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  2. 第九十九回 時空モノガタリ文学賞 【 失恋 】

第九十九回 時空モノガタリ文学賞 【 失恋 】

今回のテーマは【失恋】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2016/02/15

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2015/12/21〜2016/01/18
投稿数 83 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

3

僕の胸に開いた穴

16/01/15 コメント:3件 高橋螢参郎

「え、ちょっ、うそ……」
「どうしました?」
「手、抜けないんだけど」
 松岡先輩の右手首から先は、僕の胸に開いた穴へすっぽりと吸い込まれたまま一向に出てこなかった。
 胸にぽっかりと穴が開いた、なんて随分詩的な表現だと思われるだろうけど、僕の場合は違った。辛いことや哀しいことがあった時に比喩でも何でもなく、胸に穴が開いてしまうのだ。今もみぞおちの辺りがひゅっと引っ込んで、・・・

19

恋という妖

16/01/06 コメント:11件 石蕗亮

「こんな寒い夕暮れ時はストーブを背負って怪談をするに限る。
 寒さが孤独感を後押しして寂しさを増すから、話すなら悲恋ものが良い。」

雪で止まった電車を待つために駅の待合室には数人が集っていた。
田舎のため、駅員も居なければ復旧を告げるアナウンスも流れない、昭和の匂いが残る古い駅舎であった。
今時珍しく携帯の電波も届かないほどの田舎である。
下手に携帯を視ても情・・・

5

顔で笑って心で泣ければ苦労はないから泣かせてよ

15/12/27 コメント:7件 クナリ

 たったったっ
 ガラガラ
 ばたん

 あれ、部長いたんですか。ちっ。
「ちって。お前こそ、花の女子高生が終業式の放課後に、文芸部の部室なんて来るんじゃねえよ」
 普段幽霊部員なものですから、人のいない時くらいは顔を出そうかと。
「いや普段来いそれは」
 いやー、冬休みですねえ。イベント色々ですよ。
「まあなー。俺は受験勉強づけだけど」

4

さよなら親指

15/12/23 コメント:4件 午前4時のスープ

 親指ばかり見ている。
 だって、こういう時、どこ見てたらいいのか……いい場所あったら教えてください。
 彼の目? いやでしょ。
 別れ話をしているんですよ。わたしたち。
 彼の目からは、付き合い始めた頃、わたしだけを見つめていたきらきら星は消えてるし。さっき、ちらっと上目遣いで見てみたら、まるで死んだ魚のような目をしてたし。

 彼の口? 冗談でしょ。
・・・

最終選考作品

7

なにわの未練に、雪は降る

16/01/18 コメント:8件 冬垣ひなた

 なにわの神さんは、アメリカ人や。
 通天閣の展望台には、米国生まれのビリケンさんがいて、足の裏を触ると御利益がある。小さい頃からアホ可愛いく信じて俺たちは今日もビリケンさんを拝む。
「コウ。今日な、いい事あるんやで!」
「お前幼稚園から何度言うとるんや、耳のたこでたこ焼き5ダース作れるわ。物忘れ激しすぎ、リカコは」
 家は通天閣のおひざ元。俺ん家はたこ焼き屋で、リカコん家・・・

2

赤い魚のあざ

16/01/10 コメント:6件 Fujiki

 初めてアンディの裸を見た時、彼の胸には赤いあざがあった。一週間くらい前に上官から銃床で殴られたのだという。海兵隊が訓練所上がりの新兵を迎え入れる目的で行う、手荒い通過儀礼である。
 あざは左肩から胸にかけて広がっていて、彼が腕を動かすたびに筋肉のついた厚い胸板の上でピクピクと動いた。釣り上げられた赤い魚が灼けたコンクリートの上で跳ね回っているようだと美沙は思った。
「新入りを一列に並・・・

4

TAKAHASHI!!

16/01/08 コメント:2件 前田沙耶子

同じクラスの原君に体育館裏に呼び出された。なんてベタ。これはきっとアレだわ。少女漫画的なアレ。うふふ困っちゃう。原君のこと特別に意識したことはないけど悪い気はしないわね、なんて。
指定された時間に向かうと緊張した面持ちの原君。と思ったらいきなりすごい勢いで頭を下げられた。
「ごめんなさい!」
は?私別に謝られるようなことしてないんですけど。え、ていうか告白じゃないの?
「俺・・・

3

迷画を求めて

16/01/03 コメント:3件 國分

 失恋を求めているのは、私だけだろう。
 私が一方的に誰かに恋をして、相手の男がそれを断る。そう、まず、恋をしなければいけないのが、今の私には難しいところだ。
 なりふり構わず男に恋をしてはいけない。フラれる男を見抜かねばならない。それも、相当のショックが待っているであろう相手をだ。当然、なかなか見つからない。

 私は二年前、ひどい経験をした。と同時に花々しい名誉と劇的な・・・

2

サヨナラ、あなた。

15/12/26 コメント:4件 6丁目の女

 目覚めるとすぐに、夫が私をそっと抱きしめてくれる。
「よく眠れたかい?怖い夢は見なかった?」
 夫の温もりを感じながら、幼い子どもに戻ったような感覚に浸る至福の時間。 
 私たち夫婦には子どもがいないから、私たちは変わりばんこに子どもに戻る。

「今夜はお食事つくれなくてごめんなさいね」
「そんなこと気にしないで。久しぶりなんだろ?その昔の上司って、男の人?」・・・

4

元禄十四年三月十四日

15/12/21 コメント:4件 土井 留

 老齢に差し掛かっていたにも関わらず、その人の後姿は美しかった。すっきりと伸ばしたうなじと緩やかな歩みには、長年典礼に携わり、外からの視線を注意深く意識してきた経験が積み重なって、隙のない美を形作っていた。
 彼がその人に惹かれたのは、その人が父親の年代に属していたからだろう。父親は顔を覚える前に死に、その数年後に母親も亡くなったので、彼は親密な親子関係をほとんど知らずに生きてきた。それが、・・・

