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白沢二背さん

白沢二背と申します。現在、月に一度もペースで執筆中。

性別 男性
将来の夢 恐竜になる事
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不思議草

17/02/15 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:0件 白沢二背 閲覧数:390

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都市伝説には二通りのパターンが有る。
一つは、実際に有った事が形骸化した物。
もう一つは有りもしないのに噂が噂を呼んでしまう物。
此れは後者のパターンである。
新藤真奈美には人相が無い。
いや。実際には有るのだが、何処となく、他人を寄せ付けない面影が有る。
新藤真奈美の朝は早い。
彼女の噂は一人歩きしている。
新藤真奈美に愛想は無い。
実際には独り善がりな面々が騒ぎ立てた根も葉も無い噂話に過ぎないのだが。
彼女の日課は餌を遣る事。
彼女の家には二匹の子犬が居る。
彼女が太らせているのは、其の二匹を食う為だ。
人知れず噂が噂を呼んで副う成って、しまった。
或る日、彼女は二匹の子犬を甘やかしていた。其れはもう、此れ以上無い過保護っ振りであった。
すると見過ごせない老人が割って入った。
曰く、有り物を大切にしない女は云タラ、とかで、其れで、新藤真奈美は厭に成ってしまった。
彼女のする事には、常に非難が向けられた。
もういっそ、割腹自殺でもして遣ろうかという位で、其れで益々周りは調子に乗った。
或る日、一人の男が進み出て、斯う言った。
「なあ。新藤さん」「俺達は毎日気が気じゃねえ」「如何か、此の儘、正体を明かしちゃ、くれめえか」
 新藤真奈美は人の子である。
 だから如何しても赦せない事が有る。
「じゃあ何ですか」「私が此の子達を食べるって、副う仰るのですか」「まあ、何て事!」
 新藤真奈美に御機嫌は無い。
 何時だって、彼女は彼女の儘なのだ。

 或る日、大の大人が三人掛かりで彼女を包囲していた。
 新藤成美が、昨日から風邪で寝込んでいるという。
 馬鹿馬鹿しくて彼女は無視した。
 新藤成美とは、彼女の一個下の妹で、此の地域では、祟りが信じられていた。
「御爺様の言う事にゃ、オメエ、真奈美さんが悪い事をしたんだろう」「副うだ」「副うに違えねえ」。
 三人の男は次々と病死し、真奈美さんは、本当に迷ってしまった。
「嗚呼。何て事なの」「正か、正か或の噂は本当だったなんて」「嗚呼。如何しましょう」「如何しましょう」。
 新藤真奈美に親は居無い。
 彼女が未だ小さい頃、山で火事が有り、二人を残して両親は他界した。
 以来、男手一つで彼女の祖父が育て、今日に至る。
 新藤真奈美に妹は居無い。
 成美さんは本当の処、唯の親戚であるからだ。
 新藤真奈美に曽祖父は居無い。
 此れも、本当の処、拾われ子であったからだ。

 ◆

 翌朝、祖父が亡くなって、彼女は発狂した。「嗚呼、如何しましょう」「如何しましょう。正か、本当に起こってしまうなんて」「此んな事が起きてしまうなんて」「嗚呼。如何しましょう」「如何しましょう」「神よ」。私を御救い下さい。彼女の眼には、其れ以降光が失われてしまった。
 都市伝説という物は、本当に有るのね……。いっそ、此の身を捧げれたなら……。
 新藤真奈美は思い立った。
 或る日、身寄りの無い私に、家族が出来た事。或る日、妹が自分を姉だと呼んだ事。祖父の厳しい一言、一言……。
「私、医者に成るわ」「副うして、身寄りの、無い子供達を預かるのよ!」「私が私である為に必要な処置だわ」。
 すると如何でしょう。
 光が彼女の目には戻り、翌週には動き回れる程に成ったのです。
「神様。私、救ってもらう事ばかり考えていました。でも、今は違います。私……私、巧く言えないけども」「きっと。きっと、子供達を幸せにします」。
 翌週から新藤真奈美の猛勉強は始まった。寝る間も惜しんで医者に成る為の知識を貪った。
 曰く、『声』が聞こえなく成っただの、心身共に充実しているだの。子犬の散歩も苦じゃなく成っただの。
 ――彼女の周りには、次第に人が集る様に成っていった。
 新藤真奈美に不可能は無い。
 妹の病気も、此れで直した。
 此れと言うのは、不思議な薬草の事だった。
 或る日、山に芝刈りに行って、見付けた物であった。 
不思議と、飲むと元気に成る草だった。
「世紀の大発見だわ」「嗚呼、何て素晴らしいの」「此れさえ有れば、私は私で居られるのだわ」「何て、何て素晴らしいの!!」
 彼女は、周りが見えなく成っていた。
 後ろ盾であった祖父も、もう居無い。
 或る日、下山した折り、警察から一報が有った。
「此れは不思議草という、幻覚物質です」「直ちに摘発しますが宣しいか?」「ええ!?」。斯うして、不思議草を栽培する者は居無くなった。
 後には、誰も居無い奥屋だけが残った。




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