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  2. 第101回 時空モノガタリ文学賞 【 お茶 】

第101回 時空モノガタリ文学賞 【 お茶 】

今回のテーマは【お茶】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2016/03/14

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。

※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。

※二次創作品の投稿はご遠慮ください。

※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2016/01/18〜2016/02/15
投稿数 76 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

17

私はあの日のお茶を生涯忘れないだろう

16/02/15 コメント:9件 草愛やし美

アパートのノブを見た瞬間おかしいと感じた、隙間がある、出る前にちゃんと鍵をかけたはず……だのに開いている、慌ててドアを開けた。いない、太一がいない。

「雨降ってるしパンツはいてへん子は連れていかれへん、お留守番しときなさい。お母さんはそこの若竹市場まで行ってすぐ帰って来るから」
 そう言い聞かせて外へ出たのは三十分ほど前だった。あひるのおまるに腰かけさせた子は相変わらずぐず・・・

2

その花を君は見たか

16/02/14 コメント:2件 高橋螢参郎

 全自動茶摘機の独立ユニット、個体識別コードMX-P04Aは光学センサーで茶畑に白い着蕾が見られたのを認識すると、すぐに生育状況レポートを作成し本部へとネットワークを介して送信した。整然と並んだ茶畑の畝の間に敷かれたレール上を一日に何往復も行き来し、茶の栽培、収穫にあたるのが彼ら独立ユニットに求められた職能だった。
 本部、とは言ったものの、そこにも誰一人として人間はいなかった。かつては茶摘・・・

9

どこでお茶を沸かす?

16/02/09 コメント:6件 橘 聰

 「僕はへそでお茶を沸かしてみたいです。」
 幼稚園のお誕生会での「大きくなったらやってみたいことは?」という問いに対して、僕はそう答えた。園に置いてあった『かんようく・ことわざ絵本』に載っていたその慣用句が妙にデタラメで面白かったのだ。そして折よく「やってみたいこと」を聞かれたので、自分としてはまったく当然の流れとしてその一文を言ったわけだ。ちなみに、一緒に絵本を読んだテツ君は「顔から火を・・・

2

誰かが淹れてくれたお茶

16/01/31 コメント:6件 アシタバ

 男は首をかしげた。
 寝室から起きてくるとダイニングキッチンのテーブルにお茶が用意されていたからだ。一人で住むには広すぎるこの家に住人は彼だけなのに一体誰がこれを用意したというのだろうか? 人が忍び込んだ形跡もない。湯呑の緑茶からは湯気がたっており、どうやら淹れたてらしい。普通に考えればこのお茶は不気味に思える。
 しかし、この男は何を思ったのか椅子に座りゆっくりと時間をかけて飲みだ・・・

最終選考作品

5

五十度のお湯にひたされ茶葉たちが五月の枝に戻ってゆく夜

16/02/15 コメント:5件 そらの珊瑚

 ペットボトルのミネラルウォーターをやかんに入れ、火にかける。ぐらぐらと沸騰したら、まず湯呑と急須に湯を注ぐ。茶器をあらかじめ温めておくことで、次の工程で湯の温度が急激に下がるのを防ぐことが出来る。そしてやかんのふたを開けて、湯の温度が下がるのを待つ。
 日本茶の茶葉にもよるのだが、母が送ってきた実家の緑茶は今年の新茶。やや低めの五十度くらいが一番美味しいと私は思う。

 実家は・・・

1

チャイ屋さん

16/02/15 コメント:1件 ケイジロウ

 こうなるのであれば、さっきの売店でコーラをたらふく飲んでおくべきだった。
 ジリジリと肌を焦がしてくる灼熱の太陽、車が通るたび舞う砂埃、黒い排気ガス、牛・山羊・象・人間の糞、そしてカレーの匂いがごちゃ混ぜとなり、僕の頭をポワァーとさせる。僕はインドの農村地帯を自転車で走っている。国道をのんびりと横断する象、あまり尊敬されているようには見えない聖なる牛、へんてこりんな音楽を鳴らしながら走るオ・・・

8

しょっぱい玉露

16/02/15 コメント:10件 光石七

 どうやら明日、世界は滅ぶらしい。昼休みとなり、ディスカウントストアで買った安いおにぎりにかぶりつこうとしたら、休憩室の片隅のテレビに速報のテロップが流れた。くだらない昼のバラエティ番組を映し出していた画面が切り替わり、某国の科学者のコメントが同時通訳で生中継される。それだけではよくわからなかったが、その後の日本のスタジオでの解説で大まかな状況が呑み込めてきた。何でも、新たな宇宙の泡が生まれようと・・・

2

意地茶

16/02/15 コメント:2件 宮下 倖

 鳴らなくなった笛吹きケトルが、息切れにも似た苦しげな音で沸騰を知らせてきた。老体に鞭打つようなその様子に、買い替えないのかと訊くと、姉は「使えるからね」と笑ってガスを止めた。
 久しぶりの実家は嫌になるくらい変わらない。家電も食器も、ケトルと同窓会が開けるくらいに年季が入っている。変わらないことに半分苛つき、半分ほっとした。
 こちらに背を向け、お茶を淹れながら姉が問う。

6

冬の香り

16/02/08 コメント:4件 南野モリコ

20××年12月。その分野では輝かしい数々の功績を残した博士は、ささやかだが温かい住まいを構えていた。市街地からはそう遠く離れてはいないが世間の人の話に上ることはなくなったこの村には、博士が住むこの家しか残っていない。

