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第150回 時空モノガタリ文学賞 【 悲劇 】

今回のテーマは【悲劇】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2018/01/29

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は3作品とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 募集中
コンテストカテゴリ
投稿期日 2017/12/04〜2018/01/01
投稿数 44 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数 3
総評

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投稿済みの記事一覧

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怠け者の末路

17/12/17 コメント:0件 八王子

 時は江戸。
 怠け者の男、二平という男がいる。
 恰幅よく、健康な体を持った二〇を過ぎた男は、日がな一日、家の中でゴロゴロとしている。
「あんたと同じ歳の向かいの辰吉は今日も地主さんのところに仕事をもらいに出て行ったってのに、うちの二平ときたら」
 はああ、と長い溜息をついて、食肉にでもなれば高く売れそうなぐらいに大きな息子の背中を見てぼやく。
「辰吉んところの家に・・・

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滑り饅頭

17/12/17 コメント:0件 吉岡 幸一

 「お店の前を通っちゃだめでしょ」
 滑って転んだ女の子を抱きかかえながら、母親が店の前をさけて横に曲がっていった。店の横の道から裏の道に回って、Uの字に歩いてまた表通りへ戻るつもりなのだ。
 饅頭屋の前を道行く人は皆店の前を避けて通っていた。なぜか三カ月ほど前から、店の前の歩道五メートル圏内だけが急に滑るようになったのだ。通る人、通る人、皆が滑って転んでしまう。それ以外の前後の歩道は・・・

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矛先

17/12/17 コメント:0件 浅月庵

 ◇ 
 幾層にも顔に包帯を巻かれた女性が瞼を閉ざし、ベッドの上に横たわっている。
 その周りを、俺を含め数名の刑事が取り囲んでいた。
「母は生死の境を彷徨っています。ですが、これが事件解決の糸口に繋がるのならお願いします」
 彼女の息子が、神妙な面持ちで呟いた。

 ーー連続主婦殺人事件。
 犯行の手口は絞殺に刺殺、撲殺に溺殺に焼殺と、種類に富んでいた。・・・

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さよならを告げないで

17/12/16 コメント:0件 新崎 彼方

「さよならって言葉がこわいのよ」
 何の連絡もなく押しかけてきた彼女は、開口一番にそう言った。マフラーと手袋を外すと、ああ寒い、と少し身を縮めて、するりと僕の横を通りすぎて行く。
「暖房をあげようか」
「いえ、いいわ。十分あたたかいから」
 古めかしいペチカの前に座り込み、彼女は微笑む。灰色のコートが濡れて変色していた。雪が降っているのだろうか。うすいレースのカーテンを引け・・・

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白い杖

17/12/16 コメント:0件 大久保 舞

とある中小企業にて、毎日のように怒鳴られている青年がいた。

その青年は大学生。遊ぶための金を得るために、その会社へ派遣のアルバイトに来ていたのだった。



青年は特別ミスが多いというわけではないのだが、仕事に対する真剣さが足りないことが伝わるのか、ベテラン社員の一人が、厳しく接してくるのだった。

『ウザってぇ・・・』

青年はそう思・・・

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窓は開かれて

17/12/16 コメント:0件 アキクニ

彼は愚かであるゆえに愉快な男である。
窓というもので人は何を思うのであろうか。ときに窓は開かれたもの、未知のもの、そして盲点の窓という存在があるという論説を思い出した。彼の窓に関してはそのどれにも当てはまらないようである。

「窓は大きいほうがいいですね」
彼は言った。折れそうな体躯が病的であった。彼は弱々しくそれが故に見る者の顔を歪ませた。
嗜虐心よりも先に、憐憫が・・・

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絶滅桃娘飲食街

17/12/15 コメント:2件 白梅 弥子


どこかの偉い学者達が、三年後には人類は確実に滅びると言った。人類が好き勝手やったお陰で汚染された地球では、鶏は卵を産まなくなり、牛や豚だけでなく、人間も奇形しか産まなくなり、畑からはおかしな形の植物が生えるようになり、やがて荒地になっていった。

