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第150回 時空モノガタリ文学賞 【 悲劇 】

今回のテーマは【悲劇】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2018/01/29

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は3作品とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2017/12/04〜2018/01/01
投稿数 78 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数 3
総評 今回もなかなか良いコンテストだったと思います。古参作者の作はさすがの力を感じさせてくれ、入選経験の浅い作者の作品は、具体的にメッセージが伝わる素直なものが揃っていたと思います。また最近は、あまり内容がかぶることがないのが読んでいて楽しいですね。ただ選考外の作品は少しもったいないと感じることが多かったです。今回に限らないのですが、文章が上手く作品全体としてのまとまりも良いのに既視感のある内容だったり、登場人物の感情の変化が少なく読んでいて平板な印象を受ける作品などが散見されました。基本的な文章構成力が高いのに上記の点が不十分な作品は、やはりもったいないなあと感じます。たとえ一か所でも視点や捉え方に新鮮さやピリッとしたところがあれば、その他の点で多少欠点があったとしても、読んでいてグッと心を掴まれてしまうものです。【最終選考作品への感想】『消えてゆく悲劇に、私たちは』―――連作の二作目ですね。今作では日々消費されていく概念化された「ニュース」の在り方と、関係者を前にして感じる「温かみ」の間のギャップがリアルでした。また悲劇を「忘れたように」振る舞うことで乗り越えようとする大人の対処と子供達への配慮、それらに戸惑いつつも感情に素直に反応していく子供達と違いが丁寧に書かれていると思います。冬垣さんの子供時代の衝撃的な体験と、そこに関わる人々を真摯に見つめた良作ではないかと感じました。『スーサイド・ワールド』―――海運業界の内情が具体的に書かれているところが面白かったですね。元旦から店が開くようになり、外国の品物が安価に手に入る現代の便利さはありがたいことではあるけれども、そうした利便性の追求の結果どこへ行きつくのか、時に考えてみる必要は確かにあるのかもしれません。『喜びでいっぱい』―――自然な感情から目を背け、作為的に作り上げた幸せのストーリーの「喜び」に浸る大人達の異常さが巧みに書かれていると思います。自然な感情を持つ息子が奇異なものにみえてしまう歪んだ視点からの描写が巧みだと思います。徐々に本来の自分を見失っていく悲劇は、我々大人が無意識に陥りやすい罠なかもしれません。SF的な設定で読みやすいと同時に鋭いテーマ性を感じました。『オレオレの悲劇』―――オレオレ詐欺風の電話の影で実際に息子が危険にさらされているとしても、その真偽に気づくことは難しいでしょうね。自分(K)の実家にも最近オレオレ詐欺の電話があったそうで、幸い騙されることはなかったのですが、本当に他人事ではないなあと感じます。世相を反映した読みやすい作品ですね。『モアの塔』―――いくら高額紙幣が降ってきても、確かに50年先ではあまり役に立たないですね。これは若者の早とちりと思い込みがうんだ悲劇で、やはり相手の話をきちんと聞かなければいけないという教訓が含まれているのかなと感じました。もしかしたら老人も若い頃から待ち続けて、やっと老人になってそれを手に入れたのでしょうか。時間というものの大切さも感じさせられます。

入賞した作品

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崩れてゆく世界で、私たちは

18/01/01 コメント:1件 冬垣ひなた

 私は生まれて初めて、新聞を読んだ日を覚えている。  真夜中に響く消防車のサイレンの音に目を覚ました私たち家族は、火災現場が驚くほど近いことに不安を覚えた。複数のサイレンが大きな火災を知らせる。 「団地が燃えているらしい」  その言葉に私は息を飲む。9棟からなる川向こうの大きな団地には、私の友達が大勢暮らしていた。しかし情報を得る手段の少ない昭和の時代、詳細は分からず、10才やそこいらの子供だ・・・

3

友達になるということ

17/12/31 コメント:4件 ひーろ

 その少年は、孤独でした。孤児院には一人も友達がいません。淋しさのあまり涙を流すこともしばしば。頼れる人など、誰もいないのです。淋しい。涙。淋しい。涙。毎日がその繰り返しでした。  あるとき、少年は自分の置かれている現状に耐え切れなくなって、神様にこんな願い事をしました。 「日本中の人たち全員と友達になりたい」  彼の思いは極めて強いものでした。それゆえ、悩みに悩んだ挙句、神様は彼の願い事を叶えて・・・

3

緑の血

17/12/11 コメント:0件 浅月庵

 ◇  些細なことで僕に緑の血が流れていると知られて、友達を全員失った。小学一年生の時だ。    ただ時間が経つにつれ、血のことなんてみんな気にも留めなくなるけど、僕をボッチにする図式自体は変わらないまま続く。  ーーもし心が可視化されたのなら、萎んだ風船みたいな形になってるんだろうけど、誰もそれに気づくはずもないので、僕は高校でも孤独の道を悲しく歩んでいる。  そんななか、僕は同じクラスの野・・・

5

血と灰の熱 ――リース・リストリイの喀血

17/12/09 コメント:1件 クナリ

 「歌と水の街」は、大陸の端にある一大芸能都市である。  その中枢をなす歌劇団にあって、リース・リストリイは、中心的な存在ではなかった。  歌い子の潮時は二十五歳までと言われる中、彼女は今年、二十八歳になる。  最年長のリースの歌は、今なお最上級ではない。しかし、美貌は優れている。 ■  公演の後、私は歌劇場支配人の執務室に呼び出された。 「リース。エドワーズ氏とは良好なのだな」  エドは私の・・・

2

あの日に戻れたら

17/12/05 コメント:0件 若早称平

 笑えない、最悪な連絡を私は決勝戦の舞台袖で聞かされた。  私となーこは出会ってすぐに意気投合し、その日のうちに漫才コンビを結成した。芸人にしておくにはもったいないくらいの容姿なのに天然ボケで人見知り、一人ではなにも出来ないなーこは、なにをするにも私の後をついて来た。  なーこがボケて私がツッコむというスタイルで五年やってきた。私が書くネタには絶対の自信があったがなかなか芽は出ず、漫才のコンテス・・・