投稿済みの記事一覧

4

私の失恋履歴

16/01/18 コメント:9件 泡沫恋歌

 私の人生で今まで失恋したのは、たぶん五回くらいだったと思う。
 二十五年の人生でその数が多いのか少ないのかはよく分からないが、未だにボッチということは恋愛に置いて勝ち組ではないということだ。

 最初の失恋は幼稚園の年長組の時だった。慎之介くんという「クレヨンしんちゃん」みたいな男の子に恋をしたのだ。しんちゃんとは大の仲良し、お弁当を食べる時も、お昼寝する時もいつも一緒だった。・・・

6

リサイクルショップ『恋ばな』

16/01/18 コメント:9件 冬垣ひなた

「あなたの恋、高く買います」
 洒落た看板を尚子は目にした。
 『恋ばな』はリサイクルショップらしい。
「タンスの引き出しや押し入れ、引き出しに眠った恋はありませんか?破れていても、鑑定の上買い取らせて頂きます」
 早速、尚子は実家を大掃除して集めた品を手に、店に入ろうとした。
「いらっしゃい」
 内側からドアが開き、ワンピースに身を包んだ清楚な黒髪の女性が出迎・・・

5

ビニールプール漂流記

16/01/18 コメント:9件 泡沫恋歌

 気が付いたら、半径1メートル程のビニールプール乗って僕は漂流していた。
 見渡す限りの大海原、遥か彼方には水平線が見える。海の蒼と空の青その稜線をかもめが飛んでいく。
 なぜ僕はこんなものに乗って海を漂っているのだろう。たしか、あの日、丸テーブルに乗って、天井の電球を替えようとしている時だった。ガクンと足元が崩れるような激しい衝撃を受けて気を失った。――目覚めたら、こうなっていた。<・・・

1

晩白柚泥棒

16/01/18 コメント:0件 むねすけ

月夜に無知な泥棒が一人。
満月の夜の泥棒行為が、成功した例はないというのに。

男が盗むのは小学校の敷地内の晩白柚。

男はパン工場の年末アルバイト募集の面接に落ちた帰り道、
晩白柚の存在を目視した。

元より柑橘系の果物は好きであったが、グレープフルーツにおたふく風邪をひかせたような見た目のユーモラスに
心を奪われてしまった、決して面接に落ち・・・

9

魔法の鏡は少し外れた音を奏でるけれど

16/01/18 コメント:12件 光石七

 外は小雪が舞っている。あの日のように。僕はお気に入りの椅子に腰かけ、コーヒーを啜った。
「おはようございます。寒いですね」
恋奈君が出勤してきた。いつものようにすぐ店の掃除に取り掛かるかと思いきや、綺麗にラッピングされた小箱を僕に差し出す。
「これは?」
「わかりませんか? 今日はバレンタインデーです」
恋奈君が呆れたように言う。
「そうだっけ?」
「も・・・

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目が見える僕の見えない音を見る人よ

16/01/18 コメント:0件 むねすけ

線路わきを歩いていて電車が通過した時や、踏切前で電車が景色を喰い放題に喰っていく時、
僕の耳には電車の轟音の下で小さなその瞬間生まれた生物の産声のような音が混じって聴こえた。
その音を感じる度、戻ることもゆくこともできない、密閉された苦しい人生から抜け出して、
悩み事の全てのない、日向ぼっこだけしておけばそれでいい花野に繋がっていくような誰かの足跡の付いた地面を見るかのような気持・・・

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手紙

16/01/18 コメント:0件 ケイジロウ

 一方的に別れを告げられたその短い手紙を読み終えた時、とても辛いと感じた。
 この感想には自分自身も驚いた。今まで何人かの女性と付き合ったことはあったし、それぞれの「終わり」を経験してきた。しかも、だいたい振られている。しかし、「辛い」というよりホッとするのが常であった。今までの付き合いと今回の付き合いとでは何かが違うのだろうか。
 とりあえず、靴を脱ごう。考えるのはそれからだ。僕は靴・・・

3

レンチン3分

16/01/18 コメント:2件 しーぷ

「別れよ」
 女の言葉に男は固まる。
「なんていうか、女慣れ? してなさすぎて。まともに喋ってもくれないし。顔は好きだったけど、意味ないっていうか」
 女が部屋から出ていった。男は黙って俯いていた。

 異性とまともに喋れない俺は、女の子と普通に喋る男たちが理解できない。
 もちろん女は好きだ。真面目な顔して、街行くかわいい子を見つけてはひわいな視線を飛ばしてい・・・

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決意

16/01/18 コメント:0件 kanza

「付き合ってください」どストレートな言葉とともに頭を下げた。
営業所の中を静けさが流れていく。
私が勤める会社はオフィスや店舗に足拭きマットや観葉植物をレンタルしている。今日は仕事終わりに女子会に行き、その帰りに営業所にまだ明かりが点いているのを目にし、覗いてみた。そこにはひとり仕事をする高波さんの姿があった。彼の仕事を手伝い、帰り際に覚悟を決めたのだが……永遠とも思えるほどの静け・・・

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遠い日

16/01/18 コメント:0件 海音寺ジョー

時間が過去から未来へ流れること。これが一方通行であることは現代科学では証明できないらしい。
 両方向の時間の流れを、脳は知覚できてる。しかし思考に混乱が起こるので、あえて一方向、つまり過去から未来への流れしか感知できないように脳内にある種のバイアスがかかっているという仮説がある。
 ある科学者が週刊誌でそんなエッセイを書いてるのを読んで、切実な共感を覚えた。

