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八王子さん

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かくれんぼ

17/02/23 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:0件 八王子 閲覧数:433

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 小さな港町の子供たちの間で、ちょっとした遊びが流行った。
「かくれんぼしよーぜ!」
 だが、それは一度始まれば終わらない。

 セミが鳴く夏休み。
 海外線を望める神社の境内に集まる小学生や中学生の子供たち。
 本土から離れた離島では、テレビゲームで遊ぶよりも、海で潜ったり、日陰の多い神社で遊ぶことがほとんどだった。
「鬼は一人。その鬼が誰かを見つけたら鬼は交代。十数えてから誰かを探しに行く」
 鬼が隠れる全員を見つけてから交代という「かくれんぼ」ではなく、鬼がずっと入れ替わるタイプの終わりのない「かくれんぼ」。

 いくらか時間が経ち、鬼が何度も入れ替わった頃のことだった。
「俺が鬼かー」
 藪の中に隠れていたら蚊に襲われ、我慢できずに外に出た時に運悪く見つかってしまった。
「でもまあ、あいつの隠れるようなところは単純だしな。数えるぞー」
 いーち、にー、さーん……きゅーう、じゅう!
 途中から何人も人が出入りしている「かくれんぼ」には何人参加しているかはわからない。
 終わるのは決まって、太陽が傾く夕方頃になってからだ。
 その頃になれば誰とはなしに終了ということになる。
「ほら、みーつけた!」
 この小さな港町に住む男の子の何人かが好意を寄せる女の子。
 鬼だった男の子も例外ではなかった。
 見つかってしまった女の子は残念そうな顔をして新しい鬼となる。
 好きな女の子を困らせたり、ちょっかいを出したくなる男の子特有の好意の表し方。
 そして今日もカラスが鳴くような時間になるまで「かくれんぼ」は続いた。

 その翌日のことだった。
 約束もしていないのに夏の日差しが厳しい中、子供たちは神社の境内に集まれば、昨日男の子に見つかった女の子は、男の子に向き合う。
「私、あなたのことが好きなの。付き合ってください」
 今までずっと隠してきた想いをみんなの前で言葉にして伝える。
 男の子は照れながら、それを受け入れ無事に交際を開始した。

 子供たちの人気者の女の子が誰かと付き合うことになった――それはちょっとした噂話として、そこかしこで話題に出ることとなった。
 あの日の子供たちがたくさん集まった「かくれんぼ」の中でなにかがあったのではないか。
 真相を確かめようと、交際をはじめた二人を含めた十数人で再び「かくれんぼ」をすることになった。
 男の子たちからマークされていた女の子はすぐに見つかってしまった。
「また私が鬼だ」
 いーち、にー、と数えている声を聞いて、女の子と付き合っている男の子はどこからともなく、気配と足音を消してやってきた。
(俺がすぐに鬼に代わってやるからな)
 そんな優しい思いでもって、わざと女の子に見つかり、男の子は鬼となった。
 計画通りであったが、翌日には予想外の出来事が起こった。

「私、あなたのことが嫌いなの。別れてください」
 男の子には、なにが起こったのかわからなかった。

 この港町で起こる「かくれんぼ」には二つの噂がある。
 隠した想いを持った者が、好意を寄せる相手を鬼として見つければ、相手にその想いが伝わる「隠恋慕(かくれんぼ)」。
 逆にその方法で手に入れた相手が鬼となった時、見つかってしまえば好意は消えてしまう「欠く恋慕(かくれんぼ)」。

 恋が破れた者は、誰もが終わらせたくないと願うから「欠く恋慕(かくれんぼ)」は終わらない。
 その一方で恋を叶えた者たちは「隠恋慕(かくれんぼ)」を終わらせたいと願う。

「かくれんぼしよーぜ!」

 そして今日もまたはじまる。
 誰かの想いを本人の意思とは関係なく動かしかねない「かくれんぼ」が。

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 

「――そういう噂がママの小さな頃にあったのよ」
 母親は小さな娘にそう語らう。
「ママもパパとやったの?」
「うん。この町の子供はみんなやってたよ」
「ママはパパのどこが好きなの?」
 年頃の娘に聞かれると少々躊躇ってしまう。
 純粋が故に、ここで言ったことは隣近所だけでなく町中に知れ渡ってしまうような小さな港町だ。
「秘密」
「えー、ずるーい」
「ほら、お友達が呼んでるよ」
 母親は遠くから手を振って来る男の子の方へと娘の背中を押して促す。
「夕方まで遊んでくるね」
 そう言って駆けていく娘の背中を見ながら考える。
「私はあの人のどこが好きだったのかしら……」

 ある時からこの港町の少子化に歯止めがかかり、今日もまた子供たちが神社に集まって楽しそうに遊んでいる。
「かくれんぼしよーぜ!」

(了)


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