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第133回 時空モノガタリ文学賞 【 スイーツ 】

今回のテーマは【スイーツ】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2017/06/05

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2017/04/10〜2017/05/08
投稿数 84 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評 今回の「スイーツ」というお題は、個人的な世界観と親和性が高かったのかなという気がします。入賞作品ですが、『穴』以外は比較的素直で親しみやすい内容でありながらどこか客観性が感じられる作品が多かったと思います。身近な世界を描く場合、登場人物のキャラクターが魅力的に伝わること、行動や感情に対し読者が共感できる内容かどうかが大きく印象を左右すると思います。シンプルな話ほど、読みやすい文体・丁寧な心理描写・客観性が必要となるのかもしれません。実際はなかなか難しいことはよくわかりますし、ある一定のクオリティを備えている場合、あとは読み手の好みや個人的な体験が作品の評価を左右してしまうことも、否定はできませんけれども。最終選考作品の『雄叫びスイーツ』はほんのり甘くさわやかな後味が残りますね。宮下さんは剣道の経験をお持ちなのか、剣道部員らしい悩みがリアルでした。テンポのいい文体で、万人ウケしそうな内容がキャッチーですね。剣道とスイーツを結びつけるというアイデアにオリジナリティがあって面白いと思います。『たったひとことで失ったあなたと喜び』は、何気無い言葉が人を傷つけ、結果的にそれ以上に自ら傷ついてしまうという負のスパイラルが切なく、また人を傷つけることの怖さと言葉の大切さを痛感させられました。『白と黒のトンネルシュークリーム』は、不思議なストーリーですが落ち着いた文体で、怖がらせてやろうというあざとさがほとんど感じられないのに、作品世界にスッと入り込めました。人間の運命というのはシュークリームのごとく儚いものかもしれません。『スイーツ男子』は、○○系男子という言葉の豊富さに驚きました。しかも実際使われているらしいことにも。これらは血液型などと同様軽いコミュニケーションツールとしては便利であってもあまりに大雑把にカテゴライズしすぎという気がして主人公の戸惑いがよくわかります。『sweet smile』からは、食べ物というのは、人を分断するツールにも分かち合うツールにもなり得ることを再認識させられました。やはり美味しいものは人を結びつけるものであって欲しいですよね。『長袖の青ばら、僕ら模様』は、苦しみの中を生きる隣人をやさしく見守る彼女の人間性が魅力的で、二人のサラリとした関係性が爽やかだと思います。こうした繊細な感情を書き分けるのはなかなか難しいことではないでしょうか。『発掘』は、誕生日ケーキから出現する骨が、まるで彼の分身のようで、その何やら秘密めいた関係はどこか禁断的な香りもしますね。短めのシンプルな構成に仕上げたことと、内容と合った端的なタイトルが良いと思います。『救世の断ち物』は、身近なスイーツと救世という壮大な世界観のスケールのギャップが面白かったです。こちらも『雄叫びスイーツ』同様キャッチーな内容で、万人ウケしそうな作品ですね。今回も書きやすそうで、意外に難しいお題だったのではないかと思いますが、最終選考以上の作品は、かなり工夫されていたと思います。また次回も力作を期待しております。

入賞した作品

3

スイーツを楽しむ腹

17/05/08 コメント:1件 木野 道々草

 午後、彼は散歩から帰ると、妻に分かるよう食卓テーブルの上に袋を置いた。定年退職後、散歩が日課になっている。
「ま、かわいい。三色うさぎ饅頭ですって」
 袋の中身を見た妻は、表情を明るくした。
「着替えてくる」
「でも二パックも」
 妻は、三つ入りのパックを両手に持って少し考えていたが、一パックだけ開けて皿を二つ出した。
 戻ってきた彼は、テーブルの上を見た。<・・・

2

17/05/08 コメント:3件 OSM

 私が住む町は正午前に暴風域に入った。台風の勢力は、夕方が来ようかという現在も衰える気配がない。降り付ける大粒の雨。吹き付ける強風。ひっきりなしに震える窓硝子が痛ましかった。台風の目に入ってくれれば一息つけるのだが、そう都合よくはいかないらしい。
 私は一人、ダイニングの椅子に座っている。頭上の照明は灯っているが、両隣のキッチンとリビングは消灯されているため、私がいる場所だけが異様に明るい。・・・

4

陽だまりケーキ

17/05/07 コメント:6件 待井小雨

 洋菓子店の帰り道、私はひたすら息子をなだめていた。
「イチゴのケーキも好きでしょ?」
「やだ!」
 いつもなら売っているモンブランが今日は売切れていた。そんな時に限って息子が「黄色いケーキがいい」と駄々をこねたのだ。
 落ち着けるために立ち寄った公園には、私達の他にベンチに七十代ほどの男性が一人。うるさくてごめんさい、と心の中で侘びる。
「黄色いケーキはまた今度ね?・・・

2

喜びと悲しみが溶け合った味のするケーキ

17/04/27 コメント:3件 吉岡 幸一

「喜びと悲しみが溶け合った味のするケーキを探さないといけない」と、妻が急に言い出した。
 いったいどんな味なのか想像することもできない喩えだ。甘くて苦い味なのか、濃厚で堅いケーキなのかさっぱりわからない。言った妻自身も食べたことがないから味なんてわからないという。
 妻の母、僕からみれば義母が亡くなる前に食べたいと言ったのがそのケーキだというのだ。結局そのときはすでに食べ物が喉に通らな・・・

最終選考作品

7

雄叫びスイーツ

17/05/08 コメント:6件 宮下 倖

「イエェアアアアアアッ、メッエエエエエエエン!」
「コテェエエエエッコテコテコテエエエエッ!」
 奇声である。悲鳴である。しかも女子の。
 素足で床に踏み込む音、竹刀同士がぶつかる音、かけ声の高低もさまざまで騒々しいことこの上ないけれど、こんな声や音が絶え間なく響いていても何の不思議もない。なぜならここは剣道部だから。
「次! 結城!」
「はいっ! お願いします!」<・・・

5

たったひとことで失ったあなたとよろこび

17/05/03 コメント:6件 浅月庵

 ◇ 
 言葉は鋭利なのに剥き出しだ。唇から放たれた瞬間にはもう、あなたの胸に刃は突き立てられていて、引き抜くこともなかったことにするのも叶わない。

 ーーもう出会うことのないあなたへ。あなたの心にはまだ、わたしのひとことが刺さったままですか?
 