毎日、午後5時になると、メイドが書斎にお茶とお菓子を運んで来た。博士は、メイドのスリッパの音がドアの外から聞こえただけで、それがコーヒーなのか、紅茶なのか、煎茶なのか・・・

10

茶娘の怪

16/02/05 コメント:4件 ラズ

 唐の時代、畑をあらす犬をとらえたところ人の骨をくわえていたことがある。
 静かな農村はさわぎとなり、調べればある空家の裏の茶園が掘り返されていて、そこに朽ちた骸がみつかった。
 頭蓋に残る長髪から女とみられ、少し前に楽蝶なる女がいなくなっていたのでそれではないかと言う者もいた。
 しかし遺体は古い上に楽蝶の夫がこれを否定した。彼の案によりある別の女の墓を暴いた所、あるはずの遺骸・・・

9

紫煙とグリーン・ティー

16/01/19 コメント:5件 泉 鳴巳

「知ってたか? この煙草は喉に良いんだ」
 男が肺に溜め込んだ煙をゆっくりと吐き出す。
「漢方が混ぜ込んであってな、それが効くらしい」
 紫煙は行き場を探すように酒場の中空を彷徨い、やがて消えた。
「らしいってお前、実感は無いんじゃねえか」
 俺の言葉に「気持ちの問題だぜ」と笑う男の名はインディゴ。勿論本名じゃない。この店にいる奴の本名なんて一人も知らねえし、興味も無・・・

投稿済みの記事一覧

2

酔い覚まし

16/02/15 コメント:4件 四島トイ

 一対一もそうだけど、人がたくさん集まるほどに気が滅入るんです。
 そう言うと、なるほど、と誰かが応じる。
 先ほどまでぎこちなく言葉を交わしていたはずの話し相手達がすうっと目の前から消えていく、そんな経験をどれほどしたことでしょう。消えてしまった彼ら彼女らがわたしに背を向けて丸い輪を作るんです。人垣の向こうの談笑が、楽しげな声が、まるで別世界の出来事のよう。
 そう思うにつけ孤・・・

0

お茶と落語と家政婦と

16/02/15 コメント:0件 むねすけ

「アンマン買ってきましたよ、お茶にしてください」

「やれうれしやぁのー」

「あら、それは何のお話の中のセリフだったかな?」

「忘れました」

ヘルパー兼家政婦の村木良子と、奥さんの路子さんの共通の趣味は落語鑑賞だった。

「今度の繁盛亭、吉弥さんの独演会だってね」

「あらん、行かなきゃダわ」

「あの人もま・・・

6

じいちゃんと鉄瓶

16/02/15 コメント:8件 泡沫恋歌

「お茶がうめぇ〜」というのが僕の祖父、梅吉の口癖だった。
 じいちゃんのお茶の淹れ方はまったく出鱈目だ。古い鉄瓶でお湯を沸かして、百均で買った茶こしに茶葉をひと摘まみ入れると、それを湯呑みに被せて、鉄瓶のお湯を上からゆっくりと注いでお茶を淹れる。
 なぜ、そんなやり方をするのかというと、急須だとお茶っぱを捨てる手間が面倒だからだ。一人分なら茶葉も少量ですむから経済的なのだとじいちゃんは・・・

5

一服の夢

16/02/15 コメント:7件 冬垣ひなた

「あれは誰の夫人か?」
 第18代アメリカ大統領の任期を終えたグラント将軍が、日本を訪問したのは1879年、明治十二年の事であった。天皇に謁見した将軍は日本の名所を巡り、この長崎では華々しく搭乗艦リッチモンド号の艦上パーティが開かれていた。
 鎖国を解かれた長崎の港は、すでに貿易の特権を失っていた。そんな折からの米国重鎮の訪問である、屈強な軍人に囲まれ、このパーティーに国賓として招かれ・・・

1

良句問答

16/02/15 コメント:0件 海音寺ジョー

 向井去来が、晋子其角に書を送った年の暮れのことである。宝井其角が去来を訪ねてきた。せっかく遠路はるばる来たんだからと、去来は洛外の草庵に招いた。
「おい、別にこんな寂れたところじゃなくてもいいよ。本宅に泊めてくれよ」
「其角、老翁ならここに来るごと大喜びしたもんだぜ、おまえも一番弟子なんだからその感懐はあんまりだろ」
「去来、俺の好みを良くわかってるくせに。だからこそあんな手紙・・・

0

お茶のある風景

16/02/15 コメント:0件 むねすけ

「今日もお寄りにならなかったんですね」
家屋だけは古めかしい日本間なので、三和土なるもので煮炊きを作業しているが、
当然竹筒で火加減を元気づけるわけもなく、象の印の電気炊飯器が一人元気している。
フードプロセッサーがたちまちにミンチ肉を作りだすので、ヘルパー兼お手伝いの村木良子と、
奥様の会話は余った元気で膨らみ放題。

奥様はそれでも白い割烹着、良子はさりとて・・・

4

紅茶と彼とマーメイド

16/02/15 コメント:7件 冬垣ひなた

「負けるな!」
 最後のターンで選手が水中から浮き上がると、天井の高いプールサイドから拍手が大きくこだまする。
 水面を蹴るバタフライの水しぶきがコースに長い尾を残した。
 あともう少し。余力を温存していたなぎさは溜息をつくほどに綺麗なフォームで、両手を大きく羽ばたかせ、ぐいぐいと二位以下と差を広げていく。
「あの子はマーメイドだよ」
 10歳なのにもう水泳選手の卵だ・・・