「別れま・・・

1

初恋の後始末

16/01/18 コメント:0件 ツチフル

 ノコ先輩は今年で二十七歳。何とかという大手に勤めるエリートさん。
 仕事が生き甲斐とか言って、せっかく美人なのにお化粧もお洒落も興味がない。化粧後こそが素顔の私に言わせれば、超宝の持ち腐れ。
 そんなノコ先輩の持論は「恋愛は錯覚」。
 私が男を作る度に顔をしかめて言う。
「時間の無駄よ」
「でも楽しいっすよ。ノコ先輩も恋愛すればわかります」 
「そんな暇があれ・・・

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向かいの人

16/01/18 コメント:0件 サラダS太郎

今日のバイトはとても長く感じた。今は家路についている。明日の予定は特に無かったから、今晩は目覚ましもかけずに寝てしまおうと決めた。バイト先から15分電車に乗った、自宅の最寄り駅に乗り入れる支線の始発駅。この駅には、大きな売店がある。バイト帰り、そこでは疲れた体と喉を潤わすためにジュースを買うことが多い。今日も売店に寄ることにしたが、今日は次の日が休みであることと、そしてなんともいえないしんどさがあ・・・

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魔女によく効く不老不死

16/01/18 コメント:0件 四島トイ

 お酒の力を借りて言いますけどお、と後輩の栗原命が頬を染めて立ち上がった。
 右手に瓶を、左手にグラスを握りしめ、ふらつく体を仁王立ちでぐっと踏ん張る。捻った体から絞り出すような言葉は語尾が揺れた。
「小坂先輩が好きです。付き合ってください」
 結婚式当日に花嫁に言うことかよお、と別の席から声が上がる。笑い声が後を追った。
 結婚式の二次会会場となった洋食店。橙色の照明の下・・・

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都会における彼の失恋について

16/01/17 コメント:0件 雲原 拓

 僕の度重なる失恋の話はもう何度もした。聞き飽きただろうから、今回は僕の友人の失恋の話を書きたい。話を進めやすくするために彼の名前を出すべきなのだろうけれど、この物語の登場人物は少ないことだし、匿名で書き進めさせてもらう。彼は物静かな男で、あまり多くを語らない、。それに、彼は孤独癖を抱えている―少なくとも僕はそう思っている。職場で仕事をしている時だけをみていれば、同僚たちとはうまくやり、上司などに・・・

2

人工意識は恋の夢を見るか?

16/01/17 コメント:0件 alone

外していたウェアラブルデバイスを首筋につけると、ニコラは倒れるようにベッドに飛び込んだ。
「どうしました? 元気がないようですが」
テスラが骨伝導を通じて話しかけた。その口調はニコラのことを案じていた。
「ちょっとね……」
元気のない応答をニコラは漏らした。ついさっきの出来事が脳裏を過ぎる。
ずっと前から好きだった男子に、今日、ニコラは想いを告げた。
だが彼には・・・

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失恋は時に ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく) ── 第21話

16/01/17 コメント:4件 鮎風 遊

 高台にある公園の桜が、朝の鋭角に射し来る光に、意外にも淡いピンクの輪郭をぼんやりと浮き上がらせてる。そんな逆光の先で、女が一人フェンスに指を絡ませて、血みどろになり息絶えていた。
 第一発見者は近所のご老人、いや愛犬だ。毎朝のこと、爺さんはこの公園まで散歩に来て、犬と戯れる。しかし、今朝は違っていた。リードから解き放たれた犬が一目散にフェンスに向かって駈けて行く。そして、こちらに来てくれと・・・

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信号が変わるまで

16/01/17 コメント:0件 ゆえ

1月の金曜日の夜 世の中は新年会シーズンまっただ中だ
右を見ても左を見ても酔っている大人達に囲まれている
ある飲み屋の入り口では部下が上司の頭をはたいて喧嘩になり
そこから離れた横断歩道の信号待ちをしている所では小さな恋が生まれた
少し離れた裏路地では恋人だと思っていた相手から突然の別れを告げられて言い合いをしている二人がいる
その横の店から出てきた四人組のうちの一人・・・

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いつもの通勤電車の彼女

16/01/17 コメント:0件 竜聖炎武

いつもの通勤電車のいつもの車両
そこでいつも見かける女性がいた。
彼女はビジネススーツがよく似合っていた。

僕は彼女と話したことはない。
だから名前も年齢もどこに住んでいるかも知らない。
ただいつも同じ電車に乗っているだけだったが
彼女も僕の顔を覚えてくれているのか
たまに目が合うとにっこりと笑って会釈してくれる。
こちらも会釈で返す。

0

ガラスのわら人形

16/01/17 コメント:0件 seika

 その頃私はお堅いドイツ文学者である父戸舞賛歌から逃れるように、あるいは父に島流しにされるかのように生まれ育った家を追われ、そして東京近郊場末のA町にある古くて汚いアパート「ガラスのわら人形アパート」に見を寄せていた。このアパート時代が何か煤けたオーラに覆われていて、道よく人達は自分がこのアパートの住民になるまでは転落したくない・・・と思っていたに違いない。実際にここには背中に刺青のある顔色の悪い・・・

3

蓮喰い

16/01/17 コメント:4件 そらの珊瑚

 ホテル・レ・トータスの201号室。長く住んだパリ市内のアパルトマンを売り払い、クレアがここに住み始めてから、もう3年経つ。古いシャトーをリフォームした石造りのこじんまりとしたホテル。彼女はここがとても気に入っていた。温暖なプロヴァンスの気候が今年70歳になる身にとって過ごしやすかったということ、中庭にホテルの名の由来となった、トータス(蓮)の花の咲く大きな池があるという点が、その理由だった。

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同窓会

16/01/17 コメント:0件 リアルコバ

「コバか久しぶりだなぁ」「よう純ちゃん」
「あれ〜お前誰だっけ」「あはは禿げたなぁ」

 地元での同窓会なんてものにとんと興味はなかったが、50歳の節目、と云うより近年何人かの友人の訃報などを風の噂で知り(会えるうちに会っておこうか)そんな気になったからだ。
 しかし会場に来て少し後悔した。余りにも皆歳をとり、田舎町の話題は退屈だった。
ところが手持ち無沙汰で作り笑い・・・

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咲都子

16/01/17 コメント:0件 ネコさん

 私は、個人投資家という、収入が不安定な職種を生業としていた。
 複数のパソコン画面を睨みながら、株価の変動を予測して投資するというもので、翌月の収入どころか、明日の収入さえも見込めないという生活を送っていた。
 こんな私に付き合ってくれるような女性などありそうもなかったが、それでも、咲都子は、私を信じて、ついてきてくれた。
 それは盲目的な母性愛に近いものだったのかもしれない。・・・

1

「ありがとう失恋」

16/01/16 コメント:0件 こうちゃん

 皆様こんにちは。私は自動販売機です。突
然でびっくりしたと思いますが、正真正銘の
そこら辺にあるジュースの自動販売機です。
無生物である私が、なぜ皆様とお話出来るか
というと、大きな声では言えないのですが、
この時空モノガタリが神様のお気に入りなの
です。そこに目をつけた私は、神様の大好き
なコーラを献上して、こうしてお話をする機
会を与えてもらっ・・・

0

狐の寓話

16/01/16 コメント:0件 土井 留

「新しい人、結構イケメンだね。」
「そう?ちょっと暗そうじゃない?」
「危ない感じには見えないよね。」
 定期の人事異動で山本啓介が芝の支店にやってきたのは、春が始まろうかという三月の下旬だった。当然のように、若い異性の同僚は女性社員たちの恰好の話題となった。
「彼女いるのかな?」
 挨拶まわりにやってきた啓介に、加南子はすぐに好感を持った。長身でなかなか整った顔立ち・・・

2

サウンド・オブ・サイレンス

16/01/16 コメント:3件 泉 鳴巳

「宮田さん、いつもお弁当ですよね。彼女さんですか?」
 いつもの様にデスクで黙々と昼食をとる僕に、その人が声を掛けてきたのは半年前のことだ。
 決して安くないランチ代を毎日払うのがなんだか勿体無い気がして、ならば自分で作ろうと思い立ったことを、むせかけた喉をお茶で抑えこみつつ幼稚園児並の拙い言葉で説明した。
 三十にもなって同世代の女性と――いや、同性ともだが――殆ど会話をする機・・・

1

冬が廻る

16/01/15 コメント:0件 月洛

 歩道の隅の落ち葉が、風に洗われて、転がっていた。
 カラカラ、サカサカ
 その音に誘われて、僕は落ち葉を踏みしめた。少し道端に寄ると、何枚も重なった落ち葉たちをいっぺんに踏みしめられた。雪道と違って、靴底に響く感触はごくごく小さいけれど、音は一人前だ。
 ガザザザ、ガザザザザー
 冬の深夜の冷えた空気のなか、立っているのは、僕と街路樹と電柱だけ。電柱に取りつけられたLED・・・

5

ボーイ✩フレンド

16/01/15 コメント:4件 そらの珊瑚

 失恋したのは、三十五年も生きてきて、もちろん初めてじゃないけれど、年をとるごとに、なんだか重いダメージを受ける気がする、心に。二十代だったら恋を忘れるには新しい恋をするのが一番の近道! みたいな陳腐な歌詞にあるような言葉を胸に、立ち直れたかもしれない。若かった……実に若かった。
「女って不可解よね。失恋したてだっていうのに、よく食べるわねえ」
 元彼のアオトは口は悪いが優しい。今まで・・・

0

傾いて落ちる

16/01/15 コメント:0件 八子 棗

「お前が嘘ついたんだから、指を切っても、殴ってもいいよね?」
 彼は、輝かんばかりの笑みを浮かべた。


 浮気をしたわけではなかった。彼を嫌いになったわけでもなかった。
 ただ、あまりにも彼のことが好きすぎて、仕事が手につかなくなっただけだ。

 彼は同じ職場の後輩だ。彼が私の職場に入ってきてくれて、恋をしたことのなかった私の人生は目まぐるしく変わった。・・・

5

ついてる彼女

16/01/15 コメント:6件 霜月秋介

 彼女と付き合って一年が過ぎた。彼女の名前は美咲。亜麻色の長い髪に、透き通るような声。俺を見つめる潤んだ瞳。すらりとしたモデル体型。ここで断っておくが、俺は彼女を外見のみで選んだわけじゃない。大事なのは見た目よりも心。見た目がいくら綺麗だろうが心が醜ければ付き合いきれない。そう。俺は彼女の内面に惚れたのだ。彼女のおっとりとした優しいところに惚れたのだ。そもそも彼女とはネットを介して知り合ったのだ。・・・

1

アルスアマトリア 外典 虚無の章

16/01/14 コメント:2件 橘 聰

 私はある本を探している。しかし、インターネット、その他もろもろの手段を使っても、未だ手掛かりすらつかめていない。ならばそんな本はそもそも存在しないのではないかと思うかもしれない。しかし確かにその本は存在している。私は若い頃に一度その本に出会ったことがある。

 あれは晴れた夏の日、恋人に振られてしまった翌日のことだ。そのとき私は前日の別れ話を思い返しながらやり場のない思いを抱えていた・・・

0

フラれちゃったんだ。

16/01/13 コメント:0件 FRIDAY

 フラれてしまった。
 高校卒業から五年間、ずっと付き合っていた彼に。
『もう、お互い限界だろう』
 そう言われた。
 私は全く限界なんて感じていなかったのに。一体いつから、彼は限界を見ていたんだろう。
 一方的に言って、彼は去っていってしまった。
 私はひとりで電車に乗る。
 時間も遅い。車内には人はまばらだ。人のいない席に座ろうと、そちらへ歩いていき―・・・

