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第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】

今回のテーマは【浦島太郎】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2017/05/22

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2017/03/27〜2017/04/24
投稿数 75 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評 前回の電車に続き、全体的な底上げが実感されるコンテストでした。限定的で話を広げにくいお題かと思いきや、ほとんどの作品がある程度のクオリティに仕上がっており、皆さん頑張りが感じられました。現代と絡めたストーリーがもっと多いかと思ったのですが、浦島伝説の時代設定はそのままに、脇役たちを主役にしたサイドストーリー的な話が多かったですね。また玉手箱に関する解釈も様々でした。浦島伝説の不条理感漂う結末のために、バラ色で空想的な内容ではない深みのある洞察が生まれやすかったのかもしれませんね。最終選考の『「乙姫」と「儀式」』は、子孫繁栄のための義務と感情の間で葛藤する乙姫の姿が印象的でした。浦島の幻影はこれからも彼女を苦しめることになるのでしょう。『あの一言が…』はやはりラストのオチが効いていますね。確かにこれでは恨まれても仕方ないかもしれません。シンプルな文体がストーリーとマッチしていたと思います。『うらしま女子』は、30歳を目前にした女性の葛藤がリアルでした。たしかに学生時代優秀だった人よりも、地元で地道に生きる人の方が結果的にうまくいくケースは多い気がします。地元組にもそれなりに内面的な葛藤はあるのでしょうけれど……。都会や学歴の幻影が崩れた後、新たな価値観の中で彼女はどう生きるのでしょうか。『とある名門私立幼稚園のお遊戯会』は、親のエゴとさらにそれを上回る子供のしたたかさがコミカルかつ風刺的に描かれていました。皆横並びで個人の意思を重んじる建前と、他人を蹴落賭さねばならない受験という現実の矛盾は、ある意味コメディなのかもしれません。『時の流れに身を任せ……るべきか否か』は、玉手箱の謎に対する解釈に独自性がありました。確かに未来や過去のことばかりを考え心配や後悔が増えると余計に老化が早まりそうではありますね。また動物などにも時間の概念などないでしょうから、そうした意味では時間とは「儚い幻想」と見ることはできるかもしれませんね。次回も期待しています。

入賞した作品

5

待ち人

17/04/24 コメント:8件 日向 葵

 その老婆は海に向かってゴミを投げていた。遠目から察するに、それは丸められた紙片のように見える。漁師である私にとって、老婆のその行為はとても許せるものではなかった。「海にゴミを投げ入れるのはよしなさい」と咎めれば良いのだが、老婆があまりにも汚らしく、およそ常人とは思えぬ風貌であったので、私は声をかけるのを躊躇っていた。しかし、このまま放置しておくわけにもいかず、意を決して老婆の元へと歩を進めた。<・・・

10

遠い未来のトロイメライ。

17/04/24 コメント:10件 滝沢朱音

 銀色の車体は、まるで息継ぎをするかのように浮上した。窓から春の自然光が注がれ、車内の照明が消える。都心のターミナルからしばらく地面の下を這い進むこの路線は、郊外で闇を抜け、地上駅を北へと辿る。恵はほっと一息ついた。
『デパートにでも行っておいで。孝は俺が見ておくから』
 朝、珍しく夫がかけてくれた言葉を反芻する。育児疲れの妻を心配したのだろう。その優しさに甘え、恵は久しぶりにきちんと・・・

2

夏、カマキリ浦島とロンリー亀

17/04/20 コメント:2件 秋 ひのこ

 香川県の北西、瀬戸内海に突き出た荘内半島のとある中学。二年の春に東京から若林という転校生がやってきた。
 讃岐の方言も田舎生活も見下し、いつも冷めた目で一匹狼を気取るため、夏休みを迎えた今も友だちはひとりもいない。

 全身から湯気が昇るほど酷暑の午後、若林はいつもの場所に赴く。
 鴨之越。
 穏やかな瀬戸内の海と、こんもり緑に覆われた丸山島を望むここは、童話『浦島・・・

5

竜宮の亀

17/04/16 コメント:9件 待井小雨

 夏の日差しが射すアスファルトの路上に、亀が引っくり返っている。
 海は遠く、近くに水場は無い。子供の悪戯だろうかと、俺は掌ほどの大きさの亀に歩み寄った。
「大丈夫か」
 車通りのない道だから轢かれる事はあるまいが、そのままにしておく気にはなれなかった。
「やめて下さい」
 手を触れる寸前、当の亀から声が上がった。
「助けないで下さい。私にどうか、触れないで下さ・・・

3

帰ってきたタロー

17/03/27 コメント:4件 W・アーム・スープレックス

 タローは亀に乗せられ、竜宮城をあとにした。
 美しさとかわいさを兼ねそろえた類稀な女性乙姫と過ごした、夢のような幸せな毎日が、頭のなかを繰り返し去来した。
 魚たちが陽気に明るく舞い踊るそのけなげでサービス精神満点の姿に心から癒され、そのうえ、女の魅力のすべてをさらけだして尽くしてくれる乙姫がつねにそばにいてくれるのだから、ままならない浮世の苦労や人生の悩みがたちまち雲散霧消して、時・・・

5

浦島太郎の怨返し

17/03/27 コメント:2件 風宮 雅俊

 竜宮城での三日三晩の宴を終え村に戻った太郎は、乙姫から貰った玉手箱を脇に抱え亀に告げた。
「当たり前の事をしただけなのに、楽しいひと時を過ごす事が出来ました。でも、亀さん今度は助けなくても良い様に、子供たちには用心して下さい」
「太郎さん、ありがとうございます。これからの事も心配してもらい、ホント良い人に助けて貰って感謝の言葉もありません」
 お互いに深々とお辞儀をすると、太郎・・・

