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  2. 第八十二回 時空モノガタリ文学賞 【 海 】

第八十二回 時空モノガタリ文学賞 【 海 】

今回のテーマは【海】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2015/06/15

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2015/04/20〜2015/05/18
投稿数 65 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

6

ヴェネチア雑記

15/05/18 コメント:9件 そらの珊瑚

 ヴェネチアの島を訪れるには、陸路かそれとも水路を行くか、選択をせまられる。もちろん私達は後者を選んだ。
 ◇
 共に暮らすようになって丸十年。
 恋の蝋燭はほとんど溶けかかり、ゆらめく灯火さえ心もとなくなっている。
 お互いに秘密がなくなり(表面上はそう感じる)彼の下着を洗うことは毎日のことで実際に洗うのは洗濯機であるが「トイレに新聞を持ち込まないで!」と私は言い疲れ、機・・・

5

真珠の眠る庭で

15/05/17 コメント:10件 冬垣ひなた

その濃い肌の女は、よく波止場にたたずんでいた。
年の頃ははたち半ば、短い頭髪にエキゾチックな顔立ちで、肉付きの良い身体を惜しげもなく海風に晒して、そんな垢抜けないさまに、隅修一は奇妙な親近感を覚えた。
コバルトブルーの海、浜風に色あせた陸、女の存在はそんな風景から孤立している。初めの頃、隅にはそれが不思議で、白人が作った近代的な港町がアボリジナルに全くそぐわないのだと理解するまで、時間・・・

5

海耳

15/05/16 コメント:6件 くにさきたすく

「大丈夫だよ。もう慣れた」
 息子はぶすっとしている。小学校に上がったばかりだから仕方のない事なのかもしれないが、母親としては気が気じゃない。
「何を言っているの。重い病気だったらどうするの? 耳が聞こえなくなってもいいの?」
「でも何か怪しい」
「変なこと言わないの。やっと見つけたお医者さんなんだから」
 私は息子の手を引いて古びた木造家屋の扉を開けた。

2

夢想

15/04/20 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 よせては返す波の,単調な調べが聞こえたような気がした。ワーダは、観測所の窓から外を見た。
 この、砂ばかりの無人惑星に観測員として派遣されてすでに一年がたつ。穏やかな気候、温暖な大気、地下からくみあげる水は豊富で、濾過することもなくのむことができた。しかしここには、川も湖も、そして海も、なかった。
「どうしたの、ワーダ?」
 ナオミの声に、彼は我に返った。
「波の音がきこ・・・

最終選考作品

5

鉄に染まる月

15/05/18 コメント:8件 しーぷ

校庭の隅で、少女が数人の男子生徒に囲まれていた。僕は気づくとその群れに突っ込んでいた。

「私、心まで鉄なのかしら」
さらうように彼女を救いだし木陰に連れていった。そこで彼女が言った。
鉄塊病。彼女が生まれつき持った病の名だ。体の一部が鉄になり、時の流れと共に広がる。やがて全身が鉄となり死に至るのだ。感染することはなく、遺伝性のものだと言われているが、まだ分からないことだら・・・

5

人魚の涙

15/05/17 コメント:7件 そらの珊瑚

 海の中でたゆとう一粒の泡。
 それがかつて人魚姫であったことを知る者はいない。

 私が泡になって十年。すれ違う魚でさえ私のことになど構わないし、話しかける者さえない。食べることも、笑うこともせず、ただ無為に生きているだけの毎日。
 あくびさえ出てこやしない。絵に描いたような、退屈。退屈が、私の心を蝕んでいくようだった、
 こんな海暮らしなんて、本当にもう飽き飽き・・・

5

午後のイルカたち

15/05/17 コメント:7件 たま

 ねぇ、知ってる? 世界中の海を探しても、年老いたイルカはいないのよ……。

 それはいつだったか、「おれと結婚しないか……」と、洋子にプロポーズしたときの返事だったけれど、「どうして……?」と、聴きかえせなかった私は、たぶん、アドベンチャーワールドの陽気なイルカだったかもしれない。

「しばらく逢えないの……」
 灯りの落ちた洋子の部屋で唇をあわせたままの会話がつづ・・・

4

『海にいこう』

15/05/16 コメント:6件 泡沫恋歌

 憧れの先輩から、突然。
『海にいこう』て、誘われた。
 えっ! ええー? 二人っきり、マジで!?

 私こと、岡田佳奈(おかだ かな)は高校一年、フツーの女子高生だよ。
 入学したばかり頃、理科室が分からなくて校内で迷っていたら、二年生の男子が親切に案内してくれたんだ。
 それが五十嵐淳也(いがらし じゅんや)先輩だった。
 スマートでかっこいい! ひと・・・

6

眼鏡をかけた、頭が良くない小学生のディアレクティークに身を寄せて

15/05/01 コメント:9件 クナリ

 高校二年の秋の合唱際を控えたある日のHR。先生が、
「バイオリンが弾ける人はいない? 今度の歌では、ピアノに加えてバイオリンも演奏に欲しいの」
とクラスに呼びかけた。
 首を縮めている私の後ろで、誰かが声を上げた。
「村瀬さんが昔やってました」
 ふざけんな、と叫びたくなる。
「村瀬さん、そうなの。じゃあお願い。ピアノは前に決めた通り、杉村君ね」
 杉村・・・

2

海屋

15/04/21 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 子供のころの記憶だから、あいまいなのはしかたがないが、当時たしかに、『海屋』という商売があったことだけは確かにおぼえている。
 僕が生まれ育ったところは、まわりを山ばかりにかこまれた環境で、もしも海を見ようとしたら電車と汽車をのりついで、半日以上かけないことには望みをかなえることができなかった。
 本とかテレビでみることしかできない海を、僕はどうして知ったのか、それを最初に教えてくれ・・・

投稿済みの記事一覧

5

母胎回帰

15/05/18 コメント:8件 泡沫恋歌

 ヤマダ教授は海水に浸かり考えていた。

 塩分濃度を少し薄めた海水は、まるで母の胎内のような心地よさだ。
 生命の起源、母なる海よ。我々、人類が海に還る日は近づきつつある。

 22世紀初頭、地球では大規模な核戦争が起こった。
 かつて100億人を突破したといわれる世界人口が、この戦争によって10分の1の10億人に激減した。人類は放射能の被爆者、大地は汚染され・・・

0

ころころころころころころ、どーん!

15/05/18 コメント:0件 坂井K

 日が陰る。身体を傾け空を見る。湿った強めの風が吹く。カイは思わず溜め息を吐く。「何なんよ? 真っ昼間から溜め息吐いて」幼馴染のウミちゃんが、カイに身体を軽くぶつける。「風が強なって来たからな、そろそろ大風の時季や思うて」「もうそんな季節なんやね……早いねぇ」ウミちゃんも身体を傾け空を見た。

 一年にある五季のうち、最も厳しい大風の時季。この星中の風景を全く違ったものにする風。カイた・・・

0

航海の城

15/05/18 コメント:0件 梨子田 歩未

 家から歩いてすぐが海だから、海が小学生だったぼくらの遊び場だった。

 ぼくは、海に入ったり、走り回るより、ただじっとして砂のお城を作ることに夢中になった。
 砂のお城を作るのには、技術がいる。海岸の砂は、さらさらとしていて、形を作ろうとしても、すぐに滑り落ちる。
 まず、砂浜を掘り、穴を作る。その中に、海水を入れ、ちょうど良い硬さの砂をブレンドする。
 ただ混ぜれ・・・

0

人魚の海

15/05/18 コメント:0件 STRAY CAT

『海にゐるのは あれは人魚ではないのです』 

 ザザザ・ザザザ…。耳障りな騒音。
 立ち上る生気の籠る汐の匂い。
 泡立ちながら広がっていく塩味の強い液体。
 波に洗われた足元の砂が崩れ目眩を引き起こした時のように、ふらりと身体が揺れ、瞬間、意識が混濁する。

 ざざざ・ざざざ…と海鳴りが耳朶を打ち、私は目眩を振り払うように頭を振った。
 潮風を頬・・・

4

海の中の森

15/05/18 コメント:6件 そらの珊瑚

 フランチェスカお嬢様は中庭で、色とりどりに咲き誇る満開の薔薇を愛でていらっしゃいます。
 おんとし十七歳のお嬢様もまさに今が花盛り。ボーンチャイナの磁器を思わせるような、きめ細やかな純白の肌。ヴェネチアンブロンドと呼ばれる赤みがかった豊かな金髪。薔薇でさえお嬢様を引き立てる小道具のようです。
 お嬢様の後から、孔雀がついてくるのはいつものことでした。お嬢様の十歳の誕生日にと、貴族でも・・・

0

いつかは海へ

15/05/18 コメント:0件 たっつみー2

階段を上がると、ショーが行われるスタンドの最上部にでた。
「ほんと迷惑な話しだろうなあ。平日だっていうのに大勢のうっせえガキと一緒だなんて」
海斗の横で直也が呟いた。
確かに客席の半数以上が、海斗たちと同じ制服を着た中学生で埋まっている。
きっと普段の平日なら、この水族館も空いているだろうし、ショーだってゆったり見られただろうに。一般客からしたら、校外学習の日と重なるなんて・・・

1

番える君たちに、この水を。

15/05/18 コメント:2件 タック

 海に、黄金水を垂れ流した。
 
 太ももの付け根が柔らかく温まり、半身を冷やす水温との差異に、思わず母に抱かれたような、無抵抗の温もりを感じた。頬が、絶え間なく緩んだ。周囲が閑散としていることが、自然との多大なる調和を思わせ、精神を豊潤に、好ましくした。黄金水は海水パンツを経て、海へと還っていった。生命のスープに、また、新たな栄養素が加えられた。生態系保持への、一助となるやもしれない・・・

8

切り身の魚が海を泳ぐ

15/05/18 コメント:7件 草愛やし美

「みんな知っていますか、もうすぐ海の日がやってきます。そこで、今日はみんなに海の絵を描いてもらおうと思います」
「センセーイ、ぼく夏休みに外国の大きな船に乗るんだ、海いっぱい見てくるね」
「姉小路君、いいですねえ」
「センセーイ、あたしの家は今年もハワイ行くってママが言ってたよ」
「西園寺さん、ハワイはさぞ海が綺麗でしょうね」
「センセ、センセ、ぼくはプーケットに行く・・・

6

Flog in a Well

15/05/18 コメント:8件 光石七

 僕がアンナと出会ったのは六つの時だった。鉱物商の父に連れられて訪ねた小島の研究所。そこの責任者レン博士の一人娘がアンナだった。
「実験の途中なのに」
仏頂面で連れて来られた白衣姿の七歳のアンナ。彼女が三歳で化学式を理解し父親の研究を手伝い始めた天才少女で、すでに独自の研究にも着手しつつあったことなど、当時の僕は全く知らなかった。一緒にいても難しい言葉を並べるアンナに僕は戸惑った。

2

その液体

15/05/17 コメント:2件 八子 棗

 海と、雨と、涙が同じ水だなんて、どうしても思えない。
 どれも生温くて、あんまりいい気持ちのするものじゃない。

 曇り空の下、波打ち際に寄せる太平洋の水。うねる曲線から視線を上げ、隣にいる圭吾を見上げる。
 圭吾は困ったように口元を笑みの形にする。
「そりゃ、どれも成分は違うだろうから、同じものだと思わなくてもいいんじゃないかな」
 圭吾はいつだって、理屈が・・・

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ウィンドサーフィン

15/05/17 コメント:0件 リアルコバ

♪風に誘われてあいつの思い出に
     耽りに来たわけじゃないけれど
  風に運ばれて漂う蜃気楼
      あいつのお気に入りのポーズ♪

 湘南の海は今日もキラキラに輝いてまるであの頃と変わらないわね。そうイエローグリーンのセールを片手にいつも波打ち際で私に左手を突き上げたあのポーズ、ほら今の子もみんなやってるわ。

♪海は今日も色とりどり
 ・・・

2

人魚姫の粗筋、改竄の疑い

15/05/17 コメント:2件 レイチェル・ハジェンズ

 皆さん、「人魚姫」というモノガタリを読んだことがあるでしょうか?


 或る日、王子様に一目惚れをした人魚姫が恋を叶えるために魔女の所へ行き、足と交換の代わりにその美しい声をいただくというお話でしたね。


 思い出していただけましたか?


 お話の終わり方には色々あるようですね。人魚姫のパパさんが魔女を倒しその美しい声を取り戻すだとか、海・・・

8

海に生きる男達

15/05/17 コメント:8件 草愛やし美

 ノニは、サナと結ばれた日の朝、二人して島の浜に立った。

 波の国がふるさとだとノニは言いきる。「海へ出るのはふるさとに戻ることさ。もし島に帰って来なかったらふるさとに戻ったと思ってくれ」──そう言ったきり男は口を閉ざした。遠い目は海の彼方の更なるものを見つめているのに違いない。だけど、女のサナには何も見えない。
「私はどうすればいいの」
「待っていればいいんだ。大潮、そ・・・

7

今日の海

15/05/16 コメント:7件 草愛やし美

静かな海の日

 優しく砂浜を抱きしめては
     戻って行く たぷたぷと
         何度もかいなに 抱き留める
 傷ついているあなたに
     貝殻のおみやげを残していきましょう





