るから」
 そう言い聞かせて外へ出たのは三十分ほど前だった。あひるのおまるに腰かけさせた子は相変わらずぐず・・・

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春を告げるモノ

16/03/11 コメント:12件 石蕗亮 閲覧数:1061

 雪の姿こそ無かれども、吐く息は真綿の如く白い。
指先の冷たさを手のひらに包み込んで握り、向かい吹く風に目を細め歩く。
春は名のみの風の寒さや、と心の中で呟き詠う。
 私は魔術師の弟子である。
師匠の喫茶店を手伝いつつ手習いを受けている。
カロンカロン
いつものように店のドアベルを鳴らし中に入るとカウンターにお客が1人。
ローブについたフードを目深にかぶり・・・

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夜のモノガタリ

16/05/08 コメント:10件 石蕗亮 閲覧数:2151

陽が沈む
緋を纏った金が西の向こうへ行くと
東の向こうから蒼い夜の帳が降りてくる
夜はいつも恐る恐るやってくる
何故なら夜はとても臆病だから
臆病すぎて自己主張をしない
だから誰も本当の夜を知らない
誰にも知られないのは可哀想だから
ボクは夜について語ろうと思う

日中
陽を遮ると影ができる
夜は地球の影だと思う?
ちが・・・

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斜陽の陽炎

16/08/24 コメント:4件 石蕗亮 閲覧数:1029

 怖いくらい青々とした空に西日の橙を彩った入道雲が浮かんでいる。

 盆に実家に帰省したものの、俺は別段することもなく誰かと会うあてもなく、子供の頃によく居り浸った駄菓子屋へと赴いた。
店構えは東を向き店内は西日の影を濃く落とし、その色は店の軒先まで延びていた。
昔のままの木造の駄菓子屋の風貌は今ではまるでお化け屋敷のようにも見えた。
ジュースを買い店の軒下のベンチの・・・

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深夜ラヂオ

16/08/24 コメント:7件 石蕗亮 閲覧数:1367

 暑苦しくて夜中に目が覚めた。
完全に目が覚めてしまってどうしようかと思ったが、ここでスマホの明りなんぞ目にした日には翌朝眼性疲労で鈍痛が起きるのは確定なので枕元のラヂオを手探りで点けた。
「ハーイ、リスナーのみなさん。今晩もうらめしや〜。
今日も丑三つ放送を聴いてくれてありがと〜。」
静かながらもややジャブの効いた単語を繰り出す放送が流れ、現在は夜中の2〜3時だと推測した・・・

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女子力のない私と口数の多い幽霊

16/08/01 コメント:10件 クナリ 閲覧数:1009

 高校二年生にして、私は霊にとり憑かれてしまった。
 私の斜め上辺りに浮いたり消えたりする霊の名前は、ユウヤといった。先月死んだばかりで享年は十四歳だと言う。
「ヨーコさんの部屋、物少ないね」
 うるさい。
「俺の姉ちゃんのが百倍女子力あるな」
 黙れ。
 私が男子バスケ部のマネージャにいそしんでいる間は、構ってもらえないせいでユウヤは姿を消したりする。
・・・

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スーラ・スールの咲かないザクロ

16/01/09 コメント:16件 クナリ 閲覧数:2044

 スーラ・スールという名前は、十五歳の冬に私が自分で付けた。
 綴りが簡単で、女らしいが男かもしれない名前。

 昨日自転車を置き忘れた通りに行くと、既になくなっていた。
 辺りを見回していたら、冬枯れの木が並ぶ路地に痩せた家が建っており、そのドアの脇に私の自転車が立てかけてあった。
 家は、随分うらぶれている。空き家かもしれない。
 私は鍵のかかっていないドア・・・

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明日、消えるかもしれないこの光を

16/12/19 コメント:16件 冬垣ひなた 閲覧数:818

 そうだ、今日は星がとても綺麗で、どれか一つでもいい、木の上にこぼれ落ちて来たら立派なツリーになるだろう。
 父さん、母さん、メリークリスマス。
 この手紙がいつ届くかは分からないけれど、ロンドンに帰れなくてごめん。愛してる。
 24 December 1914 
 フランドルにて ブライアン