最終選考作品

1

『乙姫』と『儀式』

17/04/24 コメント:2件 光石七

 部屋に響く赤子の泣き声の三重奏。八度目の『儀式』も実を結び、私は安堵した。いきみ続けた体はもう指一本動かすのも億劫だ。
「乙姫様、お疲れ様でございました。当分ゆっくりなさって下さいませ」
 二名の世話係のみを残し、侍女たちが退出していく。生まれたばかりの三つ子もそれぞれ乳母に抱かれて出ていく。私は子供の養育には関与しない。それは『乙姫』の役目ではないからだ。
 海中に暮らすわが・・・

3

あの一言が…

17/04/12 コメント:4件 末永 DADA

その男は、海辺の大きな岩の上で黒い漆塗りの箱を前にして呆然と座っていた。
何が起こったのか、まったく思い出せなかった。自分が何者なのか。なぜ、こんなところにいるのか。目の前にある箱はいったい何なのか。
箱の中を見たが、何も入っていない。
彼は海に自分の姿を映してみた。白髭の老人だ。
彼はその姿を見てショックを受けた。
自分はこんな年寄りではない。若者のはずだ。自分の素・・・

2

うらしま女子

17/04/10 コメント:3件 こあら

大学進学で上京し十年、一度も帰らなかった故郷へ私は戻って来た。降り立った駅は記憶の中のものより新しい、改装したのだろう。
もう来年で三十。東京で一人暮らしを続けるのは疲れてしまった。

「美咲は東京でOLさんやっとったんかね、えーね。学歴もあるしエリートさんじゃが」
駅でばったり会ってしまった同級生の由里はそう言ってくれたが、実際は暮らしていくのがやっとだった。
大学・・・

6

とある名門私立幼稚園のお遊戯会

17/04/02 コメント:13件 浅月庵

 あんず組の合唱が終わり、次はすもも組の劇が始まる。
 私の娘たちの出し物は“浦島太郎”の劇だ。子どもたちが元気良く演技するのを、その場の誰もが楽しみにしていた。

 ただ蓋を開けてみると、浦島太郎役が……十二人もいる。その内の一人タイガくんの姿が、ステージの端で少し見切れていた。

「主役だっていうから張り切って見に来たのに」
 私の隣に座るケンゴくんママが、・・・

3

時の流れに身をまかせ……るべきか否か

17/03/27 コメント:4件 まー

「まさか老人になってしまうとはな……」
 浦島太郎はそんな愚痴を呟きながら町に戻った。しかし町に昔の面影はなく、自分が住んでいた場所さえ跡形も無くなっていた。
 どうしたものかと混乱する中、町の広場では何やら民衆がガヤガヤと騒いでいる。太郎は引き寄せられるようにそちらへ行ってみた。
 人だかりの中心では白髪の美しい少女がわら敷きの上で正座していた。盲目なのか少女の両目は膜がかかっ・・・

投稿済みの記事一覧

2

軍師 浦島太郎

17/04/24 コメント:0件 土地神

 亀は、悔いていた。あの男に助けなぞ求めなければ……いや、いっそあのとき自分が悪童どもに殺されていれば……そう嘆くことすらあった。

「お助けくだされ」
 悪童らの理不尽な暴行に、亀が街道へ投げかけた声に応えたのは、隻眼に黒眼帯の侍だった。
「よかろう。では一番体の大きな奴の目を砂で潰し、足をはらえ」
 亀は侍の指示に従って決死の形相でヒレをかき、白浜の砂を巻き上げた・・・

1

浦島太郎の哀しみ

17/04/24 コメント:0件 木野 道々草

 日が昇る頃、浦島太郎はひとり浜に座り、海の波打ち際を見ていた。大きな亀が浜に上がったが、彼が見たのは波だけだった。
 彼には昔、夫婦になろうと誓い合った娘がいた。しかし親たち周囲の者が認めなかった。耐え難い思いが増して溢れると、二人は抱き合う体を紐で結び、一つとなって海に向かった。ともに海に住めると信じたが、彼だけ浜に返された。
 彼は老いることを忘れた。月日が経ち、村に娘を知る者が・・・

2

もどってきた男

17/04/24 コメント:2件 泡沫恋歌

ネット上で自分のことを浦島太郎だと流布する男がいた。
おとぎ話のキャラに成りすまして、どんなメリットがあるのだろうか。――まず、そこが気になった。
どうせ成りすますなら、もっと歴史上の偉人とか、有名人の名を騙るとかあるだろう。
だが、その男はTwitterやFacebookで自分が浦島太郎だとアピールしているのだから、ただのバカなのか?
どんな奴なのか見てみたいと、Twit・・・

1

【エッセイ】竜宮城の春の夢

17/04/24 コメント:1件 冬垣ひなた

 我が家の近くの川を、ちょっと川上の方に自転車で走ってみると、洒落た吊り橋が架かっているのが見える。鉄筋コンクリート製の造りに、アーチ状の装飾を施された白い主塔がお城のような『玉手橋』、その橋の向こうにあった『玉手山遊園地』は、幼い私の聖地であった。
 今は遊園地はなく、夢の跡地には公園が残る。昔はとても遠い場所に思えたのに、こんなに近くにいられるのは郊外の現在の家に引っ越ししたためだが、そ・・・

2

安眠玉手箱

17/04/24 コメント:3件 そらの珊瑚

「じーじ、うらしまたろー、よんでー」
 三才になったばかりの孫のえんじぇるが、今夜もお気に入りの浦島太郎の絵本を持って来た。
「愛」と書いて「えんじぇる」と読む。
 どこでどんな変換をしたらそういう読み方になるのか、わしにはさっぱり分からない。が、可愛いのでよしとしよう。
「はいはい、よんであげようね。えんじぇるちゃん」
 えんじぇるは、絵本を片手に、わしのベッドにも・・・