嵐の海の日

 激しく岸壁を打ち付ける  
      怒涛の波の中
       
 頭の中・・・

0

海辺の少女

15/05/15 コメント:0件 更地

 私の学校である噂が広まり始めた。それは荒唐無稽で根拠なしな、よくある怪談というやつである。
 まず日の出の少し前くらいに、学校から見える砂浜へと赴く。そして海に向かってひたすら「遊ぼうよ」とか「一緒に行こう」とかいう風に誘いかける。そうやってしばらく話しかけていると、後ろからトントンと肩を叩かれて、「本当に?」と誰かが尋ねてくるらしい。尋ねられたらすぐに振り向いて、声の主に返事をする。その・・・

2

迷子の人魚姫

15/05/15 コメント:4件 南野モリコ

 三崎しおりは、寂れた海辺の町では目立ちすぎるほどの美少女で、私は親友の彼女が自慢だった。
幼い頃、お姫様ごっこをして遊んだ時、他の女の子は白雪姫やシンデレラになりたがるのに、しおりはいつも「人魚姫になりたい」と言った。
「人魚姫は、最後に幸せになれないんだよ」
 怪訝な顔をされても、しおりは気にしなかった。私は、そんなしおりの強さが好きで、2人はお互い小さな理解者だった。

0

欲望の海

15/05/14 コメント:0件 Hanabi

水面がさざ波に揺れる。
油の皮膜があちこちでくっついたり離れたりを繰り返している。
たった今、一際大きなコロニーが生まれようとしていた。

ズルズル、ズルズル。
塩分濃度高めのスープの海から、黄色い竜が天へと昇っていく。
その頭を大きな口がぱくりと食らった。

俺は凄腕賞金稼ぎのケンジ=ハラキリだ。
もちろん偽名だが、こっちではこのくらいの方が・・・

2

サンダルの行方

15/05/13 コメント:4件 梨子田 歩未

 夜明け前の海辺には、だれもいない。
 ただ波が寄せては返す音と、朱里が足を進めるたびにきしむ砂の音がするだけだ。
 会社をずる休みするなんて、初めてだと朱里は小さく笑った。

−連休明けの今日、私みたいに休む人はいるのかな。

 朱里はこの砂浜をいつまでも歩いて行けそうだ、と思った。
 この砂浜にも、始まりと終わりがあるだろうが、それが見えない場所を歩い・・・

1

妹と、菓子パンと、海を越えて

15/05/13 コメント:2件 よたか

「お父さんは海をこえて来たの」

 小さな蛍光灯の白々としたキッチン。正方形のダイニングテーブルに、まだ夕食の食器が置いてある。食後のお茶を湯飲みに注ぎながら、雅美は勇祐と美弥にそう言った。
 2人とも父親が日本人でない事くらい知っていた。浅黒い肌を揶揄われた事もあった。だけど父は優しかったし、雅美も強かったから4人でガンバって生きてきた。去年の夏、警官の発砲で父が他界するまでは・・・

1

頬をつたう海の味

15/05/13 コメント:2件 村咲アリミエ

 海とはなんだ、と問われた。たくさん、水がある場所だと答えた。
「水がたくさんあるということは、あの池よりも多いということか?」
 姫はそう言って、自分の庭にある池を指差す。あんなもんじゃない、と私が笑うと、姫は不満そうに眉根を寄せた。
「何倍じゃ、あの池、いくつぶんじゃ」
 あの池が、いくつあっても足りないほど。船を、何日こいでも、何日こいでも、景色が変わらないほどに、一・・・

1

小さな海の怪物たち

15/05/12 コメント:2件 水鴨 莢

 ろくに働かず遊んでばかりのイヴァンなる若者がいた。
 ある日ついに家をおいだされ、あてもなく歩いていたが、やがて道もとぎれて海につく。
「どんづまりだ……。しかしこれは、一つチャンスなのかもしれないぞ」
 と彼はここで一番古株の漁師の名をきき、その家を訪ねた。独り暮らしときいていたが、戸口に立つと、
「あらお客さんね」とちょうど若い娘が出てきたので驚く。
 去りゆく・・・

0

前略、海の街より愛をこめて

15/05/10 コメント:0件 春沢 紡生

「大動脈遮断解除、バックアップ。」
ゆっくりと、しかし力強く患者の心臓は再鼓動を始めた。手術成功。
満足そうに笑みを浮かべ、颯爽と手術室を出ていく――のは俺ではなく、同期の水無郁子。勤続2年目にして、聖都大学医学部附属病院の若きエースとまで呼ばれる、大変優秀な外科医である。そして、俺はといえば今しがた水無に手術の最速記録を抜かれ、怒り心頭のミスター・メタボ・バーコードハゲ教授の後ろを・・・