 ◇
 都心部には似つかわしくない、青草の匂いを想起する。それほどまでに爽やかな風が、わたしの髪の毛を散らした。・・・

2

白と黒のトンネルシュークリーム

17/05/02 コメント:2件 吉岡 幸一

 気がついたらトンネルの中を走っていた。学習塾までの道のりにトンネルはなかったはずだが、と思いながらも車を走らせていたが、このとき俺はそれほど深刻に考えてはいなかった。
 いつもなら家から学習塾まで高三になる娘を迎えに行くのだが、この日は夜遅くまで残業をしたため初めて職場から学習塾までの道を運転した。記憶ではトンネルはなかったはずだが、知らない間にトンネルが作られていたのかもしれないと思い、・・・

3

スイーツ男子

17/04/19 コメント:1件 笹岡 拓也

ある日私は会社で可愛いと言われている後輩の源川に話しかけられる。
「あれ課長ってスイーツ男子なんですね!いがーい!」
私はスイーツ男子という言葉が嫌いだ。私はもちろん甘い物が好きでスイーツを食べているワケだが、辛い物や塩っぱい物も好んで食べる。それなのに私が昼休みにお弁当のデザートとして、プリンを食べただけで源川にスイーツ男子と呼ばれるのは非常に心外だ。
次の日、私は昼休みにコン・・・

4

SWEET SMILE

17/04/15 コメント:4件 文月めぐ

 教室に入ってきた咲は、全身びしょ濡れだった。またトイレで水をかけられたのか、とうんざりした。上級生の棟にあるトイレを使えと言ったはずなのに。
 「濡れ狐」と誰かがぼそりと言うのが聞こえた。クスクスという笑い声も。「茶色い狐は山に帰れ」とはやし立てる声もある。咲の長い茶髪は、それだけで、いじめの対象になるには十分だった。小学生の時は仲良くしていたのに、中学校に入ったとたん、掌を裏返すかのよう・・・

5

長袖の青ばら、僕ら模様

17/04/15 コメント:5件 クナリ

 両親が離婚したのは、僕が小学三年生の時だった。
 僕の父はタバコで、いわゆる根性焼きというやつを、酔っ払うと僕や母によく敢行していた。
 タバコの火は大変な苦痛だったが、僕は実際よりも大げさに痛がって見せることで父の追い打ちを防いでいた。それが僕なりの処世術で、自分なりにうまく人生を生きていると思っていた。

 僕の家は木造の古いアパートで、隣には僕より三つ年上の女の子が・・・

3

発掘

17/04/14 コメント:5件 猫春雨

 それは誕生日ケーキにしか見つからないことを三年目で気づいた。
 初めて骨を見つけた日のことは覚えている。
 家族が食卓を囲む中、ふぅ〜とろうそくの火を吹き消すと、拍手とともに大好きな恐竜のプラモデルが贈られた。
 そしてケーキが切り分けられ、主役である私からフォークをスポンジに突っ込む。
 するとスポンジと生クリーム層の奥で、何か堅いものがフォークの先に当たったのだ。

5

救世の断ち物

17/04/10 コメント:9件 まー

〔以上で最後の放送とさせていただきます。それでは皆様、あと一時間ほどで巨大隕石が地球に到来するものと思われますが、是非とも悔いのない過ごし方をされますように〕

 天上院家に仕える執事の神代は巨大テレビの電源を切り、深く溜息をついた。
「やはりもう駄目なのか……」
 そんな神代と対照的なのは、隣で瞳を爛々と輝かせている金髪の少女だった。天上院家の次期当主、天上院アサヒ。彼女・・・

投稿済みの記事一覧

2

バレンタイン

17/05/09 コメント:0件  

女「すいません、落し物、ありませんでしたか?」
私「どのようなものでしょうか」
女「あー、えっと。なんていうか、このくらいの小さな箱なんですけど、ラッピングされてる」
私「プレゼントのお箱でしょうか」
女「まぁ、はい。そうですね。赤い包装紙に包まれていて、白いリボンがかけてあるんですけど、、」
私「少々お待ちください、見て参りますね」
女「すいません、お願いしま・・・

2

1985年のバニラ・ボーイ

17/05/08 コメント:2件 滝沢朱音

 スイーツという呼称さえなかったあの頃。

「カブトムシのにおいがする」
 私がそう言った途端、初めての席替えでざわめいていた教室が静まった。周囲はなぜか目を背ける。どうやら私の隣席になった男子を気遣ってのことらしい。不自然な沈黙の中心にいるその男子――林君は、携帯用エチケットブラシの鏡を覗き込み、髪型をチェックしている。幸い聞こえていなかったようだ。
 カブトムシ好きな弟・・・

1

ショート・ミステリー

17/05/08 コメント:0件 日向 葵

それでは推理を始めよう。
杜若菖蒲(かきつばた あやめ)はそう言った。
猫を捜索中、悲鳴が聞こえた他所様の家に何の躊躇もなく突撃した彼女は意気揚々とそう言った。現実の私立探偵というのは小説のように殺人事件に遭遇したり、警察から協力を依頼されたりはしない。それ故に今の彼女はこの状況に歓喜に踊り狂わんばかりの心境なのだろう。僕は半ば呆れながらも、尻拭いをするために彼女に付いていかない訳には・・・

3

グレーテルの薬

17/05/08 コメント:2件 冬垣ひなた

 私たちは小さい頃から正反対だった。
 入っていた劇団で催された『ヘンゼルとグレーテル』、ヒロインのグレーテルは可愛くて人気者の愛砂香(あさか)。地味な私なんて、目印に落としたパンを食べる小鳥の役だ。
 好き、嫌い、好き、嫌い……。
 不用品の小道具の花を千切って、彼女を花占いで試したのは内緒。
 愛砂香は空気を読まずよく大人に叱られもしたけれど、めげる所のない、強気で真っ・・・

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神坂英輔の頭の中には、生クリームが詰まってる

17/05/08 コメント:0件 小高まあな

 神坂英輔の頭の中には、脳みその代わりに餡子とかチョコとか生クリームが詰まってるのだと思う。
「あー、おいしい……」
 生クリームがアホみたいに高くとぐろを巻いている甘ったるそうなパンケーキ。それを一口食べると彼はうっとりと呟いた。一口毎にこの調子だ。見ているこっちの口の中が甘ったるくなって、気持ち悪くなってきた。
 オレンジジュースじゃなくて、コーヒーとかにしておくべきだったな・・・