 土を掘って身を隠す塹壕のぬかるみに、軍靴の足先は凍て・・・

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【講義】夢の中の音楽について

15/01/24 コメント:10件 石蕗亮 閲覧数:1039

 いつものように黒いローブ姿で夢師が講壇に立った。
「えー、本日も講義に参加頂きありがとうございます。今回は夢の中における音楽について説明(次回作におけるR指定気味の言い訳)をしたいと思います。
そう言うと黒板に「分類」と書いた。

 夢の分類
「夢占(夢解き)において【音】は様々な予兆を示します。
の、前に夢の分類について説明しましょう。
夢には3つの分・・・

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【講義】百モノガタリ

15/01/11 コメント:10件 石蕗亮 閲覧数:1136

 ガラガラガラ
講義室の扉が開いて夢師が入ってきた。
「みなさん席に着いてください。今日の受講者は読み手の皆様です。
本日は百物語について説明したいと思います。」
夢師はそう言うと黒板に百物語と書き込んだ。

<百物語>
「まず、百物語については諸説ありますが複数の人数で行うため大きな屋敷で行われていました。
行われる部屋は1部屋ではなく、続きの3部・・・

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カミツレとジギタリス

13/08/26 コメント:18件 クナリ 閲覧数:2821

辺境の女子孤児院を、リラの花弁が彩る季節が来た。
十年前の革命暴動の際の孤児が多く居るこの施設で、私とフラヴォアは七歳の時に出会った。今年、お互いに十七になる。
フラヴォアは貴族の血を引く端麗な容姿の持ち主で、その金髪碧眼は院内でも目立っていた。毅然とした立ち居振る舞いに憧れている子も多く、彼女と友達であるということは私の自慢でもあった。ただ、友情と言うよりは、憧れに近い感情ではあった・・・

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レンタル幽霊

16/08/24 コメント:7件 石蕗亮 閲覧数:1172

 お好みの幽霊貸し出します。

 そんな奇妙なチラシを見つけたのは文化祭の準備をしている時だった。
ものは試しにと早速記載の電話番号にかけてみた。
「あ、もしもし。チラシを見たんですが。」
 「お電話ありがとうございます。当社はお好みの幽霊を1体500円からレンタル致しております。1週間レンタルですと割引もございます。
どのような幽霊をご要望でしょうか?」

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赤い傘と彼岸花

16/08/17 コメント:6件 デヴォン黒桃 閲覧数:2172

 
「刑事さん、ドウカ聞いて下さい。アノ八月の半ばに起きたひき逃げ事件の犯人は私で御座います。ドウヤラ私は呪われて仕舞ったのか、頭がオカシク成って仕舞ったのか定かでは御座いませんが、居ても立っても居られなく成り、出頭した次第で御座います。アノ日は雨が降って居りまして、月は群雲が掛かっており、暗い夜で御座いました。言い訳しても致し方御座いませんが、視界が悪かったので御座います。ソコへ急に、赤い・・・

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頭蓋弁当のアマミヤ

16/06/28 コメント:16件 クナリ 閲覧数:1214

 高校で私と同じクラスのアマミヤのお父さんが、脳の全機能を完全に代替できるICチップとやらを発明した。
 あまつさえ、実の息子のアマミヤを実験台にしたため、息子の脳味噌は頭蓋骨から取り出され、代わりに親指の爪ほどの黒いチップが脳幹の位置に据え付けられた。
 アマミヤの頭蓋骨の中身は、ICチップ以外の部分は、無意味な空洞となった。
 科学者である彼の父親は、無駄、無意味、非効率とい・・・

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妖怪蕎麦合戦

16/07/03 コメント:11件 石蕗亮 閲覧数:821

「注文は?」
燈無蕎麦屋の店主の狢が化狸の男と化狐の女に伺う。
「どうすっかな。」
 「何にしようね?」
「決まったら声かけてくれや。」
狢はそう言うと鍋に湯を沸かしに厨房へと入った。
 「そういえばさ。なんでたぬきって天かすなの?」
「所説あるが。まぁ、全部人間由来だがな。
ひとつは天ぷらのたね(具)が無い天かすを『たねぬき』と言ってのが略されて『・・・