1

はつ恋

16/01/13 コメント:0件 泉 鳴巳

 初恋の人は、兄だった。
 私は夜の闇に吠えた。
 知らなかった。
 失恋とは、これ程辛く、苦しいというのか。

 兄は、私の憧れだった。
 同年代では一番だった剣術も、兄には一度も敵わなかった。
 完膚無きまでに打ち負かされた手合せの後、兄はいつも、私の頭を撫でてくれた。軽く叩くようなその動作に、兄の不器用な優しさが溢れているようで、堪らなく嬉しくなった・・・

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金曜日の夜 土曜日の午後

16/01/10 コメント:0件 アシタバ

 金曜日。仕事が終わり、いつものように彼と待ち合わせをして馴染みのレストランへと食事に訪れた。ふと気がつくとその日の彼はいつもと様子が違った。いささか固い表情で注文したお酒や料理にほとんど手をつけず、残すのは勿体ないな、と思う私をまっすぐ見つめて意を決したようにこう言った。
「ごめん、他に好きな人ができた。俺と別れてくれないか」
 彼は私と別れたいという想いをストレートに伝えてきた。そ・・・

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男は弱し、女はすごく強し

16/01/10 コメント:0件 かもめ

 翔子はもう二日ほど、部屋に籠りっきりだ。普段の部屋とは違い、酷く乱雑に散らかった部屋だ。薄暗い汚部屋は翔子をより一層憂鬱で悲しい気持ちにさせた。
 ずっとネットからは失恋映画が垂れ流され失恋ソングを聞きまくっていた。
「ああ、私って、きっと間違いなく世界一不幸だわ、もうこの部屋から出たくない。悲しすぎて死んじゃう、死にたーい」
 何回もこんなことを呟きながら聞き続ける失恋ソング・・・

1

失恋

16/01/10 コメント:0件 林一

 とあるバーのカウンターで、男が一人、ウイスキーを飲んでいる。その男から二つ離れた席でも、女が一人、ウイスキーを飲んでいた。
「良かったら一緒に飲みませんか?」
 男が女に話しかける。
「ええ、どうぞ」
 男は片手にグラスを持って足をふらつかせながら、女の隣へと座る。
「実は私、ずっと片思いをしていた男性に振られてしまいまして。それで、普段は飲まない強いお酒で気分を紛・・・

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ある報告

16/01/08 コメント:0件 塩漬けイワシ

話によれば、かの地に友情はないという。


1.カメラマンとして潜入したY氏の手記より

手を握っても薄ら笑いを浮かべていた。
マニュアル通りに一つの食べ物を分け与えてみたが、感謝は受けても直ぐに疑念の視線を向けられた。
彼女達の仕事の手伝いをしてみて、ようやく受け入れられた。
だがこれは奴隷を大事にする為の気遣いだろう。まだ上下関係の付き合いだ。<・・・

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クローバー

16/01/08 コメント:0件 STRAY CAT

 春の野。川沿い、緑に覆われた土手を気まぐれにかき分ける無骨な指。
 探しているのは、たくさんのわたしたちの中の特別なひとつ。

「ちぇ、探してみるとみつかんねぇもんだな、案外」軽い舌打ち。

 癖のある短い髪を乱暴にくしゃりとかきあげる、草の匂いのするてのひら。
 パンパンと手をはたき、制服に包まれた足を草むらに投げ出す。

「そこらにありそうなの・・・

1

わたし

16/01/07 コメント:0件 棗 涼介

彼は私のすべてだった。

 朝。カーテンが透かす明かりが、部屋を淡く浮かび上がらせている。静寂が鳴る部屋の中に、微かなノイズがカーテンの隙間から漏れていた。
 暫くすると、彼が起きだした音が聞こえてきた。ドアを開ける音。気怠そうに体を引きずる彼が見えた。私は、おはようとあいさつをしたが、彼は返事をせずにテレビをつけた。元気を強要してくる女性の声が部屋に響く。彼は、しばしテレビを見・・・

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拝啓、君へ。

16/01/06 コメント:0件 小李ちさと

拝啓、君へ。ずいぶん会っていない君に向けて、初めて手紙を書きます。きっと下手くそな手紙になると思う。でも最後まで読んで欲しい。

季節は今、春です。君の好きだった桜が咲いています。もうすぐしたら散り始めると思う。よくふたりで見に行った桜並木、今年も綺麗です。やっぱり夢のようです。
そうだ、来月にはあの灯台が新しくなります。きっと眩しいくらいの白になる。そうしたら僕、出かけて行って・・・

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星空に・恋

16/01/06 コメント:4件 小李ちさと

「うわー!この道も歩けないじゃん!」
言葉とは逆に楽しそうに叫んで、ねえさんはけらけら笑った。石造りの静かな夜の街に、その声は不思議と溶け込んで吸い込まれていく。海辺のこの街は運河が発達していて、潮の加減によっては道が水没してしまう。何とかなるとたかをくくっていたら、もうどこも歩けないほどになっていた。水の流れる音ってこんなにも多彩で深かったのかと、いっそ怖くなってしまう。
「だから早・・・

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あれを恋というなら、私は失恋したのだろうか?