最終選考作品

5

消えてゆく悲劇に、私たちは

18/01/01 コメント:7件 冬垣ひなた

 溢れかえった悲劇のニュースが、一つ、一つ、世の中から消えていく。  多くの人が悲しみに耐えかね、その存在を手放してしまうのだ。生きていくために仕方がないと呟きながら。  私たちは、どうなのだろう?  ……ある日、友達が死んだ。  無理心中と呼ぶには陰惨な事件の巻き添えだった。  あと1年くらい通えば卒業する小学校から、O君がいなくなったという事実は、先生の口からは事務処理的に述べられただけだ・・・

0

スーサイド・ワールド

17/12/31 コメント:0件 本宮晃樹

 会社からの通達は次の通りである。 「大晦日やら正月三が日などというばかげたシステムを採用しているのはこの国だけだ。当社は世界基準でものごとを考える。あとはわかるな?」  ここらで持論を表明してみたい。みんなちょっとばかり働きすぎてないか?      *     *     * 「あたし、今日は絶対――いいですか先輩、これ片づけたら絶対! お昼で帰りますからね」  後輩のかすみは雄々しく決意を・・・

4

喜びでいっぱい

17/12/23 コメント:1件 志水孝敏

 自動運転車はいつも通り快調だ。  音もなく、車外の景色が通り過ぎていく。  風景などどこも同じだ、見る必要もない。  あと三十分で自宅に着く。  そろそろか。  ケースから、赤い錠剤を取り出し、のむ。  家には妻と息子がいる。  妻は三十歳だ。  息子は五歳だ。  出張のあと、二週間ぶりに会う。  会ってどうするのか?  あれがまだ来ない、しばらく待つ。  ……。  まだだ。  ……。  うん、・・・

1

オレオレの悲劇

17/12/09 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

美弥子がひとりで家にいたとき、息子の大樹から電話がかかってきた。 「おれだよ、大樹。母さん、困ったことになっちゃって――」 「大樹――あなた、本当に大樹なの」と美弥子は念を押すようにきいた。 それというのも、ちょうど一昨日、孫を連れて遊びにきた娘の桂が、ビールのジョッキを傾けながら、「これほど世間でオレオレ詐欺の被害がでているというのに、まだひっかかる連中が後を絶たないなんて、まったくどう・・・

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モアの塔

17/12/04 コメント:0件 蹴沢缶九郎

広大な砂漠の真ん中に塔が建っていた。塔と言っても、例えばバベルの塔ような人が立ち入れるような造りの塔ではなく、鉄が乱雑に組まれた、高さ数十メートル程の歪な鉄塔であった。 『モアの塔』と呼ばれるこの塔は、いつ頃造られ、何のために存在するのか、ある一人を除き、誰も知らなかった。気がついた頃にはそこに存在していたし、無くなった所で生活に影響が出る訳でもなく、周囲の人間にとってはその程度のものだった。 ・・・

投稿済みの記事一覧

2

幻想痛

18/01/01 コメント:1件 泡沫恋歌

真夜中に足の痛みで目が覚めた。
左足の膝から下にえぐるような痛みを覚え、泣きながら今夜も目覚める。
その痛みは私を責め続けているのだ。あの日からずっと――。

深夜の高速道路、ハンドルを握る私、永遠に続く暗い道、一瞬の睡魔、ふっと意識が飛んだ。
気づいた時、中央分離帯のブロックが目前に迫っていた。
慌ててハンドルを切ったが間に合わない。全身に激しい衝撃を受けた。・・・

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水底のマヤーリュビーマヤ

18/01/01 コメント:0件 君形チトモ

 初夏のある夜。近くの村へ寄った帰り、数年前行方知れずとなった恋人に再会した。
「ゾーイカ!」
 白樺の森にひらけた、月の光が静かにおりる場所。あの頃と変わらない彼女が白い服を着て、木から吊るしたブランコに腰かけて歌っていた。自分を呼ぶ声にゾーイカは歌を止め、僕の姿を認めると微笑んでブランコからするりと降りる。僕は駆け寄った。
「ゾーイカ、今までどこに行っていたんだい? ああ、で・・・

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再生してゆく未来で、私たちは

18/01/01 コメント:1件 冬垣ひなた

 路線バスがありふれた日常を走る。
 短期大学に通っていた私は、家から駅まで毎日バスで通っていた。昭和から平成に入り、町はずいぶん様変わりしていたけれど、のどかな風景を残した車窓を眺めていると乗客の声が耳に入る。
「この先の団地で、昔火事があってね。それは……もう酷かったの」
 酷い火事。言葉に詰まってしまうその人の心情に同調するように、私の心は過去へとさかのぼる。
 団地・・・

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秋の蝶は春の夢を見る

18/01/01 コメント:0件 黒江 うさぎ

「…ねぇ、シンタ」 「ん?どうした?ユウ」 「シンタはさ、秋の蝶って言葉、知ってる?」 「いや、聞いた事ねぇな」 「秋の蝶ってね、俳句で使われる秋の季語なんだー」 「へぇー。  で、どういう意味なんだ?」 「…淋しさや悲しさ、あと儚さ。そういう意味で使われる事が多いみたい。  …秋の蝶ってね、温かい時期の蝶に比べるとずっと弱々しいんだって。  だから、そういう意味で使われているんだと思うの」 「な・・・

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世界一の朝食

18/01/01 コメント:0件 みや

目が覚めてすぐに腹が減ったなと男は思った。

そう言えばいつか妻と世界一の朝食と称賛されている店に行った事があった。外国の有名な店らしいのだが男は全く興味が無かったのだけれど、妻がとても行きたがり無理やりに連れて行かれた。
パン・ド・カンパーニュは焼き過ぎていて耳が焦げていたし、オーガニックスクランブルエッグはシンプル過ぎて味がしないし、ベーコンとソーセージは如何にも外国と言った・・・