2

シュノーケアンバランリング

15/05/10 コメント:4件 夏日 純希

 薬指のリングを引き抜くと「どわりゃぁぁわっしゃいーー」と叫びながら、水平線の向こう側を目指して投げ込んだ。愁いで染め上げたような茜色の空を通って、銀色のリングは……わりと小さな放物線で、想像よりかなり手前に着水した。
 ぽちゃり。
 …。
 ……。
 ………。
 ざぶん。
 着水地点から黒いボールみたいなものが浮かび上がったかと思うと、それはまたすぐに沈んで消・・・

1

うたひめ1to3

15/05/09 コメント:1件 ゆい城 美雲

 最近俺が越してきた部屋は、随分海に近い。窓を少し開けるだけでも、潮の匂いを乗せた、ぼんやりした風が入ってくるほどだ。耳を澄ませば、波が行ったり来たりするのが微かに聞こえる。
 俺は今まで、海を眼前で、実際に見たことがなかったから、初めてここに来て、海を見たとき、全く失望させられた。俺が思い描く海は、南国旅行のパンフレットのように、青い、宝石を閉じ込めたような、綺麗な海だったからだ。だが、実・・・

2

Capricorn

15/05/09 コメント:2件 塩漬けイワシ

山羊。
砂の粒が表面を流れる。金色の虹彩が楕円に切り開かれ、うつろな闇をのぞかせている。横倒しになった奇妙な相貌は、元は白かっただろう、汚れた硬い毛並みに覆われている。それは胴体につながり、投げ出された細い前脚が繋がっている。
胴体が、途中から別の物となっている。
背鰭がある。細かな鱗に覆われ、金属的な光沢を放ち、古い鏡のように周囲の風景を歪めて映している。その先端には、海面に浮・・・

2

くそったれの地上へ

15/05/07 コメント:4件 alone

海に潜って水面の空を見つめながら漂う。
差し込む光が珊瑚や海藻を斑に染めて、隙間を縫うように魚は泳ぐ。
ここには様々な色が溢れ、生命が満ち、輝いている。
地上なんかから離れて、この世界の一部になりたい。
そう考えて、想像する。
肺の中の空気を吐き出して、ゆっくりと沈んでいく。
遠のいていく空。優しく抱いてくれる海。
次第に意識が遠のいていく。脳が酸素を欲し・・・

1

波音に呼ばれて

15/05/06 コメント:2件 青木灯

 いつからだろう。無意識のうちにこの場所に来てしまうようになったのは。冷たい潮風に頬を撫でられて我に返ると、私はいつも大海の前にひとり立ち尽くしている。
 美しい白波が私の足元目掛けて駆け寄ってくる。昨日下ろしたばかりの花柄のスニーカーは砂にまみれてしまっているけれど、これ以上汚すわけにはいかず、慌てて波打ち際から離れた。砂浜に足を取られて盛大に転ぶけれど、辺りには誰もいない。季節はまだ春。・・・

2

海について思うこと

15/05/05 コメント:1件 日谷 弥子

 「私は今、元気です」
 そういうタイトルのメールが、会社のメールボックスに転送されて来ました。
 10年くらい前です。当時私は契約社員のような身分でした。私の前職の経歴が評価され、正社員でないという中途半端な位置も作用して、我が儘放題で働いていました。
 メールの転送者は、私の上長でした。私は何かのジョークと思い、窓際に座っている上長に向けて「×長、何ですか、これー」と大声を出・・・

3

流転

15/05/05 コメント:2件 松山椋

 あ、はい、失礼します。すみません、失礼します。本日は面接の機会をいただきありがとうございます、葛西です。いやあ、海の家の面接ってこんな時期にするんですね。まあそりゃそうか。今から従業員集めておかないと夏場に間に合いませんもんね。ええ、わかります。世の中にはこんな求人もあるんですねえ。こんな世界もあるんだなあ、へえ。
はい、名前は葛西道蔵、26歳です。ちなみに聞かれる前に学歴を言っておくと、・・・

2

博士と海

15/05/04 コメント:2件 アシタバ

 ある大手製薬会社で突拍子もないプロジェクトが持ち上がった。
 宇宙開発や深海探索などの国家的事業の為に過酷な環境下でも人間が生きていける薬を作る、というのだ。これが成功すれば世紀の大発明になることはまず間違いないだろう。ところが、本当の理由は実につまらないものだった。
 この会社には若くてとても優秀な女の博士が働いている。彼女は様々な研究で会社に利益をもたらしていた。ただ性格が問題で・・・

1

青イ光ニ埋モレテ

15/05/03 コメント:2件 みや

青色のイルミネーションは緻密に計算され、一つ一つ丁寧に配置された。青色には微妙なグラデーションを付け、滑らかな波の動きをプログラミングにより表現し、大胆で繊細な海の動きを再現していて、音響には本物の波の音が使われていた。

綺麗だね、素敵だね、素晴らしいね、それを見つめる人々はそれぞれに歓喜の声を上げた。初めて見る海に感動し、泣き出す人もいた。海ってこんなに綺麗なんだね、こんなに心が落・・・

2

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15/05/03 コメント:1件 島井宗元

ここはPCのディスプレイ?
それともスマホ?
もしかして、ガラケー?