2

誘引

17/05/08 コメント:0件 光石七

 幼い兄妹が森で迷子になった。泣きじゃくる妹を兄は懸命に慰める。
「大丈夫だよ、帰れるから」
 兄は妹の手を引き、帰り道と思しき道を歩き始めた。だが、それは帰り道ではなかった。兄妹は更に森の奥へと進んでいたのである。
 歩けども歩けども、鬱蒼とした森が続くばかり。疲れと空腹が兄妹を支配していく。
「お兄ちゃん、あれ……もしかして誰かのおうち?」
「ホントだ、行ってみよ・・・

2

シュガーハウス

17/05/08 コメント:2件 そらの珊瑚

 甘い匂いが部屋の隅々まで満ちている、そう、ここはシュガーハウス。
 壁のクリームをこっそり人差し指ですくい、舐めてみる。甘い。脳のシナプスが溶けそうなくらい甘ったるい。
「ピピー」
 首から下げたけ笛をけたたましく鳴らして、さとうべや子が現れた。不思議の国のアリスみたいな可愛い服と、牛乳瓶みたいな分厚いレンズの入った黒縁眼鏡が、実にミスマッチだが、個性というものはミスマッチから・・・

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恋の後味は甘すぎる?

17/05/08 コメント:0件 まきのでら

 菜摘のアップルパイ。
 和子のおはぎ。
 美香のストロベリータルト。
 冬花の栗まんじゅう。
 由紀のミルフィーユ。
 そして、愛奈のチョコレートパフェ……。
 
 僕は見た目こそ冴えないが、腕のいいパティシエだ。それも洋菓子和菓子も関係なく思いのまま美味しく作ることが出来る。そんな僕だから女性へのアプローチには当然この腕を振るう。まずはさり気なく彼女の・・・

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ドゥルセデレチェ

17/05/08 コメント:0件 あみ

ドゥルセデレチェ。
それは南米の伝統的なスウィーツ。
いや、スウィーツなんて生易しいものではない、甘さの凶器。

デゥルセデレチェ(Dulce de leche)はスペイン語で甘い牛乳。
まさにその名の通り、牛乳と砂糖を長時間煮込んで作られた液体のキャラメル。
日本で流通しているものではミルクジャムに近いが、その甘さの比ではない。

南米のスーパーに・・・

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献 身

17/05/08 コメント:2件 ツチフル

「好きな人がいるの」
 亜美が頬を染めて打ち明けたとき、私たち三人は一瞬で――相手の顔も性格も知らないのに――亜美がふられる光景を鮮明に思い描くことができた。
 魚のように離れた目。重力に逆らう鼻。腸詰みたいな唇。
 どうひいき目に見ても、亜美は恋愛が成就するタイプの顔ではなかった。
「告白…する気?」
 無茶だよと恵子は目で訴える。私も同じ目をしていたと思う。

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スイーツまみれの男

17/05/08 コメント:4件 泡沫恋歌

 スイーツといえば、こいつ。僕の友人の石田君だ。
 何しろ無類の甘党で和菓子、洋菓子、どちらも大好物なのだ。たとえば主食がおはぎ、おかずがケーキ、汁はおしる粉、デザートはプリン、そんな食事が毎日続いてもヘーキなくらい、スイーツまみれの男なのだ。
 石田君がケーキバイキングにいく時、ツレとしていつも同行させられるのがこの僕である。
 彼の「奢ってやる」という甘言につい乗せられて付い・・・

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甘い生を、俺たちに

17/05/08 コメント:1件 時雨薫

 ベッドの上の彼女は艶やかだった。潤んだ眼と唇とが甘く誘った。
 俺は棒付きキャンディの袋を剥いて彼女の口に突込む。彼女は目を白黒させながらこの暴挙に抗おうとするのだが、口中に広がる甘味にその意思はいとも容易く挫かれる。筋肉が弛緩し、目元が緩む。無上の恍惚に満たされ鉄壁の女スパイは陥落した。
 コードネーム、八ツ橋。彼女は京都に拠点を置く諜報機関「葵屋本舗」の諜報員だ。こいつの色仕掛け・・・

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スイーツ ウエディング

17/05/07 コメント:0件 みや

ー結婚生活をスイーツで比喩する考察ー

・フォンダンショコラ*チョコバナナワッフル期(結婚三年以内)

新婚と呼ばれる時期がこのスイーツに当てはまるとされている。スイーツの様に甘い、と言う表現がぴったりのこの時期はフォンダンショコラの様にとろける様に甘く、チョコバナナワッフルの様に沢山の具材(想い)が配偶者へ向けられている。

・チョ・・・

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モンブランの紳士

17/05/06 コメント:0件 ケン

「あれ、部長、新しい万年筆ですね」
「娘がくれたんだよ」
「いいな、ウチの娘なんて会話もしてくれません」
「ウチもだよ、これも別に私へのプレゼントではないんだ。彼氏のための物だったんだけど、別れていらなくなったからって貰えたんだ」
「へえ、しかしそれブランド物ですよ、15万はしますね」
「これそんなにするの?!」

 その一日前

 私は彼と喧・・・

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頭がプリンになっちゃったから、病院いってくる

17/05/06 コメント:4件 霜月秋介

 ある日の休日の朝。布団で気持ちよく寝ていると、彼女から一本の電話があった。

『わたし、頭がプリンになっちゃったから、びょういん行ってくるね』

「………なんだと?」

 私は耳を疑った。いま、彼女はなんと言った?私の聞き間違いだろうか?頭が…なんだって?頭がプリン?びょういん行く?病院!?

