1. トップページ
  2. 第三十五回 時空モノガタリ文学賞【 無慈悲な人 】

第三十五回 時空モノガタリ文学賞【 無慈悲な人 】

今回のテーマは【無慈悲な人】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2013/08/19

※注意!R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ ヒト・モノ・イキモノ
投稿期日 2013/07/01〜2013/07/29
投稿数 49 件
賞金 時空モノガタリ賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

5

君の知らない黒歴史

13/07/29 コメント:10件 平塚ライジングバード

ああ、もう何でだろう。自分のことが嫌になる。軽蔑する。
僕の大大大好きな人が隣にいる。それなのに。それなのに。
「体調でも悪いの?」
心配してくれてる。
一言も喋れない僕に、彼女は優しい言葉を投げかけてくれてる。
でも、言えない。
「大腸が悪いんです。」なんて言えない。
「漏れそうなんです。」なんて絶対に言えない。
もう嫌だ。本当に嫌だ。帰る方向が・・・

2

幕間物語

13/07/27 コメント:2件 汐月夜空

 扉を開けるとそこは真っ白な空間だった。
 影という影も、光という光もなく、ただ何もないその空間の真ん中に。
 薄いクリーム色をしたロココ調のテーブルと同じ色をした二脚の椅子。
 右手側のその椅子に腰かけた、存在感が薄くぼやけているような男が。
 銀色のティーポットからブラウンの液体をティーカップに注ぎ、言った。
「やあ、よくここまで来てくれたね。座ってくれ」
・・・

7

チャラ男とツン子

13/07/07 コメント:14件 泡沫恋歌

「バカ野郎! もう来るなっ!」
 そう叫んで、立ち去る男の背中に向けてテッシュの箱を投げつけた。だが間一髪、玄関のドアに阻まれて当たらなかった。
「ちくしょう!」
 ドアの向こうから笑いながら立ち去る男の靴音が聴こえる。
《あんな無慈悲な男とは絶対に別れてやる!》
 病人の私を見捨てて出て行った、男への怒りが収まらない。

 ここ数日、風邪を引いてアパート・・・

8

最後の暴君

13/07/01 コメント:8件 光石七

 国王が急な病で床に就いた。二十歳を過ぎたばかりの王太子が留学先から密かに呼び戻される。国王の病状は深刻で、もはや治る見込みがなかったのだ。
「畏れながら、まもなくあなた様は一国の王となられるでしょう。どうかお心づもりを……」
側近が王太子に告げる。王太子は頷き、国の現状を尋ねた。
 まもなく国王が崩御した。新国王の誕生だ。国民は新しい国王を歓迎した。外国で見聞を広め、旧態を打破・・・

最終選考作品

6

永遠のテラ

13/07/28 コメント:4件 草愛やし美

「成功だ! これで、この星は救われる。もう、二度と戦争も飢餓も犯罪もない、平和な世界がやってくるのだ。永遠の平和を願って、私は、何百年も研究を重ねてきた。故郷の仲間から、ソラはおかしくなってしまったと言われようと構わなかった。この小さな島国で、私は、ひっそりと研究をして暮らしてきた。故郷の星を捨ててまで、この星のためになぜそこまでと、他の仲間達に諭された。だけど、この星を滅ぼしてしまうなんて、私に・・・

6

トリアージ

13/07/27 コメント:11件 そらの珊瑚

 ロザンナ・アンジェリコはどこにでもいるような平凡な女子高生だった。平凡と形容されるような日常が、奇跡かつ幸運の上に成り立っているということを想像すらしなかった。心配事といえば学校の定期テストの結果と頬にできた忌々しいニキビ。漠然とした将来への不安はないこともなかったがそれは後回しにできるもののひとつとしてとりあえず今日の次には今日と似たような明日が来ることを微塵も疑うことなく【その日】までは過ご・・・