そう、ここ
君が今この文面を見ているここはどこ?

まあ、デバイスの種類なんてどうだっていいんだけどね
中からだと、真っ暗なスクリーンらしきものの裏側が見えるだけなんだ
このスクリーンが何なのか、表側がどんなになっているかなんて分からない
君にこの画面の裏っ側が見えな・・・

1

海の声が微かに聞こえる

15/04/30 コメント:1件 有朱マナ

海の声が微かに聞こえる。押し寄せる波の音。海風。潮の匂い。今日の涙を拭ってほしくなる。そんな場所。

 夜の九時、誰もいない海岸に、私はいる。特に何かする訳でもない。海を見に来た訳でもない。何となくここに。砂浜を歩き、丁度良いところで座り込む。砂は以外にも温かい。まだ春だというのに。
 靴は砂だらけ。いつもと一緒だ。靴の中だって砂まみれだが、そんなこと気にしない。それでも、夜の・・・

1

うみのおんな

15/04/29 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 海は、むっくりと起き上った。
 その体は、はげしく波立ち、水しぶきを煙のように空中に、高々と舞いあげた。おおむね四角いかたちをたもったまま、のっそりと陸地にあがってきた。
 地面を歩きつづけるにつれて、しだいにその四足は関節のように折りまげることが可能になり、だんだんと歩行に適した仕組みをみせはじめた。
 とはいえまだその姿は、流動的で、ときにまえに大きくせりだしたかとおもうと・・・

2

某日、喫茶店にて

15/04/28 コメント:2件 るうね

 私が喫茶店で文庫本を読んでいると、祖父と孫らしい二人連れが入ってきた。
 私とその二人連れ以外に客はいない。
 席に座ると、孫が祖父にこう尋ねた。
「ねぇねぇ、海の水はなぜしょっぱいの?」
 祖父は笑いながら答える。
「それはね、悲しい時に海に行って泣く人が多いからだよ。その涙が集まって、海になるのさ」
 なかなか詩的な答えである。
 思わず私は微笑んだ・・・

4

メッセージボトル

15/04/28 コメント:2件 汐月夜空

 そのボトルを見つけたのは偶然だった。
 夕焼けから伸びる茜色の光を浴びて、波間に一際輝くそれを私は浜から見つけた。ここは浜辺の街シュトラント――海に漂流物があるのは珍しいことでもないから特に思うことは無かったけれど、なぜか気になったそれを私は泳いで取りにいくことにしたのだった。
「……ぷはっ」
 真昼の熱さを溜め込んだ温かな海をひと泳ぎ。目的のボトルのところにたどり着いたところ・・・

3

誘拐という名の、

15/04/26 コメント:2件 夏木蛍


 古い旅館やホテルの明かりがぼんやりと届くその場所に、俺は何度目かもわからない溜め息を吐きだした。
観光客も寝静まる頃、細かい砂の上に座ってただ波の音を聞いていた。

 冬の夜の海が、俺は好きだった。

初めて来たのは一年ほど前のことだ。
その時も、凍えるような寒さの中で波の音を聞いた。
心の中にじわじわと入り込んで来るような心地良さに俺は呑み込ま・・・

3

15/04/26 コメント:9件 クナリ

 夕暮れを映した海の水面から、無数の水滴が、空を覆う雲へと遡っている。
 昨日から続く雨が、今は映像を逆再生するように、上空へ吸い込まれて行く。
 時間が、戻されていた。
 つい今ほど自分の足で海の中へ歩んで行った彼女の頭が、波間から後ろ向きに上がって来た。
 白いワンピースの背中が見え、腰が現れ、ついには足まですっかり砂浜に上がる。
 時間は、どんどん戻って行く。彼・・・

0

天意伝える巫女と魔弾の射手

15/04/25 コメント:0件 リードマン

夕焼けに染まる海、見ていると彼女と出会った日の事を思い出す。
三ヶ月程前、彼女はこの浜辺に流れ着いた。死にかけていたもののその美しさに曇りはなく、仲間を呼んで直ぐに小屋へと運び込んだ。
この島国と大陸との間の海。寄せては返すその潮騒は心の硬さを弱めてくれる。
私は、彼女が待つ小屋へと急いだ。
海と山に挟まれた小さな集落の長である私。今は回復した彼女と夫婦になって暮らしている・・・

