1. トップページ
  2. 北風公園での決戦

ポテトチップスさん

20代の頃、小説家を目指していました。 ですが実力がないと自覚し、小説家の夢を諦めました。ですが最近になって、やっぱり小説家の夢を追い求めたい自分がいることに気づきました。久方ぶりに、時空モノガタリ文学賞に参加させて頂きます。 ブログで小説を書いてます。http://www.potetoykk.com

性別 男性
将来の夢 太宰治賞もしくは北日本文学賞で最終選考に残ることです。
座右の銘

投稿済みの作品

0

北風公園での決戦

12/11/10 コンテスト(テーマ):【 兄弟姉妹 】 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:1619

この作品を評価する

文太は全身が映る鏡で服装と髪型を確かめた。
硬めにセットしたリーゼントが彼のトレードマークだった。
右手の手でジーンズの尻ポケットに手を当てると、ナイフの感触が手に伝わり、思わずニヤリと笑った。

部屋を出て玄関に行くと、リーゼント姿の元太が靴を履いているところだった。
「おう、元太兄ちゃん、こんな時間から出かけるのか?」
「文太こそ、こんな時間にどこに出かけるんだ?」
「ちょっと調子こいている馬鹿をコラシメてくるんだ」
「お前もか。俺もこれから、調子こいている馬鹿をコラシメてくるんだ」
「元太兄ちゃん、やり過ぎるなよ」
「文太もな」


文太がブログを始めたのは2ヶ月前からだった。
ブログの中で文太は、アイドルグループBBC48の記事を書いては更新していた。
あれは10日程前の11月にしては異例の寒さとなった日の夜中、文太が開設するブロ
グのコメント欄に、BBC48の悪口コメントが書かれていた。
その日以来、コメント欄にBBC48の悪口を書く『サバイバルナイフ』というペンネームの男と、ブログのコメント欄を通しての文字戦争が始まった。
サバイバルナイフという男が、同じ東京の区に住んでいる事が分かると、文字戦争はさらに激戦を極めて、ついに明日の夜10時に北風公園で、タイマンで決戦をすることになった。

文太は北風公園に向け自転車のペダルを漕いだ。
夜の9時半を過ぎている外は肌寒く、温かい缶コーヒーが飲みたくなった文太は寄り道をしてコンビニに入った。
温かい缶コーヒーを持ってレジに向かうと、レジのすぐそばに防寒フェイスマスクが売られていた。
サバイバルナイフという男に顔を見られることを躊躇った文太は、目と口と鼻以外、毛糸のマスクで顔を覆えるこの防寒フェイスマスクを購入することにした。

北風公園に到着し自転車を止めた。
コンビニで購入したフェイスマスクを頭から被り、50段近くある階段を上った。
「ようよう、遅かったなBBC48の星! あんまり遅いから怖くなって来ないのかと思ったよ」
サバイバルナイフもまた、黒のフェイスマスクを頭から被っていた。
「よく言うぜ! おい、サバイバルナイフ、言うとくがな、俺は学生時代に暴走族に入っていたんだぜ!」
「BBC48の星さんよ、喧嘩は武勇伝で決着つけるんじゃねんだよ」
この言葉に文太は目が血走った。
文太は子供の頃から兄、元太と町内の悪ガキと称されていた。
中学1年の時には、元太と協力して中3の不良グループのリーダーをボコボコにした。
学生時代は誰もが怖がる兄弟だった。それが、文太には過去の栄光だった。
28歳になり、だいぶ刺々しかった性格も丸くなって、人に優しくするということを覚えた文太だったが、サバイバルナイフの放った一言は、心の奥深くの不良の血の入った蓋を開けてしまった。
「サバイバルナイフ! テメー、許さねーぞ」文太は、叫びながら突進した。
二人はもつれ合いながら地面に倒れた。
サバイバルナイフが文太の上に馬乗りになると、フェイスマスクを被った文太の頬を右の拳、左の拳で連打した。

5分くらいサバイバルナイフの一方的な攻撃が続いたが、馬乗りの下から文太がサバイバルナイフの鼻にパンチを繰り出すと、見事的中してサバイバルナイフは鼻を押さえて飛び退いた。
喧嘩の強かった文太がこれほど殴られるのは、兄である元太と中学時代に大喧嘩した時以来のことだった。
もう、完全に蓋のあいた文太の怒りは、尻ポケットのナイフへと自然に手が伸びた。
ポケットからナイフを取り出すと、三日月の光線がナイフの刃で反射した。
文太はサバイバルナイフに向け突進すると、右の太ももにナイフを突き刺した。
「痛て〜!」
サバイバルナイフの悲鳴が夜空に拡散した。
荒い呼吸を繰り返しながら文太は
「お前が悪いんだからな。俺のプライドを傷つけたのと、BBC48の悪口コメを書いたのが、そもそも悪いんだからな」
サバイバルナイフは、右の太ももを片手で押さえながら、携帯電話で誰かに電話を掛けた。
突然、文太の携帯電話が鳴り響いた。
荒い呼吸のままの文太は、目の前に倒れるサバイバルナイフから目を逸らさないまま、携帯電話に出た。
「もしもし」
「文太か」
「……」
「もしもし、文太聞いてるのか?」
文太は、血の気が引くのを感じながら目の前のサバイバルナイフを見下ろした。
サバイバルナイフは、何度も何度も応答のない電話の向こうの文太の名前を呼んでいた。


    終わり (作り話です)


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン