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西 千石丁目さん

文芸を志し、磨いていくため、文は人なりと 人間性を磨いている毎日です。 宜しくお願いします。

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後ろ向きの競争

17/02/25 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:0件 西 千石丁目 閲覧数:356

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雑司は仕事帰りに、コンビニで買った酎ハイを煙草を吸いながら歩いて飲んだ。それが飲み終わると腹が減ってきて、また途中でコンビニに寄り出来合いの焼き鳥を買うと、それを温めてもらってから外で食べた。
家に帰り着くと仕事着を脱ぎ捨てて、寝間着に着替え、パソコンの電源を入れた。
ネットサーフィンをしているうちに奇妙なものがネットオークションで出品されているのを見つけた。
(煙草、一本百万円)
オークションでは、百四十万円まで値がつり上がっていた。煙草を高値で競り落とすなんて後ろ向きの競争だ。
しばらくは別のページに移り、他愛ない情報を仕入れていたのだが、どうしても、さっきの百万円の煙草のことが忘れられず、そのページを行ったり来たりした。期日は今日から一週間後。雑司は無性に、その煙草が欲しくなってきた。どんな、うまい味がするんだろう。食後にそれを吸ったら至福の時が待っているに違いない。雑司は間頭にたっていた。頭の中で考えていた。どうやったら百四十万の都合がつくだろうかと。
翌日、雑司は仕事をしながら考えた。尚美と手を組んで、美人局でもすればいいのではないか。
「もしもし、俺だけど」
「あら、なぁに?」
「ちょっとした儲け話があるんだよ。今夜、会わないか?」
「わかった」
夜、二十一時のファミレス。客がまばらで家族連れもほとんどいない。雑司と尚美は二人で作戦を練っていた。
「でも私、こんなこと初めてだから自信ないし、それに恐いわ」
「大丈夫だって。俺がちゃんとやるからさ」
金曜日の夜、二人は待ち合わせて鴨を探した。スマホをいじっている親父。鴨はいっぱいいた。身体中から今夜の女を求めているオーラを出している馬鹿ばかりだ。
「あいつにしようぜ」
雑司は道端に立って女を物色している中年男を指さした。尚美は頷くと、深く呼吸を二回して、その男の方へと歩いていった。
雑司は刑務所の中にいた。鉄格子の窓から外を眺める。尚美には悪いことをした。あいつも今頃、刑務所の中だろう。
すべての快楽を打ち切られた世界で、雑司の楽しみは飯だけだった。外を眺めながら、もうすぐ正月だなと考える。小さい頃の正月を思い出した。家族がいて、みんなでおせちを囲み凧あげをする。お年玉を貰って喜ぶ。
雪がちらついてきた。雑司は手を擦り、足を摩りながら、息を吐くと白くなった。
正月、刑務所で書初めがあった。何を書こうかと迷っている雑司が、窓の外を見ると朝日が欠けてみえた。(欠ける太陽)と書いた。
その日、朝飯に焼餅が振る舞われた。雑司は、欠けた太陽のことを思い出し、涙を流しながら餅を食った。
母が面会にきた。
「どうだね、調子は?」
「いいけど何さ?」
「いや、別に」
そんな調子で十分もしないうちに、面会は終了となった。いざ、母親と話そうとしても、何を話していいのかよくわからない。
時が経ち、雑司は社会に復帰した。尚美とは連絡をとっていない。日雇いの仕事をしながらコンビニの弁当を食う日々が続いた。
ふと、オークションの煙草のことが頭をよぎった。あれは一体どうなったんだろうか。いくらで、どんな奴が落札したんだろうか。
雑司は家に帰り着くとパソコンを開いた。その煙草の落札価格は二百五十万となっていた。二百五十万か。どんな煙草だったんだろうか。
そのまま何となくネットサーフィンをしているとシート食品の記事が目についた。シート食品とはなんだと思った雑司は好奇心で読み耽った。
進めていくうちに事件の記事が目についた。煙草で死亡したという記事だった。しかも、たった一本で。その煙草は青酸カリ入りで、価格は二百五十万だと書かれていた。
雑司は驚いて、オークションのページに戻り、落札者の名前をみてみた。友人の名前と同じだった。慌てて、雑司は電話を取り出しダイヤルしていた。
プルル・・・プルル・・・プルル・・・


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