16/01/05 コメント:2件 梨香

「あれを恋と言うなら、私は失恋したことになるのだろうか?」

 芙美子は、花曇りの空を見上げて呟いた。河川の土手に寝転ぶのには不似合いなドレス姿だが、結婚式の引き出物を持って部屋に帰る気分にはなれなかったのだ。


 そう、今日は芙美子の好きだった同期の田中正樹の結婚式だった。それも、相手も自分に好意を抱いていたと感じていたので、突然、去年入社したばかりの木内由香里と・・・

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全ての恋が成就するはずもなくて

16/01/04 コメント:0件 みや

仕事帰りに二人で立ち寄った居酒屋はクリスマスイブの夜を楽しむ人達で賑わっていて、主任は美味しそうにビールをグビグビ飲みながらご満悦だ。

「クリスマスイブの夜なのに上司と居酒屋に居るなんて本当に冴えない男だな」大きなお世話です。
「別れた彼女にまだ未練があるのか?別れてからもう一年位経つだろ?」ほっといて下さい。
「早く新しい彼女を作れ」僕の自由です。
「早く…嫁をも・・・

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大好きなアナタへ

16/01/02 コメント:0件 きまねこ

 どうやらワタシは失恋をしたようです。
 高く大きく広がる青空を仰ぎながら、ぼんやりと頭に浮かんだのはそんな言葉でした。
 別に、この胸の中に溢れる想いを実らせたいとか、あのヒトと結ばれたいとか、そんなことを望んでいたわけではありません。
 私のようなちっぽけで薄っぺらい存在があのヒトと釣り合うなんて、そんな大それたことを考えられるほど、ワタシは自分のことを理解していないわけでは・・・

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もくもくと湯気

16/01/02 コメント:1件 かめかめ

 やっと涙が止まった礼子はトイレットペーパーで鼻をかむと、ベージュのコートの襟を掻き合せながら駅のトイレからこっそり出た。公衆トイレに入ったのはこれが初めてだった。礼子はあまり外出をしなかったし、外に出ても用事だけをさっとすませて飛ぶように家に帰っていたからだ。
 けれど今日は、どうしても入らないわけにはいかなかった。電車のホームでぼたぼたと涙を流し続ける事などできなかったから。
 生・・・

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この分野で小説家が負けたら終わりやろ

16/01/01 コメント:0件 高木・E・慎哉

こんな得意な分野は、小説10年以上書いていて、初めてだ!
こういうのを世間では、大チャンスというんだろう?

しかし、俺は今回も落選する自信はめちゃくちゃある!
なぜなら、この小説読めているか?

まず、書いている文章が小説かどうか読者が判断できるか?

多分、俺の文章は難し過ぎるから、それより早く愛について語れと!

はいはい、待ってい・・・

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♪修正液の年賀状下さい〜♪

16/01/01 コメント:0件 seika

昨夜は大晦日で、紅白が始まると同時に

「ちょっと、エコバック持って待っていてっ、何度も言わせないでよっ。」

「いいから来てっ。」

とスーパーに直行した。まさしく戸舞賛歌お得意の

「紅白なんか、見ないよーっ。」

と言わんばかりに・・・。でスーパーでは第九流れる中、目の前の商品が見ている間で次々と半額のシールが張られていた。本当に素・・・

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小さな恋のルンバ

15/12/31 コメント:1件 洞津タケシ

「直文サン、ちょっとどいてくだサイ」
「へいへい」

 2075年、家庭用ロボットの会話機能は、掃除ロボットルンバにまで行き渡った。
 滑らかな球体がコロコロと転がり、僕の足元で薄緑色の力場を展開して、ゴミを吸い込んでいく。
 段差を越えられない問題は、2030年に既にクリアした。
 ルンバは階段の前で止まり、格納されていた四肢を展開すると、器用に階段を登りなが・・・

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花言葉

15/12/30 コメント:0件 hana



ある休日の昼下がり。
友人が多くない僕の携帯が珍しく着信を知らせた。母からだった。高校時代の友人が事故に遭って入院したという。幸い車で1時間とかからない場所にある病院だったので、財布と携帯、それから車の鍵だけをポケットにつっこみ、家を出る。

病院に着くと、友人は元気そうで、一安心。軽い接触事故で、腕を骨折したが、命に別状はないという。それに安心して、他愛もない話・・・

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いちょう並木のセレナーデ

15/12/29 コメント:2件 メラ

 ジョギングしている女性が私の横を走り抜けていった。サングラスもジョギングシューズも、どれもよく馴染んで見えた。ペースも早い方だと思う。
 遠目に見ると若い人だと印象があったけど、近くに来ると中年を過ぎたくらいの、けっこう年配の女性だと気づく。でもその凛とした姿がカッコイイなと、素直に思った。
 神宮外苑のいちょう並木はすっかり葉を落とし、裸の枝が冬の乾いた風に吹き晒されている。

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恋愛アンドロイド

15/12/28 コメント:0件 鬼風神GO

「モットーは人間よりも人間らしく≠ナす。当社の最新恋愛アンドロイド、TZR5000ー乙は初期設定段階で千の質問にお答え頂き、お客様の嗜好に性格を最適化します。従来の恋愛アンドロイドにみられるようなひたすら従順なだけでなく、不定期でわがまま機能が発動されまして――」
「あー、もういいからこれちょうだい。あんたの会社のやつは前買ったときも使用感よかったからまた買うよ。この子かわいいし」
・・・

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もしかしての呪縛

15/12/28 コメント:0件 kadotomo

もしかして

誕生日に連絡してくれるかも しれない

もしかして

この歌聞いて 思いだしてくれるかも しれない

もしかして

同じ月を見ているかも しれない

もしかして

家の前で待っていてくれているかも しれない

もしかして

まだ好きでいてくれているかも しれない

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爪痕

15/12/28 コメント:0件 りんご

僕は誰にも言えない秘密がある。
彼が好きだ。

僕は小さい頃体が弱かった。
消毒液の匂いがきつい白い建物が嫌いだった。
でも、家よりもそこにいる時間の方が何十倍、何百倍も長かった。

中学生になると学校に通えるようになった。
誰も知っている人はいない。
腰をズボンではくことが中学生の粋なんてことも知らない。
なんて話しかけたらいいかも分か・・・