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虹の向こうに

17/12/31 コメント:0件 Motoki

「虹の根元には、宝物があるんだって」

君がそう言ったのは、
いくつの時だったろう。

「もっと大きくなって、バスに乗れるようになったら、2人でたしかめに行こうよ」

夕立の後そう言って、
焼けた顔に白い歯を覗かせた。

指差す先には、
大きな虹。

濡れた朝顔の葉と、

夕焼けと、

君の笑顔。・・・

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井守

17/12/31 コメント:0件 いっき

穏やかに流れる清流。
メダカ達が喜ぶように泳いでいて、イトトンボが水面に尻をつけて波紋をつくり産卵している。
水草の中から、黒くて腹の赤いイモリが体を揺らしながら現れ、川底の泥に足をつけた。

今となってはこの国でも珍しい、昔ながらの清流。
清らかな川と青々とした山林が、村民達に豊かな恵みをもたらしていた。



ある時、この村を囲む山の麓に製・・・

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赤い手袋

17/12/31 コメント:0件 いっき

沈みゆく夕陽に想いを馳せながら、線路沿いをゆっくり歩いてゆく。
私は今日、定年を迎えた。職業は電車の車掌。
若い頃には運転士として毎日運転席に座ってハンドルを握り、定年前に車掌に出世して電車の運行の全てを掌握した。
決して楽な仕事ではなかった。精神的なダメージを受ける場面にも何度も遭遇した。
しかし、最後までどうにかやり通した。
これからは、家で静かに読書などを楽しむ・・・

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世界はこんな風に終わろうとしている

17/12/31 コメント:0件 秋 ひのこ

 よのなかばかばっかりだ、といつも言っていたパパがとうとうばかになってしまった。
 人形みたいに表情がなくなって、僕がなにを言ってもまともに返事をしてくれないし、ぜんぶ忘れてしまう。会社にも行かなくなった。
 小3の春、だから僕はおばちゃんと住むことになった。パパは今も、ひとりあの坂の上の家にいる。
 おばちゃんはパパの妹だ。桜が散り始めた頃、黄色いコートを着て僕を迎えにきた。ま・・・

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かりものや

17/12/31 コメント:1件 そらの珊瑚

お玉小町と呼ばれるお玉ちゃんには親友の女がいた。幼馴染の二匹はナツメの実を揺らして遊んだものだった。そのナツメの樹には鋼のようにりりしい羽を持つ玉虫の若い男が住んでいた。玉虫の女達は皆、その男とワルツを踊りたいと願ったさ。もちろんその二匹もね。けれど勝負は最初からついてるようなもの。小町と呼ばれるほどの器量良しと、さえない平凡な玉虫では結果は分かるだろ。お玉ちゃんとその男は、舞踏会に一緒にワルツ・・・

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ツイスミ不動産 物件3:絶対安心/絶対安全マンション

17/12/30 コメント:0件 鮎風 遊

 年末に一年の漢字一文字が清水寺で発表される。2017年は『北』。
 まさに的中、キタサンブラックが有馬記念で有終の美を飾った、と浮かれてる場合じゃない。
 本命は北朝鮮の『北』だ。現在も核爆弾を搭載したICBMの開発に躍起となっている。このため米国との間で一触即発の緊張状態が続いている。
 そんな不安な年尾に、ロング丈のダウンジャケットを粋に着流した男女が気配なくツイスミ不動産・・・

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叔父さんは泣き虫

17/12/31 コメント:0件 待井小雨

 叔父さんは子どもの頃、泣いてばかりでいつも目が真っ赤だったという。
「あいつは泣き虫だったんだ」とお父さんは言う。
「嘘だぁ」
 叔父さんとは一緒に暮らしているけれど、泣くところなんて見たことが無い。
「大人はみんな泣かないんじゃないの」
「大人だって泣くさ、こっそりとな。だけどあいつは本当に泣かない」
 若い頃に心が潰れるほどに悲しい出来事があり、その時に一・・・

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夢の外で会いましょう

17/12/31 コメント:0件 むねすけ

 夢の中で会う人がいた。
 僕が薬瓶に手を出さないただひとつの理由だ。
 あの人だけは、僕がいないいつかの空日に僕のことを思ってくれるだろうから。
 死んだ後の世界では命ある人が自分を思ってくれる数で罰則の重さが決まるって本で読んだ。
 その数がゼロだと永遠に雨粒の監獄の中で意識のループを味わうことになるらしい。
 嘘しか書いてない本だと、貸してやった友達は笑っていた・・・

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紅茶は好きですか?

17/12/30 コメント:0件 yuri

 今日もあの子は、紅茶を運んでくる。
「先輩、どうぞ」
 そう言って微笑んだ彼女の髪は適度に艶があり、薄い化粧を施した顔は瑞々しさを感じさせた。
「ありがとう」
 私は出来るだけ穏やかで、知的な先輩に見えるよう、ゆっくりと彼女に礼を言い、それを受け取る。
 彼女が他の机へ向かうと、私は手元に置かれた、やや赤い黒い液体を黙って見つめた。
 工場の事務という、男がほ・・・

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火葬

17/12/30 コメント:0件 デヴォン黒桃

 君の身体から体温が消え行くのをジット見守った夜から数日。
 これから独りで、ドウヤッテ生きてゆけばいいのだろう……
 朧な頭では、何も考えられない。

 黒塗りの車に揺られ、喪服のボク。

 辿り着いたるは、飾られた、長方形の命の終着。

 死に化粧。

 この棺の中に居るのは、間違いなくキミなのだが。
 
 魂が旅立ち、肉・・・

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最悪の悲劇

17/12/30 コメント:0件 Motoki

 最悪の悲劇は突然やってくる、なんて言うが、「そりゃそうだろう」と思う。
 だって事前に判っていたら、対策をとる。
 対策をとれれば、『最悪』は避けられるだろう?
 避けられる筈だ。

