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B.Dさん

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要塞書店

12/11/12 コンテスト(テーマ):【 書店 】 コメント:0件 B.D 閲覧数:1324

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 要塞書店。地元でそう呼ばれている書店がある。この店の守りは完璧だ。防犯カメラには死角が無く、万引き防止のレーダーも感度が鋭い。スプリンクラーの配置も完璧で火事に対する備えも万全だ。
 これだけの備えをしているのだから、当然本を盗まれたことなんかない。それどころか本が買われたことすらないのだ。そんな状況でどうして店をやっていけるのかという疑問があるところだが、今年開店30周年のセールが行われた。無論、本は全く売れなかったが。
 友人からその店の話を聞いて、僕にこんな野望が芽生えた。
「あの店の本を全部買い尽くしてやる」
 僕の家は大財閥なので金は全く問題がない。通っている東京の大学は金持ちが通うところだ。なぜ本が売れないかなんてことは僕には全く興味はない。あるのはこの店の本を全部買い尽くすという征服欲だけだ。
 そういう気持ちを持って僕は今「要塞書店」に向かっている。要塞といっても切り立った峰の上とか馬鹿みたいに高い崖の上にあるわけじゃない。田舎の国道上にぽつりとあるだけだ。他の書店と同じような外観をしている。
 さあ、着いた。さっそく中に入ってみるとするか。
 入口から入ると真っ暗だ。どういうことだろう。入るなり真っ暗な書店なんて初めてだ。僕のこの書店に対する征服欲はいよいよ増している。
「いらっしゃいませ」
いきなり低い声で誰かが上から低い声で僕に語りかけてきた。
「いきなり何だよ。びっくりしたなぁ。それにしてもなんで真っ暗なんだ?」
「申し訳ございません。何より当店は開店して30年本が全く売れてないものですから。経費節減のため電気を落としております。今すぐ電気をお付けします」
 電気がつくとそこは真っ白な部屋で何もなく、そして誰もいなかった。
「この部屋はなんだ?本はどこにある?」
「当店はお客様に最高の本のみを提供するため無駄を省いております。そのため店頭には本を置いておらず、スピーカーからの声のみで失礼させていただいております。早速ですが、当店は最高の本を提供させていただくため、お客様に質問をさせていただくことになっております」
「ふざけたことを言うな。この店の本を全部よこせ。金ならこのクレジットカードで支払ってやるから」
「そうは参りません。当店は本を愛してらっしゃる方に本を買っていただきたいのです。質問にお答えいただけないようなら、お客様はこのようになりますが」
 突然僕の前の床が観音開きで開くと、大きな針山地獄の上に何人もの人が死んでいた。針を伝っている血がリアルに見えた。
「まじかよ・・・。わかったよ。質問に答えればいいんだな。早速質問をしてくれ」
「はい。かしこまりました。あなたが本を読んで知ったことで一番印象に残っていることは何ですか?」
「そんなものは無い!」
 僕にはそう答えるしかない。ぶっちゃけて言うと僕は活字アレルギーだ。
「それは困りましたね」
 僕の前の床がパタパタと音を立て始めた。後ろで押される圧力を感じられた。
「わ、分かったよ。答えればいいんだろ?中学の時あるAV女優のグラビアで女性の体の美しさを知ったよ」
「ありがとうございます。それでは次の質問です。あなたは本でどんな人とどのような関係を気づきましたか?」
「高校まで友達や先輩とよくエロ本ばかりと交換してたな。その時の先輩が今エロ本の編集者をしてて優先的に最新号を安く譲ってくれるんだ」
「ありがとうございます。それでは次の質問です。あなたは本を読んで何か糧になるものを得たことがありますか?」
「デブでチビなこの風体で彼女いない歴=年齢だけど、エロ本のおかげでまったくさみしくないし、みじめとも思わない。まさにエロ本を糧にして生きてきたといえるだろう」
「ありがとうございます」
(怖いものを見せられたけど、個々のどこが「要塞書店」なんだろう?恥ずかしいけど、質問に答えれば本が買えるなんてチョロいじゃないか)
「それでは次の質問です。どのような本を愛してらっしゃいますか?」
「エロ本。それ以外の本なんて愛してない」
「それでは最後の質問です。いまどのような本がほしいですか?」
「この店にあるすべての本だといっているだろう」
「かしこまりました。それでは前の部屋にお進みください」
 部屋に入ると、一面にエロ本が広がっていた。僕にとっては天国だ。僕に人生で一番の至福の時だ。
「これで全部か?」
「はい。当店はお客様で本が変わりますので、これが今の当店のすべての本です」
「わかった。全部でいくらだ」
 僕がそう言った瞬間だった。俺だけを買ってくれ、私を見捨てないでと今まで聞いたことがないおぞましい声が聞こえてきて、本が一気に襲ってきた。僕はあっという間に本に埋もれて気を失った。
 気が付いたら僕は店の外にいた。僕の手には一冊も本は無かった。


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