2

無慈悲な男

13/07/26 コメント:3件 つるばた

 人通りでごった返す商店街は、色とりどりのイルミネーションで溢れていた。アーケードの下は行き交う人々の笑い声が反響し、それに対抗するように天井のスピーカーから「ホワイトクリスマス」が流れていた。
 しかしそんな幸福な喧騒も、鬼瓦弘道には灰色にしか見えなかった。
 弘道はさっき病院で告げられた診断を今だに信じることができないでいた――胃がん。しかも末期がんだった。医師に何度も確認したが、・・・

6

無慈悲な人

13/07/06 コメント:10件 鮎風 遊

 高瀬川亮平へ
  随分とご無沙汰ですが、元気にしてますか?
  ところで、先月、義男が他界しました。
  その生命保険の受取人は、故人の遺言で亮平です。
  受け取ってください。
                 母より

 何年ぶりかに届いた母からの手紙、実に簡潔に書かれてあった。
「そうか、ついに義男は亡くなったか」
 亮平は忸怩たる思い・・・

投稿済みの記事一覧

1

宮沢あきのカラッポ

13/07/29 コメント:1件 四島トイ

 宮沢あきには近づくな、というのが友人からの忠告だった。
「宮沢はヤバイって」
「どういう人なのかな、て聞いただけだろ」
「だからヤバイんだ。間違っても惚れるなよな。高城」
 いっそう声を落とす友人に、惚れるかよ、と応じて視線を右にずらす。
 教室の廊下側の三列目。夏服姿の宮沢あきが隣の席の友人らと世界史の課題に挑んでいた。宮沢あきは夏服が似合う。健康的な日焼けのせい・・・

1

恋愛者の特別性

13/07/29 コメント:1件 詩架

 私はベッドに押し倒されていた。視界に映るのは愛しい彼の顔と、その右手に握られたアイスピックの鋭い切っ先。今まさにその切っ先は私の目に突き立てられようとしていた。
 なぜなら、彼は私の目を欲しているのだから。目を何よりも愛する彼は、結局私自身よりも私の目を手に入れたいのだ。



 私達は普通の恋人同士だった。世間一般の人達と同じように何気ないきっかけで出会い、お互い・・・

0

こだわり

13/07/28 コメント:0件 ナガシマ某

眠たくなるような、気持ちがいい午後の日差しだった。


しかし昼寝をしてはいけない。俺の仕事はそんな退屈な仕事ではない。そう自分に言い聞かせて研究所に忍び込んだ。
 

産業スパイという生易しい仕事をしているのではない。


俺の職業は殺し屋だ。


二年半ぶりに舞い込んできた仕事。標的はH博士。科学界では有名な人物らしい。<・・・

1

思い出買い取ります

13/07/28 コメント:1件 久一

 手のひらに納まるくらいの小さな水晶球の中に映し出されたのは、彼女の過去だった。
 小学生のころ、彼女はいじめられていた。きっかけは些細な事だった。仲間外れにされていた女の子をかばっただけ。かばったなんてそんなつもりもなかったのだろう。ただそれが始まりで仲間外れの対象は彼女に移り、次第に彼女はクラスで孤立していった。それは理由もなくエスカレートしていき、壮絶ないじめへと変貌していった。

1

忘れた心

13/07/27 コメント:0件 てんとう虫

いつの間にか暗い闇の中にいた。私は誰なのだろうと考えると頭が痛い。無機質などこかにいるのはわかる。ペタンペタンと音がして近づくものがいた。恐怖は感じないそう辛くないのだ。このまま朽ち果てようとも・・・。「やあ、お嬢さん。ここにどうしているのか分るかな?。」なぜか闇の中でボ−ッとひかり姿が見えた。白い顔は中性的で綺麗だった。ここにコインがある。これで君の未来が変わる。」「べつに・・「駄目、君に選ぶ権・・・

12

無慈悲な女(ひと)に仕えて……

13/07/25 コメント:22件 草愛やし美

 ああ、まただ、あのきゅうり君、捨てられるぞ。この家の奥さん、昨日は、色の変わった茄子さんを生ゴミの仲間へ投入した……数えればきりがない。野菜室の前に座ったかと思うと、野菜達を一瞥し、無表情に汚いもののように指先で持ち上げ、生ゴミ入れに放り投げる。何という無慈悲な仕打ち……。可哀想な、この野菜達は、つい三日前までかろうじて息をしていた。カビどもが、侵入して来ると、あっけなかった。きゅうり君が亡くな・・・