0

思い出の海

15/04/25 コメント:0件 沢藤南湘

 本多は、真紀の四十九日を終えて、後悔と無常観にさいなまれていた。そんな時、ここの海を見たくなり昼前の電車に乗った。
何年振りだろうか、駅舎から出て風に運ばれてきた潮の香りを浴びながら、本多は深く息を吸った。
(ここは中学のバス遠足で来たのが初めてだったな)本多は、遠い昔にロマンチックな気持ちに誘われながら、歩き始めた。
本多が生まれた時代は、貧しかった。本多家も御多分にもれず、・・・

1

灰色の海のかなた

15/04/25 コメント:1件 かめかめ

 改札を出て深呼吸してみた。吐く息は白く、もこもこと立ち上った。
 故郷は昔のままだった。
 何もない駅前、シャッターが下り切った商店街、道端に打ち捨てられた自転車。
 道の向こう、迫りくるような灰色の海。
 俺はダッフルコートのポケットに両手をつっこむ。
 駅からまっすぐのびた道を海に向かって歩いた。

 海岸と言うほどのものもなかった。コンクリートの護・・・

0

大海原まで

15/04/24 コメント:0件 高木・E・慎哉

僕は大海原を走った。
草原の如く大きく続く水平線を、あてどもなく、君と走った。
走る歩幅は一緒だった。
でも、だんだんと離れていった…。
「なんで離れるの?」
「違う。離れたいんじゃないんだ!」
僕の気持ちとは裏腹に君との距離はどんどん差を広げた。
「戻れないんだよ!元の世界に!分かるかい?」
「分からないわ!帰ってこれないの?」
僕たちは泣い・・・

5

完璧な一日

15/04/24 コメント:7件 つつい つつ

 ラインからお弁当箱がどんどん流れてくる。わたしはあたふたしながら、お漬け物を箱の中に詰めていく。お昼休みまで、もうすぐだ。それまで、あとちょっと頑張らなきゃ。
 休憩室でお茶を飲んでいたら、山口主任が入ってきた。わたしは、びくっとして下を向く。今日はミスしてないはずだから怒られないと思ったけど、足音はゆっくりとわたしに近づいてきた。
「坂下さん、二つ、入れ忘れてたよ。今日みたいな日に・・・

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天空に広がる大海原

15/04/24 コメント:0件 横須賀 陽夏乃


 新田(にった)とはぐれた。
 なにやってんだか、と途方に思う反面、この多くの人混みの中でどう身動きを取ればいいのか分からず、泣きたい気持ちでいっぱいだった。

 新田は高校時代の友人の一人だ。十年ぶりぐらいに再会を果たしたのはつい最近の同窓会でのこと。
「おう、陣川(じんかわ)じゃん。お前、本当に代わり映えしないな」
 それが彼の最初の一言だった。
「・・・

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黒潮

15/04/24 コメント:1件 メラ

 ディーとはカナダのトロントで知り合った。彼はインディアン、いわゆるネイティブ・アメリカンで、ずんぐりしているが、日本人とさほど変わらないような容姿をしていた。
「オレはアメリカンじゃないよ」
 ディーは訛りのある英語で話す。そう、彼はインディアンの血を色濃く引いているが、南アラスカのインディアンだった。
 ディーの父の代にアメリカに渡り、ディーは父の死後、カナダに移り住んだとい・・・

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青 澄み渡り

15/04/24 コメント:2件 汐月夜空

 身体を水面に横たえ、見る、青い青い空。
 凪いだ海。時が止まったように静かな世界に、一人。
 私は息をするように、私の存在意義を発するのです。

『ah―――――』
 
 その振動、その呼吸に合わせ、水面は緩やかに波打ち、私を中心に綺麗な波紋を広げます。それは光を反射して、きっと空の上から見れば私の居る所に何かを投じたように見えることでしょう。私はそれを想像し・・・

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彼女と俺の汽水域

15/04/22 コメント:6件 るうね

 汽水域≠ニいう言葉を知っているだろうか。
 簡単に言えば、川の水と海の水が混じり合うところのことである。
 淡水魚は汽水域より海の側には行けないし、その逆もまた然り。
 そんな境界線。