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君憶喪失

15/12/27 コメント:0件 浅月庵

 ーー居眠り運転の乗用車が突っ込んでくる。
 僕は車体の上を転がり、アスファルトに頭を打ち付け、病院へと運ばれた。

 目を覚ました僕の瞳に、両親の安堵を浮かべた表情が映る。幸い骨も折れていないようだし、後遺症も残らない程度の怪我だった。結構、派手に轢かれたと思ったのに。

 警察から事故当時の状況を詳しく聞かれ、僕はそれに応じる。
 祖父や祖母、親戚や大学の友・・・

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ベール

15/12/27 コメント:0件 kadotomo

いつもベールを羽織っている娘が居ました

そのベールを羽織っていると
周りの人からは娘の姿は見えません
そうです 本当の自分を隠しているのです

娘は人を振り向かす為に
必死で 喜ばれるものを上から貼り付けました
時には笑顔を
時には元気な声を

剥がれていくと
再び貼り付ける日々を送っていったのです

ある日 ひ・・・

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over

15/12/26 コメント:0件 山盛りポテト

「いらっしゃいませー」
何気なく入った近所のコンビニ。
一目惚れだった。通常よりオクターブ高いであろう聞き取りやすく優しい声。そしてパッチリとした大きな目に華奢な体。全てが理想的だった。
僕は店内で商品を選ぶふりをしながら彼女をみていた。いつこんな可愛い子が入ったんだろうか、制服に目をやると研修中と書かれたプレートが貼り付けてある。新人特有の初々しさも相まってより魅力的に見えた。・・・

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失恋の風景

15/12/25 コメント:2件 土井 留

 遠くで、自転車のブレーキをかける音がかすかに聞こえた。
 連続した作業の流れが中断されて私は数式を書き込む手を止めた。シャープペンシルを握った右手に目をやると、文字に押し付けられた小指の側が黒ずんでいた。大学受験を来月半ばに控え、机の上には使い込んでよれよれになった英和辞典や、角のすり減った参考書が積みあがっていた。
 私は大きく伸びをし、立ち上がって窓に向かった。カーテンを開けて外・・・

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クリスマスなんて大嫌い!

15/12/25 コメント:0件 梨香

 ムーディなピアノの生演奏にロマンチックなテーブルの上の蝋燭の灯り。一人でテーブルについている真理の目に涙に滲む。周りの席にはカップルが食事を楽しんでいるが、真理は何度目かのスマホで隆司に連絡を取ろうとする。

「ただ今、電話にでることができません」電子音が冷たく響く。

「お客様、お食事をお持ちいたしましょうか?」

 京都の夜景を見ながらクリスマスディナーを・・・

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失恋保険

15/12/25 コメント:10件 W・アーム・スープレックス

カフェのテーブルの向うから、彼女が決意したようにいった。
「別れてほしいの」
風太は、彼女が本気なのをみてとると黙ってうなずき、鞄からとりだした書類を差し出した。
「すまないけど、ここにきみの名前と印鑑を押してもらえないだろうか」
「なんなの、これ」
「失恋保険なんだ。失恋すると保険金がおりるようになっている」
彼女は書類に目をとおしてから、彼の言葉に嘘がないの・・・

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はくおう

15/12/25 コメント:0件 柊木 つつじ

 色白の肌にはあまりに色映えのする赤縁の眼鏡が印象的であった。


 おそらく暖房が効いているであろう室内では彼女が紺色のマフラーに顔を埋め手にしていた文庫本を眺めていた。
 文学少女という言葉は彼女のために存在しているのではないだろうか。そう言わしめんばかりの凛とした姿に僕は頬を赤らめた。

「今日は雪が降るらしいよ」

 ガラガラと音を立てて教室・・・

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夢のまた夢

15/12/25 コメント:0件 黒木夜

隣では先頭の見えないほど、長い、長い行列が続いていた。ここは俺の通う高校の廊下のはずだ。
僕は初恋の相手を探していた。
彼女とは同じ中学校であったが、別の高校に通うことになったため、卒業以来会っていない。俺は彼女に告白することができなかった。それが今でも未練であった。
だから、今日こそは……。
彼女はこの高校に通ってはいない。しかし、彼女はこの行・・・

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愛猫

15/12/24 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

朱美は、賑やかな商店街を足早にとおりすぎると、途中路地に折れて酒場やクラブのけばけばしい看板の間をぬけ、やがて外灯の明かりも弱弱しい自分のアパートの前までやってきた。
うなだれたまま一階の自室に入った彼女に、猫のマゼンタがすりよってきた。
朱美はマゼンタを抱えると、ソファに座り、いままでこらえにこらえていたため息をついた。
「グルルル………」
マゼンタが嬉しそうに喉を鳴らし・・・

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クリスマス・ラビリンス

15/12/23 コメント:6件 守谷一郎

クリスマスという名の迷宮に一人ふらふらとさ迷い込んだ俺は、さながらマッチ売りの少女のごとく街中で「愛は、愛はいりませんか?」と悲痛な叫びを心のうちで上げていた。

モミの木の下、俺は寒さに凍えながら彼女を待つ。恋を失うことが「失恋」だというのなら、俺はまだ失恋なんぞしていない。諦めるのはまだ早い。ただやんわりと振られただけだ。自ら捨てない限り、恋はその胸の内にある。そうやって自分を鼓舞・・・