1

慈悲と罰

13/07/25 コメント:1件 tenn

金曜日、夜9時50分の営業所。ほかに人は居おらず、そろそろ帰ろうと荷物をまとめて振り返ったとき、その男は居た。
190p近くの大男。全身黒ずくめ、フードを被り、顔はよく見えない。手に危険な輝きを放つ凶器。それを見ただけで僕は腰を抜かしそうになった。10時には見回りの警備員が来る。それまで何とか時間稼ぎをしなければならない。

「な、なんのようでしょう」
「見てわからないか」・・・

1

スナイパー

13/07/25 コメント:2件 yoshiki

 高層ビルの屋上からターゲットに照準を合わせた俺は、何のためらいも感じないまま銃の引き金を引こうとしていた。暗殺者は常に冷徹で無慈悲でなければならない。己の私情など微塵たりとも交えてはならないし、自分自身が鋼鉄の精密機器にならなければならないのだ。
 俺の頬にひんやりとした狙撃銃の感触が心地よい。銃は最新鋭、高精度オートマチック。この銃は火器の芸術品ともいえるだろう。スコープを覗き込む俺の眼・・・

1

モバードとハミルトンとトロピカル

13/07/24 コメント:0件 ニーチェ爆弾

 昼下がりの裏通り。ヴィンテージ時計の専門店。看板には「Festina Lente」とある。「悠々として急げ、か。洒落臭い」とGRIP GLITZは低く唸る。眉間の皺が強く深くなる。機嫌が最悪のレベルに入りつつあることを示す兆候だ。
「おれは悠々ともしないし、急ぎもしない。踏みつぶし、蹴散らし、姿を消す。それだけだ」
 店の扉を右のつま先で蹴り、傲然とした足取りで店の中へ。
「モ・・・

2

正義の軍人

13/07/23 コメント:4件 とな

 俺が迷い込んだのは、どうやら敵国の領土だったらしい。気付いた時には周りを囲まれ、なす術もなく捕らえられた。

***

 俺が捕らえられた町の名前には聞き覚えがあった。三ヶ月前に、俺たちが奇襲攻撃を仕掛けた町だ。この町を攻め落とせばこの戦争が有利になる。そう言われていた、国境にある小さな町。町を見渡すと銃撃戦の跡が生々しく、そこかしこに不自然な穴が開いていた。
 俺・・・

1

ジェットG

13/07/21 コメント:0件 ウはうどんのウ

 反乱の準備は、ぼくの知らない間に着々と進められていた。じわじわと侵食していく闇の気配に、しかしてぼくが気付けなかったのは、ぼくが寝つきの良い奴であるからかもしれない。
 不穏な空気は数週間、ぼくの背中につきまとった。けれどぼくは気付けずに、自分が風邪気味ででもあるのかな、などと見当違いな心配をしてしまっていた。
 そしてその時は突然訪れた。

 ガサ、ガサガサッ……

6

清盛の骨

13/07/20 コメント:16件 そらの珊瑚

 小さなライブハウス兼バーを始めてから十年。
 出演していたアマチュアバンドが思いかけずブレイクし華やかな時もあったが、彼らがメジャーデビューしてからはすっかり音沙汰はない。
 ──ちっ薄情なもんだ。おかげでシケた店になっちまいやがった。
 ごおぉぉぉん。除夜の鐘だ。諸行無常の響きあり、か。辛気くせえ。
 