 残業を終え、深夜遅くに帰って来た俺は、燃える我が家を無言で見上げる。
「…あ…あの。剛は…父や、母は…」
 我に返って、先程から何やら話しかけてきている近所のおじさんに、・・・

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レンシデンジ

17/12/30 コメント:1件 林一

 寒がりなのにもかかわらず、北海道という極寒の地に生まれてきてしまった悲劇の子、それが私だ。生まれてくる場所を間違えてしまったと、子供の頃からいつも悩まされていた。
 高校生になった私は、寒い北海道から出たい一心で暖かい沖縄の大学受験を決心し、必死に勉強を続けた。
 高校三年の三月、私は見事、沖縄の大学に合格が決まった。これでついに私も、念願の沖縄県民になれるわ。
 沖縄空港に着・・・

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忘却の海

17/12/30 コメント:0件 野々小花

 汐のにおいがする。
 唯人が海沿いにあるこの街に来たのは一週間前だ。その時からずっと、汐のにおいが執拗に唯人の体にまとわりついてくる。高台から、においのする方角に目をやると、ビルとビルの合間から海が見えた。
 この街には、死んだみたいに古い家がいくつかある。朽ち果てる寸前の、見捨てられたように古い小さな家屋が、新しい家と家の間に残っている。ビルの影に隠れるようにして建っている。なぜだ・・・

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ジュークボックスは語らない

17/12/30 コメント:0件 むねすけ

「詩人Kが酔っ払い早退だ?」
 聞き取れていないならそう言えばいいのに。彼は言葉遊びが好きな人で面倒くさい。
「視神経が引っ張られ放題だって言ったのよ」
「風で耳の中がいっぱいだから声が聞こえにくいんだよ。最高だな」
 カジノへ続く砂漠地帯のハイウェイは舗装された路が一本で、私と彼は迷うこともできずにオープンカーで直進を続けていた。あまりにも確実すぎる正しい道行が人を不安に・・・

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ギフト

17/12/30 コメント:0件 今井 舞馬

 李桂は晴れ晴れとした気分で空を仰いだ。戦勝がもたらした高揚のせいか、清々しさが全身を支配していた。
城壁の頂から城内を見渡すと、自軍の兵士たちが勝鬨を挙げていた。敵兵の屍を踏み、旗を掲げ、はち切れんばかりの雄叫びを上げる。荒々しくも生命力に満ちたその熱気が、さらに高揚を加速させた。 
 城壁の外に目を移すと、城内の喧騒とは一転、静けさと共に荒涼とした大地が広がっていた。
 李・・・

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悲劇のアルファベット【W】

17/12/29 コメント:0件 笹岡 拓也

俺は世界でも1.2を争うほど認知されている。にもかかわらず俺の扱いは知らぬ間に雑に扱われいる。これはもう悲劇と呼んでも良いのではないだろうか?

世の中には26種類ものアルファベットがある。その中でも認知が高く敬われているものと、認知が低く雑に扱われているものがある。例えば【L】や【Q】に比べて、【S】や【Z】の方が高く敬われているだろう。名前や国名に使われることが多いものや、アルファ・・・

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白いワンピース

17/12/29 コメント:0件 いっき

今日は、クリスマス・イブ。
私はこんな日にでも馬鹿なおやじ達から、金を巻き上げる。
男を虜にする美貌を持つ私だが、実はバージンだ。決してそこらの馬鹿な男にやったりしない。初めては、本当に惚れたイケメンと、と決めているんだ。
私はピンクのコートを着て待ち合わせ場所へ向かった。

繁華街に入るまでは、閑散としている。
公園を通り過ぎようとする時……ふと、街灯の下のト・・・

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本当の私は…

17/12/28 コメント:0件 霜月秋介

 いろんな人たちが、私に笑顔で接してくれる。私はそれに対して、作り笑いで対応する。

 いろんな人たちが、私に笑顔で物をくれる。私はそれに対して、苦笑いで対応する。

 いろんな人たちが、私に親切に接してくれる。私はそれに対して、申し訳なく思う。

 いろんな人たちが、私に親切に忠告してくれる。私はそれに対して、空返事をして聞き流す。

 そんな日々・・・

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沈黙の典範

17/12/28 コメント:0件 宮下 倖

 くるしい、つめたい、くらい、かなしい……。

「最近へんな夢ばっかり見るの。暗くて冷たくて……水の中……なのかな。息が苦しくて」
 紙パックに刺したストローをかるく噛む。そのままため息をつくと、いちごミルクの甘ったるい匂いが鼻に抜けた。
「それってさ、あのレポートの資料のせいじゃない? ほら、藤井中尉の……」
 向かいでコーヒーを飲んでいたカオリが小さく首をかしげた・・・

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ビタースイート

17/12/26 コメント:0件 いありきうらか

4月に研究室に配属された学生を見て、私は驚愕した。

私は過去に、同級生を殺された経験がある。
同じ研究室を過ごしていた同級生とは最寄り駅が同じで、気が合ったこともあり毎日連絡を取り合っていた。
帰り道を共に歩き、お互いの部屋にも出入りした。
ある日、連絡が急に途絶え、不安に駆られた私は彼女の部屋に向かった。
鍵の閉まっていない部屋に入ると、同級生は、怯えた表情・・・

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享年14

17/12/25 コメント:0件 白梅 弥子



うちのたまは14歳で死にました。
たまのことを、伝えたいと思います。

私のお母さんは優しい女医さんで、お父さんは偉い刑事さんで、頭の良い高校に通っている格好良いお兄ちゃんがいて、大っきな家に住んでいて、友達からいいないいなと言われていたので自慢でした。

私が生まれる前からたまとドーベルマンのジャッキーが居て、よく一緒に遊びました。<・・・

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私の人生は悲劇でしかない

17/12/25 コメント:0件 笹岡 拓也

「人生は悲劇だからこそ幸せに気づく事ができるんだよ」
死んだじいちゃんが教えてくれた言葉。当時5歳だった私には意味が分からなかった。ただ大人になっても覚えてるほど、頭の中に残る言葉だった。
それでも未だじいちゃんが言ってた言葉の意味は分かっていない。だって私の人生は悲劇の連続で幸せなんか感じたことがないんだから。

「悪いけど...もう別れよう」
半年前、私は突然彼氏・・・

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SNSの向こう側で

17/12/24 コメント:0件 エア

 ある日、ネットサーフィンをしていたら、男性が殺害されるという事件を見つけた。と言っても、正当防衛であり、何でも、夜に犯人の男が包丁を持って突然家に押し入ってきたが、被害者の男性が隙を見計らって包丁を奪い取り、犯人の胸を刺したそうだ。だが、この殺された男の名前を見た時、私は唖然とした。何故なら、この男はつい最近まで、私がSNSで交流していた人物だったからだ。
 
 男は精神障害を患って・・・

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独白

17/12/24 コメント:1件 徒然

 由紀さんはどんな方でしたか
 河内容疑者に伝えたいメッセージはありますか

 照らしつけるフラッシュも、呼吸音すら貪るマイクも、心を土足で踏み荒らすマスメディアも。
 取り残された人生すらも。

 私には、どうでもいい。

 現場に私はいなくとも、私も由紀と共に死んだのだ。轢殺され、全てを失った。
 潰された心は治らないし時間は帰ってこない。・・・

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しあわせな彼女

17/12/24 コメント:0件 向本果乃子

 薫子のブログを見つけたのは失業した日だ。スマホをいじりながら酔うために飲んでいた。やさぐれる自分を容認した。安ワインを半分くらい飲んだ時だった。きれいにアップにした髪に上品なワンピースを着て光差す窓辺に立つ薫子を見つけた。私と同じ三十九歳、息子が一人。夫の仕事は不明だが裕福な暮らしはわかる。広々とした洋館に暮らし、気品漂う大きな白い犬を飼っている。こんな世界があるのかと驚く。薫子は東京在住である・・・

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一族の危機

17/12/23 コメント:0件 与井杏汰

 「女王様、報告があります」 兵隊が言った。  「先ほど、巨人を見かけました」 女王はゆっくり振り向くと、兵隊を見据えて言った。  「それは本当ですか」 兵隊は頷いた。  「おそらく、女王様が以前お話ししていた伝説の巨人と思います。我々よりはるかに巨大で、わずか一歩で遥か彼方へ行くことができます。もし踏まれたら、我々はひとたまりもありません」 深刻な顔で兵隊は伝えた。  「ついにここまで…」 女王・・・

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Hearts

17/12/21 コメント:0件 sandie

 まともじゃなかった、僕は。ずっと部屋にうずくまってた。外の世界は眩しすぎる。僕は出来損ないだから。生まれつき色素が足りないアルビノ。皮膚のメラニンをつくる能力がない僕はてっぺんからつまさきまで本当に白い。
 小学四年生までは通学していた。孤独を習得するためだけに。唯一、赤茶色の目をした僕を、ウサギ君と呼ぶ音楽の若い女の先生が好きだった。あの日の放課後、音楽室でグランドピアノを弾いていた先生・・・

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眠り

17/12/21 コメント:0件 RN

いつまでも一緒だよ。と誓ったのに、
あの日から君はずっとひとりで眠り続けている。

君の身体は何一つ傷ついていないのに。
脳死と判断されて、20年はたつのか。

病室に鳴り響く、心電図の波打つ音。
それだけが、君の生きている証であった。




僕は君の耳元に近づいてそっと呟く

そろそろ僕も限界なんだ…。ごめんね・・・

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あとすこしだけ

17/12/20 コメント:0件 sandie

部屋のノブが回る。ドアが開く。
シンデレラの魔法はとうに解けてしまった時間。今夜も。
「おかえり」
俺はりんごの皮を剥きながら顔を上げずにつぶやく。
先に寝てろって言ってるだろ、いつも。
そうだね、でも眠れない。
 
一人で寝るのは寂しいと拗ねてみせる時期はとっくの昔に過ぎてる。身にしみてわかってる。
一人寝が苦手だ。眠りは死への入り口って言うだろ?・・・

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廃材置き場で見た夢

17/12/19 コメント:0件 マサフト

最初に覚えているのは、海の近くの駐車場。
まだ無垢だった頃の私は、海の近くでじっとしている毎日だった。波の音と、ウミネコの鳴き声。遠くにタンカーと巨大なガスタンクが見えたのを覚えている。その時の私は待つことが仕事だった。他にも仲間が大勢いたが、私を含めて皆無口だったので会話をしたことは無かった。
ある日作業服を着た男たちが私たちを連れて移動を始めた。無口な仲間たちは散り散りにな・・・

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未来をキミに

17/12/19 コメント:0件 時田翔

「そういえばお前、あの子猫はどうした?」

 俺の部屋で一緒に飲んでいた友人が、ふと思い出したように聞いてきた。

「ん? 『おはぎ』のことか?」
「ああ、そんな名前だったな。どっかその辺で寝てるのか?」

 僕が拾って飼っていた黒猫の姿を探して、友人は部屋をきょろきょろと見渡す。
 小さな身体に、満月のような真ん丸の目。
 人に飼われていたこ・・・

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怠け者の末路

17/12/17 コメント:0件 八王子

 時は江戸。
 怠け者の男、二平という男がいる。
 恰幅よく、健康な体を持った二〇を過ぎた男は、日がな一日、家の中でゴロゴロとしている。
「あんたと同じ歳の向かいの辰吉は今日も地主さんのところに仕事をもらいに出て行ったってのに、うちの二平ときたら」
 はああ、と長い溜息をついて、食肉にでもなれば高く売れそうなぐらいに大きな息子の背中を見てぼやく。
「辰吉んところの家に・・・