「もしもし?もしもし!?」

 電話は既に・・・

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あるいは洋菓子でいっぱいの地球

17/05/06 コメント:0件 本宮晃樹

 それは解釈に困っていた。
 与えられた報酬関数はこうだ。〈人類の福祉に貢献せよ〉。
 たぐいまれなる難問だった。それにとって、この問題はほとんど形而上学的であり、哲学的であり、これといった回答はないように思われた。
 それをプログラムした連中は無邪気にすぎた。彼らはほんの出来心――果たして機械風情に世界の悲哀を駆逐できるかやらせてみようという実験であった。しかもその結果には大し・・・

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甘すぎるゆえ

17/05/06 コメント:0件 秋 ひのこ

 深さのあるバットに、フィロと呼ばれる紙のように薄い生地を、間に溶かしバターを挟みながら幾重にも重ねていく。オーブンで焼き上げ、ひたひたになるまで全体にシロップをかける。
 小皿にのって出て来たそれは、小さなパイ菓子。覚悟を決めてフォークを刺すと、数十の層からじゅわ、とシロップが染み出す。
 世界で最も甘い菓子のひとつと言われる、トルコのバクラヴァ。

「いぃーーーーー」<・・・

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ショートケーキの魔法

17/05/05 コメント:0件 奶茶

幼い頃、ケーキと聞いただけでわくわくした。特にショートケーキ。ふわふわのスポンジに雪のようなクリーム、ルビーのような苺。更に食べられるとなれば、今なら何でもできちゃうと思えたし、あんなに時間のかかった宿題も部屋の片付けも難なくやってみせた。ショートケーキには魔力が宿り食べた人を魔法使いにさせる、本気でそう思っていた。
でもいつからか、ショートケーキを見ても特段心が踊ることもなくなった・・・

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天涯孤独な恋の終わらせ方

17/05/04 コメント:2件 つつい つつ

 仕事が終わり最寄り駅を降りると、駅前のパン屋さんまで急いで走った。あと10分くらいで閉まってしまう。パン屋に駆け込みショーウィンドウを覗くと、シンプルだけど美味しそうなケーキが並べられていた。優柔不断で心配症な僕は、ショートケーキ、チョコレートケーキ、フルーツタルト、シュークリームの4つを選んだ。二人しかいないんだけどナツコさんに好きなのを選んでもらえばいい。レジでお金を払っているとき、ナツコさ・・・

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caramel

17/05/04 コメント:0件 PURIN

久しぶりにキャラメルを食べた
年上の知り合いにもらったから食べた

懐かしい
口いっぱいに広がる甘さも
歯にくっついてくるうっとうしいところも
そうだ、キャラメルってこんなだったな、忘れてた

だけど、
食べ終わったら、きっとまたこの感じを忘れるんだろう
思い出しても、ああ、そんなお菓子もあったかもなくらいにしか思い出さないだろう
・・・

0

ユーレイになった教授と大福に関わる人生の定理

17/05/03 コメント:0件 比些志

教授は、甘いものに目がない。毎日、三時になると、自分の机の上でオヤツを食べるのを日課にしている。和菓子を食べることが多いが、洋菓子やアイスクリームやチョコレートも大好きだ。生徒たちからは、スイーツ教授と呼ばれている。

教授には女性の助手が一人いる。教授の片腕ともいうべき優秀な助手である。助手も三時になると研究室で教授といっしょにお茶を飲みながら時間を過ごす。しかしスイーツには手を・・・

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とある会社のセクハラ課長の誕生日会にて

17/05/02 コメント:0件 藤原光

とある会社には、悪名高いセクハラ上司・田中課長がいた。剥げていて口が臭く、部下には常に上から目線。でも目上には常にペコペコ媚まくり。うざいこと極まりない。この田中の部下にあたるカナコとケイコは、復讐のチャンスをうかがっていた。復讐の日を田中課長の誕生日の日と決め、入念に準備していた。

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田中課長の誕生日の前日。

カナコ「でーきた。」

ケイコ「こ・・・

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季節外れに舞う桜色を

17/05/02 コメント:0件 

 一目惚れだった。

 冷たい空気の中、灰色の空の下。
 彼女だけが輝いて見えた。
 金色の、軽くウェーブした長い髪。雲に隠れた青空も恥じらうような澄んだ青い瞳。薄い色素の桃色の唇ーーそして、何かを探しているような動作に、

「あ、あの!」

 つい、声をかけてしまった。
 青い瞳がこちらを向く。それだけで心臓が高鳴りーー言葉が詰まる前に、

0

春がゆく

17/05/02 コメント:0件 藤光

 先日、我が家の食卓に筍の若竹煮が上った。筍は私が実家の竹やぶに入り採ってきたもので、土から僅かに顔を覗かせたばかりの筍で作る若竹煮はとても柔らかく、かすかな苦みが鮮烈に春を感じさせる一品だ。
 その日、大汗をかいて筍を掘り起こした後、甘い物が欲しくなった私が、実家から自宅への帰り道に買い求めたものが、いちご大福である。

 いちご大福――ご存知だろうか。
 年配の男性には・・・

1

あの男が大福を喉に詰まらせて死んだ後の話

17/05/02 コメント:2件 秋 ひのこ

 丸々太った大福が、むにむにと互いを押し合うようにして六個詰まっている。
「じゃあお父さん、いただきまーす」
 線香の香りが漂う狭い仏間で、フミと母は手を合わせた。丸い卓袱台には、遺影。人の良さそうな男が微笑んでいる。
「おいしい。やっぱり大福は『よつば』に限るね」
 亡くなった義父の大好物を、こうして年忌の度に母娘で食べている。今年で三回目。
「お父さん見て。じゃー・・・

0

シュガー&パラダイス

17/05/01 コメント:0件 月村千秋

 なんなのこの深緑の液体は、そう思ってる私の顔をちらりと見て取ったディレクターは懇切丁寧に教えてくれた。これが昆布茶って代物で七日間飲み続けると、偉大な食物添加物でイエスかノーしか判別しなくなった鈍った舌を、ちょっとは味の分かるナイスな相棒にしてくれるってことを。
「目を閉じて飲めば味なんてしないから」
 ディレクターはそう言ったけど、実際私は目を閉じて飲み込んだけど、喉の奥にはねっと・・・

1

ピースオブケイク

17/05/01 コメント:0件 奶茶

「華さん」
なんて甘ったるい響きだろう。
少し掠れた、いつもよりも半オクターブ低い声に振り返ると、ティーポットを持った彼が、こっちを見て佇んでいる。そのがっしりとした、骨太な身体に不釣合いな様に、思わず笑みがこぼれる。
「ダージリンにする?それともアールグレイ?」
「んー、アールグレイお願いします」
「わかった、ちょっと待ってね」
彼の口からダージリ・・・

0

台湾スイーツを食べたい

17/04/29 コメント:0件 熊野ゆや

 台湾スイーツを食べたい。お店に行くといつも閉まっている。予め時間を確認してから店に行けば台湾スイーツが食べられただろう。しかしそうはしなかった。食べたいという気持ちに本気さが足りないのだろうか?
 根っこにあるのは、台湾に行きたいという気持ち。でもそれには準備が大変。お店の時間を確認する簡単な任務が遂行できない現在の僕には難しいだろう。旅行会社にお金を払って準備してもらったって、乗る飛行機・・・

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思い出したらチーズケーキと息子の言葉

17/04/30 コメント:0件 むねすけ

 親友のおせっかいに思いをはせてみる。
 山崎君のうちで映画バタリアンを見て泣いた小雨の春に、ゆっこは私に言った。
 私たち、親友だよね。
 私たち、親友だよね。
 繰り返してあげることができなかったゆっこへの言葉。ゆっこは往復待ちでぼんやり間を見つめていたっけ?
 あれが小学校の四年生。心の友って書いて、しんゆうって読むんだよって勘違いしてたのはきっと、ジャイアンの・・・

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牛のお乳とお砂糖と、なにかの卵

17/04/29 コメント:0件 むねすけ

 娘が高熱にうなされてかわいそうで、私はおでこを氷淡水ペンギンのお腹に限界までくっつけに行く。氷淡水ペンギンは村南の泉に群れで住んでいる。人間の体温を嫌うこたちだが事情を話すと、そこは同じ子を持つ母親同士、わかってくれるのがいてお腹をお借りした。すべらかでなにものよりも白いお腹は氷おでこを作るのにに最適。おでこの感覚が無くなって代わりに原始の氷河にも存在していたはずのかつての私の記憶が流れ込んでく・・・

1

サツマイモ

17/04/29 コメント:0件 田中あらら

 パフィンマフィンの礼子さんが今日焼いたのは、焼き芋のマフィン。マフィンの型に生地を流し込み、真ん中に大きめにカットした焼き芋を差し込んで業務用オーブンで20分焼けばできあがり。他には定番のブルーベリーマフィン、人気のチョコマフィン、おかずを使ったひじきマフィンと切り干し大根マフィンを焼いた。
 礼子さんは1年前、自宅の片隅を改装して菓子製造業の許可をとり、商号を「パフィンマフィン」とした。・・・

1

粉砂糖の降る夜空

17/04/29 コメント:0件 花色木綿

「ねえ、サトウくん。やっぱり押入れの中でお茶を飲むのは、どうかと思うんだけど……」
 そう問い掛けると一方のサトウくんは、「そうかなあ?」と、飄々と返す。彼はアンティーク調のティーカップを滑らかな手付きで口に運びながら、優雅な時間を過ごしている。BGMに、クラシックの音楽が聞こえてきそうだ。
 彼の周りだけを刳り貫けば、まるで映画の中のワンシーンに見えるが、カメラをフェードアウトしてし・・・

2

とろけちゃったらミルクセーキ

17/04/29 コメント:0件 かめかめ

 太郎がお菓子作りにそそぐ愛情は執着と言えるほどの熱量だ。休日は朝から多種類のお菓子を作るのはもちろん、平日も仕事から帰ったらお菓子を作らないと落ち着かず寝ることも出来ない。作るのは大好きだが食欲は人並みで作り上げたお菓子も少ししか食べられない。大部分のお菓子は職場に持っていき同僚に振る舞うことになるのだった。
 コールセンターのバックオフィスが太郎の職場だ。一日中ずっとパソコンの前に張り付・・・

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母さんのぶどうパフェ

17/04/29 コメント:0件 茉莉花

 その日は、突然やってきた。
母さんが天国に逝ってしまったのだ。
交通事故でなんの予告もなく、お別れもいう間もなく突然この世から消えてしまった。母さんが作ってくれたぶどうパフェももう食べられない。
 僕は、母さんの枕もとに座り話しかけた。動かなくなった母さんが再び目を覚ましてくれるんじゃないかと期待して。
「母さん、僕ね、母さんに黙っていたことがあったんだ。ずっと隠していた・・・

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食べられないケーキ

17/04/29 コメント:0件 嘉藤千代

 ああ、どうしようか。別に大した悩みではないのだが、テーブルの上に置かれたケーキをどうすべきか悩んでいるんだ。
 彼女が愛してやまない洋菓子店のチョコレートムース。ドーム型のそれはココアパウダーで綺麗にコーティングをされていた。てっぺんに飾られているミックスベリーがとても可愛らしい。
 来客である彼女をもてなそうと用意したのに、ムースは手をつけられることなくテーブル上に寂しく残っていた・・・

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キリッシュトルテ

17/04/27 コメント:0件 seika

ドイツ文学者の芋洗坂瑠璃子は初めて大ドイツ文学者、戸舞賛歌の書斎を訪れたことを思い出した。

杉並区成田の邸宅の二階にその戸舞賛歌の書斎はあった。床から天井間でびっしり並んだ膨大な洋書の数々、室内に流れる重厚なクラシック音楽、そしてアカデミックな雰囲気…
『ここがあの、本物のドイツ文学者、戸舞賛歌ノショサイなのだ。』
芋洗坂瑠璃子は思わず息を呑んだ。
『やぁいらっし・・・

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民間童謡 エイケン・ドラム

17/04/27 コメント:0件 瓢箪鯰

 東の国のとある町。全くモテない少年がいた。
 この少年、どれほどモテないかと言うと、なんと生まれてこのかた女の子と付き合うどころか話したことさえほとんど無い。文化祭に修学旅行、バレンタインデー、クリスマス。その他諸々エトセトラ。男女の出会いの場は数あれど、彼はどれにも縁がない。
「ああ、イケメンとは言えないが、顔はそんなに悪くはないはず。なのに、どうして、こんなにモテない?」
・・・

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その菓子の味は

17/04/26 コメント:0件 深海映

 甘くて、可愛くて、キラキラしていて、若い女性が好むお洒落なお菓子、それがスイーツだと先生は言った。
 だが俺にとってスイーツとはそんなに甘くてお気楽なもんじゃない。人生をかけた、血と涙の結晶、それが俺にとってのスイーツだ。
 思えば俺の人生はスイーツ漬けだった。幼稚園児のころにはすでに、お菓子作りの好きな母の手伝いでクッキーの型を抜いたりしていたのを覚えている。
 小学校に上が・・・