 ドアが開く。客だ。薄暗い照明の中では男か女か定かでない。黒・・・

3

罵詈雑言

13/07/18 コメント:3件 くにさきたすく

 女は椅子に腰かけたまま怒鳴った。
「この無能が!」
 デスクを挟んだ向こう側に小太りの男。椅子は用意されているが座ることは出来ず、棒立ちのまま目線を落とし、震えている。
「そのたるんだ腹は何だ! 自己管理のできない奴に仕事なんかできるか!」
 女がだん!とデスクを叩く。その怒りの音に、男は大きな体をびくつかせる。
 女は席を立ちデスクの前にまわる。男の目の前で腕を組・・・

5

ディフェンスに定評のある人々

13/07/17 コメント:9件 平塚ライジングバード

「好きです。好きです。好きです!」
アホみたいに繰り返された言葉は、果たしてその女の子のもとに届いただろうか。
放課後、昇降口、彼女と二人きり。ずっと待ち望んでいた時間。絶好の機会。

去年の春、同じクラスになって…一目惚れだった。
その日以来、今日までその女の子のことをいつも考えていた。体が弱く、華奢で、体育は休みがち。でも手先は器用で、勉強だって自分なんかより全然・・・

2

悪人

13/07/16 コメント:2件 

 生まれてすぐ人は息をはじめるし、その瞬間からこの世で生きる何かを探しはじめる。目の前にあるすべての事が新鮮で、キラキラとした輝いた目で物事を眺めては、笑い、驚き、ひとつひとつの事に感動する。そんな風に生きて、年を重ね、いつの間にか目の前に起こるすべての事は当たり前になり、だんだんと世界の流れが見えてくるようになると人に悪意があることや、無関心さや、どうしようもない苛立ちがあることさえ見えてくるよ・・・

0

喧騒

13/07/15 コメント:0件 三日坊主

アルバイトに遅刻しそうで、小走りに駅前の広場を通っていた。いつもとはあきらかに人の数が多く「すみません」と何度もあやまりながら人の群れを縫っていた。選挙が近づき、駅前で候補者が熱弁をふるっていたせいかもしれない。その候補者に賛同している人々は少なく、野次を飛ばしている人が多かった。

どうにか遅刻は免れ、急いでタイムカードを押した。遠くではまだ選挙演説が町の喧騒と混じって聞こえていた。・・・

0

ボーリングの玉と引き換えに犬の魂は

13/07/14 コメント:0件 

 サトルはベランダに突き出た街路樹の枝を一つ折ると目玉に向かって突き立てた。枝の切り口は緑色になっていて、外側に近づくにつれ茶色くそして硬くなっていた。
「オレと同じだな。本心なんて見せずに硬い殻で守ってる」
ため息をつくと意を決して先端を目玉に突き刺す。しかし眼鏡のレンズの上を跳ねて高潮した頬に突き当たった。痛みが徐々に込み上げてくるのがわかる。本当の痛みはジワジワと1,2秒遅れてや・・・

2

失恋携帯

13/07/14 コメント:0件 村瀬ひさり

木曜日の昼間の電車はかなり空いていた。

午前中で期末試験が終わった僕は、不意に隣町の本屋に行きたくなっていつもとは違う方向の電車に乗った。別にこれといって特別な理由もない、ただ、電車に乗って本屋に行きたかった。
明日は通常授業に戻る。月曜日から4日連続の試験。明日は部活動も再開。試験は終わった。最後の問題は解けなかった。化学のテストは惨敗。英語は何とかなる。数学はからっきし。現・・・

4

呆気なく

13/07/13 コメント:5件 名無

ねえ、先生。
いつものように、そう話し始める彼女の声が、いまだ耳から離れずにいる。

彼女の声はいつも穏やかだった。にこにこと微笑みさえしていた。
ーーそうやって、本当の想いを隠すのが上手な子なのだと、分かっていたはずだったのに。



「ねえ、先生。私ね、鳥になりたいんだ。」
抜けるように青い空を、小さく切り取る窓。抗うように精一杯に開いて。・・・

1

熱の探求

13/07/13 コメント:1件 アフロ蛇丸

 兎の血も紅い。それは兎にナイフを突き立てて確認したのだから事実だ。その少年の息は荒く激しく、身体は小さく震えている。頬が興奮の為か朱色に染まっていた。

 通っている学校の兎小屋に深夜訪れたのは、その衝動をどうしても抑えられなくなったからだ。ここ何ヶ月かの間、自分の中で膨らみ育ち続けてきたある欲望。それに思いを馳せると興奮から勃起してしまうほどに焦がれてきた。
 無論、それが犯・・・