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日照雨(さばえ)

16/06/02 コメント:9件 石蕗亮 閲覧数:1188

 見てはいけないものを見てしまったと、後悔しても遅かった。

 五月闇の時期も終わり、入梅前のある逢魔ヶ刻。
薄紫闇の帳の向うに満月が顔を覗かせ、その風流に誘われ散歩に出掛けた。
歩いて程無く霧雨が掛かった。
おやと思い空を見上げるが、残照が雲に映え見事な月もある。
神鳴も無ければ驟雨、村雨にはなるまい。此は天泣か?と思い散歩を続けた。
小糠雨ではあったが・・・

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インビジブル・カラー

16/05/08 コメント:4件 石蕗亮 閲覧数:1567

 「君は異常者じゃない。至って普通の健常者ですよ。」
長い長い地獄から私を救ってくれた言葉だった。

 死のうと思った。
17歳で人生を終わらせるのは早計だと大抵の人は言うだろう。
でも私はもうこれ以上耐えられなかった。
人から異端だと蔑まされることに。
親ですら私の言うことを信じてくれなかった。
嘘をついているわけではない。
本当のことを話さ・・・

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エンドロールでもう一度

16/03/28 コメント:8件 石蕗亮 閲覧数:1669

 シートに深く腰掛けてスクリーンに向かう。
「それでは上映致します。人生映画をお楽しみください。」
アナウンスが流れ照明が消える。
最初に生まれたばかりの赤ん坊が映し出された。
両親の愛を受けて可愛がられていた。
歩き始めた頃に転んで顔に大きな傷を負った。
蟲を捕まえるのが好きだった。
小学校に上がった。
悪戯をして怒られたり、嘘をついて後のいつかば・・・

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妖蕎麦屋

16/07/03 コメント:5件 石蕗亮 閲覧数:739

 夕暮れも過ぎ掛け街灯が点り始める逢魔ケ刻
家路へ向かう人の流れ、または仕事終わりの一杯をひっかけに飲み屋街へと向かう人の波間の中。
 「お〜い、たぬ公!たぬ公って!」
雑踏の中から声に合わせて細い腕が上がる。
「うっせぇ!人前で狸呼ばわりすんな!狐づら!」
ふてくされた顔で男は声の主に意趣返しする。
 「相変わらず固いんだから。」
女は悪びれもせず応える・・・

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失恋保険

15/12/25 コメント:10件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:996

カフェのテーブルの向うから、彼女が決意したようにいった。
「別れてほしいの」
風太は、彼女が本気なのをみてとると黙ってうなずき、鞄からとりだした書類を差し出した。
「すまないけど、ここにきみの名前と印鑑を押してもらえないだろうか」
「なんなの、これ」
「失恋保険なんだ。失恋すると保険金がおりるようになっている」
彼女は書類に目をとおしてから、彼の言葉に嘘がないの・・・

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狂人の私が捨てたもの

16/01/31 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1040

気が付いた時、私は一冊の本を抱きしめていた。その頃、私が執心だった文学書だ。船の難破によって打ち寄せられた浜辺にあっても私が落ち着くことができたのはこの本のお陰に相違ない。救命胴衣の下に着ている作業服の胸ポケットから引っ張り出したその本は表紙こそ海水でふやけていたが中はそうでもない。その紙束を私は大事そうに胸に抱く。ここはどこなのかなど私にとってどうでもよいことだ。白い砂浜に波が押し寄せる音だけの・・・

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初恋

13/10/07 コメント:17件 murakami 閲覧数:1969

 高校受験が終わった。合格した。
 入学祝いに何がほしいか、お母さんに聞かれたから、「パイソン」と答えると、お母さんは頭の中にパイソン柄の財布を思い浮かべたらしい。
「蛇だよ。蛇っていってもこれぐらい」
 僕は両手を広げて、三十センチぐらいの長さにして見せた。
 お母さんは、最初は困っていたけれど、今まで何かをねだったことが一度もなかった僕が何度も頼みこむと「春斗がそんなに・・・