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おかしな家

17/04/26 コメント:0件 十文字兄人

 これは、初めて友達の家に遊びに行った時の話である。

 彼女の名前は『あめ』と言い、みんなから『あめちゃん』という愛称で呼ばれていた。だから、私も彼女のことは『アメちゃん』と呼んでいたのだが、今後は軽々しく、その愛称では呼べないだろう。

 あめの家は、住宅街から少し離れた場所にあり、家の周りは高い木々で囲まれ、まるでわざと見つからないように隠して建てたかのようだった。<・・・

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べっ甲飴と涙

17/04/26 コメント:5件 ちほ

 雑貨屋『ショコラ』の店主・アーニャは、雪解けの泥水を避けるため、スカートの裾をちょっと持ち上げ、通りを横切り店の中に入る。薄暗い小さな台所には火の気もなく、たった1つのランプにも火が入っていない。薄暗闇の中、何かがテーブルの方でごそりと動いた。
「誰?」
  問いかけてから、天井から下げられたランプに手を伸ばす。ランプの光に照らされたのは、末娘のアリアだった。テーブルに突っ伏し・・・

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欠けたチーズケーキ

17/04/26 コメント:0件 れもん


平日朝の電車内というのはどうしてこうむさくるしいのだろう。休日にどこかに遊ぶに行こうと乗る電車とはまるで違う。車内に陰鬱な空気がみちていて、生気がまるでない。あれだけの人数が同じ空間にいてあれほどの静寂をつくりあげることができるのは日本人だけであろう。
泉貴子は窮屈な車内でそんなことを考えては、少しでもこれから出勤する会社のことをかんがえないでおこうとした。

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あん団子

17/04/25 コメント:0件 瀧上ルーシー

 私は借金漬けだ。それも自業自得の借金ではない。私が十八歳でもうすぐ高校を卒業するというときにお父さんがギャンブルやキャバクラなどの浪費で多額の借金をこさえて蒸発した。しかも闇金融で借りた金だ。闇金融の業者は自己破産しようが相続放棄しようが関係なしに取り立てにくる。母親もいない私はしかたなく高校を中退して、風俗で働くことになった。当時の友達にはその仕事に就くのを止められたし、今も付き合いがある子は・・・

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お山のパンケーキ

17/04/24 コメント:2件 こぐまじゅんこ

 くまくんとうさぎさんが、山であそんでいました。
 くまくんのおなかが、ぐぅとなりました。
「おなかすいちゃった!」
 くまくんが、ちょっぴりはずかしそうにいいました。
 うさぎさんは、
「なにかおいしいものをつくりたいね。」
というと、山の中をキョロキョロさがしはじめました。
「くまくん、ハチミツとるのとくいでしょ。」
 うさぎさんが、大きな声でい・・・

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アイスクリーム

17/04/23 コメント:0件 眠々瀬未々

 食前に注文をしたアイスが、二人のもとに運ばれて来た。僕のアイスは、チョコレートアイス。七緒のアイスは、抹茶アイスである。
 二人は、沈黙を保ちながら、スプーンを手にとって、アイスを掬った。僕の方は、固くて、上手く掬うことが出来なかった。一方で、彼女の方は、掬ったアイスを口に運んでいる。僕は、もう一度アイスを掬ってみることにした。アイスは固く、やはり上手く掬えない。僕が、溜息を吐くのと同時に・・・

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ホットケーキ

17/04/19 コメント:0件 イルカ

 故郷は、懐かしいとか言うけれど私には、苦い思い出しかない。そこで生まれて高校まで住んだ町だけど、今は、親戚もいないし、友達もなく行く目的もない。
 あれは、高校を卒業するころだった。
私は、仲の良い友達はいた。あの出来事が起こるまでは、生涯の友だと思っていた。
それが由紀だった。人見知りが激しく、クラスの人と打ち解けることができず、落ち込む日々を過ごしていた。
 そんな時・・・

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甘い殺人

17/04/18 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 宅配の包みをあけると、きれいな箱があらわれた。
 開けない前から、甘い香りがたちのぼってきた。
 両手でゆっくりふたをあげると、小型のデコレーションケーキがあらわれた。まんなかに苺がもりつけられ、そのまわりを生クリームがたっぷりとりまく、女子高生あたりが喜びそうなケーキだった。
 大吾は、ケーキの上に立てかけられたチョコレートプレートを手にとると、茶色の上に白のクリームで書かれ・・・

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17/04/18 コメント:0件 御手洗

僕はあの、苺の甘酸っぱさが苦手だ。
後の残るあの酸っぱさが全て台無しにしているように感じるにもかかわらず、あれがないと甘いという感覚が際立つことはないのだ。

「愛してる」
なんて月並みな言葉しか口に出せないのも、それほどまでに勇気がなく、その程度の自信しか持ち合わせてなどいなかったからだ。
「ありがとう。嬉しい」
彼女の表情はとても嬉しそうで、まるで一番欲しか・・・

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シリアルシリアル

17/04/16 コメント:2件 夏日 純希

バカな僕の人生は少々苦いことが多い。

「そんな苦い人生に最高のスイーツはいかが?」

と甘い誘惑をくれたのは、まだ一度も会話を交わしたことのなかったクラスメイトの御神さん。
これは甘い罠だと僕の16年の人生経験が警告音を繰り返す。

「ひ…一ついただけますか?」

ばかばかしくバカな僕は人差し指をクールに突き立てた。自称クール、他称ギコチナー・・・

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花の香りは人工甘味料

17/04/16 コメント:0件 浅雛賢

「私、子供出来たかもしんない」
由佳はそう言ってアイラインのしっかり引かれた目元に涙を溜め、薄ピンクのリップの塗られた唇を噛み締めた。
久しぶりに外でランチでもしよう、と呼び出され、ガラにもなくルンルンと小さくスキップまでしながら繰り出してきた私に対して彼女が放った一言は、上機嫌の女子大生一人を落胆させるには十分な威力だった。
日曜日のお昼、春の陽気、穏やかな風、桜並木、ビジ・・・