4

茶道をする男

16/02/15 コメント:7件 泡沫恋歌

「なんだよ、その格好は……ぶぁはっはっはっ」
 和服姿の僕を見るなり、石田君はたっぷり一分間は笑い続けて、その後、腹が痛いとのた打ち回っていた。なんて失礼な奴だ!
 今日は友人の石田君に誘われて、お茶の野点に参加するのだ。
 昨日、お祖父ちゃんの家へ行って、羽織り袴を借りてきたが……僕の晴れ姿を見るなり「まるで七五三だ」と石田君に爆笑された。
 その言葉にムッとして「もう帰・・・

3

いつもの

16/02/15 コメント:3件 しーぷ

 飛んできた拳を僕は受け入れた。避けようなんて今更思わない。部屋の隅で泣く母の声と、父の大きな声だけが僕の耳に届く。
 殴り疲れたのか、母の財布からお金を抜き取った父は乱暴に玄関を出ていった。
「お母さん」
 のそっと立ち上がって母を呼ぶ。返ってくる声はなく、うずくまって泣いている。
 口の中にじわっと血の味が広がるのが分かった。汚れたコップを取り蛇口に手をかけるが、水が出・・・

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「瞬きの間の夢」 

16/02/15 コメント:0件 青木和香

桃さんは、安堵の表情で静かに眠っている。最後に大きな深呼吸を一つ、静かに時が止まった。次の瞬間ほのかな香りを乗せた一陣の風が、八十の頬をやさしく撫でてくれたように感じた。八十は桃さんの頬にそっと触れ言葉をかけた。

「ありがとうございました」

桃さんは母の姉で、いつもハツラツとして笑っていた。腰が曲がっても桃さんの笑顔は変わらなかった。敢えて変わったとすれば、笑顔の時の目・・・

2

あたたかいお茶

16/02/15 コメント:0件 森島豊

 二月の夜のことである。とある定食屋に、ひとりの客が入ってきた。客はなく、のんびりと明日の仕込みをしていた店主は厨房から出てきて応対する。
 客は常連の男子高校生であった。しかし、十時を回りもうすぐ閉店かというこんな時間に、ひとりきりで定食屋に飯を食べに来るとは。ちょっと疑問をもった店主は、何とはなしに学生に話しかけた。
「こんな時間に君のような学生が、どうかしたのかい?」
 普・・・

5

お茶が冷めない距離なんです

16/02/14 コメント:6件 そらの珊瑚

 失敗した。結婚する時に、一人息子だった夫の家を二世帯住宅に改装するから一緒に住まない? と言われて同居したのだが、一種の詐欺じゃないかと思う。
 確かに玄関も住居スペースも別々だが、互いのキッチンの間に一枚のドアがあって、簡単に行き来できてしまう。義母は一応ノックはする。するがその直後もうドアは開いている。「どうぞ」さえ言ってないのに。ノックの意味って何ですか? 理由はささいなこと。お醤油・・・

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保健室の殺人犯

16/02/14 コメント:0件 ゆい城 美雲

身長計の測定バーを、手持ち無沙汰に上下しながら、学校にきたくないんだ、と、益岡先生に言うと、彼女はコーヒーの入ったポットを持ったまま、目を丸くした。先生の午後のティータイムにお邪魔して、突拍子もないことを言い出したのだから、申し訳ないと思う。先生はどうしてと口だけ動かして、結局声は出さずに、下を向いて黙り込んでしまった。しかし、すぐに意を決したように僕の目を見据え、「何かあった?」と聞いた。<・・・

1

ぐるぐるする時間

16/02/14 コメント:1件 みるこ

眠れないので電気をつけて、お湯を沸かしお茶を飲むことにした。
いつもだったら、そのままじっとしていれば自然と寝つくことができるのに。
その日は、頭の中を色んなことが忙しく駆けまわっていた。
いてもたってもいられない。

暗闇のなか、天井からのびる電気のひもを手さぐりで探すのは、まるで今の自分を表しているみたい。
なかなか手に触れないそれをようやく見つける。

0

こっから峠

16/02/14 コメント:0件 鮎風 遊

 現代人は生きて行くために必死。そのため日々多忙だ。
 そして人たちが行き交う町は、人間どもの五欲が絡み合い、結果として喜怒哀楽が交錯し、いつも喧噪だ。
 そのせいもあってか、人は疲労し切っている。そしてそこからの逃亡、もっと自分の生き方を受け入れてくれる、あるいは合致した世界はないものかと探し始める。
 ご多分に漏れずサラリーマンの洋介も、嫁、金、やり甲斐ある仕事に飢えている状・・・

1

ほうじ茶の香り

16/02/14 コメント:0件 吉岡 幸一

 三年続いた同棲を解消する日の午後、裕子は熱いほうじ茶を入れて慎一に出した。
 暖房のよくきいた部屋の隅にある加湿器からは蒸気が勢いよく噴出している。慎一が買ったものだったが、喉の弱い裕子のために置いていくという。
「夜から雪が降るかもしれないんですって」
 テーブルに向かい合って座りながらほうじ茶をすすり合うふたりの姿は、長年連添った夫婦のようだと裕子は思う。
「雪が降り・・・

1

夢の喫茶店

16/02/13 コメント:0件 よしざとめぐみ

私の普段の飲み物は。
麦茶、煎茶、フルーツジュース。
コーヒーは砂糖やミルクを入れれば飲めるが、好んでは飲まない。ただ、コーヒーの香りは大好きなので、無謀にも飲めないままカフェを始めたいと思ったことがあるくらいだ。
そして、紅茶に関して言えば香りも味も好きではなかった。
小学3年の家庭科参観日でサンドイッチと紅茶を入れることがあった。紅茶なんて始めてみるし飲み方すら分から・・・

1

茶の花

16/02/13 コメント:2件 FRIDAY

 正直なところを言えば、僕は別段、お茶が好きだということはなかった。
 茶道というものはどうにも堅苦しく、息苦しく、折角点ててもらったお茶も美味しいと思えない。数少ない楽しみといえばお茶と一緒に出されるお茶菓子だけれど、それも何とか見出しただけで、僕はどちらかと言えば洋菓子の方が好みだった。
 そんな、真剣に向き合っている人にしてみれば噴飯ものな心意気の僕が、どうして茶道部にいるのかと・・・

1

麦茶……

16/02/13 コメント:0件 梨香

こんな場合なのに、むしょうに麦茶が飲みたかった。冷蔵庫から麦茶の容器を取り出してコップに注ぐと、一気に飲み干した。冷たい麦茶が食道から胃へと落ちていく感覚が、動転しきっていた私に現実をつきつけた。
「救急車を呼ぶべきなのだろうか?」ガタガタと震える手でスマホをポケットから取り出すが、上手く操作できない。リビングの壁に取りつけてある電話の子機をとった。しかし、何処へ電話をするべきなのか、迷って・・・

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おてらのぼうずとそのことこのこ

16/02/12 コメント:0件 かめかめ

 舘山寺の倉は江戸時代後期にできたもので県指定重要文化財になっている。だが舘山寺の住職、英哲は生来のいい加減さから倉に人を入れることを嫌い閉鎖したままだ。地元の歴史研究家から何度も要請をうけたが、その都度、軽く「ヤだ」と断っている。
「もう!お父さん、いい加減にしてよ」
 英哲の娘、蓮華が父のパンツを指先でつまみ体からできるだけ遠ざけ、逆の手で鼻をつまんでやってきた。居間で寝転がって尻・・・

2

満たされるもの

16/02/12 コメント:0件 あゆみ

 青銅色をした湯飲みをテーブルに置く。新聞を読んでる彼は私の声を聞くと視線を外して、緑色の液体が入っているそれを見る。そして「分かった」と一言そっけなく告げると右手に持って口に含み、また記事へと目を通し始めた。
 私はそんな恋人――透の行動を見ると、気づかれないように小さく溜息を吐く。反対側の席に座ると薄紅色をした自分の湯飲みを両手で持ち、同じように一口含んだ。

 最近はいつも・・・

12

ルイボスティーな恋

16/02/12 コメント:4件 石蕗亮

 50年目の結婚記念日
特別なお祝いをするわけでもなく、夫婦でアフターヌーンティーを楽しんでいた。
「あなた、本当はまだあの人のこと好きなんでしょ。」
 「誰のことだい?」
「私たちが知り合う前に、あなたが憧れていた人よ。」
 「何年前の話をしているんだ。」
「ふふふ。今更気を使い合う仲でもないでしょ。白状しなさいよ。」
 「確かにそんな時期も過去にはあっ・・・

1

ある夏の価値観

16/02/11 コメント:0件 白野幸英

ー夏。とある田舎町。

「暑い・・・」
私は生まれた時からこの平凡な田舎町に住んでいる。空気も綺麗で住民もみな穏やかなので非常に居心地が良い。ただ、山に囲まれた盆地であるため、夏場の暑さは尋常ではない。とりあえず何か飲み物が欲しいということで、何となしに自販機を探している。すると車道の隅の方に見慣れない車が止まっていた。
「いらんかねー、ここでしか買えないよー」
出張・・・

5

あたたかいやけど

16/02/10 コメント:4件 月村千秋

「あっちっちっち」
 お父さんはいつも熱いお茶でやけどする。それも私の入れたお茶のときだけ。不格好な黄土色の湯飲みを慌ててテーブルに置く。大げさにむせて咳をするお父さんは正直うるさい。めがねをかけてゴマみたいな髪の毛の太った人。お父さんのことを悪く言うのはほめられたことじゃないって分かっていても、つい口に出てしまう。
「バカじゃん」
 私は目玉焼きをぐちゅぐちゅとかき混ぜた。中央・・・

1

三人が愛したもの

16/02/09 コメント:0件 綾瀬和也

「ホットティを二つ下さい」
先ほど入店した男女二人組の男が、一番奥のテーブル席から大きな声で言ってきた。マスターの古川翔矢はその声に聞きおぼえがあった。翔矢が顔を上げると、角本一樹と斉藤朱里が座っていた。

 三人は高校時代のクラスメイト。翔矢と朱里は幼馴染。一樹とは高校時代で一緒になった。一年生の時に翔矢は一樹から、朱里のことが好きなんだと告げられた。一樹は学年で一番の成績で、・・・

1

チャイ、魔法のお茶

16/02/08 コメント:0件 た〜さん

 私は今から25年前ネパールで飲んだチャイと呼ばれる
ミルクティーの味を忘れることができない。
当時、資金が貯まるとアジアの国々を旅した。
ほとんどの国はコーヒーより紅茶を楽しんでいた。
紅茶は安く街のいたるところで販売していた。
カトマンズの街角で、エベレスト街道の山小屋で
私はミルクティーを飲み続けた。
この経験の中でも忘れられないのが
トレッキ・・・