人類は最新のテクノロジーを駆使して新たな食べ物を探して探して探した......
が、結局のところ共食い、つまり食人・・・

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壊れた人形

17/12/14 コメント:1件 白梅 弥子



アタシの心はいつまでも、赤黒い血を流し続けて、止まることなく脈打ち続けて居りました。
 崩れた端から流れ出して行く心の中身は忌みじくも尽きることはなく、只々空っぽに成って行く痛みがアタシを苦しめ続けました。
 他に好いた女が居るワケでもなく、只身勝手にアタシを捨てた貴方。貴方が居ればそれだけでアタシは満たされますのに。
貴方はもう逢わないと云いましたね。
・・・

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ハイキング

17/12/14 コメント:4件 瀧上ルーシー

 朝、スマートフォンのアラームで目を覚ました。昨日、臨時の飲み会に参加したため、記憶がはっきりしない。スマホ片手に俺はしばらくぼうっとした。
 思い出す。今日は好きな女と二人きりでデートをする約束をしていたのだ。幸い乗る電車の時刻もすぐに思い出せた。俺は歯を磨き、髪をセットすると、勝負Tシャツにジーンズを穿いて家を飛び出した。
 ターミナル駅で合流する。彼女はキャップに長ズボンに薄い黄・・・

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表裏

17/12/14 コメント:0件 山盛りポテト

とにかくこの世はよくできているなと関心することがある。毎日飽きもせず日が昇り日が沈む、その間の中でやっかいな出来事というのは空気のそれと同じように俺に付きまといやがる。
そんな鬱屈した日常が今日も始まる。
「みーちゃんどこー?あらそんなとこにいたの」
オクターブ高い声で何やら言ってるが、俺は猫なので当然よく理解していない。
ちなみにどうやら俺はみーちゃんという名前らしい。そ・・・

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象の道

17/12/13 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 たとえば死期をさとった野生の象が、誰に教えられたわけでもないのに象の墓場に向かうように、人間とことんおちぶれると無意識に自分の墓場に足をむけるようだ。  そこはビルとビルの間にできた裂け目ともいえる路地の奥だった。あてもなくやってきたつもりだった私がみたのは、行き止まりのわずかな空間の中に影にまぎれてうずくまっている何かの塊――それが私と同じ人間だと目が理解するまで、かなり時間を要さなければなら・・・

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ドアに挟まった!

17/12/13 コメント:0件 吉岡 幸一

 ドアに挟まった。
 久しぶりに仕事を定時に終えた源蔵は電車に乗って家路へと急いでいた。半年前に結婚紹介所の紹介で知り合った女性と結婚したばかりの源蔵は、一刻でも早く愛する妻に会いたかった。家に帰ったら妻の手料理が待っている、そんな思いにニヤつきながらすし詰め状態の満員電車に揺られていた。五十の歳で二十代の若い妻を娶ったせいか、気持ちだけは若者のように浮ついていた。
 十八時過ぎの下り・・・

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壁に挟まった!

17/12/13 コメント:0件 吉岡 幸一

 壁に挟まった。
 ビルとビルとの壁の隙間に源蔵は挟まってしまった。仕事を終えて、結婚紹介所で紹介された女性との待ち合せ場所へ急いでいる途中だった。予定より長めの残業をしてしまったため、普段はけして通ることのないビルの隙間の近道を通ってしまったのが原因だ。会社の若手社員がこの隙間を利用して駅と会社を行き来しているのは以前から知っていた。二分近くは早くなると得意そうに話すのを何度か聞いたことが・・・

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新たに飛び出した一歩。

17/12/13 コメント:0件 かの

受験に3回も失敗し、彼女にも振られ、バイトも出来ず、家でスマホをいじっている。
やっぱり、そろそろ死のうか。
習慣であるゲームのまとめ記事を見ながら、もう何回も考えた、死への思想を巡らす。
痛いのは嫌だし、苦しいのは嫌だし。
首を吊ったって、喉元を切ったって、手首を切ったって、みんな痛いし苦しいでしょ。
安楽死なんて言葉もあるよな。
きっと安らかに、楽に死ねるん・・・