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世界に誇れる美しい国

17/04/24 コメント:0件 OSM

 2011年3月11日の午後三時前、日ノ本大和が海岸に足を運ぶと、波打ち際で模範的一般市民たちが亀井三姉妹に暴行を加えていました。
 日ノ本大和は慄然としました。亀井三姉妹は傑出した実力を持つ拳闘選手ですが、人の眉をひそめさせるような発言をたびたびしました。ですから、彼女たちを快く思っていない人間は大勢いるのですが、まさか彼女たちに暴行を加える者がいるとは思ってもみませんでした。
 日・・・

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帰ってきたよ、修羅の国

17/04/24 コメント:0件 小高まあな

 一年ぶりに戻った職場は、私の知っている場所ではなかった。
「え、席ここなんだ?」
「あ、そうなんですよー! めっちゃ窓際ですよ」
 同僚が笑う。
 産休明けの職場は席替えが行われていた。個人が移動しただけじゃない。チームの島ごと移動していた。壁際から窓際へ。こんな大移動、めんどくさかったろうに。
「まあ、席替え一回じゃないですけどね」
「え?」
「飯田さ・・・

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浜辺のうた

17/04/24 コメント:0件 宮下 倖

 たまたまつけたカーラジオから「浜辺の歌」が流れてきた。途端に懐かしくもどこかせつない感情が胸の中に渦巻く。歌や匂いは想い出を引き寄せると言うけれどその通りだ。
 煙草を灰皿に押し込みハンドルをきった僕は、ゆっくりと子どもの頃のことを思い出す。

 僕は海辺の町で育った。海水浴客を多く呼ぶほどではないが、きれいな砂浜が続く町だ。 
 その浜に「ウラシマさん」がいた。
・・・

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キャバクラ竜宮城

17/04/23 コメント:0件 欽ちゃん

今日も終電で帰宅
この時間になると駅前の商店街もひっそりと静まり返り、足音だけが響く
30歳にもなって出会いなんて全くない独り者
最近は仕事の疲れのせいか俯くばかりで猫背がひどくなった
ふと顔を上げると商店街のシャッターの前でうずくまる人が目に入った
んー、どうしようか
正直めんどくさい。帰って早くプシュっと自分と乾杯したい
いや、しかし、もし商店街に隠し・・・

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浦島殺人事件の真相

17/04/23 コメント:0件 解場繭砥

 単純な思考実験ですが、たとえばあなたがボートに乗っていると思ってください。そのボートがいきなり沈没しました。どうするでしょうか。
 当然、慌てますね。手足をばたばたさせてもがくでしょう。結局は沈まないように何とか頑張るでしょう。泳げない人は水を吸ってその場で死ぬかもしれませんが、漁師ともなればすぐに泳いでしまって水面に留まってしまいます。
 であれば、この話は当然裏を読み解く必要があ・・・

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ようこそ竜宮城へ

17/04/23 コメント:2件 みや

昔話の浦島太郎が亀に連れられて訪れた海の中にある竜宮城は、鯛やヒラメが舞い踊る絵にも描けない美しさだというー

そんな夢の様な竜宮城が、現代で実際に建築される運びとなった。現実問題として人間は水の中では呼吸する事が不可能なので、現代の竜宮城は海外の巨大な古い潜水艦を利用して造られた。全長約二百メートル、最大水深約四百メートル、乗員定数約二百名のその大きな竜宮城の中には様々な夢の様な施設・・・

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そして物語は昔話と相成った

17/04/23 コメント:0件 しーた

「海の底には竜宮城があるんだぜ」
 おい知ってるか、と前置いて、男がそう話しかけてきた。なんとなく海辺を散歩していたところだったのに、嫌なやつに会ってしまった。
「そこには美味しい食べ物がたらふくあって、綺麗なお姫様がいて、まさに夢の国なんだってよ」
 男は行ったこともないその場所に思いを馳せ、遠い目をしている。この隙に逃げてしまおうかとも思うが、きっとこいつは走るのが速いのだ。・・・

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プリーズ! 玉手箱

17/04/23 コメント:2件 そらの珊瑚

 瞼を開ける。光、光、光。あまりのまぶしさに、目を閉じる。頭の奥がじんじんする。再びこのま眠ってしまおうか。けれど練習に遅刻してしまう。オリンピックに出られなくていいのか? 夢。水泳でオリンピックに出る事。だけど最近記録は伸びない。「もう、いいよ。おまえ、くたくたじゃないか、ゆっくり休めよ」と心のどこからか声がする。そして「だめだ、起きろ」というもう一人の自分とせめぎ合う。現実の辛さから逃げるの・・・

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浦島太郎

17/04/23 コメント:0件 つけもン

冷たい床、タイル張り。
白い壁、壁にもたれつづける僕。
狭いなかに、飽和するメチルアルコールの匂い。
「もう助からない」と誰かが呟いた。それを聞いても、もう何も感じない。目をつぶって思い出す君の後ろ姿、あの声、どんな服きてたかまでは、もう忘れちまった。心臓は動いたまま、歩きつづける。君が死んだら、僕も諦めがつくだろうか。そんなことを思い続けて、もう2ヶ月たった。