0

不思議の国のお茶会と真面目すぎる男

16/02/08 コメント:0件 ちほ

 一緒に住んでいる姉が、台所でネギを刻みながら言う。「あんたは真面目すぎるわ」と。自分では特に真面目だとは思っていない。週末に友達とお茶会に参加する姉は笑って言う。
「あんたが『不思議の国のアリス』のあのお茶会に参加することになったら、どうなるかしら?」
 そういう彼女の足元を、白兎が懐中時計を手に走り抜けていく。目の錯覚ではと目を擦ってみる。……いつの間にか森にいた。陽気な歌がきこえ・・・

1

MC

16/02/06 コメント:1件 でら

ある日のひぐらしがなく頃のお話です。とあるごく普通の家のガラス張りの戸棚の中で、茶葉たちが口論をしていました。


「俺が一番だ。俺こそがお茶の中の王様である。どんなお茶でも俺にかなうものはない。」

烏龍茶の茶葉が大きな声で強い口調で言いました。

「まぁなんて下品な言葉遣いでしょ。これだから烏龍茶は嫌ですわ。とにかく私が一番素晴らしいお茶ですわ。」

2

シンクロニシ・ティー

16/02/06 コメント:3件 守谷一郎

 言葉よりたしかに気持ちを知る術がある。どうやって?間接キスで。

 西日が差し込む教室の隅に座る僕の前には、一本のペットボトルが立っている。中身を黄金色に輝かせ、「宝石みたいだろ」と言わんばかりだ。
「購買部の自販機に90円で売られているお前が何を偉そうに」
 悪友へ軽口を叩くように呟く。
 安っぽい緑色のラベルに堂々とした筆文字で「お茶」と印字された変哲も工夫もな・・・

3

緑茶依存の夫

16/02/05 コメント:4件 霜月秋介

「先生、どうなんですか?私の夫は…」
 私が恐る恐る尋ねると、先生は静かに口を開いた。
「伊藤さん、あなたのご主人はカフェイン依存症ですね。おそらく毎日大量に飲んだ緑茶が原因でしょう。これからは当分カフェインを控えてください」
 病院の診察室。夫は私の隣で呆然としていた。今の先生の一言に対して動揺しているのかしていないのか、何の反応もせず只黙って、口を少し開いたまま、瞬きだけを繰・・・

5

惨劇、再び!

16/02/04 コメント:6件 つつい つつ

 よりによって、成人式の後にお茶会をやるだなんて、どうかしてる。町のお偉いさんが落ち着いた大人の女性になってほしいと企画したらしい。もう、あの事件を忘れたのだろうか。いや、たぶん知らないのだろう、私達が中学生の時に起こった、あの惨劇を。
 成人式を行う町の公民館は、たくさんの人で溢れていた。もちろん私も参加し、久しぶりに中学の時に仲の良かったリサとエツコにも会った。
「しかし、サキには・・・

0

看板娘

16/02/04 コメント:0件 國分


 冷たい北風は身をひそめ、うららかな陽光にだまされた梅の花が、一足早く恥ずかしがっていた。暦の上での春の知らせは、五歳の和樹にも陽気な形で届いていた。おませな少女、あかねのお茶屋にお呼ばれされたのである。
 あかねは狭山茶農園の娘であった。家は、東京へ抜ける国道沿いに小さな店を構えていた。大規模な露地栽培では北限に近い場所である。厳しい冬を越えた裏手の茶畑は、秩父の山並みよりも緑を保・・・

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お茶の限界

16/02/03 コメント:2件 にぽっくめいきんぐ

 伊藤家で「闇茶会」が開催された。闇鍋のお茶バージョンだ。この会の参加者は大学一年の同期、伊藤、今野、小山だ。以下、その模様をレポートする。

伊藤「ちゃんと色々持って来たか?」
今野「持って来た」
小山「僕も」
伊藤「よし、じゃあコタツ入って」
今野「あったかいな」
伊藤「外寒いからな」
小山「テレビつけるよ」
今野「何見る?」
伊藤「・・・

1

不思議なアパート

16/02/02 コメント:0件 seika

私は六歳までをあの石造りのアパート「板井アパート」で過ごした。板井アパートが一体いつ建てられたかだれもしらない。それは遠い太古、人類の誕生とともに存在していたような建物だった。そしてこの当時この界隈ではズバ抜けて高い建物だった。
この雪の深い雪脳市だが、この板井アパートの地下にはマグマと繋がっていて、そして熱い水蒸気が建物内のパイプや坑道を通って各戸や各室に行くようになっている。そんなわけで・・・

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桂花茶を飲みながら

16/02/01 コメント:0件 みや

大学からの帰り道に、風に乗って何処からともなく漂ってくる金木犀の香りを感じて、亜紀はどうしようもない焦燥感に駆られた。亜紀は金木犀の香りと金木犀が咲く季節が大嫌いだ。

金木犀の香りを感じると、去年の秋に両親が離婚するまで住んでいた家を思い出すからだ。その家の小さな庭に、小さな金木犀の木があった。亜紀は幼い頃から秋になるとその金木犀の香りを感じて育った。父親の女癖の悪さが原因で両親の不・・・

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お茶とブルボンルマンド

16/02/01 コメント:0件 seika

それは先輩のところに行ったときだった。その日は先輩が娘さんの学校のパトロール隊の当番だった。しかし先輩は生理かなにかで体調が思わしくなく自転車で学区を廻るのが辛そう・・・それで
「悪いけど、代わりに娘の学校のパトロールしてくれない?」
といってわたしに黄色いゼッケンと幕を渡した。ここには○○小パトロール隊と書いてある。なんだかダサくてかっこ悪い。こんなゼッケンとタスキをして町中自転車で・・・