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約束

17/12/12 コメント:0件 夏雲




君に伝えたいことがあるんだ。
あの日、君がいってしまった日。

君は待っていてくれたんだよね。
僕が来るのを、ずっと玄関の横で。

なのに、僕は間に合わなかった。というか、知らされなかったんだ。
君がいってしまうというのにね。

僕が君のただの入れ物に対面できたのは、君がいってしまってから何時間も後のこと。

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サプライズ

17/12/11 コメント:0件 みーすけ

 愛は待つこと、と誰かが言った。
 私にとっては、そんな言葉も他人事に過ぎなかった。今日この日までは。

 結婚三十年目にして、私は妻にプレゼントを送った。
 三十年間、妻にプレゼントを渡したことなど一度もなかった。それが何故、急にそんな気を起こしたか。
 私の職場に、事務のミカちゃんと呼ばれている女の子がいる。彼女の本名はミカではなかったが、牛乳瓶の底の様なメガネの・・・

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緑の血

17/12/11 コメント:0件 浅月庵

 ◇
 些細なことで僕に緑の血が流れていると知られて、友達を全員失った。小学一年生の時だ。
 
 ただ時間が経つにつれ、血のことなんてみんな気にも留めなくなるけど、僕をボッチにする図式自体は変わらないまま続く。

 ーーもし心が可視化されたのなら、萎んだ風船みたいな形になってるんだろうけど、誰もそれに気づくはずもないので、僕は高校でも孤独の道を悲しく歩んでいる。

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‘x‘ ミー子 ∧――∧

17/12/10 コメント:0件 t-99

 くびをかしげると眼下の生垣に無数のペットボトルが並べられていた。なんのおまじないだろう? 浮かんできた疑問を頭の隅に追いやり『クソネコ』とほうきを手にした怖いおばさんが出てくるまえに、わたしは車道にひょいと飛び降りた。
 優雅にしっぽを左右に揺らしながら、いつもの公園に足をむける。『ネコちゃん、ここではフンをしないでね』公園の砂場には看板が掲げられていた。当然、字の読めないわたしは用をたし・・・

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サムの片思い

17/12/09 コメント:0件 満希虹里

東京のユースホステルで聞いた、イギリス人のサムの恋物語はだれかさんのように甘酸っぱい。

「両親は海外に住んでいたから、僕は寄宿舎にいて、田舎に一人暮らしをしているお爺ちゃんの家で休暇を過ごしたんだ」ハリー・ポッターのように、寄宿舎暮らしなんて、いかにもイギリスの男の子らしい。確かにサムはハリー・ポッターのように格調高いイギリス英語をしゃべる。「初めてヘザーに会ったのはおじいちゃんが・・・

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ティンダーデイト

17/12/09 コメント:0件 満希虹里


デイト・アプリでただ今、ティンダー(火付け)が世界で一番人気のあるのは名前のせいもあると思う。うまく名付けたと感嘆する。自分の写真を出してだれかが関心を示してクリックと「火をつける」から、拒絶の心配をせず、誘えるから確かに自尊心は傷つかない。せっせとスマートフォンの画面をこすりながら、若者は理想のデイト(相手)を物色する。でも、デイトに何を求めるかはっきりしないから、誤解は頻繁に起こる。<・・・

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オレオレの悲劇

17/12/09 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

美弥子がひとりで家にいたとき、息子の大樹から電話がかかってきた。 「おれだよ、大樹。母さん、困ったことになっちゃって――」 「大樹――あなた、本当に大樹なの」と美弥子は念を押すようにきいた。 それというのも、ちょうど一昨日、孫を連れて遊びにきた娘の桂が、ビールのジョッキを傾けながら、「これほど世間でオレオレ詐欺の被害がでているというのに、まだひっかかる連中が後を絶たないなんて、まったくどう・・・

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サムの片思い

17/12/09 コメント:0件 満希虹里

東京のユースホステルで聞いた、イギリス人のサムの恋物語はだれかさんのように甘酸っぱい。

「両親は海外に住んでいたから、僕は寄宿舎にいて、田舎に一人暮らしをしているお爺ちゃんの家で休暇を過ごしたんだ」ハリー・ポッターのように、寄宿舎暮らしなんて、いかにもイギリスの男の子らしい。確かにサムはハリー・ポッターのように格調高いイギリス英語をしゃべる。「初めてヘザーに会ったのはおじいちゃんが・・・