1

いつものガールズスキャンダル

13/07/12 コメント:1件 百円

「今まで好きだった人を、いきなり嫌いになっちゃうことほど、悲しいことはないよね」
「そうだね」
 購買で一緒に買ったメロンパンを頬張りながら頷く。
「人を嫌いになることって、すごく勿体無いと思うし、私は苦手だな」
「確かにね」
 うんうん、と頷きながら、綺麗ごとだ、と心の中で呟いた。きっと、ナツは心底嫌いだと思った人間が居ないから、そんなことを言えるのだ。だけど、私は・・・

2

愛の歌

13/07/11 コメント:2件 satuki

世界を終わらせたのは、核弾頭でも細菌兵器でもなかった。
世界を終わらせたのは、愛の歌だった。

誰でも平等に、愛をはぐくもう。
誰でも何の不自由もなく生きていられるこの世界を愛そう。
誰でも、いつでも、どんな時も…。

僕は高校三年生の時期に、心の調子を崩した。
そんな時、愛の歌はここに良いのだと教えてくれたように思えた。
しかし、その歌が広ま・・・

5

電波系男子と私

13/07/09 コメント:9件 平塚ライジングバード

放課後、小走りに私の元へ向かってきたクラスメイトは、こう切り出した。
「伝えたいことがあるんだ。」
急速に私の胸が高まるのを感じる。
彼は、少し息を切らしながら、ゆっくりと顔を上げ、私の目を見てニコッと笑った。

「君、今日生理中だろ?」

その瞬間、今となっては無かったことにしたい、中学時代の交換日記のような、私のトキメキが完全に消えた。そして、ありとあ・・・

1

かつて

13/07/06 コメント:1件 satuki

「頼む。休養をくれ…。」
戦地を歩く足もおぼつかなくなり、敵も味方も区別がつかなくなってしまった。
疲れ果てていた。
休む暇などなかった。与えてくれなかった。
何のために人を殺しているのか、何のために体を鍛えぬいたのか、その意味が曖昧になっていった。
そこに行くまでには明確になっていた目的もぼやけてしまった。

『オイッ!!何をしている!?』
謝って・・・

3

死刑執行

13/07/06 コメント:4件 鹿児川 晴太朗

「おはようございます、所長」

 制服姿の若い男が、少し憂鬱な表情で根岸に挨拶をする。

「なんだ。辛気臭い顔して」

「この仕事をしてて平然としてられるのは、所長ぐらいのものですよ」

「お前は胆力が足りないんだよ、平沢。まあいい。巡回の時間だ」



 拘置所内・死刑囚舎房。
 毎朝九時になると、管轄の刑務官たちは肩・・・

3

正解なき世界

13/07/06 コメント:4件 alone

「検査結果が出ました」先生は感情を殺したような声で言った。「その結果、あなたのお子さんには先天的な病気があることが分かりまして……」
「先天的な病気……?!」
「はい……分かりやすく言えば、生まれてくるお子さんは障がい児ということです」
障がい児……? あの……しょう、がい、じ……?

私は我に返った。周囲を見渡すと、そこは病院の待合室。固めの長椅子が私の身体を支えて・・・

1

あなた

13/07/06 コメント:2件 日暮 遥

 私が人間になる前、私は雲の上で人間の世界を見下ろしていました。
 理由は簡単、私が人間になるためにどこの親がいいかを決めるためです。いい親のおなかの中に行きたいというのは夢であり願望です。だからみんなは血眼になっていい親を探します。
 私は笑顔の絶えない家庭がいいな、と思っていると結婚式場で輝く笑顔のあなたを見つけました。私はその笑顔に釘付けになりすぐさまおなかに入りたいと願いました・・・

2

愛すべき者も知らず

13/07/05 コメント:0件 satuki

死に物狂いで助けを求める女性が目の前にいる。
「ねえ、なんでもする。なんでもするから…。」
女性の傍らには、片恋相手の男性の死体が転がっている。それは無残にも切り裂かれていた。原形を殆どとどめていない状態の男の顔がこちらを向いていた。どんな表情をしていたのかも分からない。
救いを求める相手が殺人者とは皮肉なことだ。そして僕は、彼女が好きだった。
だから殺す。殺すことで自分の・・・

4

不運(無慈悲な運命)

13/07/04 コメント:8件 yoshiki

 ロバートは間近に気配を感じて微かに目を開けた。すると冷たい銃口が彼の鼻先に突き付けられた。
「騒ぐなよ。この辺りは隣の家までかなりの距離があるから、銃を使ったとしても誰も気づかねえ」
 やっと寝付いたばかりのロバートは身が縮み上がって言葉さえ出なかった。
「だが俺はただの泥棒でお前を殺しに来たわけじゃねえから、そう怖がるな」
 男は黒い革のジャケットを着ていて苦味ばしった・・・

3

gray promenade

13/07/04 コメント:3件 青海野 灰

 灰色は、嫉妬の色らしい。

 空は梅雨らしく陰鬱な雲を広げ、太陽の光を閉じ込めて仄暗く輝いている。今にも雨が降り出しそうだが、悲しみを避ける為の傘さえも、僕は持っていない。
 二人でよく散歩をした遊歩道を、いつもよりも少し距離を開けて歩いた。道の両端には紫陽花がそこかしこに咲いて、僕たちの最後の散歩を無慈悲に華やげている。
 10メートル程前を歩く冬彦は、無関心なフリをし・・・

5

眼裏(まなうら)のリアナンシ

13/07/02 コメント:10件 クナリ

リアナンシに初めて出会ったのがいつだったのかは、よく覚えていない。

僕が神学校の小等部を出る頃には、彼女は僕の右瞼の裏側に住んでいた。
目を閉じると、暗闇の中に彼女の姿が映る。蜂蜜色の髪に、新緑の色の瞳の少女。バーミリオンオレンジのサマードレスが、雪色の肌に映えていた。
彼女は始終、何かを呟いている。目を閉じている間だけ聞こえるその声は古いラテン語で、調べてみると、それら・・・

0

きざはし

13/07/02 コメント:0件 かめかめ

列車に乗るため並んでいたら、おっさんが横入りしてきた。
ムっとした。すかさずポケットから弾を出し、発射!!
狙いたがわず。おっさんの背中に「こいつサイアク」の文字が張り付いた。

このインクは偶然の産物である。
もともと書いてすぐ消せるボールペンを開発していたのだ。が、どういうわけか、一度書いた文字を剥がしてどこにでも貼り付けることができるインクができた。商品化の目処・・・

2

パラドックス(無慈悲な父)

13/07/01 コメント:4件 yoshiki

 ――私は父を恨んでいた、なので殺すことにした。
 まるで殺人予告でもするようだが、それは現時点での話ではない。私の生まれる以前の過去に立ち戻って父を殺すのだ。なぜそんなことをするのか? それには強い動機が二つある。一つは母を邪険にして虐待し、ついには病死に至らしめた人間味の欠片もない父への復讐であり、もう一つは私という天才が発明したタイムマシンを使って、自分の親を殺したら自分はどうなるのか・・・

1

大好きな笑み

13/07/01 コメント:0件 黒の魔術師

この世界は無慈悲だ。
 少女が空から降って来るし、誰も信じないし、その上、バイト代が少女の食事代に消滅する。でもまぁ、そんな世界は、嫌いじゃない。
 「ねぇー。お腹すいたぁ優真ゆうま。」
 僕は少しげんなりしながらも謎の青髪ツインテール少女に言い返す。
 「コレット……3、4分前にラーメン食ったろ……」
 「んー?今は12時だよ?さっきは11時57分だからおやつだった・・・

0

心の天秤

13/07/01 コメント:0件 ポテトチップス

 高木正人は携帯電話のボタンを押し電話を掛けた。深夜0時過ぎの公園には人の姿はなく、耳に当てた携帯電話の発信音が2回3回鳴り響くが、相手が出る様子はなかった。
 高木は電話を切り、虚しく発光する液晶画面を見つめたまま小さくため息を吐いた。7月初旬の夜気は少し蒸し暑さを残していて、昼間の職場での出来事をいつまでも引きずらせるようだった。
「高木は無慈悲な奴だよな。俺は課長の立場を理解した・・・

5

いじわるなコンすけくん

13/07/01 コメント:5件 こぐまじゅんこ

 まくちゃんは、くまの男の子。
 今日は、おひさまが、にこにこ顔をだし、さわやかな風がふきわたっていて、とても気持ちのいい日です。

 まくちゃんは、森のお友達の、きつねのコンすけくんと、うさぎのねねちゃん、たぬきのポンきちくんをさそって、森のおくのお花畑に遊びに行こうと思いました。
 お母さんが、昨日、夕ごはんを食べながら、
「森のおくは、一面のシロツメクサの花がさ・・・

1

無慈悲剣

13/07/01 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 磯貝小也太が矢追道場に通いだしてすでに三か月がたつ。小也太は、矢追道場主、矢追精之進の使う無慈悲剣を習得したい一心で、稽古に通うようになった。
 無慈悲剣とはどのような剣か。入門前に耳にした噂では、それはまさに鬼のふるう剣だという。
「たとえそれが己の親であっても、いざ勝負となった場合は、一瞬のためらいもなく斬らねばならない」
 精之進は常に、門下生にそう語った。
 道場・・・

2

無慈悲の粉

13/07/01 コメント:4件 W・アーム・スープレックス

 便宜上、彼のことを『悪魔』と呼んでおく。
 その所業をみれば、その呼び名が、そう的をはずれてないことがわかると思う。
 彼は、惑星から惑星をとびまわり、腰にたらした袋から、便宜上、『無慈悲の粉』と呼ぶきわめて粒子のこまかな粉を、ふりまいては、その粉をかぶった住人が、みるみる血も涙もない鬼のような人間にかわっていくのをみて、嗜虐的な快感に酔いしれることを無上の喜びとしていた。
 ・・・

1

走れ。兎のように

13/07/01 コメント:2件 かめかめ

駅からの帰り道。愛美はいつもビクビクしながら歩く。
残業などで遅くなってしまうと人通りはなく、街灯も少ない。
数日前「痴漢出没!注意!」と言う看板が張り出されていて恐怖のあまり鼻水が垂れた。
すび。
と鼻をすすり何食わぬ顔で通り過ぎたが、内心では叫び声を上げつづけていた。

今日も遅くなってしまった。
お世話になった先輩の結婚を祝う会だった。お目出度い会だ・・・

4

家出

13/07/01 コメント:5件 メラ

 家出の計画を立てた。私はもうこんな家、こんな町、我慢できない。
 親友のユミと一緒に来週の月曜日の朝、いつものように学校に行くフリをして、そのまま上り電車に乗って新大阪まで行く。そして大阪から新幹線で東京まで行く。大丈夫、東京にはそのコースで旅行に行った事がある。ユミも何度も行っている。楽勝や。
 東京にはユミの従姉妹のお姉ちゃんも住んでいるし、フェイス・ブックで友達になった一人暮ら・・・

3

終焉 ― はじまり ―

13/07/01 コメント:6件 しーぷ

 20XX年。世界は終わりを迎えようとしていた。

 今朝。いつものように目覚ましに起こされ、いつものように朝食を食べ、いつものように学校への道を歩いた。
 だけど。

 空に黒い点がいくつも、いくつも現れた。
 飛空艇。

 近づくにつれて形を成したそれは、次々に何かを吐き出した。
 人。

 飛空艇から、人が溢れ出る。突如として・・・

ログイン