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滑り饅頭

17/12/17 コメント:0件 吉岡 幸一

 「お店の前を通っちゃだめでしょ」
 滑って転んだ女の子を抱きかかえながら、母親が店の前をさけて横に曲がっていった。店の横の道から裏の道に回って、Uの字に歩いてまた表通りへ戻るつもりなのだ。
 饅頭屋の前を道行く人は皆店の前を避けて通っていた。なぜか三カ月ほど前から、店の前の歩道五メートル圏内だけが急に滑るようになったのだ。通る人、通る人、皆が滑って転んでしまう。それ以外の前後の歩道は・・・

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矛先

17/12/17 コメント:2件 浅月庵

 ◇ 
 幾層にも顔に包帯を巻かれた女性が瞼を閉ざし、ベッドの上に横たわっている。
 その周りを、俺を含め数名の刑事が取り囲んでいた。
「母は生死の境を彷徨っています。ですが、これが事件解決の糸口に繋がるのならお願いします」
 彼女の息子が、神妙な面持ちで呟いた。

 ーー連続主婦殺人事件。
 犯行の手口は絞殺に刺殺、撲殺に溺殺に焼殺と、種類に富んでいた。・・・

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さよならを告げないで

17/12/16 コメント:0件 新崎 彼方

「さよならって言葉がこわいのよ」
 何の連絡もなく押しかけてきた彼女は、開口一番にそう言った。マフラーと手袋を外すと、ああ寒い、と少し身を縮めて、するりと僕の横を通りすぎて行く。
「暖房をあげようか」
「いえ、いいわ。十分あたたかいから」
 古めかしいペチカの前に座り込み、彼女は微笑む。灰色のコートが濡れて変色していた。雪が降っているのだろうか。うすいレースのカーテンを引け・・・

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窓は開かれて

17/12/16 コメント:0件 アキクニ

彼は愚かであるゆえに愉快な男である。
窓というもので人は何を思うのであろうか。ときに窓は開かれたもの、未知のもの、そして盲点の窓という存在があるという論説を思い出した。彼の窓に関してはそのどれにも当てはまらないようである。

「窓は大きいほうがいいですね」
彼は言った。折れそうな体躯が病的であった。彼は弱々しくそれが故に見る者の顔を歪ませた。
嗜虐心よりも先に、憐憫が・・・

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絶滅桃娘飲食街

17/12/15 コメント:2件 白梅 弥子


どこかの偉い学者達が、三年後には人類は確実に滅びると言った。人類が好き勝手やったお陰で汚染された地球では、鶏は卵を産まなくなり、牛や豚だけでなく、人間も奇形しか産まなくなり、畑からはおかしな形の植物が生えるようになり、やがて荒地になっていった。

人類は最新のテクノロジーを駆使して新たな食べ物を探して探して探した......
が、結局のところ共食い、つまり食人・・・

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壊れた人形

17/12/14 コメント:1件 白梅 弥子



アタシの心はいつまでも、赤黒い血を流し続けて、止まることなく脈打ち続けて居りました。
 崩れた端から流れ出して行く心の中身は忌みじくも尽きることはなく、只々空っぽに成って行く痛みがアタシを苦しめ続けました。
 他に好いた女が居るワケでもなく、只身勝手にアタシを捨てた貴方。貴方が居ればそれだけでアタシは満たされますのに。
貴方はもう逢わないと云いましたね。
・・・

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ハイキング

17/12/14 コメント:4件 瀧上ルーシー

 朝、スマートフォンのアラームで目を覚ました。昨日、臨時の飲み会に参加したため、記憶がはっきりしない。スマホ片手に俺はしばらくぼうっとした。
 思い出す。今日は好きな女と二人きりでデートをする約束をしていたのだ。幸い乗る電車の時刻もすぐに思い出せた。俺は歯を磨き、髪をセットすると、勝負Tシャツにジーンズを穿いて家を飛び出した。
 ターミナル駅で合流する。彼女はキャップに長ズボンに薄い黄・・・

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表裏

17/12/14 コメント:0件 山盛りポテト

とにかくこの世はよくできているなと関心することがある。毎日飽きもせず日が昇り日が沈む、その間の中でやっかいな出来事というのは空気のそれと同じように俺に付きまといやがる。
そんな鬱屈した日常が今日も始まる。
「みーちゃんどこー?あらそんなとこにいたの」
オクターブ高い声で何やら言ってるが、俺は猫なので当然よく理解していない。
ちなみにどうやら俺はみーちゃんという名前らしい。そ・・・

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象の道

17/12/13 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 たとえば死期をさとった野生の象が、誰に教えられたわけでもないのに象の墓場に向かうように、人間とことんおちぶれると無意識に自分の墓場に足をむけるようだ。  そこはビルとビルの間にできた裂け目ともいえる路地の奥だった。あてもなくやってきたつもりだった私がみたのは、行き止まりのわずかな空間の中に影にまぎれてうずくまっている何かの塊――それが私と同じ人間だと目が理解するまで、かなり時間を要さなければなら・・・

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ドアに挟まった!

17/12/13 コメント:0件 吉岡 幸一

 ドアに挟まった。
 久しぶりに仕事を定時に終えた源蔵は電車に乗って家路へと急いでいた。半年前に結婚紹介所の紹介で知り合った女性と結婚したばかりの源蔵は、一刻でも早く愛する妻に会いたかった。家に帰ったら妻の手料理が待っている、そんな思いにニヤつきながらすし詰め状態の満員電車に揺られていた。五十の歳で二十代の若い妻を娶ったせいか、気持ちだけは若者のように浮ついていた。
 十八時過ぎの下り・・・

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壁に挟まった!