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血と灰の熱 ――リース・リストリイの喀血

17/12/09 コメント:0件 クナリ

 「歌と水の街」は、大陸の端にある一大芸能都市である。
 その中枢をなす歌劇団にあって、リース・リストリイは、中心的な存在ではなかった。
 歌い子の潮時は二十五歳までと言われる中、彼女は今年、二十八歳になる。
 最年長のリースの歌は、今なお最上級ではない。しかし、美貌は優れている。



 公演の後、私は歌劇場支配人の執務室に呼び出された。
「リー・・・

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人はなぜ生きるか

17/12/09 コメント:0件 伊川 佑介

「あなた何か勘違いしてるんじゃありませんか」
目の前の白衣の男が面倒臭そうに吐き捨てた。時折横にある画面を見つめてはその指示を「患者」に伝えるだけの人。現在の心理相談医、その昔精神科医と呼ばれていた人だ。
「あなたは生きる意味を見出せない。それなのに生に執着している。それは一体なぜですか?」
「別に急いで死ぬ意味もないから生きているだけです」
これは困った、という顔をして男・・・

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させてくれ

17/12/08 コメント:0件 井川林檎

 殺人鬼が乱入して、職場の皆が、あっというまに死んでしまった。
 イジワル課長も、悪口ばっかり同僚も、こんな死に方をするなんて、悲劇だ。

 わたしは幸い、倉庫にものを取りに入っていた。
 その最中を見なかったのは、せめてもの救いだ。

 本当は、倉庫にいる間、とんでもないことが起きていることを察していた。
 
 「うはははは、殺す殺すころーす」

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真夜中に吠える

17/12/08 コメント:0件 ちりょう なひろ

 ここに横断歩道が出来たのは、中田ん家の子供が轢かれ死んだからで、それほど車通りの多くないこの道にぽつんとある信号は不可思議にして違和感すらおぼえる。

 そもそも中田ん家の子供は赤信号だろうと車がきていなければひょいひょいと渡ってしまう奴だったし、まして信号がないところでは左右の確認を怠り横断してしまうような事が多々ある不注意極まりない子供だった。
 親が赤信号を無視する仕方が・・・

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怨むべき人

17/12/08 コメント:0件 大久保 舞

復讐の機会は、満を持して訪れた。

それは、成人式。

クラスの中心グループだった奴らは、間違いなく来るだろう。

僕は、黙って成人式の知らせの紙を握り締めた。


「あっれ〜、久しぶりじゃん!!」

こそこそ隠れるように成人式の会場に向かった僕に、奴らは声をかけてきた。

「俺たち、あれからずっと心配してたんだよ。良か・・・

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名探偵がおこす悲劇

17/12/08 コメント:1件 糸井翼

夏休みの懸賞で当たった宿泊券を手に、彼氏と山奥の秘境温泉宿へ行くことになった。でも、山奥のホテルで急な大雨の中、道路が通れなくなり、私と彼は宿に取り残された。ここで私はこのホテルでの誰かの死を予感した。彼と一緒に何かすると大体事件に巻き込まれる。じゃあ何で旅行に誘ったかというと、彼が好きだから。それに、彼は名探偵で必ず事件は解決する。もうこれはお約束。
案の定、事実上の密室で宿の主人が殺され・・・

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譲れぬおもい

17/12/08 コメント:0件 蓮華

 女は、静かに目を閉じた。

 ざわめき。
 これは一体何のざわめき。
 夕暮れを寂しくおもい鳴くカラスか、草木を揺らし撫で上げ空に、けして見えぬ姿の代わりに残していった風の声か。それとも、自分自身の心のざわめきか。
 でも、そのざわめきさえも消える。
 音が、聴こえた。一定に打つ音が。
 ドクンドクンと何故か懐かしく落ち着くその音は、彼の中から聴こえる。・・・