未・・・

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都会からきた女

17/04/22 コメント:0件 つつい つつ

 マリーの葬儀は教会でしめやかに行われた。70年の生涯だった。たくさんの村人が参列し、皆、マリーの生前の温厚で穏やかな人柄を偲び花をたむけた。そんな中、一人の女が教会にやってきた。
「あの女なにしに来たんだ」
 皆がポカンとしながら不審な目で見る中、ボブやアーロンなどはあからさまに顔をしかめ、その女を睨みつけた。
 その女が村はずれに住み始めたのは、ちょうど1年くらい前だった。都・・・

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竜宮異聞

17/04/22 コメント:0件 藤光


 丹後国浦島の浜にその人を見初めたのは、むしろ乙姫の方だったという。「地上に姿を見せてはならぬ」という戒めにもかかわらず、亀に姿を変えて陸の上を窺ったのも、一目その美しい若者を見たいとの思いからだった。
 浜に姿を現した乙姫は、たちまち子供たちに捕えられた。困り果てているところを救ってくれたのが、思い焦がれた若者――太郎であったので、乙姫の想いは一層強くなったのである。
「人の・・・

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ただ珍しく面白く 月日の経つのも夢のうち

17/04/21 コメント:0件 ツチフル

 本来、皇女(みこ)の世話は平女たちの役目だが、いつも同じ顔ばかりでつまらぬと仰るので、しばらく華女が務めることになった。
 三月に及ぶ乙姫の親閲に付き添い、ようやく暇がでたと思った矢先のことである。
 華女がため息をつくのも無理はない。

 さて。世話と言っても、今年で十になる皇女は大抵のことをご自分でなさるので、華女の役目は皇女の退屈しのぎの相手を務めることである。

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恋の泡沫

17/04/21 コメント:0件 かめかめ

 宝物庫の管理者になって数百年が経った。ヒラメは今日も重い閂を外して宝物庫に入る。閂などかけなくとも竜宮城に乙姫の宝物を盗むようなやからはいない。城にいるのは鯛やヒラメ、ウミガメ、ヒトデ、どれも乙姫に忠実だ。ヒラメも金銀珊瑚に興味などなかった。竜宮城に太郎がやってくる、その時までは。
 竜宮城の中でウミガメは特殊な存在だ。乙姫の使いで陸にある珍しいものを蒐集する任にあり、定期的に陸に上がる。・・・

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世捨て人ツアー

17/04/21 コメント:0件 本宮晃樹

〈世捨て人ツアー〉参加者一挙大募集!
 いまの地球に嫌気が差していませんか? 百十億人を突破した信じられないほどの人口密度、タキオン通信によって過剰に加速するビジネスシーン、はびこる遺伝子組み換え作物、世界中で起きている戦争。
〈世捨て人ツアー〉はタキオン駆動船〈トライアンフ〉(合衆国退役艦払い下げ品)に搭乗していただき、相対論的効果によってまだ見ぬ未来へ一足飛びにお客さまをご案内する・・・

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キャバクラ『竜宮城』

17/04/21 コメント:0件 安藤みつき

夜に妖しく光るネオン街に、姫様は一件のキャバクラを開店させた。
その名も『竜宮城』、なんの捻りもない。だが、ストレートな名前のほうがあの男は気が付くだろう。
『竜宮城』の開店までに、多くの時間とお金を使い苦労はしたが、始めてみればあっという間に人間の男どもで一杯になった。
どうやら、うちの人魚たちは、人間から見たら、それはそれは美しい娘に見えるようだ。
亀の私にはよくわから・・・

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嘘つき太郎と名主の娘

17/04/20 コメント:2件 吉岡 幸一

 あれからどれほど月日が流れただろう。
 竜宮城から戻ってきて以来、浦島太郎は毎日朝日がのぼり日も落ちるまで海を眺め続けていた。
 雨の日は傘を差し、雪の日はぼろ布をまとい、夏の日は裸で砂浜に座っていた。海風で白髪は擦り切れ、あご髭も千切れ、日焼けした顔は表情もわからないくらいだった。
 ただ海を一日中ながめている老人を村の人々は気味悪がって近寄ってこなかった。
 行方不明・・・

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玉手箱があればいいのにね

17/04/18 コメント:0件 森伸

「浦島太郎みたい」
家に帰ってきた母が言った。母は末期の乳癌だった。抗がん剤による治療がうまく行って、一時的に症状が小康状態になってので、帰宅することを許されたのだ。ふっくらとしていた頬は削げて、骨が飛び出している。髪は抗がん剤の副作用でほとんど抜けていた。
目だけが昔のままだ。茶目っ気を秘めて、きらきらしている。
離婚して実家に帰ってきた私は仕事をしながら、母と一緒に父の介護を・・・

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夢のように美しい世界

17/04/17 コメント:0件 ルリ

誰もが一度は君を夢見るけど、実現してはいけないことなんだ。顔も思い出せない、いつだったか来た人は、そう言った。その人が私のところへ来ていた頃、私にはその意味は分からなかった。何もかもが満たされていると、錯覚していた。

いつから私が存在しているのかなんて、私の方が分からない。もしかしたら夢の中を延々とさまよっているだけなのかもしれない。夢のように美しい、私が望めば望んだ通りの世界が広が・・・

5

46島太郎

17/04/16 コメント:3件 笹岡 拓也

「浦島太郎って知ってる?」
「そりゃ知ってるよ!亀を助けて竜宮城に行って玉手箱貰っておじいさんになった〜って昔話の」
「そうそう!でもね!浦島太郎以外にも島太郎はいっぱいいるんだよ!」
「えっ!いっぱいいるの!ってか浦島太郎って浦が苗字で島太郎って名前なの!」
「そうだよ?そんな島太郎を確認してみようよ!全部で46島太郎いるんだから!」