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反転

17/04/15 コメント:0件 環 巽

 私の姉は可愛らしい女性である。大きい瞳を長い睫毛が縁取り、小ぶりな鼻に厚めの赤い唇。幼い時には白雪姫という渾名が付くほどに可憐であった。そして、社交性が高く、友人も多い。クラスのマドンナ的存在だ。
 私は、そんな姉と同じ顔を持っている。ただ、社交性は低く、陰鬱とした姿容には人が寄り付くことがない。正反対の姉妹であった。顔が同じこと、そして甘い物が好きだという事以外は、まるで違っていた。

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スィーツな妖怪

17/04/15 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 とうとうあいつが、トモミの家にもあらわれた。
 彼女が部屋から出たとき、廊下のむこうから異様な姿の妖怪が出現した。
 モコモコとしてとりとめのないその白い体には、グリーンの目、苺色の口、茶色の角、そして全体に色とりどりの星がちりばめられたそいつが、獅子舞のようにたえず全身をゆりうごかしながら、こちらにむかってちかづいてきた。
 間違いなく、噂にきいていた妖怪だった。
 ト・・・

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甘党宣言

17/04/15 コメント:0件 山盛りポテト

一面を白銀の世界に包まれ、息をのむような美しい冬の山々で、3人の男女が大自然と格闘していた。
「ねえ、一体どこ歩いてるのか分かってるの?もうかれこれ1時間もこうしてるわ!」
「うるさい!松本、元はと言えばお前が雪山ってロマンチック、ねえみんなで登山にいきましょうよとかなんとか俺達をたぶらかして、その気にさせたのが悪いんじゃないか」
「そうだよ、こんなシーズンに素人が登山なんて・・・・・

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SWEET & BITTER

17/04/15 コメント:2件 上木成美

お気に入りの真っ白なお皿に、お気に入りの金のフォーク。その傍のティーポットからは、ゆらゆらと湯気を立てながらアールグレイの香りが漂ってくる。付けっぱなしのテレビでは、髪を綺麗に巻いたアナウンサーが深刻な顔をしている。
(次のニュースです。今月16日に太平洋に浮かぶ小さな島で発生した……)
行きつけのお店で買ってきた小ぶりのケーキを、箱からそうっと出して皿に移す。チョコレートでコーテ・・・

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君の笑顔が見たくて

17/04/15 コメント:1件 

「ねぇ、ぱぱ……まま、元気になるよね?」
「大丈夫だ。必ず元気になるよ」
「ねぇ、ぱぱ。まま、今日も帰ってこないの?」
「ごめんな。いつでもままが帰ってきてもいいように、いい子にしてような」
「……うん」

 妻の調子が悪くなったのは三年ほど前だ。
 心を少し患っていて、入院することが時々ある。その度に娘である早希は寂しがったが、いつも物分かり良く飲み込ん・・・

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スイーツよりも甘い笑顔を

17/04/14 コメント:0件 

「美味しいロールケーキが食べたい!」
「よし! お兄ちゃんに任せなさい」
 とは言ったはいいものの。ロールケーキの作り方なんて分からない。たとえ知っていたとしても、普通のロールケーキを妹に食べさせるわけにはいかない。
 それは可愛い妹の誕生日プレゼントだからーーというのも一つの理由だが。
 妹は小麦アレルギーなのである。
 小学校低学年でアレルギーを発症した妹は、大好・・・

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神様

17/04/14 コメント:4件 

 ある日突然、食欲が止まらなくなった。僕はその時人生で一番痩せていた。肌はカサカサで髪の艶もなく、瞳に光もなかったと思う。ただ目の前はギラギラとしていた。
 毎日、おなかがすいて堪らない。嫌だなぁ今の体型けっこう気に入っているのに、なんて思ったけれど食べても食べてもおなかがすく。おなかがいっぱいでもおなかがすく。

 僕は片想いしていた。彼女は素朴で可愛らしい女の子だ。僕が今まで・・・

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失恋クラブ

17/04/13 コメント:2件 家永真早

 もう四十も近い歳になって、女を追いかけ回してはフラれ、またここへ来るなんて情けない。自らを嘆きながら、侑哉は安アパートのポストに掛けられた錠の数字を繰っていた。前回ここへ来たのはいつだったか、確か二年か三年前だ。去年は来なかったはずだ、と思い返しながら、手に馴染んだ番号を合わせる。4200。錠は開き、ポストの中には小さな金庫が入っている。金庫は空で、蓋が開いていた。いつもは鍵が入っていて、蓋は閉・・・

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虹の洋菓子店

17/04/13 コメント:0件 ぴっぴ

「祐輔、お前がこの『虹の洋菓子店』を継ぐにあたって今一度、私の母、つまり幸子おばあちゃんの話をしておかなければなりません」
祐輔は幸子おばあさんの話と聞いて、誰も見ていないテレビを消して居住まいを正した。
「お前も知っていると思いますが、この虹の洋菓子店を起こした方です。私はどうしてもお前に幸子おばあちゃんの心意気を継いでもらいたいのです」

「幸子おばあちゃんがこの町に流・・・

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十数年前の不思議な光景

17/04/13 コメント:2件 空 佳吹

 ある夕方のこと……。

 パンポーン……。
(おっ、来たな)
 私はインターホンの前にいき、
「はい。どーぞー」
『りょうかーい』
 それは、二十歳になる妹のカズ実だった。彼女は入りながら、
「お邪魔しまーす」
 手には予定の物が入った手さげ袋をさげている。カズ実は、それをテーブルに置きながら、
「はいこれー。我が家の定番スイーツの、プ・・・

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パティシエになる方法

17/04/12 コメント:0件 ちりぬるを

 みどりが生まれて初めて徹夜をしたのは小学六年生の時だった。家族が寝静まったのを見計らってベッドを出た彼女は二段ベッドの下段で寝ている妹を起こさない様に机のライトを点け、引き出しからお気に入りのレターセットを取り出した。

 みどりと同じクラスの楠はバスケが上手くてクラスでも目立つ存在だった。そうなると当然女子からの人気も高く、誰々が彼のことを好きだとか告白したとかという噂もよく耳にす・・・

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帰り道の回転焼き屋

17/04/12 コメント:0件 

「ふふん、ふふん」

 思わず足取りが軽くなる。わたしは決まって水、木曜日、学校帰りに立ち寄る場所がある。今は春休みだけど、それでも関係なかった。
 周りの同級生、先輩、後輩が学校帰りに、ハンバーガーなどのファストフードやカラオケに立ち寄る中、高校二年生のわたし−−高橋恭子は、小学生の頃からの馴染みの回転焼き屋に足しげく通っていた。
 メインはたこ焼きの屋台だけど、わたしは・・・

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春は別れの季節でしょう

17/04/11 コメント:0件 黒丞

「あなたとはもう一緒にいられないわ…。」
青天の霹靂。とは、まさにこのことで、小春日和の突き抜けるような青空が眩しい今日、彼女から言い渡されたのは突然の別れだった。
「どうして?」
ぼくは彼女が出してくれた、いちごがちょこんと座るショートケーキをフォークで突きながら聞き返した。
「……そういうところよ。」
どういうところだよ。「そういうところ」が気に入らないのはわかっ・・・

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飴玉1つでみた地獄

17/04/11 コメント:0件 ちほ

 高校2年生ともなれば、学校生活にも慣れ余裕が出てくる。1時間目が始まるほんの少し前、私は制服のポケットに手を入れて、そこにコーラの飴が1つ入っていることに気がついた。1つ20円で売っている大きな飴だ。昨日、ゆりちゃんにもらった。食べてしまおうか? うん、口に入れておけば先生にはばれないって。ポケットの中で包み紙をゴソゴソと取ってしまう。先生がガラリとドアを開けたと同時に、口の中へ放り込む。

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プリンアラモード

17/04/11 コメント:0件 林一

 五歳の翔君は、おじいちゃんに連れられて、遊びに出掛けた。
 最初に翔君達が出掛けたたのは、ファミレスだ。翔君は、ファミレスに行くのは初めてだった。
「翔君、何でも好きな物を頼んでいいよ」
(うーん、どれにしようかな。このプリンアラモードって何だろう? プリンは知ってるけど、アラモードって一体何なのかな? よくわかんないけど、普通のプリンよりすごそうだぞ。よし、これに決めた)

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スイートルーム

17/04/10 コメント:0件 林一

 新入社員の俺は、生まれて初めてもらった給料で、憧れのスイートルームに泊まることにした。
 スイートルームに泊まるからには、それにふさわしい格好にしようと、全身ビシッとスーツで決め、少し緊張しながらチェックインを済ませた。
 部屋に入ると、ほんのりと甘い香りがした。さすがスイートルームだ。部屋の匂いにまで気を使っているんだな。
 部屋の中には、大きなふかふかのベッド、オシャレな照・・・

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グミチョコ

17/04/10 コメント:0件 林一

 大手お菓子会社の商品開発研究所で働いていたグレイ氏は、ついに長年の夢であった新商品の開発に成功した。その名もグミチョコ。
 このグミチョコは、既に商品化されている、チョコレートでコーティングされたグミのお菓子や、グミでコーティングされたチョコレートのお菓子とは訳が違う。
 このグミチョコは、正真正銘のチョコレートでありながら、グミの食感を完全に再現しているという、世界初の画期的なお菓・・・

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星空パティシエ

17/04/10 コメント:0件 七瀬

 ある町に仲の良い兄弟がいました。長男でしっかり者のビスキュイ、長女で控えめなガトー、そして元気が取り柄の末っ子フレジエの三人です。
 ある夜、甘いものが食べたいというフレジエのために、ビスキュイがお菓子を作ってあげることになりました。三人は風邪をひかないよう厚手の手袋とマフラーをし、怪我をしないよう動きやすい靴を履いて外に出ました。
「さあ、今から山に登るよ。ガトー、フレジエ、迷子に・・・

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甘辛戦争

17/04/10 コメント:0件 氷室 エヌ

「……お前、意外とよく食うな」
「甘いものは私の原動力ですので」
 後輩は俺の皮肉を気にせず、ぱくぱくと目の前のショートケーキを片付けていく。
 二人で訪れたスイーツバイキング。広い店の中心にはうず高くケーキやマカロンが積み上げられており、傍らにはチョコレートフォンデュの機械が設置してある。見ているだけで胃がもたれてきそうな風景だが、女の子にはそれらが宝の山に見えるらしい。女性客・・・

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ターンオーバ

17/04/10 コメント:0件 むろいち

 昼ごはんは弁当を作り、水筒も持参している。
 上司から誘われる飲み会には行くが、基本的に割り勘なので「もったいないな」と思いながら参加している。
 このように節約、倹約を信条としながら、月に一度、給料日にケーキを買っている。
 しかも1ピースだけ。
 自分としては高価な買い物。
 だって、それだけではお腹が満たされるわけではないのに、牛丼を食べられるくらいの値段がす・・・

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大砂漠のマカロンタワー

17/04/10 コメント:2件 ちりぬるを

 彼がまず思ったのは国外でも仕事があるのかということで、続いて思ったのは面倒くさいなということだった。
 人間の願いを叶える天使というのが彼の仕事だった。仕事の内容としてはいつも通りだが、ただ一つ違うのは場所がアメリカ中部の砂漠のど真ん中であることだ。なぜそんなところに日本人が? 彼は少し戸惑いながら背中の羽根をパタパタさせ始めた。

 砂丘に朝日が昇る。東の空が鮮やかなオレンジ・・・

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最後の甘味倶楽部

17/04/10 コメント:0件 風宮 雅俊

 そのお店、丸の内のどこかのビルにあるらしい。ある者は屋上にある店だと言う。ある者は地下にある店だと言う。どちらが本当なのか、そもそもお店があるのか噂以上の事を知っている者はいなかった。
 そのお店には、こんな噂も流れている。
 女人禁制の会員倶楽部で同伴も許されない。勿論、ウエイトレスなぞ一人もいない。全てウエイターだけだ。何故なら女人禁制だからだ。
 会員になる条件は、臭わな・・・

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からっぽシュークリーム

17/04/10 コメント:2件 家永真早

 生まれた時から、私は君といつも一緒だった。泣いて、母に抱き上げられる君を私は見ていた。母の温もりに触れると、君は笑った。
 私は泣き虫で、君も泣き虫で、それでもいつも君だけが慰められていた。君だけが頭を撫でられ抱きしめられていた。だが、母と父の温かい言葉は私に届いていた。
 十歳の頃、初めて恋をした。私が彼女を好きだった。しかし彼女と話すのは君で、運動会のフォークダンスで彼女と手を繋・・・

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