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懸賞小説中毒者

17/12/08 コメント:0件 伊川 佑介

「先月のことだよ。もう、いよいよ忍耐にも限界が来たと言うか、ほとほと呆れ果ててね。人間ですよ、人間。こんなに俗悪な生きもの他にいる? もうこれは一緒にやってけないと思って、ひとりで月に旅立ったの。世の中には社会を恨んで、誰かれ構わず無差別に攻撃する人もいるでしょ。でも私は傷つけたくなかった。だから月へ飛んだんです。誰もいない星で、一からやり直そうと思ってね。だけど着いて半日もしたら、妙に寂しくなっ・・・

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少年の嘘

17/12/05 コメント:0件 蹴沢缶九郎

「僕のお父さんは会社の社長で、昨日も最新のゲーム機を買ってもらったんだ」

学校の昼休みの教室、少年はクラスメイト達に嘘をついた。少年の父は社長などではなく、中小企業の営業マンであり、勿論最新のゲーム機を買ってもらってもいない。

「おい、またこいつのお得意の嘘が始まったぞ。もう騙される奴なんかいないんだよ、嘘つき野郎」

少年の嘘を見抜いていたクラスメイト達は・・・

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まだ頑張りなさい

17/12/05 コメント:0件 蹴沢缶九郎

朝、交通誘導の仕事を終えた田中は、自宅のある木造アパートに帰宅すると、さっそく毛布にくるまった。季節は冬、凍えるような寒さは田中を容赦なく襲うが、それでも彼が暖房機器の一切を使わないのは、電気代節約の為である。

自身の仕事仲間であり、先輩でもある四つ歳上の高橋が仕事中に倒れ、搬送先の病院で亡くなったと聞いたのは昨夜の事だった。
雪の降りしきる深夜、高橋の辛そうに誘導灯を振る姿が・・・

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メタリックツインテールナンバーエイト

17/12/05 コメント:1件 ちりぬるを

 酷い冷え性で手がかじかむのです。私がそう告げると彼はチェーンソーで私の手を切断した。赤い飛沫が彼の服を汚す。彼はそのことに腹を立てた様子もなく、これでもう辛い思いをしなくて済むだろうと私の頭を撫でた。本当に優しい人だと思う。
 でも、と私は手首から先がなくなった自分の腕を見る。赤い液体がまだポタポタと滴っていて絨毯に染みが広がっていく。でもこれでは髪を梳かすことが出来ないわ。彼はソファーに・・・

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あの日に戻れたら

17/12/05 コメント:0件 ちりぬるを

 笑えない、最悪な連絡を私は決勝戦の舞台袖で聞かされた。

 私となーこは出会ってすぐに意気投合し、その日のうちに漫才コンビを結成した。芸人にしておくにはもったいないくらいの容姿なのに天然ボケで人見知り、一人ではなにも出来ないなーこは、なにをするにも私の後をついて来た。
 なーこがボケて私がツッコむというスタイルで五年やってきた。私が書くネタには絶対の自信があったがなかなか芽は出・・・

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モアの塔

17/12/04 コメント:0件 蹴沢缶九郎

広大な砂漠の真ん中に塔が建っていた。塔と言っても、例えばバベルの塔ような人が立ち入れるような造りの塔ではなく、鉄が乱雑に組まれた、高さ数十メートル程の歪な鉄塔であった。
『モアの塔』と呼ばれるこの塔は、いつ頃造られ、何のために存在するのか、ある一人を除き、誰も知らなかった。気がついた頃にはそこに存在していたし、無くなった所で生活に影響が出る訳でもなく、周囲の人間にとってはその程度のものだった・・・

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ヴァージンロード

17/12/04 コメント:0件 風宮 雅俊

「新婦の入場です」
 厳かな雰囲気の中、新婦は父親にエスコートされてヴァージンロードを一歩一歩ゆっくりと歩いてくる。漆黒の様な艶やかな髪、純白のウエディングドレスがくすんで見えてしまうほどに白く透き通る肌。参列者の誰もが見惚れてしまっていた。
 一歩一歩近づく新婦を見守る新郎は、出会いから今日までの新婦との時間を思い返していた。そして、これから過ごす二人の時間と生まれ来る子供との時間を・・・

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投稿作品

17/12/04 コメント:1件 風宮 雅俊

『メールを五件、受信しました』
 投稿サイトからのお知らせメールばかり五件だった。
「よし。今度の作品は本気出したよ。期日いっぱいまで練りに練って色が変わっちゃうほどに練ったからね。感動のあまりにコメントが沢山つくのは当たり前だよね」
 ダンスを踊る様にマウスを滑らせて、メールソフトを開く。
『コメントが投稿されました』
『コメントが投稿されました』
『コメント・・・

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――真夏の夜の手術――

17/12/04 コメント:0件 葵 ひとみ

コンビニの入り口の殺虫灯に無数の死にたがりの虫たちが引き寄せられている。
気品漂う氷のように美しい保育士3年目のルリは一匹の片方の羽を高電圧でもぎ取られて
地面で不器用に回転している蠅をビニール袋に入れて持ち帰った。

そしてコピー用紙にセロテープで残った羽を貼り付けた。

さて、ルリは白いビニールの手袋をして、
恒例の真夏の夜の手術の始まりである。<・・・

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君が消えてしまった

17/12/04 コメント:0件 夏雲


君が消えてしまった

綺麗に。 君の香りだけを残して


君は消えてしまった

無残に。 君の幻想だけを残して


僕が好きなものは

いつだってこうして

消えてしまうんだ


だから嫌なんだ

友達も、恋人も、執着も

みんなみんな

消えてしまうも・・・

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悲劇のない国

17/12/04 コメント:0件 戸松有葉

 悲劇的な出来事を根絶することは適わない。
 争い、貧困、病気、事故、災害、犯罪……。
 どんなに政治や科学が発展しようとも、これらをなくすことは出来なかった。人類はいい加減に気付く。悲劇のない理想郷など、どうやっても存在できないのだと。
 しかしそれでも、ある国は「悲劇のない国」を目指すことを宣言し、そして実現してしまった。
 悲劇的な出来事自体は消せない。それは嫌という・・・

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シンデレラはハッピーエンドになり得るか

17/12/04 コメント:0件 戸松有葉

 シンデレラは頑張った。その事実を以って「頑張り屋」だと称することは可能だが、頑張らざるを得ない境遇だったというほうが適切だ。頑張り屋だから向上してやろうと思ったわけではなく、ただ、虐げられていたから頑張って堪えたのだ。
 姉たちからはいつも嘲笑に遭い、執拗に虐められた。これに堪えるのは、同時代同身分の者の苦労と比べても、辛い。更に、堪えていればいつか報われるという希望が、まるでない状態だ。・・・

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第十回悲劇のヒロインコンテスト

17/12/04 コメント:0件 戸松有葉

 今年で十回目を迎える、悲劇のヒロインコンテスト。
 悲劇のヒロインは、自身でそう陶酔することがあったとしても、他者が同情や「自分が相手より不幸ではない」ことでの優越感を得ることも事実であり、要するには、求められている。
 しかしこのコンテスト、回を重ねる毎に、苦しくなっていた。
 既存の優勝者と悲劇ぶりが被っていては、審査員も選びにくい。当然、程度の低い悲劇エピソードでは、心動・・・

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大量凄惨

17/12/04 コメント:0件 蒼樹里緒

 昔々、とある小さな町に、鍛冶屋の老人と孫息子が暮らしていました。生活に必要なものであれば、二人で何でも作っていました。
 トンカン、トンカン。鍛冶屋の家からは、その日も金属を打つ音が軽快に響いていました。作業場に、一人の少女がやってきます。
「ふたりとも、お疲れさま。差し入れ持ってきたよ」
「おぉ、いつもありがとうよ」
「今日のパンもうまそうだなー」
 仕事の手を休・・・

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自殺嫌いな男

17/12/04 コメント:0件 大久保 舞

「また人身事故か」

男はそう言って、チッと舌を鳴らした。

自殺大国である日本では、人身事故は珍しくもなんともない。


あるサラリーマンの男は会社まで電車通勤をしていた。

だから、通勤中や帰宅中に、人身事故のせいで足止めをくらうことがしょっちゅうあった。

「死ぬなら人に迷惑をかけないような死に方をしろよ」

男は・・・

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