「……田村?」
「え」
 俺の呆然としたつぶやきに、サングラスの少女が視線を上げる。
「さ、相良……」
「お前、何やってんだ、こんなとこで」

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海からの授かりもの

15/04/21 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 むかしむかし、ある村に、としさんと、はつこさんという仲の良い夫婦がおった。
 二人は、なかなか子どもを授からなかった。いつか、二人の子どもを、この腕に抱きてぇなぁ・・・と、としさんもはつこさんも、心から願っとった。

 ある日、としさん夫婦の家に、髪の長いきれいな女の人が、たずねてきた。
 その女の人は、
「あなた方は、子どもがほしいと願っているようですね。これから・・・

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海を行きかう工作員

15/04/21 コメント:0件 ポテトチップス

中朝国境の街、丹東に到着した阿久津忠彦は、カメラや洋服が詰まったバッグを背負ったまま、丹東中華国際旅行社に向かった。
中に入り、日本語が話せる中国人担当者から、北朝鮮ツアーの簡単な説明を聞いた後、3泊4日のツアー料金、13万5千円を人民元で支払って北朝鮮のビザが手渡された。
昼の12時10分、代理店の人間と一緒に丹東駅から平壌行の列車に乗り込んだ。
駅から少し走るとすぐに橋を渡り・・・

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霧の中の船

15/04/20 コメント:2件 水鴨 莢

 霧の中で目を覚ましたドルガンは、蒼く霞む先に確かな獲物の影を捉えた。
 頭をふり、足下に転がる空の酒盃をフラフラと蹴りながら、操舵手へ檄をとばす。赤ら顔にズングリとした体型で、短い腕をふり回し怒鳴りちらす様はどこか滑稽でもあったが、彼を指していう”海の赤牛”の異名を聞いて震えあがらぬ者はこの海域にいなかった。
 船首で偏光レンズを覗くジャックの声があがる。霧のむこうに鮮明になりつつあ・・・

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空母小学校

15/04/20 コメント:2件 山田猫介

 子供ならたいがい誰だって小学校へ行くが、僕のような小学校生活を経験した人は少ない。僕が生まれ育ったのは、XX市内の水上区と呼ばれる地帯だった。文字通り港の一画で、倉庫街に混じって小さな木造の住宅が立ち並び、ごみごみした狭いところだ。
 用地不足や住宅不足が慢性化していた。空き地などまるでなく、造船所の空きドックが僕たちの唯一の遊び場所だった。道は狭く常に人だらけで、風がピタリとやむ夏の午後・・・

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静かの海

15/04/20 コメント:4件 山田猫介

『風船爆弾』というとファンタジーっぽく響くが、第二次大戦で使われた本物の兵器なのだ。日本軍が作り、太平洋を越えてアメリカ本土に落下することを期待して、大量に打ち上げた。
 風に乗って飛ぶ爆弾だが、太平洋の高空は西から東へ常に強風が吹き、あながち意味のない作戦ではなかった。娘時代、早苗はこの爆弾の製造に参加していた。同僚は同年代の女子工員たちで、決して楽な仕事ではないが、みな若く、班長が見張る・・・

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海になりたい

15/04/20 コメント:6件 夏川

 直樹からのメールが届いたのは深夜0時の事だった。
 件名は無く、本文には『海になりたい』の一言が添えてあるだけ。他の人から送られてきたなら無視するような意味不明の文だが、俺はそのメールを見るや着の身着のままで直樹の家へと向かった。

 直樹がこの手のメールを俺に送りつけるのは女に振られた時と決まっている。
 ヤツは非常に顔が良く寄ってくる女は数えきれないほど。そして直樹も・・・

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海に抱かれて

15/04/20 コメント:0件 笹峰霧子

 今年の春、克子は独りであの海へ行った。あれから一年経っていた。50年ぶりに秀樹と再会して三度目のドライブ。今まで家族ともドライブなどしたことがないという彼は、かつて住んでいた勤務先の病院に近いその海岸のことはあまり知らないらしかった。
 ふたりは駐車場に車を停めて、柔らかい草の生えた広場を通り抜け、海へ通じる細い道を歩いた。舗装がしてない道にはいつかの雨のぬかるみがそのまま残っている。

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潮騒

15/04/20 コメント:2件 るうね

 潮騒に、小十郎は意識を取り戻した。
 うっすらと目を開けると、茅葺きの天井が目に映る。
「気付かれましたか」
 声。
 そちらを見ると、初老の男性がこちらを見つめていた。草鞋を編んでいたものだろうか、手元に藁束があった。
「ここは……」
「玄界灘沖の名もなき島です」
「私は」
「今日の昼、砂浜に打ち上げられていたところを娘が見つけましてな。とりあえ・・・

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