あらしまたろう
・・・

0

真・浦島物語

17/04/16 コメント:0件 雲取哲人

 竜宮城での豪奢な一時を過ごした太郎は、皆に別れを告げて今助けた亀に乗って家路を辿るところ。
「しかし亀よ、なぜ乙姫はワシにあのような箱を渡したのじゃろ? それも絶対に開けてはならぬとは全くもって解せぬ。開けるなと言われればかえって開けたくなるのが人情。振っても物音一つしないのでなおさら気になる。今ここで開けてしまうかの?」
「太郎様、それはなりませぬ! 確かに開けるなという物をわざわ・・・

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兄と妹

17/04/16 コメント:0件 イルカ

 久しぶりに実家に帰った。大学を卒業し就職して三年になる。もう三年も帰っていないのかと時の経つ速さに、驚い   た。
 飛行機に乗り、それから電車で五時間、地方の中堅都市が実家のあるところだ。
 実家には、両親と一歳年下の妹が住んでいる。
 夕方着くと、母は、ご馳走を用意してくれていた。久しぶりに家族での夕食だ。
 テーブルに着いて妹を見ると、僕の知っている妹と別人だ。高校・・・

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竜宮城

17/04/16 コメント:0件 

 沖縄というところは、時間がゆっくり流れているという。
 沖縄には踏み切りがたった一つしかないらしい。島にたった一つの自動車教習所の中にしかないらしい。そもそも電車が通っていないのだ。電車がないというだけで、人間はせかせかしないのだろうなと想像できる。


 前に大学の近くの沖縄料理店に友達三人と行ったとき、みんなで沖縄そばを食べた。中に入っていた角煮のような肉が口の中でと・・・

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ウラジミールの冒険第一章

17/04/15 コメント:0件 比些志

ウラジミールとモモターリョとヒューミーコの幼なじみの三人は、多くの十代の仲間たちと凍眠カプセルに入ることを志願した。

地球は氷河期になり、人類が海底に移住してから千年ちかくがたつ。しかし、人口が増え、これ以上海底都市を拡張することがいよいよ難しくなり、やむをえず人口調整をすることになった。その対策のひとつが、若い人間を氷山の中で眠らせ、氷河期が終わるころに再生させるというものだった。・・・

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それでも人は

17/04/14 コメント:0件 山盛りポテト

郵便ポストにねじこまれた朝刊を取り出すと、ヤカンに火をかけお湯を沸かした。
これが私の日課にだ。
時計に目をやると10時を少し回っていた。定年を迎え退職してからは、最初はとても貴重だと思えた、のんびりと迎える朝の時間が退屈で仕方なくなっていた。
息子二人は大学進学を機に家を出て、その後就職、ローンを組んで買った一戸建ては、妻と二人で暮らすには少々広く、さびしさが感じられた。

1

或る亀の話

17/04/12 コメント:0件 柳川穂太郎


 もし、そこのお方。どうか私めのおとぎ話をひとつ聞いてはいただけませぬか。
 いえ、いえ。お代は一切いただきませぬ。ただ、私めの話を聞いていただきたいだけにございます。
 或る男の話を致しましょう。もしかしたら、小耳に挟んだことがあるやもしれませぬ。

 かの人は果敢な男でありました。それと同時に、心優しい若者でございました。深海より参った海亀を、いたずら好きな子供・・・

3

『たまらん箱』がもたらしたもの

17/04/11 コメント:6件 霜月秋介

 高校三年の浦須間太朗は、友人を自室に招き入れて雑談していた。
「お前の部屋、ゲームもなければテレビも無いし、つまらねえな。そろそろ帰るわ」
 そう言い放って帰ろうとする友人に、太朗はとっさに「危ない!」と叫んだ。友人の足元に、カメムシが這っているのに気付いたのだ。太朗の呼びかけにより、なんとか友人はカメムシを踏まずに済んだ。

 その夜。寝ている太朗の枕元に、一匹のカメム・・・

1

浦島町の夢子さん

17/04/11 コメント:0件 茉莉花

 僕が夢子に出会ったのは、アルバイト先のコンビニだった。
突然、店に現れた夢子は店内に入ってきて早々こう言った。
「すみません、雇ってもらえませんか?」
別に求人を出しているわけでもないのに、変なこと言うなぁと思ったけど、店長は涼しい顔をしてこう言った。
「丁度求人を出さなきゃなぁと思ってたところだったんだよ。昨日、1人バイトの子が辞めるって言いだしてね。グットタイミングだ・・・

4

竜宮の乙姫

17/04/11 コメント:2件 秋 ひのこ

「また、帰ってしまわれましたね」
 陸に帰った浦島太郎を共に見送ったヒラメが言った。
 連れてきても連れてきても、男は皆帰ってしまう。
 乙姫はきびすを返し奥へと戻る。
 客がいなくなった竜宮城は広いだけでひっそりと静まり返っている。一日中何をしてもよい反面、取り立ててやることもないのが、城の主である乙姫の日常だ。
 機嫌が悪い乙姫の後を慌てて追い、タイが進言した。<・・・

0

仰向けのカメ

17/04/11 コメント:0件 十文字兄人

 釣りをしようと青年が浜辺に向かった時の話です。

 ふと海岸沿いに目をやると、小ぶりな岩が不自然な場所に転がっているのを青年は見つけました。
 その岩に近づくと、どうやらそれは岩ではなく、一匹のカメでした。しかもそのカメは、仰向けになっていたのです。
 もしかしてと、恐る恐る青年が近づくとカメが言葉を発しました。

「余計なお世話だよ」

 岩がし・・・

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刻の玉手箱

17/04/09 コメント:0件 溶石こゆき

 うだるような暑さの続く夏の日、僕はこの町に戻ってきた。毎年恒例の同窓会。いちいち戻ってくるのは大変だから、いっそこの町で仕事をしようかとも思ったが、都会慣れした身体がそれを拒んだからやめた。年に一度、それくらいがちょうどいいのだ。
同窓会の開始まで僕は辺りを散歩することにした。夕方の六時。部活の終了を知らせる放送が中学校から聞こえてくる。
 この町はずっと変わらない。近所のたばこ屋も・・・

1

時空を越えたモノガタリ

17/04/07 コメント:0件 ぴっぴ

「いやー あん時はたまげたべ」
聴衆からどよめきが漏れると同時に、報道カメラのストロボが激しくたかれた。
世界タイムトラベラーズ・サミットが10年ぶりに幕張メッセで行なわれていて、浦島太郎は日本最古のタイムトラベラーのパネリストとして壇上でスピーチしていた。
数人のパネリスト達の生の声を聞こうとタイムトラベル物を書こうとする作家や、映画監督、評論家などで会場は程よい緊張感に満ちて・・・

1

なぜ浦島太郎は玉手箱を開けるハメになったか

17/04/07 コメント:2件 海見みみみ

 一学期の終わり。
 この海の見える町から、引越しする家族がいました。その家族の長女、小学生のマナミは同級生の男の子、カケルに一枚の紙切れを渡します。
「これ、わたしのLINEのID。連絡、待ってるから」
 そう言ってマナミはこの町から引っ越していきました。
「バーカ」
 しかしカケルは素直になれず、その紙切れをズボンのポケットに突っ込みました。

 それ・・・

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表と裏

17/04/07 コメント:0件 かわ珠

 海岸に一人の男が倒れている。白い髪に、長く伸びた白い髭。そのすぐ脇には豪奢な箱が落ちている。
 男の名は浦島太郎。
 浦島太郎は頬と両腕に砂の感触を感じながら、何故こうなってしまったのだ、と自問していた。
 私はただ亀を助けただけだ。そのお礼に、と竜宮城に案内され、ほんの数日楽園でのひと時を満喫しただけなのに、どうしてこんなにも残酷な仕打ちを受けなければいけないのか。あの時、亀・・・

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浦島007

17/04/06 コメント:0件 かいわれ

浦島は亀の背に乗って元の時代に帰ると、自分の家はどころか世間がすっかり変わっていた。。
竜宮で過ごしているうちに、何十年も経っていたのだ。浦島はほとほと困り果てた。
元の時代に戻りたい。どうすればいいのか。
「困った。そうだ」
浦島は、乙姫さまに貰った玉手箱のことを思い出した。
「これで元に戻るのかも」
浦島は玉手箱を開けた。みるみる老人の姿になる。
これ・・・

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約束を破った僕を見て、君は笑ってくれるだろうか

17/04/05 コメント:0件 水月 鳴

海斗は、一つの手の平サイズのプレゼントボックスをじっと見つめてみる。白い紙の箱に、赤いリボン。赤いリボンの両端にはキラリと綺麗な金色のデザインがあしらわれている。光沢のない赤いリボンに金だけが輝く。どうやらその金の中にはラメも織り込まれているらしかった。典型的な「プレゼント」だ。中でも、クリスマスにでも贈られそうな。だが、今はクリスマスなどというロマンチックな季節からは程遠い。冷たい雪の代わりにじ・・・

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twitterリレー小説、「浦島太郎」

17/04/05 コメント:0件 むねすけ

 時空モノガタリ、テーマ「浦島太郎」のアイデア出しで行き詰った僕は学芸員の彼女に助けを求める。恐竜の説明ばかりしていないで、僕の小説執筆を助けてくれないか。twitterでリレー小説をやりたいんだ。前後に書き足したいから全部で十一回。僕が始めて僕で終わる。ハッシュタグに浦島リレーと付けること。
 彼女は「賞金五千円もらったって言ってたアレ?賞金全部くれるならいいわよ」と、了承してくれた。全部・・・

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乙姫の玉手箱

17/04/04 コメント:0件 深海映

 清らかな朝日に目を細め、老人は海を見つめていた。
 傍らには錆びついた古い釣り道具。白く染まった髪を潮風になびかせ、よく焼けた肌を日光にさらし、微動だにせず岸壁に佇むその様は、まるで彫刻のよう。私は思わず足を止め、老人に声をかけた。

「釣れますか?」
老人は静かな波間を見つめたまま首を横に振る。
「釣りに来ているのではない」
「ではなぜここに? 散歩ですか?・・・

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自己承認欲求

17/04/03 コメント:0件 KEN

 両親が殺されてから5年が経った。犯行当日の雷雨により、血の海と化した家の前には、今でも命日に多くの花が添えられる。通り魔的犯行であり、犯人に繋がる証拠はない。捜査は難航し、世間の同情が僕に注がれた。しかし、僕は犯人を知っている。明日は命日。復讐を決行する時だ
 この1カ月、対象者の人間関係・生活リズムを全て調べあげた。対象者の名前は羽道龍之介。両親はすでに他界しており、妻と高校生の娘が1人・・・

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タマテバコタバコデストロイ

17/04/01 コメント:9件 浅月庵

 寂れた喫茶店に、僕とAさんの二人。革張りのソファ椅子に座り、向かい合っていた。
 テーブルの上に置かれたコーヒーカップから立ち昇る湯気は、すぐにAさんの煙草の煙に邪魔される。香ばしいコーヒー豆の香りも同様に。

「実際にあったことを、そのまま話していただければ問題ありません」
 Aさんは、僕の作った“ネットニュース! 夫婦の修羅場5連発”の資料に目を通し、困った表情を浮か・・・