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櫛 くし

13/11/04 コメント:27件 草愛やし美 閲覧数:2626

「母ちゃん、こんな綺麗な櫛落ちてた」
 母は、あからさまに曇った表情になった。
「櫛……母ちゃん」
「あのね、未奈、櫛は駄目なの」
「何で? 綺麗な櫛だよ」
「櫛は、九四の数字に当てはめて、苦や死を指すの。だから、病人や不幸な人が、自分の苦しみや不幸を誰かに代わってもらいたい時に、道端にわざと置く物なの。そして、拾った人は、その苦死を受け継ぐことになる。早く元の場所に・・・

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今際のモノガタリ

15/02/22 コメント:8件 石蕗亮 閲覧数:1125

今際の淵で男は傍に付き添う妻に語りかけた。
「お前のおかげで俺は大きな何かを成し遂げたと思うておる。
意義有る人生だったと満足しておる。
しかし、何故ここに至ったかは得心がいかぬ。
お前の言うことを信じ、いや、最後に決め実行したのは確かに俺なのだから、俺の意思で成したことなのだが。」
 妻は夫の手を握り、顔を近付けると囁く様に語りかけた。
夫は目を細め、息も弱く・・・

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ミッション・ニャンポッシブル

15/04/19 コメント:20件 光石七 閲覧数:1772

 まひるちゃんは優しいけどママは少し怖い。柱や障子で爪をといだり机や調理台に乗ったりしたら大目玉だ。でも、このミッションを遂行しないと僕は一人前のぬこレンジャーになれない。ママが自分の夕飯をテーブルに並べてる。僕はおかずのサンマを横取りする機会を窺っていた。

 この町で悪の組織『ダークラッツ』と戦う『肉球戦隊ぬこレンジャー』。元は『ぬこホワイト』こと白玉さんと『ぬこブラック』こと墨丸・・・

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夢幻回廊

13/12/13 コメント:19件 泡沫恋歌 閲覧数:3158

 ――夢の世界へ迷い込んだ。
 気がつくと、そこは見渡す限り砂の海であった。地平線の向こう、遥か彼方まで砂に覆い尽くされた世界。天上にはナイフのような新月とスワロフスキーの星々が煌めいている。
 自分は駱駝の背に揺られていた。アラビンナイトの踊り子の衣装で、東郷青児の描く女のように深い憂いの睫毛を瞬かせて……。ここは砂漠なのかしら?
 駱駝の手綱を見知らぬ男を引いている。白いター・・・

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すきやきの日

14/01/17 コメント:24件 泡沫恋歌 閲覧数:4233

 私が小学校の頃、昭和の日本は貧しい国だったと思う。
 いや、違う! 貧しいのは我が家なのだ。昭和三十年代、冷蔵庫や洗濯機といった便利な家電品が一般庶民にも持てるようになってきたが、貧乏の子たくさん、もう絵に描いたような貧しい一家は小さな住宅に大家族で暮らしていた。
 収入源は父の給料と、朝から晩まで母は内職の電動ミシンで割烹着を縫っていた。
 貧乏な我が家の唯一の楽しみといえば・・・

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青く光る森の妖精

14/07/24 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:2309

 その森では、今も夜になると仄かな青い光が灯るという……。あれから、何年経ったのだろう。少年はその森で何を見たのだろう?
 自国のみが唯一の民と主張する独裁者バドは、テロやゲリラ戦を仕掛け隣国ナモハに攻め入り支配下に置いた。バドの狙いは、その地に眠るエネルギー資源。その採掘場はナモハの北の果ての森にあった。だが、莫大なエネルギー物質は、人の命を危険にさらすものだった。採掘に従事させられたナモ・・・

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What Happened On The Road? ──道路で何かが起こっている

14/06/25 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:1621

 太陽が昇ってきた。今日も、俺は熱せられるのか、アスファルトになってまだ二年、慣れないままだ。昨日、子供が落としたアイスクリンのため、俺の体の片隅に染みが残った。蟻がやって来るようだ。昔は、蛆が体を這ったこともあるが、今は蟻か……。
 田舎の田んぼだらけのど真ん中にできたアスファルト道、今どきの人間は違和感を持たないのだろうか。この辺りが急に賑やかになったのはつい三年ほど前だ。俺の前に開ける・・・

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転がる宝石のように!

