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第三十六回 時空モノガタリ文学賞【 無口な人 】

今回のテーマは【無口な人】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2013/09/02

※注意!R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ ヒト・モノ・イキモノ
投稿期日 2013/07/15〜2013/08/12
投稿数 50 件
賞金 時空モノガタリ賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

7

彼女が無口な理由

13/07/15 コメント:14件 光石七

 高校生活がスタートして二ヶ月が過ぎた。初めのうちは同じ中学出身者同士で固まっていたけれど、今はもう新しい仲良しグループができている。休み時間にダベったり、お弁当を一緒に食べたり、買い物に付き合ったり、私もそれなりに楽しんでいる。
 クラスの中にどのグループにも属さない女子がいた。琴田さんだ。かわいい顔をしているのに、大人しくてあまりしゃべらない。話しかけても簡単な返事を返すだけ。授業で同じ・・・

4

酒の音

13/07/15 コメント:7件 W・アーム・スープレックス

 あのときはまだ、昭和だったかな。
 ぼくはせまいアパート住まいで、部屋には風呂がなくていつも、近くの銭湯にかよっていたときのことだ。工場の仕事が終わって、一汗ながしにいく風呂は最高で、ときどき入れ墨した人が横に入っていることもあったけど、肌と肌のふれあいの場だから、それもしかたがない。
 銭湯の帰りにはかならず、たちよるところがあった。労働で油にまみれた体を洗いおとして、さっぱりした・・・

最終選考作品

6

古い手鏡

13/08/12 コメント:12件 そらの珊瑚

「ダレニモ イウナヨ。ヤクソクダヨ。モシ イッタラ ヒドイメ二 アワセルゾ」
 橋の上から花ちゃんを突き落とした男は私にそう告げた。まだ六才だった私はあまりの怖ろしさに、耳をふさいでその場に座り込んでしまった。
 ――ひゅう、ひゅう。かすかな風にも木とロープで作られた粗末な橋はぐらぐら揺れた。どのくらいそうしていただろうか。気付けば男は消えていて、私は小さな黒い手鏡をぎゅっと握りしめて・・・

2

無口な少年と歌唄いの少女

13/08/05 コメント:5件 汐月夜空

 少年には生まれつき、口が無かった。
 鼻から下にはゆで卵のようにつるりと起伏のない肌が存在するのみであり、幼少のころよりそれをもとに周りの人に迫害されることが多かった。
 五感の内の味覚が存在せず、常に鼻にチューブを刺して必要最低限の栄養を摂る少年は、しかし、幸いにも優しい両親のかばい立てもあり、心だけは素直でまっすぐな人間へと育った。
 なんとかして他人と円滑なコミュニケーシ・・・

10

無口な子

13/08/02 コメント:24件 草愛やし美

 我が子は、一言も声を発することなく、私達とは違う世界へと旅立った。何のために辛い不妊治療を受けてきたのだろうか。二十週目から、私はずっと大事を取って産院に入院し続けてきた。ようやく授かった我が子に、一言の言葉もなく逝かせてしまったのは、私の身体がいけないのだ。あの時、あんな選択をしなければ……。後悔しても遅いことも、どうしようもできないこともわかっている。それでも、私は、罪人だ。経済的な理由で、・・・

12

無口な背中

13/07/22 コメント:22件 泡沫恋歌

「黙秘権を行使します」
 そう宣言したきり私は無言を通した。刑事にどんなに恫喝されても、自分に不利な証拠を見せられても一切口を開かなかった。私が犯した罪は殺人未遂、被害者は病院へ救急搬送されたという。

 心の耳を塞ぐ――。
 夫はとても無口な人で、無言の時間には慣れていた。結婚して十年間になるが、私が話し掛けても「ああ」とか「うん」しか返事をしてくれない。
 仕事が・・・

2

つくね

13/07/22 コメント:6件 メラ

「てゆーかさ、マジでむかつくわけ」
「うん」
「ああいう奴はさ、絶対地獄落ちると思うよ。マジで」
「・・・へえぇ」
「でな、オレは思うんだけど・・・。お、これうめえ!やばくない?このつくね」
「ああ、美味いな」
「これさ、うん・・・、んぐんぐ・・・。このプチプチした食感さ、鳥の軟骨入れてるんだよ。オレさ、こういうつくね大好き」
「へえ」
「ごめんごめ・・・

12

アン ノルド パル

13/07/16 コメント:16件 クナリ

私が高校二年の時、突然右膝に人の顔が現れた。
人面瘡というらしい。
現れたものは仕方ないので、制服のスカート丈を長くして隠した。
当時私はクラスの影のような存在で、お陰で膝の顔に気付く人はいなかった。

部屋で一人の時、私はその顔に名前や性別はあるのか尋ねてみたが、顔は全く答えない。
無口なヤツだなと思って見ていると、その口に涎が滲んでいた。
「お腹空いて・・・

4

帰宅者

13/07/15 コメント:13件 yoshiki

 ――脳が茹で上がるような異様に暑い夏の日だった。
 水曜が休みの俺は多少涼しくなった夕方から買い物に出かけて、雑誌と米を買って家に戻ってきた。そのまま座らずに米を砥ぎ炊飯器のスイッチを入れる。そのときなぜか妙な心持になった。部屋の光、光線の加減と言うか明るさがいつもと微妙に違うのだ。女房に奴、照明でも変えたのかと思ったがよくわからない。取りあえず気にせず時計を見るとそろそろ女房の帰る時間だ・・・

投稿済みの記事一覧

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雄弁な弁当

13/08/12 コメント:0件 久一

 別に俺は不良じゃない。
ただちょっと退屈でつまらないだけ。
(綺麗だな)
 青々とした空に真っ白い雲が浮かんでいる。屋上の塔屋の上は遼一のお気に入りの場所だ。遼一は授業をサボっては決まってここにきて、仰向けに寝転びただ何となく空を眺めていた。
 風に吹かれ流れてきた雲が太陽を隠す。屋上に陰りがさす。その時遼一のお腹の虫が鳴いた。
(腹減ったなー)
 ごろんと横・・・

0

隣の席の、菅野君

13/08/12 コメント:0件 とな

***

差出人:菅野
おはよう。今日は良い天気だね!

***

差出人:菅野
学校着いた。これから朝練行ってくる。

***

差出人:菅野
朝練終わった。1限は現代文。めんどい。

***

差出人:菅野
これから昼飯。今日は生姜焼き!

***
<・・・

8

おわら風の盆

13/08/12 コメント:9件 草愛やし美

 今、思えば、すぐにわかるべきだった。貴女だと気づいたのは、全てが消えてしまった後だった。こんな僕のために、貴女は……。

 裏町のBARであの夜、僕は酔い潰れていた。もう終わったと呟きながら……。大賞を狙っていたわけではない、だが、せめて何かの賞という名が欲しいと、そんな甘い考えとっくに捨てたはずだったのに。だが、特別な公募だから応募してみないかと、出版社の編集者から煽てられた。創立・・・

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澄んだ瞳で

13/08/11 コメント:0件 

 「ごめんね。記憶喪失なんて嘘なんだよ。実は私、演技が得意だったんだ。」
 彼女がそう告げたとき、不思議と僕は喜んでいた。まるで僕にだけ明かしたような話し振り。先生や彼女の両親、僕らのクラスメートまで騙していたのに。

 彼女と出会ったのは僕がこの学校に四月に編入してから二週間後、放課後、偶然彼女の財布を拾ったのが始まりだった。
 編入早々、僕は周りから忘れられるように心が・・・

6

うさぎ島

13/08/10 コメント:11件 そらの珊瑚

八月になると母さんは無口になった。それはほとんど不機嫌にも見えるほど。子供だった私は単純に母さんは暑いから夏が嫌いなんだろうと思ってきた。
 その本当の訳を知ったのはつい最近、私は既に五十歳になっていて、母さんがそれを語るには半世紀も長い道のりが必要だったことになる。
 ◇
 瀬戸内海に浮かぶ大久野(おおくの)島。忠海(ただのうみ)港から沖合三キロほどに位置し、確かに見えている・・・

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無口な星空

13/08/08 コメント:1件 ありす




『それはまるでおれ自身を表しているようだった』
 お気に入りの桃色のカーテンが付いた窓を開けて、携帯電話越しに彼の声に聞き入っていた。彼は私に見つからないように、声を押し殺して泣いているようだった。私は困った。どうも、こうも。何があっても、男は堂々としているのが義務という生き物であろう。うんざりと溜め息をついて、子どもに説教をする母親のように、呆れた声で話す。

5

シグナルを聞きながら

13/08/07 コメント:4件 四島トイ

 レースは佳境だ。玩具のようなレーシングカートに乗った選手達がコーナーを抜けていく。息をつめる。ゴール付近に客席が見えるのに歓声も聞こえない。最後の直線で加速する。体が前のめる。
「……あああっ」
 誰かがボリュームを操作するかのように、消えていた音が戻ってくる。扇風機の唸り。開かれた窓から漏れ聞こえる庭先の蝉の声。
 ふうっと息をついて視線を移す。隣で青島一輝が畳の上で仰向けに・・・

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ショプ店員のあの子と僕

13/08/07 コメント:0件 てんとう虫

いつも行く3番目に大きい都市の賑やかな町。いろいろ見て歩いて見つけたアクセサリ−店の綺麗なあの子。少し高そうで入りづらくてガラス越してみていた。お客さんや店員と話していた時にふとしてみた笑顔は無邪気で子供ぽく可愛いらしい。声が聞こえないので音のない画面で見ているようだ。友人と回る店が多い中それぞれお気に入りの服店を見てその後待ち合わせだと別れたのこり時間はあと1時間半ほどで。兄がくれたペンダントヘ・・・

4

We couldnt end weekend

13/08/07 コメント:7件 平塚ライジングバード

今日も暑くない?ヤバイよね。
あまりの暑さに全然寝れなくて、今週が凄く長く感じたよ。本格的に夏が来たってことを実感するね。
で、で、来週から始まる夏休みどこに行こうか?何をしようか?
え…何でそんな悲しそうな顔するの?もしかして泣いてる?
ごめん、夏が嫌いだったか?
違うの。
じゃあ、もしかして僕が嫌いだったのかな?
全然違う?
そっか。それはよかっ・・・

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とつとつ そのあいま

13/08/06 コメント:1件 とい

およそ2年の付き合いになるけど、喧嘩はない。
仲いいなあ、と羨ましがられると、ちょっと複雑だ。
道行くカップルが和気あいあいと話しているのを見ると、最近羨ましくなる。
手を繋いで遊園地の方へ向かうカップルの背中をこれ見よがしに見せつけられて、俺の心情はやや、やさぐれていた。
そのせいで、アプリゲームを開いていた携帯画面に彼女からのLINEが乱入していたことに気が付かないで、・・・

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大きい手

13/08/05 コメント:1件 

「おい、拓也。着いたぞ。」
夏休みの真ん中。ボクはじいちゃんの住むおうちに来ていた。お盆の日に、ご先祖様が幽霊になっておうちに戻ってくるんだって。だからボクもお父さんといっしょに、じいちゃん家にお参りに来たんだ。
「ようきた。」
お父さんが玄関の扉をあけると、パンツ一丁のじいちゃんがそこにいた。車の音が聞こえてきたから、出迎えようとしていたみたいだ。
「元気しとったか。」<・・・

2

浅尾ジョゼファの空腹

13/08/04 コメント:1件 

 浅尾ジョゼファは普段から何も言うことがなかった。幼少期にブラジルから日本にやって来たものの平均よりも知恵遅れだった彼は結局30歳になっても日本語を上手くしゃべれるようにはならなかった。家ではいつもポルトガル語を話していたしいつか帰国を夢見ていた両親も大した問題だとは思っていなかった。
 日本では彼に友達ができたことはなかった。好奇心をもって彼に話しかけてくる人はいたが、簡単な日本語と相槌し・・・

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無口なおとうさん

13/08/04 コメント:3件 梅子

「とーちゃんがいない間な、こいつが俺の代わりに美代のとーちゃんしてくれるからな!仲良くするんだぞ!」

「すごーい!おっきいー!おとうさんありがとう!」


ドアを開けて、ただいまと言いながら部屋にはいる。午後10時、ラップしてある晩御飯と“おとうさん”がダイニングで私の帰りを待っていた。
10年前、お父さんが自分の代わりにと置いて行った大きい大きいテディベア。・・・

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教室の片隅で

13/08/03 コメント:3件 涙腺

彼女は一体なんなのだろうか。
宇宙人や超能力者というそのようなニュアンスの意味ではない。彼女が分からないのである。
何かの理由があって他との接触を頑なに拒んでいるのかとか、一回喋り出すとそのギャップのインパクトで嫌われるかもしれないとか、きっと何かがあるに違いないのである。
短いが、今まで生きてきて15年。十人十色、千差万別、多種多様。様々な人間と関わってきたが、このような人間は・・・

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愛しく無口な人達

13/08/01 コメント:0件 天田珠実

ギャラリー喫茶きまぐれ】は午前7時開店午後7時閉店である。モーニングと午後のお散歩の一時等をメインのお客様にしていた。店内はクラシック音楽が流れ時にはお客様のリクエストにも応えていた。ギャラリー喫茶でありクラシック喫茶だった。店内は音楽好きやアート好きの常連でほどよい客の足並みになっていた。夫婦連れやグループ、サークルの他は単身のお客様がぽつぽつ来店する程度である。年齢は様々たが40代から80代で・・・

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無口な友情

13/07/31 コメント:0件 masahiro

 今となっては、お互い、無口な人という印象なのだろう。彼と出会ったのは大学3年に
なる直前の春休み。
 当時、両親と同居の私は地元運送会社の倉庫兼営業所でデータ入力のバイトをすること
になった。家に近い、それだけの理由で始めたアルバイト。そして、彼はその会社の正社
員として働いていた。彼は21歳。彼と一緒に仕事をすることはなかったが、年齢もほぼ同
じ、同じく地元出身と・・・

1

13/07/31 コメント:1件 moet

 僕はね、君のことが好きじゃなくなったんだ。
無口な僕がこんなことを言い出すなんて、と、君は驚くだろうけど、僕にはもう君が必要ないんだよ。
これからは、僕ひとりで生きていくんだ。
 おいおい、そんな顔しないでくれよ。僕だって、言いにくいことを言ってんだ。
君も素直にこの部屋から出て行ってくれないか。
あ、でも間違えないでくれよ、君のことが嫌いになったわけじゃない。

1

ハチャメチャ少女 だんまり少年

13/07/30 コメント:1件 日暮 遥

 アイツと付き合ってかれこれ三か月。メールはあたしから。デートに誘うのもあたしから。唯一アイツからしたことと言えば告白してきたことだけだった。
 そりゃあね、あたしも彼氏なし歴=自分の年齢だったしそれにアイツの顔もまあまあだったからついついOKしちゃったけど改めて考えてみるとやっぱりおかしい。
 だってね、クラスは違うしあたし、高校二年なんだけどね、高校入って初めて見る顔だったし一回も・・・

2

颯太の夏休み

13/07/30 コメント:4件 鮎風 遊


 夏という字に、悪魔の魔、ちょっと恐ろしい名前を持った夏魔(なつま)。彼女は颯太のオフィスで働く優秀な派遣スタッフだ。服装も髪色もいつもツートンカラー。いかにも派手で活発そうだが、その外見に反し、立ち居振る舞いはおしとやか。もちろん口数は少ない。
 コミュニケーションは社内メールのやりとりと、流し目だけでこなす。そんなミステリアスな夏魔に恋心を抱いてしまった颯太、断られて元々、夏休み・・・

1

追憶

13/07/29 コメント:2件 涼風豊

 世の中、働いていると物言わず堅物な上司や同僚などに一度は出会う。
東幸四郎もそんな社会の歯車の一人として、物言わぬ上司を持ったサラリーマンだ。
しかし東は慣れっこだった。なにせ父親が物言わぬ堅物な、いわば「昔の人間」であったからだ。それでも自分の父親が母と出会い、子供を授かり家庭を築いているのを実際にその息子として生を受けた東にとっては多少不思議であった。
普通に考えるともし自・・・

5

Worlds End Lovers

13/07/29 コメント:12件 青海野 灰

釣竿とバケツを持って、私は家を出た。

立ち並ぶビルの廃墟は、それを覆う蔦や緑の葉を、今日も風に揺らしている。風に乱され視界を遮る邪魔な髪を耳にかけ、緑の茂る廃墟の街を歩く。この長い髪が煩わしいと思う事もあるが、これを切る権限を私は持たない。
港に着き、餌を付けた針を海に投げ込み、魚を採る。私の駆動維持に必要な量を確保した後、焚き火でそれを焼き、食べる。
「なーう」
・・・

0

モンチー

13/07/28 コメント:3件 コキ

 モンチーと出合ったのは、六本木のクラブでだった。高校からの友人のエリと行った恵比寿のクラブは退屈で、タクシーに乗って六本木まで来て、携帯のクラブサイトから適当に見つけたのがそのクラブだった。そのクラブの音楽はお世辞にもいいものとはいえなかったけれど、2回もクラブの入場料を払った後だったので、なんとか朝までそこで持ちこたえることにした。
 人がぎゅうぎゅう詰めで踊ってるフロアと、ソファがあっ・・・

0

無口な転校生

13/07/27 コメント:0件 つるばた

 雅子が教室に入ってくると、隣の席の麗華がうつむいてた。
「ちょっとどうしたの?」雅子が聞くと、麗華は蚊の鳴くような声で「かばん」と言った。鞄は水浸しで筆記用具から教科書までぐちゃぐちゃだ。
 「……ひどい。誰がこんなことを」背中に視線を感じた。振り向くと、シズカとマリコがにやにや笑っている。
 雅子は麗華の鞄を持つと、ツカツカと二人に詰め寄った。
 「あんた達でしょ。 ・・・

1

オレンジと林檎

13/07/26 コメント:1件 写楽亭獅円



ある日の帰り道。一斉に帰路へと向かう人々の足音で埋め尽くされているホームを抜け、柔らかくなった日差しが降り注ぐ歩道橋の上へと差しかかる。ふと、立ち止まり、何処までも伸びていく黄金色の線路を人波から外れて、眺めてた。
長い長い貨物列車が、多分摘み取ったばかりの林檎をいっぱいに載せたコンテナを南へと、駅のホームをスピードを落とさずに通り過ぎる。追い風に交じる甘い香りが鼻先と忘却を・・・

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無口なあの子

13/07/24 コメント:2件 Gbox

クラスに一人くらい無口な子が居るだろう。
授業中に教師から当てられて時間延ばす奴、俺そういう奴嫌いなんだよな。
俺のクラスにも居る、いっつも無口、常に無表情な女子が。
そいつが数人の女子に絡まれていた時。
「なんでいつも喋らないの?。」とか「いつも何してるの?。」とか。
質問されていても無視、あんな奴本当嫌い。
すると女子がイライラしたのか、その子が読んでいた本・・・

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電車

13/07/23 コメント:0件 日暮 遥

 ガタンガタンゴトンガタンガタンゴトン
 電車が揺れる。立っている私も揺れる。ゆらゆらゆらゆら。
 乗っている人たちも揺れる。ゆらゆらゆらゆら。
 実をいうと私には記憶がない。しかもこの電車に乗った記憶がないのだ。私が最後におぼえているのは雨の中にまぶしく光るライト。そこから体がふわりと浮いた感覚が襲ってきて、気が付いたらこの電車の中に立っていた、という訳だ。窓の外からはさっきか・・・

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遅すぎる告白

13/07/20 コメント:1件 satuki

愛してる。
ただそれだけを言うのに、何年もかかってしまった。
今ならいくらでも言える。躊躇することなく耳元で囁ける。
僕が彼女に告白できたのは、その時が最初で最後だった。
瞼を重く閉じて、僕が何度愛の言葉を囁いても、沈黙を守っている彼女の顔を見て、初めて涙を流した。

愛していたんだ。
ずっと側にいたけど、一度として言えなかったことだけど、ずっと君だけを愛・・・

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文芸男子に紡ぐ言の葉

13/07/19 コメント:7件 芝原駒

 御歓談中に失礼します、と司会役がマイクをとったのは午後八時を回った頃。老若男女ひしめく同窓会場のあちこちで、酔客達が、ガヤガヤと声を上げる。
「我が半沢高校文芸部の」
 お前のもんじゃねえぞ、と声が上がり会場は笑いに包まれる。
「私と皆さんの半沢高校文芸部の、今後の発展は最後に祈願するとして、先に、三丁目の村瀬さんからお知らせがあります」
「こらあっ。元顧問か村瀬先生、せ・・・

0

音無さん

13/07/19 コメント:2件 しーぷ

「ちょっと、何とか言いなさいよ」
うずくまる私を囲む3人の少女。
「瑠香、無理だって、音無さんだもん。名前の通り何も喋らないよ」
「そうだね……じゃあ、違う音でも聞かせてもらおうかな」
瑠香はニヤリと嗤ってから右足を振りぬいた。
「うっ……」
「何だ、音無じゃなかったの?」
「あんたさ、あたしらのこと見下してんでしょ」
別に。何も言わず目も合わせず、・・・

1

無口なお喋りお父さん

13/07/19 コメント:0件 alone

私のお父さんとお母さんは不思議な夫婦だ。だって二人は言葉のやり取りをまったくしないから。
お母さんが何を話しかけても、お父さんは何も喋ろうとしないで、ずっと無口に黙っている。
私が今までに見たお父さんの喋っていたところなんて、指の数にも満たないと思う。
それだけお父さんは無口な人だった。――――――でも、お母さんにとっては違うらしい。


私は食卓テーブルに座り・・・

1

マジックアワー

13/07/19 コメント:1件 山野

微笑ってくれる。
話を聞いてくれる。
一言も漏らさず、ただひたすらに頷いて。


【 無口な人 】


「聞いてよ、ねぇ
今日会った人ね、本当信じられないんだけど」

「それからね、ずっとね、
そんなだったのよ。ねぇ?笑っちゃうでしょ?」

何も言わず
ただ頷いて話を聞いてくれるヒト。

鼻筋が通・・・

1

口のない人

13/07/17 コメント:3件 三日坊主

彼はうなり声とも言えない声を時折あげながら、扇子で顔を煽っていた。局面は終盤。最も緊迫していた。一つのミスが命取り。名誉と誇りと将棋界が指先にかかっていた。前後に体を揺らし、駒たちを目まぐるしく見渡した。彼の相手はコンピューターソフト「モンスター」。1秒間に数億の手を読む。まさに「モンスター」だった。

「これしかない」

彼は小さく呟き、大きく息を吐き「銀」を相手の急所に・・・

2

もうはなさないで

13/07/17 コメント:4件 汐月夜空

 華の金曜日の夜はどこの居酒屋も人でいっぱいだ。
 ピンポンと、遠くで呼び出しのベルが鳴り響いては、女性店員が元気よく駆けていく。
 そんな笑い声、囁き声、統一性のない感情が籠ったガヤガヤとした喧噪の中。
「兄ちゃん、良く見る顔だけど、奥さんと喧嘩でもしたのかい?」
 左隣に座ったスキンヘッドの男が満面の笑みを浮かべながら僕に声をかけてきた。
「……ええ、まあ、そんな・・・

1

夢の人

13/07/16 コメント:2件 yoshiki

 そこは広く眺めの良い丘の上の公園であった。公園の中央には天馬の噴水があった。しっとりとした緑の芝生が敷き詰められ、その噴水を中心に路が四方に広がっていた。その路の両端には洒落たベンチが設置してあった。カップルの為に作られたような公園であった。天馬は白い石像で顔は天を仰いでいた。その天馬は口から水を噴いている美しい造形であった。
 菜緒は何度この公園の夢を見たかわからない。数え切れない程同じ・・・

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僕の思考と彼女の行動

13/07/16 コメント:0件 satuki

彼女は可愛い。
歳が五つ離れていること以外は、僕にとってネックになっていることはない。

ある日、彼女に思い切って僕の気持ちを伝えた後、不意にキスをしたくなった。
顔を近づけていくと、それを悟ったのか彼女は突然口臭の確認をし始めた。
僕はフリスクを二、三粒口に含んで、向こうを向いて口臭チェックをひたすらしている彼女の顎を親指と人差し指でつまんでこちらを向かせてキスをし・・・

4

無口な彼女

13/07/16 コメント:5件 マナーモード

季節は春だった。ぼくは朝の電車の中で出会った彼女の髪に注目していた。いつも満員電車で、ぼくは少し離れた場所に立ち、毎朝彼女のうしろ姿を観ていた。実にきれいな長い髪で、それを観る度に感心していた。

 やはり時々一緒に同じ電車に乗る友人の一人が、彼女について教えてくれた。

「彼女はテレビのシャンプーのコマーシャルに出演しているんだ。髪だけなんだけど」
「マジかよ。そう・・・

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声を失っても。

13/07/15 コメント:2件 satuki

彼は最近何も話さなくなった。
正確には話せなくなった。
今現在彼の会話の手段は、手話しかない。
何故、どうして彼は言葉を失ったのか、私は知らない。
それでも、手話をする時の彼の表情は豊かで、別段特に変わったことは殆どない。
しかし、時折彼は言葉にならない叫び声を上げることがある。
どうしたのだと聞いてみると、怖い夢を見たんだと震える指で言葉を作る。

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川を渡る小石のように

13/07/15 コメント:2件 かめかめ

 リビングから、両親の声がする。
 太一は頭から布団をかぶって耳をふさいだ。耳をふさいでも、声は容赦無く布団の奥まで突き刺さる。

 母が父をなじる。
 父が母をけなす。
 太一は生まれたことを後悔する。

 オレが生まれなければ、きっと両親はケンカなんかしなかった。
 ほらまた。
 太一が悪いのは母親のシツケが悪いからだ、って。
 太一・・・

1

サイゴのノゾミ

13/07/15 コメント:1件 ポテトチップス

 正次郎が玄関を出ようとすると、妻の菊子が後ろから呼び止めた。正次郎は後ろを振り返らずに、黙っていつもの道具を持って玄関を出て行った。
 風邪をこじらせて緊急入院したのは3週間前で、3日前に病院から自宅に帰ってきたが、まだ完全に病気は回復していなかった。菊子はそんな正次郎の体を心配して池に行くのを止めているのだが、そんな妻の気持ちを知ってか知らずか正次郎は朝食を食べ終わるといつものごとく、長・・・

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理想の男性

13/07/15 コメント:7件 こぐまじゅんこ

 私、広田ふみ子。大学二先生。下宿で一人暮らしをしている。彼氏いない歴十九年だ。
 悲しい。悲しすぎる。
 女友達は、みんな口をそろえて、
「私が男だったら、ふみ子みたいな女の子、絶対、ほっとかないんだけどなぁ・・・。」
と言う。
 でも、実際、私は、ほったらかされているのだ。
 私の理想の男性は、ずばり高倉健さん。
 あの無口でしぶい感じがたまらない。友・・・

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ガター

13/07/15 コメント:2件 農民

人間がいかに小さな存在に過ぎないのかということを、われわれ人類はそれこそ数えきれないほど経験してきているのである。今さらそのことを記述する必要が存在しているとは思えない。だれもがその健康や健脚、あるいは衣食住、職場や金銭、そういうものを、いっそのことなくなってしまえばいいのに、なんて時折嫌気がさすほどに足元にがっちりと組み上げて生活している。

してこの人間とは思われない人間に対するに・・・

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