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コードネームではありません

17/04/01 コメント:0件 むねすけ

 2220年、地球は人類滅亡の危機に陥っていた。終焉の始まりは一匹の鳩だった。皮肉なことだ。平和の象徴たる鳩。オリンピックの開会式で空に放たれるあの鳥が、人類を滅ぼすことになるとは。
 一匹の鳩から突然変異的に生じたとしか判然としない謎のウィルスは空気を伝いなぜか人間だけに感染し、寿命を奪い去った。感染してからその個体に残されていた余命の丁度百分の一の日数で死に至る。研究によってそこまでつき・・・

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玉手箱に詰まっていたもの

17/04/01 コメント:2件 上木成美

病室には春を告げる暖かい光が差し込み、幸は座ったままうとうとしていた。ベッドで横になっている幸の夫、一生も先程から眠っている。白に囲まれた部屋、ベッド脇には幸の好きなカーネーションが飾られ、花瓶の横には2人とその孫が写った写真が飾られている。細い腕に点滴を繋がれ、顔には皺が刻まれているが、一生の表情は柔らかく、心なしか微笑んでいるように見える。


「幸さん、あの……、僕と、・・・

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うらしま物語

17/03/31 コメント:2件 クナリ

「マリ、二十歳の誕生日おめでとう」
「ありがとう。ツヨシも昨日二十歳になったわね」
「そして結婚半年おめでとう俺たち」
「なんか中途半端だけど」
「実は俺、昨日の誕生日に神からプレゼントとして選択肢を与えられたんだ。昔話の主人公、誰でも好きな奴一名の能力を得ることができるって」
「……へえ」
「桃太郎なら絶対服従するお伴。金太郎なら無双の怪力。一寸法師なら身長の・・・

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スイソウくんが知っていること

17/03/31 コメント:0件 翔音

「この大量殺人の始まりは一匹の亀だ」
 俺たち警察は事件現場にむかう。と、いってもそれはこの部屋の隅にあった。そしてそれは水槽のなかにあった。
 水槽といっても金魚を飼うような代物じゃない。2メートル四方のそれは犯罪防止槽。通称「スイソウくん」。
 俺はスーツのまま水の中に潜った。それと同時に雑巾のように絞られる感覚が全身を襲う。
 次の瞬間、俺は海の中だった。
 何・・・

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ウミガメの向かう先にあるものは

17/03/31 コメント:0件 吉岡 幸一

 産卵を終えたウミガメが海へ戻っていく。砂浜に波模様の足跡を残しながら、ゆっくりと真っ直ぐに波の誘うほうに向かっている。
 午前五時、雲は多く空は深い群青色だが、遠くのほうは朱色に染まっている。七月も終わりかけているというのに風は心地よい。
「屋久島に来てよかった」
 姫子さんは背伸びをしながらくったくのない笑顔を向けてくる。
「早朝でもウミガメが見られることがあるんですね・・・

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浦島17世

17/03/30 コメント:0件 

 押しかける人の群れ、雨のにおい、そして、どこから聞こえてくるかわからない人の叫び声……。僕は道の真ん中に立ち、目の前のとある出来事について考えていた。
 僕のご先祖様は浦島太郎という昔ばなしの主人公で、僕はその子孫だ。はっきり言って自覚はない……強いてあげるとしたら、僕の名前がその浦島太郎ということだけであろう。
 浦島太郎……クラスに一人たりともいないであろう存在が自分だという事実・・・

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ウラシマ、ハマる。

17/03/30 コメント:2件 ちりぬるを

 同じクラスの浦島月子さんは美人で成績優秀な学級委員長で休み時間には彼女の周りには人だかりが絶えない典型的なクラスの人気者だった。教室の隅で孤独に漫画を読んで過ごす私とはまさに月とスッポンだ。
「亀、ちょっといい?」
 一年生の時同じクラスだった女子三人組が教室のドアを荒っぽく開け、私の席を囲んだ。クラスが変わってもまだこの人達にからまれるのか。私は読みかけの漫画に栞を挟み、食べかけの・・・

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浦島次郎

17/03/30 コメント:0件 

「兄さんはどこにいるんだろう……?」
 僕の名前は浦島次郎……僕の兄さんは浦島太郎という名前で、海に行った後、家に帰ってこなかった。
「やーい! やーい!」
「でへへ」
「こっちだ! こっちだ!」
 僕が兄さんを捜しに浜辺に来てみると、悪ガキトリオがいた。なにか兄さんのこと知ってないかな……僕は三人に声をかけてみた。
「こんにちは……僕は浦島次郎って言います……・・・

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つれない

17/03/30 コメント:0件 スパ郎

昔々、ある小さな漁村に海をじっと眺めている男がいました。 彼と同年代くらいの男達は結婚をしていて、漁師の仕事をして魚を売る者やその魚を使い料理をして売る者といった感じで殆どが自立をして逞しく生きていました。
しかし、海を一日中眺めているこの男は子供の頃からどんくさく何をしても周りと同じ様にできずに情けで雇って貰った漁師
の仕事も魚の入ったカゴを一日に三度も転んで海に還してしまった為この・・・

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目覚めた男

17/03/30 コメント:0件 氷室 エヌ

 眠りから目が覚めた。俺は自分の名前を脳内で確かめる。何度か瞬きを繰り返す。思考も視界も正常だ。ゆっくり腕を上にあげると、目の前に自分の手が現れた。動きも全く問題ない。なんて簡単な仕事だったのだろう! 俺はにやつき、大仰なベッドから体を起こす。
 ――借金で首が回らなくなった俺は、怪しげな実験のバイトに手を出した。内容は実に簡単、少しの間眠るだけ。科学者達からはそう聞かされていた。
 ・・・