14/06/05 コメント:21件 草愛やし美 閲覧数:1793

 悦子は、先程から洗面所に閉じ籠っている。鏡の前で、しきりに顔の表情を変えていく。大きく口を目いっぱい開け、「あいうえおー」喉の奥まで見えるようにと手鏡を持つ手にも自然と力が篭る。口角を引き締める美容法だ。これを毎日やれば豊齢線など、への河童だと心に言い聞かせる。鏡の中の自分の顔の老いに気づいてもう何年になるだろう。若い頃、自画自賛できるほど、綺麗だった。道をゆけば、振り返る男もいた――はず、そう・・・

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ターコイズの空

13/12/18 コメント:21件 泡沫恋歌 閲覧数:1856

 レノは銀色の髪と碧眼の美しい少年である。
 彼の家は代々戦士の家系で父も祖父も勇敢に戦う男だった。だが、レノはまったく腰ぬけで争い事が嫌い、血生臭いことが苦手であった。武術の鍛錬よりも音楽や花を愛でることが好きな心優しい少年なのだ。
 特にオカリナの演奏は素晴らしく、レノがオカリナを吹くと空を飛んでいる鳥が舞い降りて、肩に止まり一緒に囀るといわれるほどの腕前である。
 しかし平・・・

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本妻と愛人

14/02/20 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:1780

【本妻】




ぬくぬくと眠りをむさぼる冬の朝
これほど愛しいと思うものがあろうか……

布団……
これこそ私の恋人だ

私を抱き留めてくれるその暖かい思いやりに
私もまた応えたいと抱きしめ愛を語る

夢見心地のまま 
あと5分 あと5分だけ
愛撫しあいたい

この愛を成就するには短すぎる・・・

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眠れない夜は

15/01/16 コメント:4件 石蕗亮 閲覧数:1285

眠れない夜は
子供の頃に見た空の色を思い浮かべる
吸い込まれそうなあの淡い蒼の世界を

眠れない夜は
いつか聞いた風の音を思いだす
木々の間を通り抜け葉を鳴らすワルツを

眠れない夜は
昔見た君の寝顔を思いだす
側に居てくれるだけで幸せに感じた想いを

心が迷って自分を見失うと明日が怖くなる
大事にできなかったものは指を・・・

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ため口のおっぱい

14/09/17 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:1542

「聞こえてるんでしょ、帆花」
「誰?」
「あんたのおっぱい」
「嘘、乳房が話すわけない」
「こないだからずっと話しかけてるのに無視してたでしょ。私は右ぱい」
「右のおっぱい、ってことは、左右は別人格、知らなかった」
「知っておくとよいよ、おっぱいは左右対称じゃないでしょ、別物だからなのよ」
「右だけが話せるって左は、寡黙な詩人とか?」
「ほら、しゃべ・・・

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ピンポン小僧

14/10/24 コメント:22件 泡沫恋歌 閲覧数:4121

 この一瞬のスリルに俺は全てを賭ける。
 各家のチャイムを押して回ると、誰にも見つからない内に、疾風の如くに逃げ去るのだ。単純なイタズラだけに面白くて止められない!

 希望退職を募っていたので、このまま働き続けても出世も昇給も望めそうもない俺は退職金20%上乗せという言葉に思い切って決めた。自分一人の判断ギリギリまで家族には黙っていた。
 まだ五十五歳、次の仕事はすぐに見・・・

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雪響 ――ミグナッハはかく歌い――

13/11/22 コメント:19件 クナリ 閲覧数:2390

私が十九歳で、合唱団最高格の歌姫を辞め、駆落ちした夜は、酷い雪だった。
大陸の端の一大都市、『歌と水の町』の冬。
貴族院付きだった私の逃亡は、団の名に泥を塗ることになる。<脱走死罪>の団の私兵をやり過ごすために私達は雪に潜り、長い時間、道端に伏せた。
追手が諦めて去る頃、私に覆い被さった恋人は凍死していた。私も寒さで病み、お腹に宿していた命が流れて散った。
歌う為に生きてき・・・

