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茜さす

17/02/26 コンテスト(テーマ):第128回 時空モノガタリ文学賞 【 自転車 】 コメント:0件 リードマン 閲覧数:476

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私は今日も自転車をこいでいる。
いつもアイツが直してくれる自転車を。
私は自転車が好きだ。
アイツの事も、嫌いではない。
私は人よりホンのちょっぴり力が強い。大抵のものの扱いが究極的に下手な私は、
なんでも直ぐに壊してしまう。それは当然愛車も例外ではない。ルールを守って走っているつもりだ。それでも、私の力に耐えきれず、あっという間に摩耗し壊れてしまう。
それでも、アイツは直してくれる。何度でも。
例えば、貴方の腕力が人の百倍あったとしたら、貴方はどのように過ごすだろうか?
私には解る。
優しい貴方は、きっと、誰とも触れあわずに過ごすのだろう。

それは、なんて、孤独。

私は、優しくなんてない私。
アイツは私が優しいと言う。
私は、優しくなんてない。
それは違うと、アイツは言う。
ペダルをこぐたび進み、力に比例してスピードを増す。
闇を照らすライトを持ち、危険を知らせるベルも持ち、何より大切なブレーキも持っている。特に最後のモノは、私には必要なモノだ。
例えばアイツ。
私に必要なモノ。
「モノ扱いかよ!」
なんだかアイツの切実な訴えが聞こえた気がしたけれど、きっと空耳だろう。
私の愛車は、他とは一味違う。改造に改造を重ねた、耐久性の怪物だ。
アイツの努力の結晶だ。

一人は嫌だ。

私が自由にしても、丸一日は保つ化物マシンなのだ。誰かの命に係わる問題なので、アイツが作った専用のコースでしか走らせる事は出来ないけれど、アイツがくれたプレゼントの中で、今一番のお気に入りは間違いなくコイツなのだ。
名前はまだ無い。真の名とは自らが決めるモノ。だと私は思っている。通称とは違う。
いつか自我が生まれた時、コイツに名を尋ねるのが私の楽しみだ。
一体いつの話になるかは判らないけれど。

私は今日も自転車をこいでいる。何故なら、アイツはいつもコイツ
ばかりいじっていて私を滅多にかまってはくれないからだ。
そういう意味では、憎むべきかもしれないが、私はやっぱりコイツが好きだ。
何事も不器用で私以上に壊してばかりのアイツが、私の為に必死になって覚えてくれたのがコイツの整備なのだから、大事にしなければバチがあたる。
「オレを大事にしてくれよ!」
空耳は無視する。

二人は楽しい。

コイツの通称は色々とある。沢山ある。愛すべき私の自転車。
私はコイツの一員であり、主人だ。
アイツがいつも守っているモノ。アイツが創った。いつか、貴方が見守る。
私の愛車。

空は、貴方の名前と同じ色。
「オレの大好きな物語、その主人公達の娘の名さ」

子供みたいなアイツ。まだ貴方は言葉を発しないけれど、それでもこの名で呼ぶ度、眩い笑顔を私達に向けてくれる天下無敵の三歳児。

私とアイツと愛しい貴方。

三人は嬉しい。

コイツをこぐのが私の趣味であり仕事。それは、なんて誇らしい。
何も知らなかった私。全てを教えてくれたアイツ。それ以上をくれた貴方。

きっと、貴方も気に入る筈。自ら転がる車。

そう、もっともポピュラーな名前で世界とうたわれるもの。
コイツをどうするかは貴方次第。アイツの事は、いつだって無下にして構わないから。
「オレの扱い、酷くない?」
アイツは敵。アイツは悪。アイツが元凶。アイツが悪魔。アイツが・・・
「もう泣いていいよね? いいよね?」
アイツが、貴方のお父さん。
「・・・・・・」
いつもうるさいアイツが珍しく黙っている。そう、アイツはいつだって、大切な時には黙るのだ。決め台詞の一つも言えない半端モノだけど、そんなところが嫌いではない。
「・・・・・・」
いや、たまには、そう、いいか、愛している。
「・・・・・・」

脆いアイツがまた泣いている。貴方が産まれた時も、やっぱり泣いていた。
脆い癖に、カッコつけたがりで、不器用で、それでも、誰より強くて優しいアイツ。
我儘放題の私を優しいだなんて言う大馬鹿者。
だから、貴方が産まれた。

私は今日も自転車をこいでいる。私のやり方で、アイツのルールで、貴方のお手本となれるように。
「娘にぐらい名乗ったらどうなんだ?」
カチンと来た。
「アンタにしか教えないからこそ、意味があるんでしょ?」
「うっ」
「アンタのプロポーズは傑作だったわ」
「うう・・・」
普通、あんな事、あんな時に、言わないでしょ? いえそもそもアレは、
「何? 言いたい事があるなら、言いなさい」
「・・・・・・」
アレは、
「・・・・・・・・・・・・いつかと、一緒だな」
そんな、アイツの精一杯。どれだけ言葉を尽くしても、伝わらないものがある。
どんなに困難に思えた事でも、簡単にしてくれる力が、コイツには確かに存在する。
貴方は、コイツのそんな力の結晶。
その力を制御出来る言葉なんて、コイツの中にも無い。それでも、それこそが、

私は今日


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