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浦島太郎エピソード0

17/03/29 コメント:0件 林一

 むかしむかしあるところに、浦島太郎という若者がおりました。
 この浦島太郎、子供の頃に厳しかった父親が事故で亡くなってからというものの、急にぐれてしまい、わがまま放題の性格になってしまいました。
 自称漁師を名乗っている浦島太郎でしたが、実際は気まぐれに魚釣りを楽しみながら、飽きると近所の子供達や野生の小動物達をいじめて遊んでいました。それにも飽きると、今度は村の市場へと出掛け、万引・・・

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もう一人の浦島太郎 〜悪行の果て〜

17/03/29 コメント:0件 空 佳吹

 むかし……むかし……の×月×日……

 村の浜辺で、悪ガキたちにいじめられていた海亀を助けた、十八歳の浦島太郎は、そのお礼として、はるか沖の、はるかな海底にある龍宮城へ招待された。
 毎日たっぷり楽しんでいた浦島太郎に、乙姫様は、
「奥の間には、絶対に入ってはなりませんよ」
 と強く言い聞かせた。
 しかし、気になって仕方がない浦島太郎は、夜中にソーッと起きだ・・・

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サヨナラ、ピーターパン

17/03/27 コメント:4件 家永真早

「ご飯置いておくから」
 ドアの外からババアの声。良いトコロだってのにムカつく。俺はヘッドフォンを机に投げて立って、ドアに蹴りを入れた。邪魔すんな!
 それからドアに耳をつけて、ババアがいなくなったことを確認し、ドアを開けて飯を引きずり込んだ。牛丼だってよ、あー、ピザ食いてえ。イマドキ、ネットでピザの注文くらい出来ることは知ってる。前に一度注文したが、届く時にババアが出掛けてて受け取れ・・・

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何それ、知らない

17/03/27 コメント:0件 むろいち

 驚いた。
 浦島太郎を知らない人がいた。
 赤子でも、子供でも、外国人でもない。
 俺の彼女(女子高生)である。
 俺も高校生なので、咎められるような関係ではなく、めちゃ初々しいカップルである。まだ手も繋いでいない。
 今日は学校が半日で終わったので放課後にファミレスでランチ。
 俺は王道の目玉焼きハンバーグ、彼女はサラダうどん(何かおしゃれ)を食べ、ドリンク・・・

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古衛門の龍宮

17/03/27 コメント:0件 笹峰霧子

 この世の中に本当に浦島太郎のような経験をする人間がいるのだろうか、と思うだろう。
 でも確かにいるのだ。
 脳の中が現実離れして別の実在しない場所で暮らし始めたら、そこがいわば龍宮であり、楽しければ現実を忘れて何年も暮らせるのである。何年か後に現実に戻った感覚を意識するなら、それまでの脳の存在は浦島太郎の感覚といえよう。

 山彦三太はそのような経験をした。
 

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夕焼けの道を走る

17/03/27 コメント:0件 七瀬

 大好きだった叔父さんが亡くなったと母から電話があった。つい先ほどの話らしく、電話越しに様々な人の声や音が聞こえてきた。あまりにも突然の事で頭の中を整理しきれない私は、明日の準備と新幹線の切符の手配をふわふわとした時間の中で済ませていった。もう最終の新幹線は行ってしまったから、明日の朝一番の便を選んで、それからベッドに潜りこむ。現実感が失われた中で私は眠りに落ちていく。
 その日の夜は、叔父・・・

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慰め

17/03/27 コメント:0件 蹴沢缶九郎

女は落ち込んでいる相手に聞いた。

「キリンの首は何故長いのだと思う?」

突然の問いに戸惑いながらも相手は答えた。

「う〜ん、何ででしょうか? …遠くの景色が見たいから?」

「うん、まあ半分正解。体が大きいと敵に見つかりやすいのだけれど、それは反面、敵を見つけやすい事にもなるから…。あとは、高い所の木の葉を食べる為ね」

「そうなん・・・

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童話・大人の浦島太郎2nd

17/03/27 コメント:0件 八王子

 ある日、村に一人の男が現れた。
 誰もそいつのことを知らず、そいつは村の誰のことも知らなかった。
「僕は浦島太郎と言います。昔ここにあった家に住んでいたのですが」
 俺の自慢の家を奪おうとでもしているのか、村の中をうろちょろしては、あっちこっちで疎まれていた男は、日が傾きだしてから俺の家のドアを叩いて言った。
「そうかい。でもな、生憎だが、今は俺が住んでいる。漁に出て日銭・・・

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星に願いを

17/03/27 コメント:2件 ちりぬるを

 太郎が帰ると言い出して寂しそうにしていた乙姫様が宝物庫から嬉々としてあの箱を持って来たのを見て嫌な予感がした。俺はのそのそと歩き側近のアンコウに尋ねたが、やはり太郎が地上に帰る手土産に玉手箱を渡すそうだ。
 生まれてこのかた竜宮城を出た事のない乙姫様は、いや地上と竜宮城とを行き来する俺とリュウグウノツカイ以外の者はおそらく外界の様子など知る由もないのだろう。俺は乙姫様を止めようと急いだが、・・・

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かげろうと

17/03/27 コメント:0件 家永真早

 或る日、浦島太郎は虐められていた亀を助けました。
 しかし亀は竜宮城へ連れて行くどころか、実は命の短いカゲロウでした。
 カゲロウは浦島太郎の側で命を永らえます。
 そんなお話。


 まあ、自分も浦島太郎ではないか。ノートパソコンの画面を眺め、そう八木は思った。
 八木の傍らにはガラスで仕切られた無菌室があり、中ではカゲロウもとい梶がベッドに体を横たえ・・・

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