11

ペットボトルのお茶戦国時代で飄々と

16/02/01 コメント:12件 クナリ

 この文章はフィクションです。
 かなりどこかで聞いたような商品名が出て来るかもしれませんが、実在の商品とは全然関係ありません。

 日本の缶入りお茶市場は、一強他弱状態が長く続いていた…
 言わずと知れた、「ワーイお茶」である。数々の不可能を打ち破り、お茶を携帯して飲めるという大革新を成し遂げた商品である!
 長らく、わざわざ正面切ってワーイお茶と戦おうなどという投・・・

1

ネットカフェでお茶を飲みながら

16/01/31 コメント:2件 内村うっちー

現在、日本橋と難波の中間地点2階にあるネットカフェにいます。

「自分の本業である障がいを抱える利用者さんと余暇移動支援中」

彼は、軽度精神障がいを抱え就労支援A型と呼ばれる勤務形態で
カフェを並立する形の作業所内で毎週6日間、勤務されています。

金銭管理含めた自己管理面と精神状態が不安定なため一般就労は
難しい様子ですが、問題行動などを起こす方・・・

2

トムのアメリカン・ドリームとその後

16/01/31 コメント:5件 土井 留

 歓声が上がった。
 スコットランドの海港都市グラスゴーの港に優美な帆船が滑り込んできた。
 香港からはるばる喜望峰を回ってきたティー・クリッパー、紅茶を運ぶ快速帆船である。
 インドの茶栽培は、茶の価格破壊をもたらしてブリテン島の紅茶需要を急増させ、新鮮な茶を運ぶための快速船がアジアとヨーロッパを結んで活発に行き来した。
「クリッパーは粋だな。」
「そうですね。だけ・・・

2

誰がために点てん

16/01/31 コメント:2件 alone

着物姿の老婦人は、棗から茶杓で抹茶をすくい、二度ほど茶碗に落とした。
柄杓を手に、着物の袖を抑えつつ、茶釜から湯をすくうと、静かに茶碗に注ぎいれる。
茶碗からのぼる湯気がゆったりとたゆたう。老婦人は茶筅を取り、左手を茶碗に添えた。
茶筅の先を茶碗に沈め、手首を使い、しゃくしゃくと湯を攪拌し、茶を点(た)てる。
室内に音だけが響いた。老婦人は少しずつ手首を上げ、最後に表面の泡・・・

1

お茶とは何か?

16/01/30 コメント:1件 内村うっちー

皆様方が日本語「ものがたり」として構築されているので

日本人だと仮定しますが日本人は日本茶だとか昔からよく
語られますが、緑茶、紅茶、烏龍茶、色も味も違えれども

材料は、すべて同じ「チャノキの葉」から作られています。

摘み取った茶葉を加熱処理して発酵を妨げたものが茶とか。

正式には茶葉を湯に注ぎ成分を抽出したものがお茶ですね。
<・・・

1

お茶を一服!

16/01/30 コメント:2件 梨香

「未依ちゃん、お正月やから、華やかな着物を着たらええのに……ほんまにこれを着るの?」
 母の小言を聞き流し、祖母の紬をそっと撫でた。何度も水をくぐった紬は柔かで指にほんのりと暖かみを感じる。藍色に白い星が飛んでいる地味な紬は、きっと私に似合うだろう。
「せめて、帯だけでも赤いのを締めたら?」
 派手好みの母が出してきた帯を一応合わせてみる。私を子どもだと思っているのだ。
「・・・

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お茶を入れる美しい一時

16/01/28 コメント:0件 seika

お茶をどう入れるか・・・それはそれぞれ人によって秘策があるのではないかと思う。わたしの場合は湯冷ましの冷水を酔う石、それを急須に湯のみ半分から三分の二の量を入れる。そ野の地急須に適量の茶葉を入れる。もちろん煎茶の茶葉だ。そしてしばらく置く。しばらくというのは一時間前後だ。その後沸騰した湯をマグカップに入れてほんの少し冷まして湯を急須に入れ、その直後に湯呑みに注ぐ。この方法が一番私にとってうまく入れ・・・

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彼と私のティー・タイム

16/01/28 コメント:0件 泉 鳴巳

 僅かに沈む畳の心地良さを足裏に感じながら部室に入ると、既に先客がいた。
 硝子越しに初春の陽射しを受けながら、物憂げに瞼を伏せている横顔。凛とした、という形容が相応しいその姿に、胸が高鳴る。

 高校生活なんて、だらだらと過ごしていければそれでいいと思っていた。況してや部活なんて入るつもりは毛頭無かった。なのに、何気なく立ち寄った文化部棟、僅かに開いた教室の扉、そこで私の運命は・・・

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一期一会

16/01/27 コメント:2件 三条杏樹

負けた、という気持ちは言葉では表せないほど苦い。そのときの態度で人間の器が分かるのだと、昔の漫画では言っていた。
だけど俺は、自分を負かした相手を賞賛する気も、ましてや敬意を払う気持ちも持ち合わせない子どもだった。一度でも試合に負けると、自分の今までの努力がすべて水泡に帰す気がしていた。
そんな、中学生だった。
六歳の頃からやっていた剣道を、それ以外にできることもないからと中学ま・・・