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野兎

13/08/09 コメント:20件 泡沫恋歌 閲覧数:2608

「おばちゃん、おばちゃん、聴こえますか?」
「……どうやら、昏睡状態で意識がないようだ」


 ――いいえ、ちゃんと聴こえてるよ。
 お嫁さんと息子の声が……だけど、身体が動かないし、返事もできないんだよ。子、孫、曾孫まで、私の最後を見届けに病院に集まってくれたんだね。皆の声が聴けて嬉しいよ。
 人は死ぬ時、過去の出来事が走馬灯のように頭の中を巡ると聞いたが、浮・・・

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さらば可笑しき探偵よ

13/06/20 コメント:26件 泡沫恋歌 閲覧数:2693

 それは単なる浮気調査だと思っていた。まさか、こんな事態になろうとは予測もしなかった。
 俺は叔父が経営する探偵事務所で働いている。「マーロウ探偵局」いかにもレイモンド・チャンドラーの崇拝者だと知れてしまう名前である。実際、トレンチコートにボルサリーノのフェドラを被った叔父はいかにも「名探偵」という格好なので、尾行には目立ち過ぎて使えない。
 大学を卒業した後、俺は就職したのだがサラリ・・・

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学生時代の追憶

12/12/10 コメント:9件 石蕗亮 閲覧数:1965

小学生の頃
この時間は永遠に続くと思っていた
大人になるのなんて
とてもとても
遠い遠いことだと思っていた
いつしか後輩ができ
先輩が減っていき
自分が卒業するとき
この世界には二度と戻れないのだと気付き
涙が毀れた

中学時代
子供と大人の中間点
今までのような子供ではいられなかった
でも、大人になる自信もなかっ・・・

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違和感

16/01/04 コメント:12件 光石七 閲覧数:1033

 今日も首相官邸に側近たちが集い会議が始まる。場を仕切るのはやはり第一首相補佐官である根古川先生。私は首相秘書として部屋の隅に控える。
 ……ずっと根古川先生を信じてついてきた。先生の理想が私の理想で、それは現実のものとなりつつある。だけど……
「では、元Q県議の井沼衣良武も殺処分に」
革命の中心人物だった根古川先生の提案は決定事項と同義だ。……もう何人目の粛清だろう? 側近たち・・・

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夢の境

15/11/01 コメント:7件 石蕗亮 閲覧数:733

 こんばんは、夢師です。
私は万の夢を扱うことを生業としております。

 本日は皆様がお客さまです。

今回は皆様を夢の世界へとご案内したいと思います。
その前に皆様がどれだけ夢についてご存知か確認いたしましょう。

 皆様夢は見ていますか?
昨日はどんな夢を見ましたか?
覚えていない方が殆どのはずです。
起きてすぐの頃は覚えていた・・・

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あたりまえ

15/09/05 コメント:2件 石蕗亮 閲覧数:837

両親がいる。
私が産まれているからそれはあたりまえなのだ。
でも今は居るけどいつまでもではない。
伴侶がいる。
お互い好きになり認め合い様々なものを共有して一緒にいる。
あたりまえのようにいる。
子供がいる。
その子にとって私が親なのはあたりまえで私にとって血の繋がった子であることはあたりまえだ。
でもずっと一緒にはいられない。
育つ過程・・・

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私だけのアニメは ―断片的かつ微妙なmy historyっぽい話―

15/09/21 コメント:19件 光石七 閲覧数:1416

 それらのアニメにはタイトルが無かった。ストーリーも定まっておらず、途中で巻き戻って別な展開に進むこともしばしばだったし、未完のまま打ち切られるものも多かった。それらのアニメを観ていたのは私だけだった。作っていたのも私。私の思い描くキャラクターたちが、私の望むストーリーに沿って、私のイメージする絵柄で動き、私の思う声で喋る。その時その時で漫画やテレビなどの影響を受けながら、私は一人の少女を主人公に・・・

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