17/12/13 コメント:0件 吉岡 幸一

 壁に挟まった。
 ビルとビルとの壁の隙間に源蔵は挟まってしまった。仕事を終えて、結婚紹介所で紹介された女性との待ち合せ場所へ急いでいる途中だった。予定より長めの残業をしてしまったため、普段はけして通ることのないビルの隙間の近道を通ってしまったのが原因だ。会社の若手社員がこの隙間を利用して駅と会社を行き来しているのは以前から知っていた。二分近くは早くなると得意そうに話すのを何度か聞いたことが・・・

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新たに飛び出した一歩。

17/12/13 コメント:0件 かの

受験に3回も失敗し、彼女にも振られ、バイトも出来ず、家でスマホをいじっている。
やっぱり、そろそろ死のうか。
習慣であるゲームのまとめ記事を見ながら、もう何回も考えた、死への思想を巡らす。
痛いのは嫌だし、苦しいのは嫌だし。
首を吊ったって、喉元を切ったって、手首を切ったって、みんな痛いし苦しいでしょ。
安楽死なんて言葉もあるよな。
きっと安らかに、楽に死ねるん・・・

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約束

17/12/12 コメント:0件 夏雲




君に伝えたいことがあるんだ。
あの日、君がいってしまった日。

君は待っていてくれたんだよね。
僕が来るのを、ずっと玄関の横で。

なのに、僕は間に合わなかった。というか、知らされなかったんだ。
君がいってしまうというのにね。

僕が君のただの入れ物に対面できたのは、君がいってしまってから何時間も後のこと。

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サプライズ

17/12/11 コメント:0件 みーすけ

 愛は待つこと、と誰かが言った。
 私にとっては、そんな言葉も他人事に過ぎなかった。今日この日までは。

 結婚三十年目にして、私は妻にプレゼントを送った。
 三十年間、妻にプレゼントを渡したことなど一度もなかった。それが何故、急にそんな気を起こしたか。
 私の職場に、事務のミカちゃんと呼ばれている女の子がいる。彼女の本名はミカではなかったが、牛乳瓶の底の様なメガネの・・・

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‘x‘ ミー子 ∧――∧

17/12/10 コメント:0件 t-99

 くびをかしげると眼下の生垣に無数のペットボトルが並べられていた。なんのおまじないだろう? 浮かんできた疑問を頭の隅に追いやり『クソネコ』とほうきを手にした怖いおばさんが出てくるまえに、わたしは車道にひょいと飛び降りた。
 優雅にしっぽを左右に揺らしながら、いつもの公園に足をむける。『ネコちゃん、ここではフンをしないでね』公園の砂場には看板が掲げられていた。当然、字の読めないわたしは用をたし・・・

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サムの片思い

17/12/09 コメント:0件 満希虹里

東京のユースホステルで聞いた、イギリス人のサムの恋物語はだれかさんのように甘酸っぱい。

「両親は海外に住んでいたから、僕は寄宿舎にいて、田舎に一人暮らしをしているお爺ちゃんの家で休暇を過ごしたんだ」ハリー・ポッターのように、寄宿舎暮らしなんて、いかにもイギリスの男の子らしい。確かにサムはハリー・ポッターのように格調高いイギリス英語をしゃべる。「初めてヘザーに会ったのはおじいちゃんが・・・

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ティンダーデイト

17/12/09 コメント:0件 満希虹里


デイト・アプリでただ今、ティンダー(火付け)が世界で一番人気のあるのは名前のせいもあると思う。うまく名付けたと感嘆する。自分の写真を出してだれかが関心を示してクリックと「火をつける」から、拒絶の心配をせず、誘えるから確かに自尊心は傷つかない。せっせとスマートフォンの画面をこすりながら、若者は理想のデイト(相手)を物色する。でも、デイトに何を求めるかはっきりしないから、誤解は頻繁に起こる。<・・・

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サムの片思い

17/12/09 コメント:0件 満希虹里

東京のユースホステルで聞いた、イギリス人のサムの恋物語はだれかさんのように甘酸っぱい。

「両親は海外に住んでいたから、僕は寄宿舎にいて、田舎に一人暮らしをしているお爺ちゃんの家で休暇を過ごしたんだ」ハリー・ポッターのように、寄宿舎暮らしなんて、いかにもイギリスの男の子らしい。確かにサムはハリー・ポッターのように格調高いイギリス英語をしゃべる。「初めてヘザーに会ったのはおじいちゃんが・・・

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人はなぜ生きるか

17/12/09 コメント:0件 伊川 佑介

「あなた何か勘違いしてるんじゃありませんか」
目の前の白衣の男が面倒臭そうに吐き捨てた。時折横にある画面を見つめてはその指示を「患者」に伝えるだけの人。現在の心理相談医、その昔精神科医と呼ばれていた人だ。
「あなたは生きる意味を見出せない。それなのに生に執着している。それは一体なぜですか?」
「別に急いで死ぬ意味もないから生きているだけです」
これは困った、という顔をして男・・・

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させてくれ

17/12/08 コメント:0件 井川林檎

 殺人鬼が乱入して、職場の皆が、あっというまに死んでしまった。
 イジワル課長も、悪口ばっかり同僚も、こんな死に方をするなんて、悲劇だ。

 わたしは幸い、倉庫にものを取りに入っていた。
 その最中を見なかったのは、せめてもの救いだ。

 本当は、倉庫にいる間、とんでもないことが起きていることを察していた。
 
 「うはははは、殺す殺すころーす」

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真夜中に吠える

17/12/08 コメント:0件 ちりょう なひろ

 ここに横断歩道が出来たのは、中田ん家の子供が轢かれ死んだからで、それほど車通りの多くないこの道にぽつんとある信号は不可思議にして違和感すらおぼえる。

 そもそも中田ん家の子供は赤信号だろうと車がきていなければひょいひょいと渡ってしまう奴だったし、まして信号がないところでは左右の確認を怠り横断してしまうような事が多々ある不注意極まりない子供だった。
 親が赤信号を無視する仕方が・・・