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水星から流れる音楽

15/12/23 コメント:6件 クナリ

 子供の頃からよく、私はアキヒロと夜の空を見上げた。
 アキヒロは星を眺めていた。私は横目で、アキヒロの横顔を見ていた。

 ある放課後、いつも通り両親のいないアパートの中に、私は中学の同級生のヒチカを招き入れた。
 彼女はキッチンやトイレや他の部屋の方に視線を次々移してから、ようやく私の部屋に入った。
「今、この家にはあんたとあたしだけ?」
「そう」
「・・・

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贅沢過ぎる愛

15/12/22 コメント:2件 つつい つつ

 またいつもの公園で弁当を食べている。もう彼女と別れて三ヶ月にもなるのに、休みの度に彼女のマンションの有ったこの街で彼女と過ごした時間を思い返してしまう。今日も二人でよく行ったスーパーで弁当を買い、彼女と並んで座ったこの公園のベンチに座っている。
 別れは突然だった。別に僕が彼女のことを嫌いになった訳でも彼女が僕のことを嫌いになった訳でもなく、僕が浮気した訳でもなく、もちろん彼女が浮気した訳・・・

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15/12/22 コメント:0件 りんご

ずっと一緒に居ると思っていた。
彼には私しかいないと思っていた。

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
あなたを受け入れる事ができなくて、理解してあげることができなくて
本当にごめんなさい。





あなたは大学の先輩。そして同じサークル。名前はだいき。
学園祭が終わって1週間経ったとき
なんとなく付き合い始め・・・

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卒業

15/12/22 コメント:4件 睦月 希結

ドアの前 微かな笑い声と会話が交わされているようだ。書かれてる看板の名前を確認しノックする。
応答の後 足を踏み入れる俺の姿を確認すると、中の雰囲気が変わった。

幾人もの見知った顔と見知らぬ顔。
そして中央に座って居る人の表情は、見慣れたものとは少し違っていた。

振り返り安堵の様子を見せたかと思えば、つと視線を反らし「きっと幸せになるから」
と、涙が溢・・・

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恋愛レストラン

15/12/22 コメント:0件 あすにゃん

いらっしゃいませ。当『恋愛レストラン』へようこそ。わたくしはこのレストランの支配人でございます。当店では、ラフな格好でもいらっしゃることができます。Gパンでも構いません。お気軽にいらしてください。
 
 おや、今日のお客さまは、少しフォーマルでいらっしゃいますね。
 女性の方は、白いブラウスに黒いスカート。
 男性の方は、黒いスーツに蝶ネクタイ。
 深刻な顔をしていま・・・

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君との恋が終わるとき、この手に残るモノは

15/12/21 コメント:0件 上村夏樹

 相沢夏樹との出会いは暗くて狭い路地裏だった。
 彼女はそこでチャラそうな男にナンパされていた。
 近づいて男を追い払うと、
「ありがとうございます。助かりました」
 彼女は安堵の笑みを浮かべてそう言った。
 俺は絶句した……彼女があまりにも可愛かったから。
 絹糸のように細い髪。愛らしい笑顔。小さくて無防備な薄桃色の唇。彼女を構成する全ての要素に惹きつけられた・・・

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てのひらに舞い落ちる温度

15/12/21 コメント:2件 じゅんこ



 雪、降りそうだね。
 呟いた彼女につられ顔を上げれば、白い息が宙に泳いだ。

「今年は、例年より寒くなるんだって」
 もう、そんな季節なのか。例年より寒いって、去年どれくらい寒かったかなんて、数値を出されても解らない。去年は今が史上最高に寒いと考え、きっと今年もこの寒さが一番だと記憶するんだろう。いつも俺は、そんな感じだ。
「だから、そんなとこにいる・・・

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怪獣ジビエ

15/12/21 コメント:0件 笛地静恵

 怪獣を食う。
 怪獣が地球を襲う。退治される。あとに大量の肉が残る。処理に困る。その肉を食おう。そういう案を出した男がいる。先見の明があった。
 怪獣の肉は、新鮮で生命力が強い。冷凍すれば長期保存がきく。政府に承認させていた。
 その肉を使ったジビエの店が、近くにできた。創作居酒屋《怪獣W》という。Wというのは、どういう意味か。興味があった。
 ひとりではつまらない。友人・・・

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雪割草

15/12/21 コメント:0件 ちほ

 ロロに手を掴まれた少女は、その手の温かさと同時に不思議な熱い想いが胸いっぱいに溢れて、硝子玉のような目から涙を零した。慌ててロロは彼女に、窓辺に咲く白くて可愛い花を指差した。
「これ、ぼくがここに持ってきた雪割草というお花で……そうだ、君を『ハナ』と呼ぼう」
「ハナ?」
「うん、君はすごく可愛くて……えっと、お花みたい、だよね?」
 それを耳にしたテオ博士は大笑いしてから・・・

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land cell

15/12/21 コメント:0件 ヤマザキ

「あなたはいつも自分自分自分……自分のことばっかり! そんなに自分が好きなら自分と結婚すれば!?」
 何度目かも分からない妻のお決まりのヒステリーを受けて、島はほとほと愛想が尽きた。
 売り言葉に買い言葉とばかりに気のない返答をする。
「そうだな。君なんかよりも俺自身と結婚した方がまだ有意義な人生が送れそうだ」
 この言葉で妻の中に残っていたわずかばかりの愛情もすっかり覚め・・・

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Love is brown

15/12/21 コメント:0件 八子 棗

 その目の奥に、いつも憂いのある子だった。切りそろえた黒い前髪。ほっそりした顎。校則違反の茶色のセーター。胸はあんまりなくて、でも体育の着替えの時に見えるちょっと浮いた鎖骨とか、腰骨とかにドキッとさせられたあの子。
 女子校だったからかは分からないけれど、女同士で付き合ってる子は実際少しはいたと思う。でも、大学に行ってからも付き合っていたのは、私たちくらいだったと思う。

 彼女・・・

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