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糸井翼さん

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人混みの中に

17/02/24 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:0件 糸井翼 閲覧数:482

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気になる記事を見つけた。
「渋谷の人混みの中で、三つ目の男の子が無表情でこっちを見ていました。風が吹いて、おでこの目が見えたんです。見間違いじゃない。その目が、忘れられず、今も夢に出てくるんです。」
まあ、普通に考えて、そんな化け物はいない。
だいたい、あの人混みの中で一人の男を、ましてその化け物を見つけられるわけがない。でも、あの人混みだからこそ、そんなやつが一人くらいいてもおかしくないってことか。

いとこがツイッターで2万人のフォロワーがいると聞いた。
僕もツイッターをしているけど、フォロワーは少ない。有名になりたい。たくさん拡散されるような、そんなつぶやきをしたいと考えるようになった。
「伸びるツイートねえ。コツは写真だよ。視覚に訴える。例えば火事の瞬間の写真とかさ、でもなかなか事件には遭遇しないけど」
そんな話を聞いているうちに、自分が化け物に変装すればいいと思いついてしまった。で、その写真を撮る。トリック写真なら作れるし。僕は天才かもしれない。

友達に渋谷で写真を撮ってもらった。人混みの中、ぼんやりと顔が写るように。
「そんなことやめたほうがいいと思うけどね、俺は」
「なんで」
「どうせうまくいかないって」
加工を加えてみたが、あまりうまくはいかなかった。まあ、せっかく作ったし。投稿してみよう。
「渋谷で撮った写真に、三つ目の男の子が写ってた。。。やばいかも」

数日して、急に拡散されだした。不気味なほどに。こうして都市伝説ってできていくんだろうなあ。
そして、この都市伝説を作ったのは僕なんだ。
いくつか僕にコメントが送られてきた。
「私も、三つ目の少年を見たことがあります。怖かった」
「俺も見たことあります。渋谷の人混みの人が本当に人間か、疑わしくなりますよね」
見た人がこんなにいるとは。本当にそんなやつがいるんだろうか。そんなはずはないよな。
僕と同じことをしている人がいるんじゃないか。そう気づいた。だとしたら、そいつと手を組んで、もっと拡散されるつぶやきを作れるかもしれない。

友達と再び渋谷に来た。
「探すって、顔もわからないやつ探すのかよ」
「三つ目のやつ」
「そんなやついないだろ。お前、頭大丈夫か」
「いや、だから、注目されたいやつが化け物の変装して渋谷をふらついてるんだよ、たぶん」
いろいろ話しながら、三時間が経った。そんなに簡単に見つかるわけがない。今日は来ていないかもしれないし。やっぱり、そろそろ帰ろうか。そう友達に言うと、友達は無言のまま、人混みを見つめている。
「どうした」
その目線の先に、僕によく似た男の子が立っている。無表情で、こっちを見つめていた。
前髪で隠れてはいるが、確かに三つ目だった。
「あっ、ちょっと」
そのまま、彼は人混みの中に見えなくなった。
「お、おい」
友達の声が聞こえた気がしたが、ここで見失うわけには行かない。僕は追いかける。



俺は渋谷に来ると、昔行方不明になった友達を思い出す。
こんな大都会で、人混みの中へ消えていってしまった。今も、この人混みのどこかにいるんだろうか。

ぼんやり眺めていると、人混みの中にこっちを無表情で見ている少年がいる。
風が吹くと、前髪の下にあった、三つ目が見えた。
「あっ」
追いかけようとしたが、もう彼は人混みに消えていた。


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