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お茶に関するアレコレ

16/01/27 コメント:0件 あすにゃん

テーマ『お茶』 お茶に関するアレコレ
 
 お茶は、喫茶店という店を生み出した。
 喫茶店では、紅茶やコーヒーを出すほかに、オレンジジュースやアイスクリーム、サンドイッチなども出すことがある。
 この喫茶店で、 アートも生まれた。コーヒーのクリームで、絵を描くのである。
さまざまな絵が客を喜ばせ、リピーターが増えていく。
 昔は戦いや名誉の象徴・・・

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濃い紅茶は平和の香り

16/01/27 コメント:0件 ちほ

 ケイ、あの話をしろって? それはあんまりじゃない? 知ってのとおり、私はあまりいい子ではなかったでしょ? 私の一言が四人の決心を固めて、結果的に命が助かったとしてもね。うーん、どうしても? じゃあ、話してみますね。初めて話を聞く孫たちもいることだし。
 ……コホン、昔のことです。私はまだ十四歳の小娘で、薄い紅茶に飽き飽きしていた頃のこと。ある日、私が住んでいたアパートに、まだ年若い四人の音・・・

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新撰組、宵越しの茶毒

16/01/23 コメント:9件 クナリ

 ――茶漬けを作りに、入隊したのではない――

 増岡一心は、新撰組の中では新参に当たる。
 北辰一刀流を習い、その腕には一方ならぬ自信があった。
 が、猛者のひしめく新撰組にあっては別段目立つ腕でもない。それでも自惚れはやむものではなく、隊内で重用されない不満は日増しに募って行った。

 増岡は貧乏武家の次男だったので、家のことは一通りできる。悪いことに、その・・・

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羊かんにはお茶

16/01/22 コメント:3件 林一

「あなた、朝食の準備ができました」
「今朝はご飯か。やっぱりご飯には、味噌汁が合うよな」

「あなた、昼食の準備ができました」
「昼はパンか。やっぱりパンには、牛乳が合うよな」

「あなた、夕飯の準備ができました」
「おっ、今夜は餃子か。やっぱり餃子には、ビールが合うよな」

「あなた、お話したいことがあります」
「どうした? 急にあらた・・・

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出立

16/01/22 コメント:1件 土井 留

「兄上、兄上はおられますか!」
 血まみれの少年を担いだ若い僧が、寺の門をくぐるなり大声で叫んだ。
「陳褘か…?」
 その大声に反応して、ぐったりとなっていた少年が薄く目を開いた。
「おお、ワク、気が付いたか。すぐに手当てをしてやるぞ。」
 ワクと呼ばれた怪我人も若い僧も、共に大柄な体をしていた。特に陳褘は胸板が厚く、そこから伸びた腕は太く・・・

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お茶を焙じる香り

16/01/21 コメント:3件 梨香

商店街を歩いていた私は、お茶屋さんの前で立ち止まった。「お茶を焙じる香りだ……」この香りは、客を引き留める為の機械から出ているのにすぎない。しかし、このお茶を焙じる香りが、私の亡くなった祖母を思い出させた。

 明治の最後の年に産まれた祖母は、幼い頃に父親を亡くした。未亡人になった三国一の美人だったと聞かされている曾祖母は、祖母を実家に預けて再婚した。その再婚相手との間に産まれたのが私・・・

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曽祖母の習慣

16/01/20 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

敵の攻撃は熾烈をきわめた。わが地球軍戦士たちは劣勢に陥り次々に倒されていき、とうとう味方は50人を残すのみになってしまった。地球から数十光年はなれた惑星の上で、もはや脱出の手段もなくなり、地球軍はあえなく投降した。
敵の将軍ズーダは、自分たちと顔も姿も酷似した人間たちを前にして、勝者の余裕をうかべた。
「きみたちの勇敢さには心から拍手を贈ろう」
ここは、地球人たちの最後の砦の中だ・・・

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木部さんとタクヤとお茶の物語

16/01/19 コメント:0件 桜井ベッカム

「キベちゃん、お茶しない?」
底冷えのする冬の午後、どんよりと曇った空の下の六本木交叉点に男の声が響いた。最近恋愛も仕事も滅茶苦茶で目深にかぶった帽子の陰で涙に目を潤ませたたずんでいた木部ミドリは振り向き様、目を疑った。
「え、タクヤ!?」
なんと、瞳はサングラスに隠れてはいるが、そこにいるのは解散問題に揺れている超人気アイドルグループ「スタップ」でも一番の人気者、栗生卓矢(くり・・・

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茉莉子、さんぴん茶、僕

16/01/19 コメント:2件 Fujiki

 茉莉子の汗は、さんぴん茶の香りがした。もちろん茉莉子はさんぴん茶に使われている茉莉花にちなんだ仮名だし、汗のにおいから安直に名前を付けられるなんて本人にしてみれば心外かもしれない。それでも、彼女の汗のにおいが一番印象に残っているんだからこれはどうしようもない。今は付き合っていないから本名を使うわけにもいかないし。
 それに本人にも少しは責任がある。僕の記憶にある限り、茉莉子は常にペットボト・・・

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二人の苦い休日

16/01/19 コメント:0件 じゅんこ




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 二番煎じの茶は苦い。お茶にしようと提案はしたのは自分だったが、嫁から出された茶を飲み男は顔をしかめた。
 男は俳優であった。二枚目だが演技の才はなかなか認められず、歯がゆい思いをしていた。会社でお茶汲みをしている嫁との新婚生活はなかなか苦しいものであった。
「大したものじゃありませんが、茶菓子を作ってみたんです。どうですか?」
 甘い・・・

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十人茶色

16/01/19 コメント:0件 睦月 希結

「なぁアース。茶色って何色だと思う?」
爽やかな風が吹き、綺麗に刈り揃えられた芝生。生い茂る木々。色とりどりの花に囲まれたテラスで、唐突にこの家の主人ブラウンが問いかかる。
彼の妻が午後のお茶の用意を整えるまでは、まだ少し時間があるようだ。葉巻を燻らせながらブラウンは目を細め答えを待っている。

「茶色って言えば、そこの木の幹のような色の事を指すんじゃないのか?」
常・・・

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茶代

16/01/19 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

茶を一息に飲み干したその武芸者は、深編笠をかぶり直すと、すっくとたちあがった。
そのまま何もいわずに歩き出すのを、後ろの床几に腰かけていた商人風の男が見て、茶店の親父に呼びかけた。
「あのお武家、茶代をおいていかなかったよ」
茶店の親父は笑顔でふりかえると、
「あの方はいいんですよ。試合がすんだら、また寄られるから」
「試合」
「ご存じないので。あのお武家さんは・・・

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「大丈夫だよ」

16/01/19 コメント:2件 前田沙耶子

新卒で入社し5年勤めた会社を辞めたのは4ヶ月前のことだ。待遇にも満足していたし人間関係も悪くなかった。でも、もう限界だった。

昔から自分と他者との間にズレを感じることがあったが、私はそれを上手く隠せていると思っていた。事実、私の周囲の人々は常に、私に「明るくて面白い」という評価を下してくれた。
何か変だぞ、と思い始めたのは社会人になってからだった。うまく言葉にできないのだが、自・・・

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自慢のお茶

16/01/18 コメント:3件 南野モリコ

美術部顧問である醍醐先生の奥さんはいつも和服で、黒髪をゆったりとまとめ上げていた。僕たちの前では「はい」か「どうぞ」しか口を開いたことがなく、先生も「おい」と「あれ」しか言わない。

高校3年生になり、醍醐先生の家を訪ねるのは美大志望の紺野隆と僕だけになったが、それまでは僕たち美術部員は、先生の描いた絵を見ようと自宅のアトリエを訪れていた。

玄関で僕らを迎えると、先生は奥・・・

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一日のはじまりは、紅茶館から

16/01/18 コメント:2件 ちほ

「おはよう、月帆。いらっしゃい。……ぼく、まだ眠いや」
「おはよう。すぐ紅茶を入れるから待ってて」

 食堂に入ると、カウンターの向こうで、やかんの湯が沸騰していた。月帆は、慌てて火を止めに行った。静波は中央の円形のテーブルにつく。感じの良いレースのテーブルクロスには、汚れ一つない。光の入ってくる大きな窓のレースのカーテンが、光と戯れながら輝いている。窓の前には、六つの観葉植物の・・・

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切り柄杓

16/01/18 コメント:1件 八子 棗

「あなたの切り柄杓には、惹かれるものがないわ」
 師の言葉の意味をのみこめたつもりになっていたと知ったのは、初めてお茶会に招待された後だった。

 三十代になり、茶道のお稽古を初めた。表千家の、小さな流派だった。システム開発で左脳一辺倒になっている頭の使い方を切り替えたくて、茶道という道を選んだ。長い時間をかけて体得し、生涯の趣味にできればよいと思ったのだ。
 お稽古もそろ・・・

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渋い茶・・・草壁メイさんの話

16/01/18 コメント:0件 笛地静恵

 草壁メイさんとふたりで、旅をすることになった。
 ぼくは、いちおうはこまった顔を作った。しかし、内心はうれしかった。
 民話の「採集」という活動をしている。大学の《昔話研究会》。「語り部」と呼ぶ人たちから、民話や昔話を聞いて録音をとる。
 日本の貴重な文化遺産だ。急速に失われつつある。「語り部」が、高齢化しているからだ。 
 旅費などは、バイトをして貯める。主に夏休みなど・・・

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理想と現実

16/01/18 コメント:0件 睦月 希結

 人は誰しも理想とする結婚観を持ってると思う。僕にもある。
『美味しいお茶を淹れられる』この条件を満たせば他の気配りも出来ると言うのが自論だ。
「お疲れ様です」外から帰るとお茶が出される。美味い。疲れが吹っ飛ぶこの瞬間が好きだ。彼女の笑顔も付いてくる。

 いつも美味しいお茶を淹れてくれる彼女が好きだ。そして秘かに彼女を想う奴らが、一人二人じゃないことも。
お茶を飲み・・・

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菓道部

16/01/18 コメント:2件 ヤマザキ

「結構なお点前で」
あたしの隣の子がさんざん聞きあきたセリフを言った。次はあたしの番だった。でもあたしはうんざりしていてガマンの限界だった。
あたしがこの高校に入学し茶道部に入って今日で二ヶ月。ここの着物のきれいさと和菓子のおいしさはあたしの期待以上のものだった。でもこの液体の苦さも想像を絶していた。
もうこんなもの飲みたくない。なんでこんな見た目も味もサイアクのものを飲まなきゃ・・・

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茶と菓子パンで生きていた

16/01/18 コメント:7件 クナリ

 お茶と言うか、お茶と菓子パンの話である。
 小生、人並みにお茶が好きだ。同好の士も多いのではないかと予想する。
 反して、何だかもう最近は健康の反対語みたいな悪者扱いを受けているのが、菓子パンである。
 しかし、個人的には「マジ菓子パンて悪だよね!」という立場にはなれずにいる。
 なぜかと言えば、小生はかつて、菓子パンとお茶に心を救われていたからである。

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