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名探偵がおこす悲劇

17/12/08 コメント:1件 糸井翼

夏休みの懸賞で当たった宿泊券を手に、彼氏と山奥の秘境温泉宿へ行くことになった。でも、山奥のホテルで急な大雨の中、道路が通れなくなり、私と彼は宿に取り残された。ここで私はこのホテルでの誰かの死を予感した。彼と一緒に何かすると大体事件に巻き込まれる。じゃあ何で旅行に誘ったかというと、彼が好きだから。それに、彼は名探偵で必ず事件は解決する。もうこれはお約束。
案の定、事実上の密室で宿の主人が殺され・・・

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懸賞小説中毒者

17/12/08 コメント:0件 伊川 佑介

「先月のことだよ。もう、いよいよ忍耐にも限界が来たと言うか、ほとほと呆れ果ててね。人間ですよ、人間。こんなに俗悪な生きもの他にいる? もうこれは一緒にやってけないと思って、ひとりで月に旅立ったの。世の中には社会を恨んで、誰かれ構わず無差別に攻撃する人もいるでしょ。でも私は傷つけたくなかった。だから月へ飛んだんです。誰もいない星で、一からやり直そうと思ってね。だけど着いて半日もしたら、妙に寂しくなっ・・・

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少年の嘘

17/12/05 コメント:0件 蹴沢缶九郎

「僕のお父さんは会社の社長で、昨日も最新のゲーム機を買ってもらったんだ」

学校の昼休みの教室、少年はクラスメイト達に嘘をついた。少年の父は社長などではなく、中小企業の営業マンであり、勿論最新のゲーム機を買ってもらってもいない。

「おい、またこいつのお得意の嘘が始まったぞ。もう騙される奴なんかいないんだよ、嘘つき野郎」

少年の嘘を見抜いていたクラスメイト達は・・・

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まだ頑張りなさい

17/12/05 コメント:0件 蹴沢缶九郎

朝、交通誘導の仕事を終えた田中は、自宅のある木造アパートに帰宅すると、さっそく毛布にくるまった。季節は冬、凍えるような寒さは田中を容赦なく襲うが、それでも彼が暖房機器の一切を使わないのは、電気代節約の為である。

自身の仕事仲間であり、先輩でもある四つ歳上の高橋が仕事中に倒れ、搬送先の病院で亡くなったと聞いたのは昨夜の事だった。
雪の降りしきる深夜、高橋の辛そうに誘導灯を振る姿が・・・

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メタリックツインテールナンバーエイト

17/12/05 コメント:1件 若早称平

 酷い冷え性で手がかじかむのです。私がそう告げると彼はチェーンソーで私の手を切断した。赤い飛沫が彼の服を汚す。彼はそのことに腹を立てた様子もなく、これでもう辛い思いをしなくて済むだろうと私の頭を撫でた。本当に優しい人だと思う。
 でも、と私は手首から先がなくなった自分の腕を見る。赤い液体がまだポタポタと滴っていて絨毯に染みが広がっていく。でもこれでは髪を梳かすことが出来ないわ。彼はソファーに・・・

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ヴァージンロード

17/12/04 コメント:0件 風宮 雅俊

「新婦の入場です」
 厳かな雰囲気の中、新婦は父親にエスコートされてヴァージンロードを一歩一歩ゆっくりと歩いてくる。漆黒の様な艶やかな髪、純白のウエディングドレスがくすんで見えてしまうほどに白く透き通る肌。参列者の誰もが見惚れてしまっていた。
 一歩一歩近づく新婦を見守る新郎は、出会いから今日までの新婦との時間を思い返していた。そして、これから過ごす二人の時間と生まれ来る子供との時間を・・・

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投稿作品

17/12/04 コメント:1件 風宮 雅俊

『メールを五件、受信しました』
 投稿サイトからのお知らせメールばかり五件だった。
「よし。今度の作品は本気出したよ。期日いっぱいまで練りに練って色が変わっちゃうほどに練ったからね。感動のあまりにコメントが沢山つくのは当たり前だよね」
 ダンスを踊る様にマウスを滑らせて、メールソフトを開く。
『コメントが投稿されました』
『コメントが投稿されました』
『コメント・・・

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――真夏の夜の手術――

17/12/04 コメント:0件 葵 ひとみ

コンビニの入り口の殺虫灯に無数の死にたがりの虫たちが引き寄せられている。
気品漂う氷のように美しい保育士3年目のルリは一匹の片方の羽を高電圧でもぎ取られて
地面で不器用に回転している蠅をビニール袋に入れて持ち帰った。

そしてコピー用紙にセロテープで残った羽を貼り付けた。

さて、ルリは白いビニールの手袋をして、
恒例の真夏の夜の手術の始まりである。<・・・

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君が消えてしまった

17/12/04 コメント:0件 夏雲


君が消えてしまった

綺麗に。 君の香りだけを残して


君は消えてしまった

無残に。 君の幻想だけを残して


僕が好きなものは

いつだってこうして

消えてしまうんだ


だから嫌なんだ

友達も、恋人も、執着も

みんなみんな

消えてしまうも・・・

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大量凄惨

17/12/04 コメント:0件 蒼樹里緒

 昔々、とある小さな町に、鍛冶屋の老人と孫息子が暮らしていました。生活に必要なものであれば、二人で何でも作っていました。
 トンカン、トンカン。鍛冶屋の家からは、その日も金属を打つ音が軽快に響いていました。作業場に、一人の少女がやってきます。
「ふたりとも、お疲れさま。差し入れ持ってきたよ」
「おぉ、いつもありがとうよ」
「今日のパンもうまそうだなー」
 仕事の手を休・・・

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